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プロ講師の老後を考える【#キャリアコラム53】

プロ講師の老後を考える

こんにちは。プロ講師の黒磯直行です。


黒磯 直行 くろいそ なおゆき

新卒で早稲田アカデミーに入社。営業部門長などを歴任し、その後スクールIEにて個別指導塾の運営マネージャー、Z会進学教室およびZ会東大進学教室にて講師として小中高に渡り幅広く指導を続ける傍ら、私立学校教員としても活躍。講師としてのキャリアは当然のことながら、運営サイドでの実務経験も豊富。20年以上塾業界に身を置いている超ベテラン講師。「社会人としての講師育成が業界には必要だ」との思いのもと、後進育成にも積極的な姿勢で取り組んでいる。


久しぶりの記事になってしまいました。

秋冬に差し掛かり、例年以上にバタついております。

そのひとつの原因となっているのが、都立高校入試における「スピーキングテスト」の導入です。従来より導入が検討されていたのですが、ここにきて、出題形式・配点などの詳細が出てきました。相変わらず、採点方法や基準は曖昧なままなのですが(ここが一番知りたいのに…)、これを受験生に対して対策しないわけにはいきません。

当然教材もありませんから1から積み上げていって、お金の取れるレベルまで持ち上げていく必要があります。また、講座の立ち上げや宣伝方法など、会社としても様々動きがあり、それが一気に短期間で過ぎ去っていったという感じです。

少し言い方は現金かもしれませんが、このように変化を迎える時というのは、商機であると捉えることもできます。実際、私も9月10月はスピーキングテスト絡みで昨年の同時期との比較で売り上げが2割ほどアップしています。業界の動向にしっかりと目を向け、自分がどのように関わることができるかを考え行動に移していくというのも、業績向上には大切な視点です。

また、10月は塾・予備校においても冬期講習集客の序盤戦です。個別指導塾であれば、この時期には保護者面談などで現状を伝えながらコマ数提示することが必要ですし、集団塾でも、早めのプロモーションが功を奏することがほとんどです。

特に今年の冬は昨年一昨年と自粛していた帰省を解禁するご家庭も圧倒的に多いはずです。直前になって不参加を表明されることのないよう、今のうちに日程の明確化やご家庭とのコミュニケーションを図り、参加率のアップを試みてください。

目次
個人事業主には退職金がない!どうする老後!?
大きな差は、「退職金」と「厚生年金」
やはり自分のことは自分で解決する力を付けていく必要がある


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個人事業主には退職金がない!どうする老後!?

さて、会社員時代はあまり意識しなかったことのひとつに「老後資金」というものがあります。

会社員を全うするのであれば、現状では国民年金よりもはるかに手厚い厚生年金の制度もありますが、プロ講師として個人事業主という立場で仕事をするとなると、会社員と比較して、老後資金に関しては、「退職金(最近はない会社も多いですが)」「厚生年金」が大きな差になってきます。

また、企業であれば年を重ねるごとに管理業務の割合が増加していき、最後まで教壇に立つということをしなくても業務を全うすることができるという選択肢もあります。

塾にしても予備校にしても、また学校での非常勤講師にしても、講師職というのは意外と体力と気力を要するもので、私もいつまでこの業態で仕事ができるものなのかと、思い巡らせる機会が徐々に増えてきました。個人事業主としてこの仕事を続けていく限り、一部のデスクワーク(模試執筆や教材開発など)を除いて、収益化するためには、ずっとプレーヤーとして授業を提供し続ける必要があります。しかし、それはいつか限界を迎えるこになるのです。

大きな差は、「退職金」と「厚生年金」

先述のとおり、退職(個人事業主は廃業)した後の会社員と個人事業主の老後資金の大きな差はこの2つに集約されます。よって、この差を埋めれば不安も解消されていくということになると考えます。

これを打破しながら、現状を無理せずに、老後あるいは自分の職務が全うできなくなった時の備えを、私は国が作ってくれた制度を利用しながら、3つの柱で担保しています

こちらは企業に所属している正社員講師の方にも参考になると思います。

1.預貯金

将来のための資産といえば、真っ先に思いつくのがこの預貯金ですね。銀行に自分の収入をためていくという資産形成の方法です。

これは、私は老後というよりも「直近で何かあって困った時の備え」と位置付けて、月収入の4カ月分+αを常に生活のために使える現金として蓄えています。個人事業主は自分が動けなくなれば収入はゼロです。それでもしばらくは耐えられるようにという意味で持ち合わせています。いつでも引き出せる流動性の高い資産(お金)ということですね。

つまり、長期の見込みをもっての蓄えというわけではありません。幸い、日本には「高額医療費制度」という、どんなに医療費がかかっても頭打ちになるという制度がありますので、病気や怪我に関して医療費の心配はそんなに重たくありません。

貯蓄を「老後のため」として蓄え続ける、というのもひとつの方法だとは思います。基本は目減りしない金額をためておくことができることはメリットが大きいでしょう。

しかし、長期という視点で見た場合、利息がほとんど付かない点、また物価が上昇すれば、増えない貯蓄は実質的な目減りであるという点は、かなりのデメリットです。私は、デメリットの方がかなり大きいと考えて、老後のための資金としては、この「貯蓄」という手法は採用していません

 

2.iDeCo

正式名称を個人型確定拠出年金といいます。月々任意の一定額を積み立てながら資金を増やしていくという拠出型の年金です。

積み立て金額の上限は決まっていますが、任意で月ごとに変更できるのも特徴です。収入が多かったら多めに、少なかったら減額と比較的自由に設定ができます。

また、年金ですので積み立てたお金を受け取ることができるのは60歳を過ぎるか死亡した時となり、また、受け取り方も一括(退職金方式)か分割が選択できます。

iDeCoのメリットは税金の優遇がある点です。年間の掛け金をその年の税金から控除することができます。これにより、支払う税金と健康保険税が減額されることになります。貯蓄をしながら税金を減らすことができるんですね。

デメリットは、運用に失敗すると受け取る金額が目減りする可能性があるということです。元本の保証がないんですね。一応、政府が安全であると判断した投資先ですので、かなり安心ではありますが、知識をしっかりつけて臨む必要があると思います。

また、受け取り時には株などの収益と同じように「一時所得」という扱いになります。このため、受け取り時には20%の所得税の納税が必要になります。これも始めた時期にもよるのですが、先述の税金で控除される金額よりも納税額が上回ると、損することになります。月々の収入をシュミレーションしながら取り扱いを決めていくことが大切です。

60歳を過ぎないと積み立てた分を下せないというのもデメリットといえるかも知れませんが、これは厚生年金も同じことなので、あまり不利益とは言えないと個人的には思います。

なお、会社員の場合にはこれまで月々の積立上限額がかなり低く設定されていた上、企業側との合意がなければ加入できなかったのですが、この22年10月から誰でも原則加入できるようになり、掛金も自由度が増しています。第二の年金として利用することも可能です。

3.積立Nisa

上記のiDeCoと制度が少し似ているのですが、これも月々一定額を積み立てながら、資産運用をして資金を増やしていくという制度です。月々の金額は上限33,333円を上限に0円まで任意に設定でき、また月ごとに変更できます。

iDecoと相違するのは、以下の3点です。

1.積み立てられる金額が年間40万円以内と決められている。
2.20年間限定。
3.年ごとの税金控除はない。
4.受け取り時の20%の所得税が免除される。
5.いつでも現金化できる。

上限が年間40万円までという制限や、20年間という時限であるという点がデメリットと感じる方が多いようです。また、やはり、運用がうまくいかなければ目減りしてしまうのは、iDeCoと同じです。年間の税金に影響は与えませんが、受け取り時の税金が免除(0%)となり納税が必要ないということや、60歳まで待たずに任意に引き出せる点などがメリットと言えます。

一方、iDeCoとNisaに共通して言えるのは、資産の増え方が「複利」であるということです。

例えば、100万円を運用した場合、仮に年10%で運用した(そんな高い運用率は無いですが、分かりやすくするため)とすると、次の年には110万円になり10万円増えます。そして、次の年には、この110万円に10%が付くので、121万円となるのです。利息が利息を生みだすという構図ですね。

これを何年も繰り返していくわけですから、ただ単に貯金して上乗せしていくのとは全く異なった増え方をしていくということになります。これが、長期的な視点で見ていく「老後資金」に向いていると私が思う所以です。

他にも制度は充実している

この他に、小規模共済制度という国の機関が運営する精度があります。個人事業主向けに、廃業や退職時の生活資金のために積み立てができるというものです。月々1,000円から任意に掛金を設定でき、掛金は全額所得控除対象で税制のメリットも受けられます。

また、積み立て金額に応じで、年利1.5%で資金借り入れができますので、運営費用がショートした際や、新たな業務を立ち上げる際にも心強い味方です。こうしたセーフティーネットも必要に応じて利用するのもひとつの安心の方法です。

やはり自分のことは自分で解決する力を付けていく必要がある

以前の記事でも「全ての責任が自分に圧し掛かかる」のが独立するということである、ということを書いたことがあります。

私もそうでしたが、若いころは(まだ私も若いと思っているのですが笑)、そういった先のことに思いを巡らすことは多くはありません。しかしながら、独立して仕事を全うしようとした場合、それまで考えもしなかったことまで、自分で解決していく必要があるのです。

幸い、私はこのようなお金に関することや法律に興味があり知識を蓄え実践することができていますが、何度も申し上げる通り、常に私たちも勉強です。こうした制度は、知っている人にだけ味方してくれるからです。損をしないために、自分が不安に陥らないために、大切な人を守るために、ぜひ、先行きをゆっくり見通す時間を設けてみてほしいと思います。 

今回は少し教育とはかけ離れた内容となりましたが、参考になれば幸いです。また、次の記事でお会いしましょう。

 

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塾講師ステーション情報局 編集部

記事執筆者:塾講師ステーション情報局 編集部

塾講師ステーション情報局上の記事の企画・執筆・編集をしています。
年100本以上の記事を執筆する有識者や塾バイト経験者をはじめとする、塾講師業界に関するエキスパート集団です。

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