惹きつける技術《一目置かれる授業のコツ》
話し方を変えるだけで授業の質が変わる
話を聞いているだけの授業ってつまらない、眠くなる…
そんな生徒の意見を聞いたことのある講師は多いと思います。
自分の授業が自分の知らないところでそんな風に言われていては、悲しいですよね。
講師が一生懸命指導しても、生徒に伝わりきらないことは少なくありません。
そんな時、講師に出来ることは、「話し方を変える」ことです。
本記事では、
生徒に他のことを考える暇も、眠くなる暇も与えない、
90分~120分の授業をまるで映画のように進行していくためのテクニックをご紹介します。
相手に伝わるように話すために
まず前提として理解しておかなければならないのは、
『「話を聞く」と「話を理解する」は似ているようで全く異なった二つの概念である』ということです。
よく「右から左に話が抜ける」などとも言いますが、聞く耳を持たずに聞こえてきた音声は、その音を脳が認識しても理解はしません。
話を理解するには、「脳が理解しよう」と一生懸命にならなければいけないのです。
英語で言えば、hearとlistenの違いのようなものです。
聞こうと努力せずともなんとなく聞こえてくるhearに比べ、その話を理解する為に聞こうという姿勢をもって聞くのがlistenです。
私たち講師は、生徒にしっかりlistenしてもらえるように努めなければなりません。
そして生徒にそのlistenの姿勢を求める前に、もう一つ理解しておかなければいけないことがあります。
『「話をする」と「話を伝える」の二つにも雲泥の差がある』ということです。
耳があれば誰にでも話が聞こえてくるように、口があれば誰でも話す事は出来ます。
講師の立場に立つ私たちはしっかり「話を伝える」努力をする必要があります。
私たちが話を伝えて初めて、生徒は話を理解するのです。
さて、この2つの前提を踏まえたうえで、実際に「話し方を変えるポイント」を見ていきましょう。
話を伝えるために心掛けるべきことは、以下の5原則です。
- 1:簡単な言葉を使う
- 2:説明する順序を工夫する
- 3:体験談を話す
- 4:ボディランゲージを効果的に使う
- 5:発声方法を工夫する
1)簡単な言葉を使う
とにかく説明は簡潔かつ短く、これが大原則です。
実は、塾講師は必ずしもそこまで秀才である必要はありません。
もちろん、人に勉強を教えられるほどその内容を理解していなければ授業にならないというのは当たり前のことですが、講師自身がどれほど理解しているかより、生徒にどれだけ理解させるかの方がよっぽど大切なのです。
そして、同じ内容であっても、生徒の学年によって、又はその人の考え方によって、理解する方法はかなり異なります。
まして、自分が学生の時に理解した方法と同じように教えても、それが必ずしも万人に通用するとは限りません。人の性格は十人十色と言いますが、考えた方にも同じことが言えるのです。
個別指導の場合でしたらその生徒それぞれにあった教え方をすれば問題ないのですが、集団授業の際には個々に対応している時間は残念ながらありません。限られた時間の中で、生徒全員が理解出来るように説明するには、いかに簡単な言葉を使って授業を行っているかにかかってくるのです。
言ってしまえば、どの学年に対しても、小学生に説明する気持ちで解説をするのが最適です。
講師自身の頭では、様々な英文や複雑な計算、公式などが浮かんでいるかもしれません。それらの難しい内容は一旦全て排除し、常に「小学生目線」で話をしてみて下さい。
きっと生徒に、分かりやすい!という印象を与えられることでしょう。
2)説明する順序を工夫する
ある一つのことを説明する際、話し方には以下の3パターンがあります。
①結論から述べる
話を聞く気にさせるにはこの方法が最適です。限られた授業時間内で、生徒により効果的に理解させるには、一番良い方法です。
②重要ポイントのみを説明
テスト前など、ある程度理解している上でさらに重要なところを再確認してもらう時などに使えます。
予習の段階や、理解出来ていない内容をこの方法で説明してしまうと、説明不足になってしまうことにもなりかねません。始めからしっかり理解し直す必要があると感じた生徒には、省略せずに丁寧に説明してあげましょう。
③プロセス・理由などの順序をおって、最後に結論
この説明法ですと、どうしても話が長いという印象を与えてしまう可能性があります。塾の講義時間は限られていますので、授業中にはあまり使わない方が良いかもしれません。しかし、中にはその根拠をしっかりと知りたいという生徒もいるので、そのような生徒には理解を定着させるために順序立てて説明してあげる必要も出てきます。
人の考え方は違うので、生徒それぞれによってどれが理解しやすいかは異なります。
しかし、塾講師のみならずあらゆるビジネスシーンにおいて、最も分かりやすいと言われるのが①の「結論から述べる」話し方です。
授業時間を、シンプルかつ濃厚なものにする為には、ぜひ「結論から述べる」説明法を実践してみて下さい。
以上のポイントに意識して、「分母の有理化」について実際に授業を行うと・・・
ご覧の通り、先生自身も輝いて見えますよね。
分かる!と思うと、生徒の授業に対する姿勢も変わってきます。
3)体験談を話す
学校の先生が、教科書をただひたすら音読するだけの授業をしたら、どうなるでしょうか。
おそらく生徒全員が深い眠りに陥ります…。
そして教科書を読んでいるだけの授業をする先生には、そんな生徒を叱る権利は残念ながらありません。
生徒が眠くなるのは、講師側にも責任があるのです。
先生の話は面白い・興味深い・聞きたいと生徒に思ってもらえる為に必要なのは、
体験談を交えて話すことです。
なるべく授業の際はテキストばかりに目を向けないことを心掛けましょう。参考書を読んでいるだけでは、私たち講師も面白くないですし、それを聞いている生徒はもっとつまらないと感じてしまいます。
「話を伝える」ためには、テキストや参考書の内容を踏まえ、自分の言葉で話すことが重要です。
人は、聞いている側が話し手に感情移入すればするほど、人の話を理解しようとします。
生徒が講師の話に感情移入すればするほど、生徒は一生懸命になって私たちの話を聞いてくれるのです。
その為には、講師側が自分の言葉で話す以上に最適な方法はありません。
4)ボディーランゲージを使う
皆さんはオバマ大統領の就任演説を見たことがあるでしょうか。
オバマ大統領はスピーチをする際、毎回体全体を使って何かを訴えかけています。
言葉だけではありません。
手振り身振りを巧みに使い、体全体で言葉を表現しています。
さすがに、塾の授業をアメリカの大統領の演説レベルにまで高める必要はないかもしれません。
しかし、ボディーランゲージの巧妙さは、オバマ大統領に学べるものはあるはずです。
規模や組織は異なっても、人前に立って話すという立場である私たち講師は、このような偉大なスピーチをじっくり観察してみてもいいのではないでしょうか。
淡々と話していては、伝わるはずのものも伝わりません。
そして、ボディーランゲージを使えば使うほど、何かを伝えたいという気持ちも聞き手に伝わるはずです。
生徒に話を聞いてもらおうと思うのならば、まず私たちに出来るのは「伝えようという姿勢を生徒に見せること」です。
ボディーランゲージについては、こちらの記事に詳細があります。ぜひこちらもご覧ください。
では実際にオバマの演説について以上のポイントを意識して指導してみましょう。
ただ教科書の内容を復唱していたころと違い、実際に顔や手を使ってオバマの演説を再現しています。
面白い先生は人気者になれること間違いなしです!
5)発声方法を工夫する
話を伝える為に上記に挙げたことを実践することはとても大切です。
それ以上に、声のトーンや話すスピードによって、同じ話でも聞き手側にとっては全く異なった印象を与えることも忘れてはいけません。
声のトーンは低めを意識
人間は誰でも緊張すると声が高くなってしまいます。
ある程度の熟練講師ならば、毎回の授業で緊張することも少なくなってきているでしょう。
しかし、新人講師や初めてのクラスなど、緊張する機会はたくさんあります。
そんな時に意識するべきことが、なるべく声のトーンを低くすることです。
高音は、教室中に響き渡りそうですが、実はものすごく聞き取りにくいのです。
さらに、緊張が混ざってしまえば声は高くなる一方…
声を低くしようと心掛けていてもある程度は緊張で声が高くなってしまうのも事実です。
そして声が低すぎてしまってもあまり楽しい印象は与えられません。
よって、意識の上では低くしようと心掛け、自然と高くなってしまったくらいが一番聞き取りやすい音程になります。
話すスピードはゆっくりと
話すスピードも声のトーンと似ています。緊張すると、早口になってしまうのです。
緊張していなくとも、時間配分の関係でどうしても急ぎ足にならざるを得ない部分は出てくると思います。
それこそ、授業前準備としてどこに重点を置くべきか、しっかり配分を考えておくことが必要とされます。同じ内容の授業をしても、生徒の理解力によって同じように授業が進むとは限りません。それらも考慮した上で、余裕を持って授業を組み立てる必要があります。
とはいえ、常にゆっくり話をし、生徒が眠くなってしまっては本末転倒です。
絶対に理解してもらいたい内容はゆっくり話す必要がありますが、それよりも大切なのは話すスピードを意識的にコントロールすることです。
そこまで重要ではない内容を少し早めに話し、大事なところをゆっくりと話すことで、授業に強弱が生まれます。常に一定のスピードの授業より、そちらの方が生徒にとっても何が一番大切なのか分かりやすくなるのです。
何より、高い声かつ早口が一番聞き取りにくいという事を忘れてはいけません。
緊張しがちな講師こそ、この事を念頭に入れて授業に挑んでみて下さい。
以上、ここまで5点について述べてきました。もう一度おさらいしてみましょう。
- 1:簡単な言葉を使う→説明はなるべくシンプルに
- 2:説明する順序を工夫する→結論から述べる
- 3:体験談を話す→テキストを棒読みしない、自分の言葉で伝える
- 4:ボディランゲージを効果的に使う→Cf)オバマ大統領のスピーチ
- 5:発声方法を工夫する→声のトーンと話すスピードのコントロール
以上の5点を踏まえ、授業の質をより良いものにしていきましょう!
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