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【英語講師必見】生徒の進路相談に備える!『留学についてのあれこれ』

2021/12/17

多様な道筋を生徒に示唆してあげること

中学生を担当している塾講師の皆様は、担当している生徒の高校進学のために励んでいることでしょう。
高校生を担当している塾講師の皆様は、担当している生徒の大学進学のために励んでいることでしょう。

それが当たり前のように思え、そこにわざわざ疑問を抱く人はあまりいないと思います。
しかし、私はそのお決まりと思えるその道筋に少し違和感を感じ始めています。 

一歩下がって考えてみると、「進学」のみならず、

「留学」という選択肢もあるのではないかということが浮かんでくるのです。

中学生は日本の高校へ進学、高校生は日本の大学へ進学・・・
そのように当然と思われていた道を必ずしも辿る必要はないと思えて仕方がありません。

 

担当している中学生によく、「なんで高校に行かなければいけないの?」との質問を受けることがあります。

そのような生徒には、

「高校に行かないで中卒だと、将来就ける職がかなり制限されてね…」
「昇進しようと思っても学歴がないと…」
「そもそも中卒で雇ってくれる会社なんていまどき無いよ…」

等、ありきたりの文句を列挙するのが常です。

そのような質問を生徒に問いかけられた時にありきたりな回答しか返せず、
いつも悶々としているというのが事実です。

やはり中学生を教える身である手前、その保護者の監視もあるため、いわゆる「優等生回答」をしなければならないのです。

塾講師は生徒の意見・希望に耳を傾けながらも、その保護者の意見をもしっかり尊重しなければならない、という器用なことをしなければならないのです。

したがって、私自身、そのような問いかけに本当はもっと自由な発言をしたい気持ちも山々ですが、そんな板挟み状態で出てくる言葉はやはり「高校は行くのが当たり前だから」になってしまいます。

「行かなくても人生なんとかなるでしょ」なんて無責任なことを言えるわけがありません。

しかし、無責任な発言は厳禁ですが、その生徒の「なぜ」を大切にしてあげてください。

なぜという問いを投げかけてくる生徒には、

決まったレール以外の道筋もあるのだ、ということを伝えればいいのです。

決してどちらかを勧める訳でもなく、強制する訳でもなく、
人生には人それぞれの生き方、歩む道があるということを伝えてあげてください

その一つの例として、アメリカの大学留学に関してこの記事でお話していきたいと思います。

 

留学について知っておくべきこと

まず、アメリカでは高校までが義務教育ということをご存知でしたでしょうか。

大学に留学するしない以前に、アメリカと日本では教育そのものの体制が大きく異なります。
その一つとして、アメリカでは高校までが義務教育であるということを知っておきましょう。

アメリカの大学について

日本の大学とアメリカの大学の違いはいくつかありますが、その中でも以下の2点は、特に知っておくべきことです。

日本の大学・・・・・「入学するのが難しく卒業が簡単」 「私立より公立(国立)の方がレベルが高い」
アメリカの大学・・・「入学するのが簡単で卒業が難しい」「公立(州立)より私立の方がレベルが高い」

塾講師は留学カウンセラーではないですので、実際にそこまで詳しい情報をこと細かく知っておく必要もないかもしれません。
しかし、せめて上記の2点くらいだけでも知っておけば、進路に悩んでいる生徒に対しての話題の一つとしても有効でしょう。 

ただ実際、アメリカには約4、000以上もの大学がありますので、アメリカの大学だけを比べてもそのレベルや特色は様々です。

以下に、大まかにアメリカの大学の種類についてご説明します。

アメリカの大学の種類

私立大学(4年制)

  ・リベラルアーツ・カレッジ

  ・総合大学
   (リベラルアーツ・カレッジが大学院を持って大規模になったもの)= 一般的にuniversityと呼ばれる

リベラルアーツ・カレッジの趣旨は、
興味のあることを全て学んで教養を身につけるという全人教育」です。

先ほども述べましたが、アメリカでは高校までが義務教育です。
よって、アメリカの大学は
大抵の場合、専門的に学ぶ場ではありません。
高校卒業と同時に自分の専門分野を決めなくてはいけない日本の教育システムとは大きく異なり、アメリカのリベラルアーツ・カレッジでは、大学在学中に多くのことを学び、大学生活を過ごしていく中で、自分の進みたい道を決めていきます。

アメリカでは専門的なものを学びたい場合には大学院に行きます。

日本で大学院と聞くと、何かの研究者になるだとか、教授を目指しているのだとかかなり偉大なことのように聞こえますが、アメリカでは大学院にいくことはそこまで珍しくありません。

逆に言えば、アメリカで専門的な職業(例えば医者やカウンセラーなど)に就きたいと考えた時、大学だけでは不十分です。大学院を出ていなければ、その道のプロになることは出来ません。

州立大学

  ・4年制の州立大学 レベルは様々

  ・2年制の州立大学 いわゆるコミュニティ・カレッジと呼ばれ、誰でも入れる大学    

州立大学は日本の公立高校の入学制度と少し似ているところがあります。

そのレベルは様々なため、より上位校を目指すのであればそれなりの努力が必要とされますし、レベルの低い学校でも良いと思うのならばそれこそ選ばなければどこかしらに入ることが出来ます。

しかし、ここでもやはりアメリカでは高校までが義務教育であることを忘れてはいけません。

日本人が留学する際、英語力が足りないがために入れる大学が州立大学のレベルの低い学校になってしまうことがよくあります。実際に入ってみると州立大学のレベルの低い学校の勉強内容は日本の高校並みです。
そのことをしっかり理解していないと、せっかくの留学生活が台無しになってしまいます。

さらに、大きな夢を抱いた留学が理想と違ったと思うケースは、2年制の州立大学であるコミュニティ・カレッジに入学してしまう場合です。
コミュニティ・カレッジは2年ということから、お手頃な留学と認識されがちです。
ましてや州立大学は日本の公立高校と似ているということからもお分かりいただけるように、授業料が私立に比べてかなり安いです。

そのような安易な考えからコミュニティ・カレッジの留学を決めてしまうと、入学してからのショックがとてつもなく大きくなってしまいます。

なぜなら、コミュニティ・カレッジとは低所得者が働きながら通う、大学というより職業訓練所のような場所だからです。日本でのイメージは、高校の定時制です。 もちろんレベルもその程度です。

 

留学には多大な額が発生します。
生徒の未来を壊さないためにも、アメリカの大学について少しでも知識をつけてもらえたらと思います。 

 

英語力さえあればなんとかなる!は間違い

グローバル化が叫ばれている現代、「英語は必須」と言う言葉をよく聞くと思います。

塾講師の皆様も、「英語だけでもしっかりやっておいた方がいいよ」「英語は一生ついてくる科目だから今のうちからやっておいた方がいい」などと言う言葉を生徒に言った事のある方は多くいらっしゃると思います。

確かに受験の際、高校受験はおろか、大学受験でさえ、文系を取っても理系を取っても英語はもれなく付随してくる科目です。
ですので、どうしても日本の受験のシステム上、英語が出来なければ良い高校・良い大学に入れないと思ってしまいます。

 

人生のあらゆるステップ・アップの機会に、採用するかどうかの判断に英語力が問われる日本では、「頭がいい=英語ができる」ではなく、「英語ができる=頭がいい」になりがちです。
                 ー「留学で人生を棒に振る日本人」 栄 陽子 著 扶桑社新書 

上記のような、「英語ができる=頭がいい」という方程式が正しくないということを生徒にしっかり伝えてあげることが大切です。

確かに英語が出来る人はこの先の国際色豊かな社会を生き抜くことが出来るかもしれません。

しかし、英語が出来るだけでは決してその人の学力までが偉大なものになるということは考えられないのです。

英語力は関係ないと言っているわけではありません。

英語力だけでは不十分ということです。 

留学するためには、英語力があって当たり前です。
ましてや英語圏に留学する場合、周りは英語をネイティブに話す人ばかりです。

ですので、英語力は土台としてあって、その上に学力を積み重ねていかなければいけないのです。

英語が出来れば留学出来る、留学先でもいい学校で楽しく充実した生活を送れるという考え方は間違っているとはっきり伝えておきましょう。

 

あまりピンとこない方には、逆の例を考えれば一目瞭然です。

中国や韓国の人がいくら日本語ができたって、すんなり東大や京大に入れるわけじゃない。
                 ー「留学で人生を棒に振る日本人」 栄 陽子 著 扶桑社新書 

このように日本の大学に留学する外国人のことを考えれば、その留学先の言語だけ出来ても学力がついていかなけばいい大学になど入れるわけがないということがお分かりいただけますでしょうか。

さらにアメリカの大学について言えば、日本人が大学に進学する際に英語力が問われることはもちろんのこと、入学書類として高校の成績証明書が必要になってくることも忘れてはいけません。

もし留学を考えている生徒の中に、
「高校の成績が悪くて日本の大学に受かりそうにないから、留学しよう」など言っている人がいたら、
そんな安易な考え方では留学は出来るものではないという事を伝えてあげてください。

少し厳しい言葉にも聞こえますが、
生徒の未来を壊さないためにもしっかり現実を認識してもらうことが大切です。

 

「語学力」は武器のひとつと言えるでしょう。しかし、決してオールマイティではありません。なぜなら、それがどんな言語であろうと、「言葉」は「単なる道具」だからです。ネイティブ並みの流暢な発音で英語がしゃべれたとしても、文化や芸術、政治経済を語れるだけの教養がなければ、あるいはネイティブと対等に討論できなれば、それは「宝の持ち腐れ」になってしまいます。「英語ができれば人生思いのまま」という考えは、「このアイテムさえ持っていれば人生思いのまま」と同じです。道具は使いこなす能力が不可欠だということは、もはや言うまでもありませんね。
                 ー「留学で人生を棒に振る日本人」 栄 陽子 著 扶桑社新書 

 

留学の目的をはっきりさせること

日本人にとって、留学の目的は「英語力を伸ばすこと」という考え方が一番主流でしょう。

しかし、上記にも述べたように、言葉とは所詮道具です。

「英語を勉強するため」ではなく、「英語で勉強する、英語で何かをする」と頭を切り替えない限り、本当の英語力は身につかないもの。
                 ー「留学で人生を棒に振る日本人」 栄 陽子 著 扶桑社新書 

 

中学英語さえマスターしていれば、ある程度の英語は簡単に話せるようになります。

よく生徒に、「先生はどうやって英語が話せるようになったの?」と聞かれますが、
話していたら話せるようになった」という答えしか浮かびません。


中学校までの英文法をしっかり身につけさえいれば、
誰にでも英語を話せるようになるチャンスはある
のです。

留学には多大は費用がかかることは否定できません。

ましてや生徒たちの人生をも左右し兼ねない選択なのですから、留学の目的をもっと広げるように示してあげることが大切です。

 

英語力を伸ばすためだけならば日本でもできます。
日本国内にも英会話学校が溢れていますので、そこで英会話を学ぶだけでも英語を話せるようになるでしょう。 

さらに、英語力を上げるという目的の為だけに留学すると、通うのは現地の語学学校です。
講師の中にも語学留学をされたことのある方は良くお分かりだと思いますが、語学学校にはたくさんの日本人で溢れています。

人間とは弱いもので、現地に行っても日本人の友達を見つけてしまってはどうしても日本語で話してしまいます。それでは留学に行っても英語が上達するはずがありません。

結局、アメリカというフリーダムな雰囲気の中で青春時代を謳歌したような気持ちになりますが、
気がついたら全く英語力が伸びていないということにもなりかねないのです。

ですので、留学の目的を英語力を伸ばすことだけに限定しないことをおすすめしてあげてください

英語を学ぶのではなく、英語で学ぶことこそ、本当の留学です。

 

留学のすすめ 

日本はとても便利で恵まれている国です。

貧富の差は多少はあるものの、普通の学校を出れば普通の会社に勤めることが出来、それなりのお給料ももらえます。

かなりの裕福さを求めない限り、サラリーマンになれば生活に困らないほどの金額を得ることができます。

さらに、欲しいと思ったものは5分歩けば24時間営業のコンビニエンスストアで購入出来、インターネット注文や宅配便、交通の便などもかなり優れています。

そのように便利な世の中だからこそ、身の回りの生活にあふれる豊かさを見逃しがちです。

世界には、危険と隣り合わせで生きている子供も、小学生から働かなければいけない子供もたくさんいます。

留学をすれば、日本では考えられないような常識・慣習に多く出会います。

カルチャーショックを受けることでしょう。 

しかし、そのような世界を多くの若者にみてもらい、生きる力を学ぶことこそ留学の醍醐味だと私は考えています。

日本でしか通用しないような価値観をひっくり返し、自分の足で生きていく力を身につけて欲しい
                 ー「留学で人生を棒に振る日本人」 栄 陽子 著 扶桑社新書 

英語を学ぶだけではなく、英語を使って世界中の人々とコミュニケーションを取り、工夫し生きていくこと。

それこそがグローバル社会を担う今の学生に求められるスキルではないでしょうか?。

そのようなことを踏まえ、進路に悩んでいる生徒がいたら、留学のお話もしてあげてみてください。

 

【追記】進路相談に少しでも留学についての情報を、と思い記事を書きましたが、これからご自身の留学を考えている大学生にとっても役立つ記事になればと願っています。

 

参考文献:「留学で人生を棒に振る日本人」 栄 陽子 著 扶桑社新書

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