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塾講師がプレゼン能力高いって本当か検証してみた

2021/12/17

塾講師スキルとプレゼンスキル

皆様こんにちは!

人材教育コンサルタントの上田です。

塾講師を経験するメリットとして
「プレゼンスキル(人前で話す力)が上がる!」
「人前で話すことに慣れて、就職活動に有利になる!」
と採用サイト等で書かれていることがあります。


しかし、それに対して
「プレゼンスキルが低いから応募するのが怖い」
「本当に人前で話すことができるのか…?」
のように、応募を敬遠する理由にもなりがちです。

 

そこで、今回は
「塾講師にそもそもプレゼンスキルは必須なのか?」
「塾講師を行うと、プレゼンスキルは上がるのか?」
「プレゼンスキルを上げるには、何をすればよいのか?」
の3つの軸で、塾講師スキルとプレゼンスキルの関係性を考えていきたいと思います!

 

プレゼンスキルとは何か

 

最初に、「プレゼンスキル」を考えてみましょう。
この言葉に明確な定義はありません。一般的には「話す技法」全体を総称して呼ばれることが多いですが、ここでは「聴衆に対して情報を提示し、理解・納得を得る行為」として、話を進めていきます。
(読み進めていくと話す力・対話力・課題解決力という3つの用語がでてきますが、いずれもプレゼンスキルに含まれます)

 

さて、皆様はプレゼンがうまい人、と聞くと、だれが思い浮かぶでしょうか。

おそらく、多くの人はスティーブ・ジョブスが出てくるかと思います。
彼はプレゼンの天才と呼ばれ、数々の製品発表プレゼンで聴衆を魅了しました。
そしてその技法は書籍にもなり、数々のベストセラーとなっています。

 

塾講師にプレゼンスキルは必須?

 

では、塾講師に求められるのはジョブズのようなプレゼンスキルでしょうか?
すなわち「多くの聴衆の前で、ストーリーが練られた、感動を与える話が重要」でしょうか?
これは多くの方が直感的に「違う」と感じるでしょう。


では、なぜ違和感があるのでしょうか?
ここはとても重要なポイントですから、しっかり考えてみましょう。
(自分の考えをまとめてから、読み進められることをおススメします)


… 

答えは「対話がないから」です。


確かにジョブズのようなスキルは、予備校講師になりたい方は必須です。
誰もがわかりやすく、時に笑い、時に感動する講義。
まるで映画のように、ずっと印象に残る話し方。
そのために緻密に練り上げられたストーリー展開。
これこそが、予備校に求められる講師像です。

 

例として、東進ハイスクールを考えてみましょう。
東進では生講義ではなく、撮影された講義を使います。
つまり、生徒一人ひとりに合わせて講義を行うことはできません。
だからこそ、長時間見飽きない講義が必要とされているのです。
(余談ですが、林修先生がすぐにTVで人気者になった理由も同様です。人前で多くの人を納得させ、笑わせることができるスキルは、講師も芸人も変わりません)

このプレゼンスキルを「話す力」と定義しておきます。

 

それに対し、塾講師となると必要となるスキルは「話す力」ではありません。


基本的に塾は、学校に比べて少人数指導であることが多くなります。
(5-20人程度の小規模教室型授業、1対2の個別指導、1対1の家庭教師など)
この際、生徒一人ひとりの能力や性格に合わせた授業展開が求められていきます。
なぜなら、それこそが割高になりがちな「少人数教育」の良さであるためです。
仮にジョブズのような話す力があったとして、それを塾講師として行うべきではありません。

 

では、代わりに必要になるスキルは何か?
それは「対話力」と呼ばれる能力です。


対話力とは、きちんと相手の状況を把握し、それに応じて話を進めるスキルのこと。
このように書くと難しく感じるかもしれませんが、実は多くの方は対話力を既に会得されています。
日常生活で、友達と話すときを考えてみてください。
相手の話を聞きながら、それに対して意見を述べたり、感想を話したりしていませんか?
一方的に話をするのではなく、話の中から相手の課題や考え方を知ることはありませんか?
それこそが対話力です。


このように考えれば、多くの人が話す力よりも対話力のほうが高いことがわかるのではないでしょうか。日常生活で「対話力」は常に使っているため、多くの方は「話す力」よりも「対話力」のほうが高いケースがほとんどです。

 

もちろん、プレゼンスキルが全く必要ないわけではありません。
対話の中で浮かび上がってきた課題を、的確に指導する必要があります。
そこで必要になるのが「課題解決力」となってきます。
とはいえ、その性質が一般で考えられているプレゼンスキルとは異なることが理解できたと思います。

  

塾講師をすると、プレゼンスキルは上がるのか?

 

この答えは、プレゼンスキルをどのように定義するのか、という点で答えが異なってきます。


先ほどお話ししたとおり「相手を感動させるようなスキル(話す力)」をプレゼンスキルと考えているのであれば、塾講師をしたからといって能力が向上しないことは自明の理でしょう。


確かにある程度は、人前で物おじせず話す力や論理的に整理して話す力は高まります。
ただ、だからといってプレゼンが得意になる、というわけではありません。


再三お話ししている通り、塾講師に必要なのは「話す力<対話力」であるためです。

 

対話力、すなわち「対話を通じて相手を理解し、納得を得るスキル」もプレゼンスキルの一部である、と考えると、これは塾講師に常に求められる能力になります。

 

よって、必然的に仕事を通じて能力が向上していくことが期待できます。
生徒の多くは、10分ですら黙って問題を解くことができません。
その際、ただ「うるさい!」と一蹴するのではなく、きちんと向き合って話をしてあげる。
その結果として、生徒のモチベーションは少しずつ向上していきます。

 

また、課題解決力もスキルとしては伸びていきます。
塾に通う生徒の多くは「学習に課題を抱えている」から塾に来ているわけです。
しかも、自ら意識を高め、参考書片手に勉強してくれるのであれば、塾に行かせようと親は思いません。


つまり「誰かの手を必要としている」状態で、講師の前に座っているわけです。
この状況を改善するために、講師はいるわけですから、当然課題解決力は向上していきます。

 

しかし!


向上させるためには、一つだけ意識しなければいけないことがあります。


プレゼンスキルを上げるには、何をすればよいのか

 

プレゼンスキル(話す力・対話力・課題解決力)を上げる方法は、極めてシンプル。
それは「毎回の授業を真剣に行う」ということです。


これは当たり前のようでいて、とても難しい課題です。

 

例を挙げてみましょう。



小学5年生の算数を1コマ目に担当。
そのあと、2コマ目に同じ、小学5年生の算数を担当したとします。
さて、話す内容はどこまで変えることができているでしょうか?
多くの講師は「今日は割合と比を教えるぞ~」と思い、生徒の前に立ちます。
そして傾聴しているふりをした「雑談」を行った後、授業を展開する。
蓋を開けてみると、結局板書した内容や解いた問題は全く同じだった…

 

このような経験は、塾講師ならだれもがあると思います。
ですが、これではたして「毎回の授業を真剣に行った」と言えるでしょうか。
単に講義を繰り返しただけでは、残念ながらプレゼンスキルは上がりません。


では、どのように授業を組み立てればスキルが向上していくのでしょうか。
具体的な例をお伝えして、この話を終わりにしたいと思います。
ぜひ、実際の授業で活用してみてください。

 

1、まずは課題を発見する(対話力)

最初に課題が見えない状態で話をしても、生徒には伝わりません。

・何がわからないのか

・なぜわからなくなったのか

・どこまで理解しているのか

といった内容を、生徒と話しながら確認していきます。

ここで重要なのは、話の主導権を講師が握ること。


ただ言葉のキャッチボールをするだけでは、単なる雑談になってしまいます。
講師として、常に的確な問いをしていきましょう。
(ただし、一方的に詰問にならないように注意!)

 

2、伝えるべきメッセージをコンパクトに伝える(話す力)

浮かび上がってきた課題を聞きながら、話す内容を考えます。
基本的に話すべき単元は決まっていますから、あとは

・どこから話し始めるか

・どんな切り口で話すのか

など細かな調整を考えていきましょう。
決して雄弁さは必要ありません。
真摯に、丁寧に(できればゆっくりと)話してあげましょう。

 

3、メッセージの補足を考えながら行う(課題解決力)

話し終わった後、再び問いかけを行います。
(ここでの問いかけは演習問題に代替しても構いません)

 

話している間、受け身だった生徒が再び能動的になるように頭を使わせます。
ここのプロセスをおそろかにすると、満足度が下がります。
必ず生徒の様子を見ながら、もう1回課題を洗い出すように話をしていきましょう。

 

以上がプレゼン力に関する考察でした。
「塾講師=プレゼンスキルが上がる職業である」と言い切れないこと
能動的に努力しないと、プレゼンスキルが向上しないということ
がご理解頂ければ幸いです。最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 

まとめ

講師にプレゼンスキルは必要だが、むしろ対話力が重要である

講義を再生産するだけではプレゼンスキルは向上しない

プレゼンスキルを上げるには、意識的な経験学習サイクルが必須である

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