発言しない生徒への接し方
2021/12/17
授業中に発言しない生徒に対して、何とか発言させようと努力している講師は割と多く見かけますが、発言を強要することがプレッシャーとなり、良い影響を与えないことも考えられます。今回は、授業中に発言しない生徒について考えてみたいと思います。
「発言できない」と「発言したくない」は違う
発言がないことを問題視する講師は、発言の積極度を理解度のバロメーターとしている傾向がありますが、分からないから発言しないとは限りませんし、むしろそうでないケースの方が多いように感じます。まず、その生徒がどうして発言しないのかを想像してみることが大事です。
①何を聞かれているのかが分からない
②質問の意味は分かるが答えが分からない
③特に意見がない
④気分が乗らない
⑤先生と話したくない
⑥特定のクラスメートの目が気になる
⑦間違えると恥ずかしい
⑧発言すること自体が恥ずかしい
⑨人前で話すのが苦痛
⑩発言する必要を感じない
他にも十人十色、多様な理由が組み合わさっているかと思いますが、ざっくりと①〜③は「発言できない系」、④〜⑩は「発言したくない系」と分類できます。発言しない主たる理由が「発言したくない系」の生徒に無理矢理発言を促してもあまり学習効果は期待できません。個別に呼び出して話を聞くなどの方法も、向き不向きがあります。適切な対応をするためには、ある程度理由を把握する必要があります。
オーラルコミュニケーションを強要しない
確かにインタラクティヴな対話授業は効果的ですが、発言だけがコミュニケーション方法ではありません。「発言したくない系」の中には単純にオーラルコミュニケーションに抵抗がある生徒も多数混在しています。ですから、「紙を配って書いてもらう」ことや他人の目に配慮して「匿名可にする」など、意見を発信する選択肢を増やすだけでも、かなり状況は把握できます。
また集団での対話型授業では、一定の生徒だけが発言を繰り返すことで、全体としては盛り上がっている感じになるのですが全く付いて来れていない生徒に気づきにくくなるという問題点もあります。限られた時間ですべての生徒との双方向コミュニケーションを実現するためには、オーラルコミュニケーションだけでは限界があります。目配りはもちろんのこと、グループワークや紙などのツールを効果的に使いたいところです。
発言はしないけれど認めて貰えるのを待っている生徒もいる
様々な方法で意見を集めと、生徒の発信の多様性が分かります。普段まったく発言をしないのに紙にはスペースが足りなくなるほど書いてくる生徒もいますし、ツッコミ待ちのいたずらをしている生徒もいます。気をつけたいのは、そういうサインを見逃さないことです。最初のサインは学習内容から外れていることも多いですが、こちらがそれに対してリアクションを続けることで、学習内容についても積極的に発言をするようになることは良くありますし、そういう生徒に対していきなり設問の回答を発言するように求めても逆効果になりかねません。
できる限り、講師側が生徒それぞれの個性を知ろうとする姿勢だけでも、活気のあるクラス作りの一助になります。ただ、押しつけがましかったり、誰に対しても同じような対応をしてしまうことには気をつけたいところです。授業は集団への一斉授業であっても、対応は個別にしていくような心構えが必要なのではないでしょうか。