プロ講師という生き方、知っていますか?
講師の皆様、こんにちは!
人材教育コンサルタントの上田一輝です。
今回のテーマは「非常勤講師のキャリア」について。
アルバイトとして働いていると、正社員ではない、ベテランの講師を見かけることがあるのではないでしょうか。
自分たちと同じぐらいの時間に出勤して、帰っていくベテラン講師たち。
しかし、彼らはどうみても学生には見えません。
実は彼らは「プロ講師」と呼ばれる、非常勤講師たち。
ここでは、彼らの知られざる生態について、詳しくお伝えしていきます。
プロ講師とは?
そもそもプロ講師とは何でしょうか。
厳密な定義はありませんが、本記事では
大学卒業時の年齢以上で、かつ正社員以外として働く講師職の方として、話を進めていきます。
塾業界で非常勤講師として働く方は、本当に多種多様。
一括りにするのは難しいですが、多くは
- 学生時代から非常勤講師として働き、そのまま正社員にならずに働いている方
- 学校教員を退職後、塾講師として勤務している方
- ほかの仕事を持ちながら、塾講師としても勤務している方
のいずれかに当てはまるケースが多いようです。
大手進学塾の難関クラスでは、プロ講師がいないと成り立たないケースもたくさんあります。
講師不足になりがちな現在、たくさんのコマを持ち、かつハイレベルな授業を行ってくれるプロ講師のニーズは高く、多くの教室で主戦力として活用されているようです。
正社員・アルバイトと何が違うの?
正社員とは、雇用期間の定めがない働き方(雇用形態)のこと。
そしてほとんどの場合、フルタイムで働くことが求められます。
それに対し、プロ講師は1年ごとの契約更新がある、有期契約で働くことが一般的。
時間も授業時間だけ来ればよい、というケースが多いのが特徴です。
そのため、フレキシブルに時間を活用したい!という方が多くいらっしゃいます。
また、学生アルバイトとの違いは塾によりますが、以下の3点であるケースが多いようです。
1.契約形態が違う
ほとんどの学生アルバイトの場合は、ゼロから塾講師としての知識を教える必要があります。
そのため、自社で雇う雇用契約という形で契約を結び、先輩社員が指導して育てていきます。
対してプロ講師は、すでにある程度の指導法を学んでいますし、かなり授業力が高い先生が多いことが特徴です。
ですから、雇用ではなくプロに外注する業務委託契約、という、授業そのものを任せる(そして、授業内容について、会社側は原則口出ししない)契約を結ぶことが多いです。
※ただし、小中学生向けの、いわゆる「塾」では、プロ講師であっても雇用契約を結ぶこともあります。
2.業務範囲が違う
学生アルバイトに任せる業務は、比較的授業周りに限定したものが多くなります。
これは複数の業務を任せると、それぞれの習熟が遅くなり、会社にとって負担が増えるためです。
受け持つコマも比較的、偏差値が高くない生徒を教えたり、正社員が担当する教科を補佐するコマを担当します。
プロ講師の場合は全く違います。
まず、授業力については学生アルバイトよりも格段に高い期待をされていますから、初年度から難関校対策講座に投入されることもざらです。
そして、社会人基礎力が身についている方であれば、保護者対応や教室運営補佐など、幅広い業務を任されることがあります。
3.時給が違う
プロ講師は求められるスキルが高いからこそ、時給も異なるケースが多いです。
時給5,000円程度の高時給案件も珍しくありません。
プロ講師は1・2年で育つものではなく、貴重な存在です。
そして、プロ講師側にとっても生活がかかっているので、お金で動く方が多いことも事実。
だからこそ、高い時給相場になっているのでしょう。
プロ講師は必要なの?
前述のとおり、高い報酬を払う必要があるプロ講師。
にもかかわらず、どうして塾は「全員正社員」としないのでしょうか。
実は企業から見ると、正社員として雇うことはとても大きな決断です。
なぜなら、会社が潰れる寸前まで雇用は守らなければならないし、社会保険料等も半分は会社負担で支払わなければならないからです。
また、日本人は少しずつ昇給することを当たり前だと思っている方が多く、継続雇用により、どんどんコストが増えていきます。
仮に会社から見て“役に立つ”人材だったとしても、雇用と昇給を保証するのは容易ではありません。
その点、プロ講師はとても便利な存在です。
正社員とほぼ変わらないコストで、いざという時に契約を解除できます。
仮に“この先生、授業の質が全然向上しないな…”と思ったら、契約を解除して、翌年以降は別の講師に変えることもできるわけです。
なお、予備校だと講師と事務を明確に分け、正社員採用は事務だけ…としているところも多くあります。
このようなケースでは、極めて高い専門性を有する人材を自社で雇用するのが難しい為、
プロ講師を看板講師として集客に活用するケースが多いようです。
そのため、非常に競争が厳しい反面、売れっ子になれば数千万の報酬になると言われています。
プロ講師のメリットは?
続いて、プロ講師からみた、このような働き方におけるメリットを考えてみましょう。
時間対報酬が良い
一番の魅力はなんといっても、労働時間に対する報酬額が高いことでしょう。
プロ講師の時給相場は3000~8000円と言われており、これは通常のアルバイトの数倍にあたる金額です。
そのため、数時間の労働で十分な報酬を得ることができます。
自由な時間が多い
塾の授業時間は自ずと学校の後になるため、夕方からの勤務となります。
また子供に教えるため、深夜におよぶ業務になりません。
そのため、午前中~夕方手前までの間、自由に時間を使えます!
実際に知り合いの講師は、この時間に趣味の音楽を行ったり、映画を見に行ったりしているそうです。
副業として行える
正社員と異なり、プロ講師には副業防止規定がない、あるいは緩いことが多く、塾で働きながら、他の仕事を行うことが可能です。
実例として、平日はプロ講師、土日は結婚式のキャプテン(当日会場責任者)を務めている…という方にお会いしたこともあります!
中には私のように、社会人教育を担当しながら、塾業界に属していた人もいます。
多様な働き方ができることは、実に大きな魅力といえるでしょう。
プロ講師のデメリットは?
学生の皆さんが「このような働き方で働いてみたい!」と思ったときに、気を付けなければならないことは何でしょうか。
雇用が保証されていない
この点については、強調しすぎることはないぐらい重要な点です。
前述の通り、プロ講師は自由に生きることができますが、その代償として、自分で責任をもって業務に取り組まなければなりません。
例えば業務でミスをしてしまったとき、正社員なら先輩講師がフォローしてくれたり、指導してくれます。
しかし、プロ講師の場合は自己責任として、自分で処理しなければなりません。
最悪の場合、その場で契約解除になることもあります。それぐらい厳しい世界なのです。
慣れから、ルーチンワークとして授業をただこなすだけで、向上心も向学心もなければ、すぐに選ばれなくなってしまいます。
生徒との年齢が離れすぎると、使われにくくなる
残念ながら、ただスキルが高いだけでは講師として不十分です。
なぜなら、講師は年齢の離れた生徒に好かれる必要も出てくるわけです。
ここで生徒に合わせていく努力をしない講師は、消えていきます。
スキル・キャリアが限定的になる
受験ノウハウを教える仕事を繰り返すことになるため、他業界で必要なマネジメントや営業のスキルが身につくわけではありません。
そのため、他業界への転職は難しくなるでしょう。
加えて、同じ塾業界であっても、正社員とは業務内容が異なるため、簡単に正社員になれるわけではないようです。
年収が高いわけではない
メリットで強調したのは「時間対報酬」であり、年収ではないことにご注意ください。
働き方を見ればわかる通り、労働時間を伸ばすことは現実的に不可能です。
よって、年収ベースでみると300~500万程度になる人がほとんどです。
まとめ
ここまで、プロ講師の実態について迫ってきました。
誰でもできる仕事ではないが、魅力も大きい働き方だと個人的には考えますが、皆さまはどうお感じになったでしょうか。
現在、塾業界は人不足が深刻であるため、プロ講師の人は歓迎される状況です。
興味がある方は、まず大手塾でアルバイトとして経験を積みながら、プロ講師を目指すこともよいかと思います。
気になる方は、ぜひ求人を探してみてくださいね!