【塾講師採用】 大学受験環境と塾講師の採用の関係を読み、採用につなげよう!
1.大学生に関わるマクロデータ
最近の採用状況の傾向として、働き手にとって有利な状況が続いています。求人の数に対して求職者の数が少ないため、なかなか条件に合う人材を探し出すのは難しいようです。しかし、塾講師となる主な人材は大学生ですが、ここ数年の大学入学者数は増加傾向にあります。働き手の総数は増えているのになぜ依然として採用側にとって厳しい採用活動が続いているのでしょうか。
①高校卒業者数の推移
日本の高校卒業者数は平成17年から平成21年にかけて急激に減少し、その後も平成26年に至るまで減少傾向を辿っています。少子高齢化が叫ばれる中、実際に高校卒業者数は年々減少しています。
②大学進学率の推移
高校卒業者数の減少傾向とは裏腹に高校卒業者の大学進学率は年々増加傾向にあります。平成17年度では30%台であったのに対して、平成26年度では48%と、高校卒業者の約2人に1人は大学へ進学する時代になりました。
③大学入学者数の推移
高校卒業者数が減少しているのに対し、大学進学率は年々増加傾向が続いていることで、大学進学者数は結果的には増加傾向にあります。平成17年度の大学入学者数が約47万人であったのに対し、平成25年度には約52万人と、8年間で5万人も増加しています。塾講師ステーションでは応募者の約7割から8割が学生ですから、この数字だけを見れば塾講師労働市場は労働希望者であふれ、雇用者側有利の状況に転じていくはずです。
以上のように、少子化といわれる時代背景にありますが、18歳人口は減少しつつも実際には大学生の数は増え続けているのです。
2.労働環境のマクロ状況
①前年度比求人増加数
下の図は厚生労働省発表の「主要産業別、規模別一般新規求人状況」(平成26年10月発表)をもとに作成したグラフです。横軸が月、縦軸は職業紹介所に登録された有効求人数の前年比増加率の推移を表しています。これを見ると、増加幅は月ごとに変動があるものの、平成26年度は8月を除き、年間を通じて求人数は前年度より増加していることがわかります。さらに半分以上の月で5%以上の上昇率となっています。世間でアベノミクスと言われているように、実際に雇用は増えていることがわかります。
②有効求人倍率の推移
下の図は厚生労働省ホームページより引用の有効求人倍率の推移です。マクロデータでみると、平成26年度は求職者数が減少し、求人数がやや微増の傾向があります。その結果、有効求人倍率も微増している状態です。しかしながら、平成21年度からの変化を見てみると、求人数が大きく増加する一方で、求職者は大幅に減少しています。
3.なぜ大学生が増えているのに採用が厳しいのか
これまで見てきたように、労働市場をマクロ環境で見ると、求人数の増加と求職者の減少で採用側が厳しい状況にあることは理解できます。しかし、冒頭述べたように、学生が大半を占める塾講師労働市場においては、求職者となる学生(特に入学初年度者)は増加している一方で、依然として採用側が厳しい状況であるのは何故なのでしょうか。ここでは3つの仮説をご紹介したいと思います。
①学生の二極化が進んでいる
日本私立学校振興・共済事業団私学経営情報センター発表の「平成26年度私立大学・短期大学等入学志願動向」によると、入学定員充足率(入学者/定員数。この数値が低ければ低いほど定員割れの状況が深刻である。)の状況が平成25年度から26年度にかけて変化しています(図 参照)。平成26年度では入学定員充足率60%以下の学校が増加していることがわかります。大学全入時代となり、誰もが選ばなければ大学に入学できる一方で、上位校の人気は依然として高いため、結果として下位と上位で学生の二極化が起こっていると考えられます。塾講師として働くのは主に上位層の大学生が多く、この層の学生数はほぼ変わらないものと思われます。したがって、学生数(働き手)の増加はほとんど前向きなデータとは捉えることができない、ということになります。
②学生の増加数以上に求人数が増えている
学生数は増えているものの、労働市場のマクロ環境では求人数そのものも増えていることがわかりました。結果として、学生数の増加以上に全体の求人数が増加していれば、採用側にとってはより厳しい状況となります。かつては塾講師、家庭教師といえば学生にとっては高時給で魅力的な職業でしたが、近年は都心の飲食店では時給1100円以上も珍しくないなど、接客業系のアルバイトでも時給の上昇が続いており、時給の面では相対的に魅力は下がっているものと思われます。
③学生の多様化が進み、アルバイト以外の選択肢が増えている
「塾講師の長期間の定着を図る秘訣とは?②」で大学生の価値観の変化、多様化について述べましたが、これも採用側にとって厳しい採用活動となる要因であると考えられます。10年前、20年前と比べ、学生生活をどう過ごすかの選択肢は明らかに多様化しています。昔であれば大学生のアルバイトといえば塾講師か家庭教師、サークル活動に没頭し、授業はそこそこに、というものがモデルケースであったかと思いますが、現在では社会が大学生に対し多くの機会を提供しています。ボランティア活動、企業インターン、学生を受け入れるNPO団体、はたまた起業する学生も少なくありません。こういった状況の中で、塾講師のアルバイトに学生生活という貴重な時間を投資する行為と捉えると、その競合はとてつもなく増えているのです。絶対的にはそれほど変動はなくても、相対的にみるとその変化は大きいものがあります。結果として、学生数は増えていても塾講師を選択する学生は減少し、採用側にとっては厳しい状況となってしまいます。
4.まとめ
3つの仮説をご紹介しましたが、実際にはこれ以外の要因も含め複合的に様々な要素が絡み合っているのが現実であると思います。18歳人口の減少率を見ると、大学進学率の上昇率が相殺されて大学生数の増加もあと数年では減少傾向になるのではないでしょうか。今後ますます採用側にとっては厳しい状況が続いていくと言えそうです。