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新しい職場に入社するときに気をつけたいこと(前編)【キャリアコラム#65】

 新しい職場に入社するときに気をつけたいこと(前編)

こんにちは。プロ講師の黒磯直行です。


黒磯 直行 くろいそ なおゆき

新卒で早稲田アカデミーに入社。営業部門長などを歴任し、その後スクールIEにて個別指導塾の運営マネージャー、Z会進学教室およびZ会東大進学教室にて講師として小中高に渡り幅広く指導を続ける傍ら、私立学校教員としても活躍。講師としてのキャリアは当然のことながら、運営サイドでの実務経験も豊富。20年以上塾業界に身を置いている超ベテラン講師。「社会人としての講師育成が業界には必要だ」との思いのもと、後進育成にも積極的な姿勢で取り組んでいる。


1月も半ばを迎え、入試が本格化してきました。同業の皆様は、ひとつの正念場を迎えていることと思います。共通テストが終了し、中学入試のスタート、また1月下旬から2月には高校入試が全盛期を迎えます。受験生としては最後の正念場。指導にも力が入ります。また、合否によってはフォローも必要となります。「先生に教えてもらえてよかった」と思ってもらえるような受験をさせてあげてください。

さらには、塾業界においては次の学年のスタート時期も重なります。

大手はもちろんのこと、個人経営の教室においても集客の最盛期を迎えるのもこの1月から2月にかけてです。経営者、教室責任者の方は、日々数字と葛藤していることと思います。講師側も、そのような時期であることを認識しながら、業務に当たっていきましょう。

 目次
新たな職場へ
その1:時間講師~入社時編~
その2:正社員~入社時編~
後編に続く


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新たな職場へ

さて、この3月から4月には、人の動きが活発化します。これをご覧になっている方の中にも、春から新たな職場で業務を行う予定の方もいらっしゃることでしょう。

新大学生が、新たなステージとしてこの業界に足を踏み入れてくれる季節とも重なります。また、企業側も、人員の過不足が明らかになってきて、講師募集も活発に行われる時期でもあります。

そんな時期だからこそ、今お伝えしたいことがあります。

今回からシリーズで、新たな職場に出向く際の注意点をいくつかの視点からまとめていきます。

<シリーズ:新たな職場で注意すること~>
その1:時間講師~入社時編~
その2:正社員~入社時編~
その3:正社員・個人事業主~転職・退職編~
その4:成功するための「新しい職場」での過ごし方・心構え

今回の記事では、「その1:時間講師」「その2:正社員」をご覧いただきます。 

その1:時間講師~入社時編~

塾業界において、一番人数的に多い業態がこの「時間講師」と呼ばれるもので、企業側と雇用関係を結んで、給与を得ていくという業態です。(詳しくは、こちらの記事をご覧ください。)特に、学生で学習塾で勤務する場合などは、ほとんどがこの分類になります。

この時間講師は、一般的にはアルバイトに分類されることになりますが、アルバイトでも労働基準法上は労働者であり、労基法で保護される立場です。

では、法律の観点から、時間講師として就労する場合に注意すべきことは何でしょうか。特に、見落としがちな注意点をチェックしていきます。

※経営者側からすれば、時間講師を雇用する場合の注意点となりますね。ぜひご覧ください。

労働条件の明示

正社員としてであれ時間講師であれ、雇い入れ時に雇用主は『労働条件通知書』の交付が必要です。法律では、この書類に盛り込む最低項目が決まっています。

1、労働契約期間
 ・時間講師の場合、1年となる場合が多いです。
2、契約更新
3、仕事場所と仕事内容
4、勤務時間や休み、残業の有無、シフトなど
5、賃金の決め方と計算方法、支払日
6、退職・解雇に関すること

最低、上記の事柄が記載されています。思っていた条件、求人票に書かれていた条件と異なっていないか、必ずチェックしてください。

特に、給与や就業日、就業時間はトラブルに発展しやすい内容です。

時間講師の場合、採用時にはまだコマが確定されていないことがあり、その場合には『別途』などという記載になっている場合があります。この場合にも、コマが決定したら別紙で条件を記載した書類をもらってください。(どうしても発行してもらえないのであれば、自作して捺印だけもらう形でも構いません。)

また、これは時間講師に限らずアルバイト全てに当てはまりますが、会社の都合で労働者を解雇することはできません。もちろん時間講師も労働者です。解雇するには、社会的に納得できる理由が必要です。

遅刻などで罰金を科すのも違法です。労働者に非があっても、遅刻などで罰金や賠償金の予告をするのは違法です(労基法第16条)。

ただし、明らかに就業規則を違反している場合は、給金の一部を減給することは認められています

しかしその場合にも、平均賃金1日分の半額を超える額を減給することはできません。複数回にわたって減額に処するべき事態でも、減給できるのはせいぜい給与の10%以下です。そのため、例えば労働条件に『途中でやめたら5万円カット』『無断欠勤は罰金1万円』『会社に損害を与えたら○○円払え』などという文言があれば、それは違法です。

ただ、これは予め金額を決めておくことが禁止されているに過ぎません。現実に労働者の責任によって発生した損害について賠償制球をすることを禁止したものではない点に注意してください。要らぬトラブルにならないよう、就労中はルールに則って職務を全うする姿勢が大切です。

割増賃金(時間外・深夜労働)

時間講師で、この規定に当てはまる場合は多くはありませんが、特に季節講習などで時間外労働が発生する可能性があります。また、授業後にミーティングなどをした場合深夜労働に当たる場合もあります。こちらもチェックしておいてください。

アルバイトであっても、深夜労働(22時~翌5時)や残業をした場合には割増賃金、残業代の支給を受けなくてはなりません。残業認定される法定労働時間は1日当たり8時間以内、1週間当たり40時間以内です。法定労働時間を超えた場合には25%以上の割増賃金の支給がなくてはなりません。深夜労働は「時間の長さ」とは関係なく、「22時~翌5時の間に仕事をした」という事実のみで25%以上の割増賃金の対象となります。

また、2023年4月1日から、中小企業においても60時間を超える時間外労働に関しては50%の割り増しになります(塾の場合の中小企業の定義は、資本金or出資金の総額が5000万円以下または常時使用する労働者(正社員)100人以下の企業を指します。)

これまで、中小企業は60時間を超えても25%だったのですが、この4月から法律が改正されます。これを知らない中小企業はあるかも知れません。(基準以上の大企業はこれまでもこれからも50%です。)

掛け持ちの際の法定労働時間

時間講師の場合、例えば私のように『昼間に学校、夜に塾』といった具合に複数の会社間で掛け持ちをする方もいらっしゃいます。

意外と知られていないのですが、掛け持ちの場合も、合計勤務時間が1日8時間、1週間で40時間が法定労働時間です。上限を超えた場合、時間外労働として上記の割合(25%/50%)で割増賃金が発生します

この時、割増賃金を支払うのは「後で雇用契約をした事業者」になります。先に雇用契約している事業者の存在を知った上で雇用するかを決めることができるからです。

例えば、学校で5時間仕事をした後、塾で4時間授業したとします。この場合、法定労働時間を1時間超えているため、どちらか契約が遅い方から1時間分の割増賃金を得ることができます。事情を説明して申請してください。

そのため、掛け持ちしている場合、その真偽を聞かれたら正直に答える必要があります。もっとも、聞かれてもいないのに積極的に言う必要はないですが、聞かれた上で嘘を申告することは、この賃金云々以前にスケジューリングなど様々な面で足かせになる可能性もあります。事実を伝えるようにしてください。

その2:正社員~入社時編~

続いて、正社員として採用された場合についてお話します。ここでは、前職を退職して、新たに塾業界へと足を踏み入れた場合を想定します。

労働条件の明示

この項目に関しては、前項の「時間講師編」と同じです。書面で受け取ることになりますので、前項に則って必ず隈なくチェックしてください。

この通知書には、義務付けられた必要最低限の項目だけ記載されている場合もあれば、入社後の処遇まで細かに記載されているケースもあり、内容の濃さは企業によって様々です。正社員の場合、そう簡単には転職に踏み切ることはできません。わからない点、気になることがあれば、遠慮なく聞いてクリアにしましょう。

トラブルになりやすい5つのチェックポイント

特に正社員採用の場合、前職との兼ね合い、生活の安定を優先させる必要があるなどの理由から、確認を怠り、トラブルになりやすいことがあります。

契約期間(入社日)

内定を出した企業は、出来るだけ早く入社してほしいと思っています。欠員補充であればなおさらです。離職中の人であれば柔軟に対応できますが、現在勤めている人は退職交渉を進める必要があります(これについては、「その3:退職編」で詳しくお話します)。書類に記載された入社日に入社できません、とならないよう、注意してください。

賃金

月給制なら月給の内訳、年俸制なら月の支払額が記載されています。

賞与に関しては、その有無を記載することは義務ですが、詳細までは書かれていないケースがほとんどです。どういった条件の時に賞与が支給されるのか、業績が加味されるのかなどを確認しましょう。

想定残業時間

法的には、労働条件通知書には残業の有無のみの記載で事足ります。どの程度の残業なのかなど、目安は確認しておきましょう。

また、一定時間の残業代が給与の中に「みなし残業代」として含まれている場合があるのも、この業界ではあるあるです。想定残業時間と想定残業代はセットで正しく把握しておきましょう。

休日:「週休2日」は毎週2日の休みではない!

「週休2日」とは、月に1度でも週に2日の休みがあるということです。1日しか休みのない週があっても文句が言えないのです。一方、「完全週休2日」となっていれば、毎週2回の休みがあるということになります。

塾業界の場合、休みが土日とは限りません。私が正社員として勤務していた時は、「日曜日と、どこかの平日」という組み合わせでした。入社後に「こんなはずでは」とならないよう、文言も含めて休日体系は必ず確認してください。 

割増賃金(時間外・深夜労働)

こちらの項目に関しても、上記の「時間講師編」に則ってチェックしてください。さらに、実際に勤務が開始したのちには、本当にその通りになっているかを確認してください。

特に正社員の場合には、時間外労働が発生しやすいです。自分がどれくらいの時間を時間外労働に費やしているのかは常に把握しておき、それが給与にしっかりと反映されているかを必ず確認してください。

後編に続く

時間講師にしても正社員にしても、その会社で従業員として勤務することになります。気持ちよく、そして長くお付き合いができるよう、最初の入り口で躓かないように注意して欲しいと願っています

次の記事では、「その3:退職編」と「その4:新しい職場での過ごし方・心構え」についてお話して参ります。続編をお楽しみに。

 

後編へ続く・・・

「新しい職場に入社するときに気をつけたいこと(後編)」の続編はこちらからご覧ください。

  

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塾講師ステーション情報局 編集部

記事執筆者:塾講師ステーション情報局 編集部

塾講師ステーション情報局上の記事の企画・執筆・編集をしています。
年100本以上の記事を執筆する有識者や塾バイト経験者をはじめとする、塾講師業界に関するエキスパート集団です。

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