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集団指導を担当する塾講師必見!どうしてあの教授の授業は面白いのか?そのテクニックとは!?

2021/12/17

「良い授業」って?

先生の手本は?

塾講師であれば、必ず一度は講義をしなければならないでしょう。しかし最初から生徒の心を惹きつけることの出来る授業を出来る人はなかなかいません。

良い授業ってどんなものなのでしょうか。良い授業をしていると評判の優秀な同僚の教室に潜り込んで、最初から生徒の立場で授業を受ける、というのはなかなかできないでしょう。だからどうしようもなく、印象に残っている自分の高校時代の先生の面白い教え方とか、自分の中学時代のあの塾の先生の教え方のここら辺が良くなかったとか、昔の数少ない経験に頼っていくしかなかったりします。塾の先生をやっていて難しいのは、これを参考にすれば良いと思うものが、自分の昔の体験に大きく依存しているというところかもしれません。

 

どうしてあの教授はこんなに人気なのか?

こうした中で私の参考になったのは、大学の教授の授業でした。

それにつけても、大学教授というのは大変だと思います。何より大教室で授業をすれば一回数百人単位の生徒が教室に来ます。生徒の顔を全員覚えることはなかなかできない、その上大学生は必ずしも授業を聞いてくれるわけでもなく、授業中平然と寝られてしまったり、携帯を取り出されたり。

しかしこうした過酷な状況下でも、素晴らしい授業をしてくださる先生というのは必ずいます。数多くある大学の授業でも、なぜかこの教授の授業だけは満員で、そして全員が聞き入っているという授業もあると思います。

どうしてこうした「人気教授」の授業は学生の心を捉えて離さないのか。今日は2人の「人気教授」の授業を通して私の考えたところを紹介させていただきたいと思います。

 

A教授のケース

政治系のA教授の授業は、出席確認もないにも関わらず500人近くが入る大教室をもってして席はほぼ満席、その上前方の教壇に近い席は常に奪い合いが起こるというほどの人気講義です。扱うテーマが面白いことも然ることながら、受講生の多くが口を揃えていうのは「わかりやすい」ということでした。ではどのようにわかりやすいのでしょうか。

板書ほぼなし

その先生は、板書をほとんどとりません。黒板には先生が授業で話す内容の見出しが大きく書かれています。例えば「独立運動」というテーマで先生が授業をするのであれば、黒板にはただ大きく「独立運動」と書かれているだけです。本日のテーマは独立運動です、しかし独立するとはどういう意味でしょうか、もしこの教室で日本から独立することを宣言すれば、それは独立するということになるのでしょうか、そもそも国家とはなんでしょうか、こうした調子で授業が始まっていきます。

話の緩急

そして話す際にも、先生はいくつか工夫を凝らしていました。

先生の話のスピードには、明確な緩急がありました。重要な箇所、つまり一回の授業でこの部分だけは伝えたいと思うポイントについては聞き漏らしがないように、そしてきちんとメモを取れるように何度も何度も繰り返し(最低でも三回)丁寧に、そしてゆっくりと話していました。

しかしこうした重要なポイントについての理解を助けるための部分となると、先生は話すスピードを急激に早めます。例えば、昨今の国際情勢でどのような「独立運動」があったかということを話すに際して、口調は大幅に砕けたものになります。とてもメモをとっていたら間に合わないようなスピードで、しかしその独立運動の情景が目の前に浮かぶように、映画を見ているように話してくれます。

ライブ感覚

その先生が言っていたことなのですが、授業でしか感じ取ることのできない「ライブ感覚」というものを先生は授業を組み立てる上で重視しているようでした。ここは覚えて欲しい、常識として知っておいてほしいポイントについては強調しすぎるほどに強調し、一方で、そうしたポイントの説明などの部分の紹介にあたっては、詳細については自分で調べたくなるように要点だけを押さえて印象に残るように大幅に情報を絞って話すようにしているそうです。そして、綺麗な板書を作成し、誰もが考えずにノートをとれるようにしていてはこうした「ライブ感覚」は作れず、結果として学生はどの箇所が重要なのか理解できず、かえって成績を悪くする、という考えからこうした授業スタイルになったと言っていました。

 

B教授のケース 

政治系のB教授は、60名程度の教室で毎年大人気の授業を行っています。

この先生の講義の特徴は、講義の冒頭に講義で触れる重要な概念やキーワードを、何の説明もなく羅列しただけのレジュメを配布します。そして教科書を授業中に広げること、電子機器を授業中に使うことも禁止します。ノートとペン、それとレジュメのみが机に出せるものとなり、それ以外の物が使われた場合や授業中に不穏な動きを見せると即退場を命じられるなど、かなり緊張間のある雰囲気が教室を支配します。しかしそれでも先生の授業が大人気なのは、A教授同様に「わかりやすい」点にありました。

「名物」のレジュメ

何よりこの授業で特徴的なのは、先生はレジュメに掲載されている単語を逐次説明することで授業を組み立てることをしない点、具体的には、きちんと考えて話を聞かないとノートが一切とれないという点にありました。先生が強調するポイントや言葉の意味などを自分で関連付けを行うことではじめて、言葉のもつ意味がわかるように授業を組み立てているのでした。

簡単な例になりますが、レジュメに「黒船」という単語が書かれていたとします。先生は決して、「1853年に浦賀沖に来航したのが・・・・・・」という形で単語を説明しません。江戸幕府が1840年頃までに抱えていた重大な問題の数々を説明します。次に、江戸幕府がどのようにして崩壊していったか、その原因を紐解いて行きます。そこで「黒船」の説明は、「黒船は、外国の対応への幕府と朝廷との対応の違いをもたらした」という程度でしか説明されません。そして次の話へと移っていきます。「黒船」がどんな船であって、どこから来て、どういった意図があって来たか、などのいわば「細かい点」は全く説明されません。

「進めばわかる」全体像

しかし授業が進むにつれて、当初は見えにくかった授業のテーマがなんなのかが徐々に見えてきます(もちろん、テーマが何か、ということを考え理解しようとしながら話を聞かなければなりません)。そして授業が終わる頃には明確にテーマもわかり、その単語が授業で描かれた一つのテーマの下でどのような意味を持っているのかということもわかるようになっています。

 

 人気の秘訣:組み立て方

考えてみると、こうした人気教授の組み立てる授業というものには、そのデザインの仕方にいくつかの共通点があるように思えます。こうした組み立て方の共通点をまとめてみます。

 「自分の話に集中させる」

周りに教科書や、写さなければならない板書があったりすると、生徒の注意が分散してしまい、それではせっかく話している意味がない。だからこそ、それらのものはあくまで自分の話を演出させるもの程度として理解しているように思えました。 

「伝えたいことを絞る」

このポイントだけは覚えてほしいと考えるポイントを数個に絞り、そしてそのポイントだけは誰もが聞き漏らさないように、何度も何度も繰り返し丁寧にメモを取らせているように思えました。そしてポイントを説明する箇所については、大幅に情報を削ることで、緩急を明確にしているように思えました。 

「生徒に考えさせる」

授業から最大の効果を得るためには、生徒に主体的になってもらう必要がある。そのためにあえて生徒が難しいと感じるような場所を残したり、すべて整理して説明しないようにして、生徒に「ツッコミ」を入れてもらうための余地を残し、自分で考えてもらおうとしているように思えました。

 

 人気の秘訣:テクニック

そしてこうしたデザインを実現するためのいくつかのテクニックというのもありました。こちらも、以下まとめてみました。

「板書はほぼ取らない」

板書はあくまで自分の話の演出程度に使っていました。それは整理された板書があると、話を聞き漏らしても重要な箇所は書いてくれると考えるため、集中力がとぎれ、ただ写すだけになってしまう場合が多いと考えるためでしょう。 

「重要なポイントは3回繰り返す」

この授業に出た以上、ここのポイントだけは覚えて帰って欲しいというところを数個に絞り、そしてそのポイントについては3回程丁寧に繰り返し説明していました。そしてそれ以外の部分については、意図的に聞き取れないくらいの速度にすることで、授業に緩急を持たせ、「ライブ感覚」というようなものを作り出していました。 

「流れを断ち切る」

あえて話を飛躍させたり、説明する順番を前後させたりすることで生徒に親切過ぎない授業を組み立てているように思えました。もちろん膨大な知識のストックがあるからこそこれができるのでしょうが、ただいるだけでなんかわかった気になる授業というものを作らないようにしているように思えました。

 

 おわりに:「わかりやすい」のが「良い授業」

受講生の話からして、人気教授の授業が人気なのは「わかりやすいから」という点に尽きるようです。「良い授業」とは、「わかりやすい」授業であるという基本を思い出させてくれました。自然と生徒が話を聞こうとし、自分でいろいろ考える授業こそがそして「わかりやすい」授業なのでしょう。

人気教授の授業には、そうした「良い授業」にするためのヒントがたくさん隠されていました。

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