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有休、取ってますか? 〜アルバイトでも有休は取得できる!~【キャリアコラム#29】

有休、取ってますか? 〜アルバイトでも有休は取得できる!~

こんにちは。プロ講師の黒磯です。

 


黒磯 直行 くろいそ なおゆき

新卒で早稲田アカデミーに入社。営業部門長などを歴任し、その後スクールIEにて個別指導塾の運営マネージャー、Z会進学教室およびZ会東大進学教室にて講師として小中高に渡り幅広く指導を続ける傍ら、私立学校教員としても活躍。講師としてのキャリアは当然のことながら、運営サイドでの実務経験も豊富。20年以上塾業界に身を置いている超ベテラン講師。「社会人としての講師育成が業界には必要だ」との思いのもと、後進育成にも積極的な姿勢で取り組んでいる。


 

花粉症の季節がやってきました。症状が出てしまう方にとっては、非常に厄介な時期だと聞きます。

特に、講師職というのは人前で話すのが主な仕事になりますし、この時期というのは、新年度ということもあり準備や新たなテキストに対応したりと、何かとバタバタする期間でもあります。集中力も気力も必要な時期です。大変恐縮ではあるのですが、私は花粉症とは無縁なのですが(なんか申し訳ない…)、どうかご自愛ください。

目次
アルバイト塾講師も有給休暇は取得できる!~労働者の権利~
有給休暇・労災保険・雇用保険・健康保険・厚生年金・・・労働者の待遇は手厚い
有休トラブルシューティング
まとめ

 

アルバイト塾講師も有給休暇は取得できる!~労働者の権利~

「え?ホントに??」と思われた方も多いかもしれません。

新年度にあたり、新たに大学生に入学された方も多く、初めてのアルバイトを始める方もたくさんいらっしゃると思います。また、このタイミングで新たに時間講師という形で学習塾や予備校での業務を始められた方もいらっしゃるでしょう。

実は、時間講師として働くアルバイト職員(非正規雇用)にも、有給休暇の取得をはじめとする社会保険制度を利用する権利があります。

知らなかったために、その権利を棒に振ってしまってはもったいないです。すでに長年に渡りこの業界で業務に当たっている方も含め、今一度、ご自身が行使できる『労働者の権利』を確認して、ご自身のライフスタイルをより充実したものにしていただきたいと思います。

有給休暇・労災保険・雇用保険・健康保険・厚生年金・・・労働者の待遇は手厚い

正規雇用の正社員であれ、非正規雇用のアルバイト職員であれ、それぞれの企業と雇用関係にあれば「給与所得者」となります。有給休暇・労災保険・雇用保険・健康保険・厚生年金をまとめて「社会保険」と呼ぶのですが、給与所得者に与えられている権利が「社会保険」の制度です。せっかく与えられた権利ですから、正しく理解してご自身の有利になるように行使しましょう。

この社会保険の中でも、全ての給与所得者が関係してくるのが「有休休暇」です。働き方によって、権利を行使できる日数が異なるのですが、ほぼ全員に付与されるものです。今回はこの「塾講師の有給休暇の取得」についてお話します。ご自身の条件に合うものを考えながらご確認ください。

※有給休暇は「給与所得者」の権利です。もしご自身が「業務委託契約」で業務をしている場合には該当しませんので注意してください。

有給休暇 ⇒ 自分が何日もらえるのか/持っているのかを確認しよう

正式名称を「年次有給休暇」といいます。文字通り「給与をもらいながら休暇を取得できる」権利です。そして、有給休暇は「いつでも」「好きな時に」取得できます

「有給って正社員だけでしょ!」と勘違いされがちなのですが、非正規雇用の職員にも週1日以上勤務していれば、もれなく有給休暇の権利は発生します。これは、労働基準法によって「会社側は有給休暇を与えなくてはならない」と定められているためです。堂々と取得してください。

有給休暇が発生する条件

条件は以下の2点です。

  1. 半年間、継続して勤務すること。
  2. 所定労働日の8割以上出勤していること。

この2点をクリアすると、はれて有休をもらうことができます。入社してすぐに発生するわけではない点に注意です。(最近は入社日に有休が付与されるケースも出てきています)

2.が少しわかりにくいかもしれませんが、簡単に言うと、会社に「仕事してね」と言われた日数のうち8割勤務したかどうか、ということです。半年間(180日)のうち8割」と勘違いされがちなのですが、それは間違いです。

なお、年間の出勤日数が47日以下(週1日未満)の場合には有休は発生しませんが、週1日以上の勤務がない時間講師はあまり見かけませんので、この業界で仕事をしているほぼ全員に権利が発生すると考えて頂いて結構です。

もらえる日数

付与される日数は1日当たりの労働時間の長さと労働日数で異なります。塾の時間講師を想定した場合、「週日数」を基準に考えるとよいでしょう。

週30時間以上、または週5日以上、または年間217日以上⇒初年度は年10日

時間講師の場合、週時間が30時間を超えることは稀だと思います。週5日以上勤務の契約をした場合が一番分かりやすいです。年10日の有給休暇が付与されます。この日数は勤続年数によって新たに付与される日数が増えていきます。

  • 入社半年…10日
  • 入社1年半…11日
  • 入社2年半…12日
  • 入社3年半…14日
  • これ以降は1年ごとに2日ずつ増えて、20日が上限となります。
上記に該当しない場合

以下のテーブルに分かりやすくまとめてみました。なお、勤務時間は関係ありません。週に勤務する日数か年間労働日数を基準に付与されます。

※なお、有休が10日以上取得できる場合には、会社側に最低でも5日以上、有休を取得させなくてはならないという法律があります(労働基準法第39条第7項)。計画的に取得していくことをお勧めします。

未消化の有休は1年間持ち越せる。消滅に注意!

半年経つと上記の日数の有休がもらえますが、発生から1年経つと、次の有休が付与されます。

その時、前の1年で発生した有休は1年持ち越せます。例えば、週4日勤務の場合、半年後に7日が付与されます。その1年、一度も消化しなかった場合、次の1年後に8日が付与されますので、手持ちの有休は15日ということになります。1年半~2年半の間は、15日の有給の権利を行使できるということになります。

しかし、持ち越せるのは1年までです。例えば、上記の場合、仮に1年半~2年半の間に1日も消化しなかった場合には、最初の7日は消滅してしまい、2年半~3年半の間の手持ちは1年前にもらった8日と新たに発生する9日を合わせた17日となります。消滅してしまう前に使い切ってしまうのが得策です。

つまり、この制度を知らずにこれまで有給の行使をしていなかった場合、勤務が半年以上の講師の方は、 既に有休が発生しています。また、1年半以上の方に関しては、前年の分も合わせて持ち合わせていることになります。ご自身の手持ちの有休が今何日あるのか確認してしっかりと利用しましょう。

有給で発生する給与はいくらか?

正社員の場合は一日当たりの勤務時間が決まっていますので、有休を取得した場合の給与は休まなかった場合と同じとなり計算が簡単です。しかし、時間講師をはじめとするアルバイト職員の場合、例えば、『月曜日は4コマ、木曜日は2コマ』といった具合で、1日の勤務時間が不規則なことがあります。その場合は、有休を行使した場合はどのような計算で給与は支給されるのでしょうか。

この計算方法は2パターンあります。どちらが採用されるかは企業によって異なります。「就業規則」という会社のルールに必ず記載がありますので、調べるか見せてもらって確認してみてください。(就業規則は10人以上を雇用する場合には必ず備え付けることが義務付けられており、所轄の労働基準監督署に届け出ないといけないものです。)自分がもらえる金額を正確に確認しておきましょう。

休んだ日に予定されていた賃金分

これは分かりやすいです。例えば前述の例の場合、月曜日に有休を修得すれば4コマ分、木曜日なら2コマ分の賃金をそのまま計算するという方法です。1コマ1000円だとすると、月曜日なら4000円、木曜日なら2000円を給与として受け取れるということになります。つまり、有休を行使して休暇を取った場合でも、仕事をしたのと変わらない給与を受け取れるということです。

過去3ヶ月分の平均給与

これは、過去に実際に支払われた給与額を基準に有休1日分の額を決定する方法です。塾業界の場合には、シフト制(曜日によって就業時間が変わる)のことが多いことから、こちらの計算方法を取っている企業が圧倒的に多いようです。

この算出方法には2つのパターンがあり、どちらか額の大きい方が有休取得時の給与となります。

  • a) 過去3か月間の給与の合計÷暦上の日数
  • b) 過去3か月間の給与の合計÷勤務した日数×0.6

 

例えば、90日(3か月)で30日働き、15万円を給与として受け取っていたとしましょう。

  • a) 15万÷90=約1666円
  • b) 15万÷30×0.6=3000円

この場合はb)を採用することとなりますので、有休を行使すると、1日当たり3000円が給与としてもらえるということになります。

※この他にもう1パターン『「健康保険の標準報酬日額」を基に算出する』というものがありますが該当する時間講師は稀ですのでここでは割愛します。

 

有休トラブルシューティング

さあ、ご自身の有給休暇は何日なのか、そしていくらもらえるのかが把握できました。あとは、会社に申請をして休むだけです。各会社に申請の社内ルールがありますので、それに従って申請してください。

しかし、この申請に際して結構トラブルが起こるという話はこの業界に限らず後を絶ちません。でも、あきらめてはいけません。権利なのですから胸を張って行使してください。

よくあるトラブル

  • 「うちには有休はない」「バイトだから有休は取れない」と言われた

有休は各企業の都合で異なる制度ではなく、法律で一律に決められた制度です。条件に該当すれば必ず権利が発生します(そして、塾講師の場合は該当しない働き方は稀です)。ご自身の労働条件を確認し、会社に法律上権利が発生することを説明して取得できるように相談してみてください。

 

  • 拒否された/申請しづらい雰囲気である

直属の上司に相談し拒否されたり、教室自体が申請できる雰囲気でない場合には、さらに上の立場の人や会社の人事部に相談してみてください。多くの会社で快く対応してくれるはずです。それでも埒が明かないと感じた場合には、所轄の労働基準監督署に相談するものひとつの方法です。

※一応、会社には「どうしても代わりの先生が見つからないから、この日ではなくて別の日に有休ではだめですかね?」というように、申請に対して希望日の変更を求める権利があります。これを「時季変更権」といいますが、「変更を打診できる権利」であって「有休を拒否できる権利」ではありません。また、この申し出に応じるか応じないかも、申請者の裁量です。

 

  • 所定の申請書がない

多くの企業で「有給休暇申請書」などどいう表題で申請用紙がある場合が多いですが、もしなかったとしても、法律上、所定の申請書は必要ありません。ご自身のお持ちの便箋やコピー用紙に「●月●日に有休を申請します」と書いて名前と印鑑を押せば事足ります。

 

  • 理由を聞かれて拒否された/申請が遅いから受け取れないと言われた

何かそれらしい理由を書かなくてはならないと思いがちですが、とにかく有休は「いつでも」「好きな時に」取得できます。理由は「私用」で全く問題ありません

また、申請の期限も法律上ありません。極端な話だと当日でも申請できます(正社員だと、病欠の場合に有休にして休むケースも多々あります)。申請期限を理由に拒否できません。ただ、やはり突然休みになってしまうと、使用者(会社)も困ってしまうのは想像できますので、余裕を持って申請しておくことをお勧めします。

 

まとめ

  • 時間講師をはじめとするアルバイト職員にも、有給の権利がある。
  • 有休は「いつでも」「好きな時に」申請できる。
  • 自分が持っている有休の日数、もらえる金額を確認する。また消滅に注意する。

ここまで労働者の権利としての有給休暇についてお話をしてきました。

私は20年以上の長きに渡りこの塾業界に身を置いてきましたが、この有休に限らず、社会保険制度についてあまり周知・実戦されていない業界であると感じています。大学生はじめ、アルバイトとして就労することが多く、社会経験がまだ豊富でないうえ就労できる時間が有限であり、そのため人員の入れ替わりが激しく気づく機会も少ない。結果として企業側も積極的に勧めない場合が多いです。

また、「生徒のため」という大義名分の下、授業準備はじめとする時間外労働が発生しやすい、いわゆる「やりがいの搾取」が起こりやすいのも否めない業界でもあると私は思っています。企業には、正しいことを正しく実施してほしいとずっと願っています。それなしでは、この業界の発展はないと感じているからです。

またいつも私も申し上げるのですが、こういった知識は「知っている者」に味方します。普段、塾講師として教壇に立ち、生徒たちに「勉強」を説いている人間ですが、やはりその本人も「勉強」が常に必要です。正しく理解して権利を行使し、そして有意義な塾講師生活を送り、「塾の先生でよかった」と思える方がどんどん増えていくことを強く希望しています。

 

 

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黒磯 直行

記事執筆者:黒磯 直行

新卒で早稲田アカデミーに入社。営業部門長などを歴任し、その後スクールIEにて個別指導塾の運営マネージャー。退任後は、Z会進学教室およびZ会東大進学教室にて講師として小中高に渡り幅広く指導を続ける傍ら、私立学校教員としても活躍。講師としてのキャリアは当然のことながら、運営サイドでの実務経験も豊富。20年以上塾業界に身を置いている超ベテラン講師。「社会人としての講師育成が業界には必要だ」との思いのもと、後進育成にも積極的な姿勢で取り組んでいる。

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