これだけ!教案(板書案・授業案)の作成テクニック!
講師の皆様こんにちは!
人材教育コンサルタントの上田です。
さて、突然ですが皆様は「教案(板書案・授業案)」をどのように作成されていますか?
意外かもしれませんが、講師同士で教案を見せ合うことはほとんどありません。
最初の研修・模擬授業では教案を含め、チェックすることも多いですが、講師として独り立ちすると、ほとんどお互いが教えあうことはありません。
また、教案の作り方まで聞くのははばかられる…という方も多いでしょう。
そこで、この記事では
・どうやって教案をつくればいいのかわからない
・予定通りに講義をすすめることができないが、どうすればいいか
・教案をブラッシュアップする方法を知りたい
といった悩みを解決するため、教案の作り方に焦点を当ててお伝えしてまいります。
教案を作成する目的
さて、先述の通り、この記事では教案を作成するノウハウをお伝えしていく訳ですが、そもそもどうして教案を作る必要があるのでしょうか。
「授業をやるのだから、当たり前でしょ!」
と思われるかもしれません。
ですが、例えば小4の算数を教える場合、大半の講師は一瞬で解くことができるはずです。
(そもそも、予習しないと問題が解けない!という場合は、要注意。とっさの質問に対応できるようにするためにも、自分の学力を向上させることが必要です)
それでも予習する(=自ら問題を解く)のみならず、教案を作成する理由はどこにあるのでしょうか。少し考えてみてください。
答えは2つあります。
授業進行を円滑化し、講義内での教え忘れを防ぐ
自らの授業を振り返り、講師力を向上させるため
確かに、新人講師の場合はそもそも教案を作成しないと、授業を行うことは難しいでしょう。
ですから教案はまさに「模範解答」としての役割を持つことになります。
ココに書いてある内容を板書し、ココに書いてあることを読めば、とりあえず授業を成立させることができる。
これが教案作成の大きなメリットであることは疑う余地はありません。
また、ベテラン講師であってもうっかり話さなければならないことを忘れてしまうことがあります。
その際に教案があれば、教え忘れにすぐに気づくことができます。
しかし、もう1点重要なことがあります。
それは「自分の授業力を向上させる」ということです。
学習指導要領をはじめ、必要とされる学力や、入試で問われる出題方法は毎年変化していきます。また、生徒に通じる言葉も、時代とともに変化していきます。
(ちなみに、私は都内で教えていたとき、自動車を持っていないご家庭があることに驚きました。それ以来、自動車を使ったたとえは、都内では使わないようにしています)
そこで、その年に体験した気づきをまとめ、翌年(あるいは次回)の授業に反映させるために、教案の更新が必須となります。
この蓄積こそが、講師としての力量を向上させていくのです。
トライ&エラーを繰り返し、その結果を積み上げていくことが、講師力向上に必要不可欠な行動であることを強く認識してください。
具体的な教案作成のプロセス
まず全体像を明示してから、一つひとつ個別にみていきましょう。
1,教える・伝える内容を絞る
2,絞った内容を理解させるために必要な情報を洗い出す
3,板書案を作成する
4,実際に書きながら模擬授業をやってみる
5,気になった点を修正する
1,教える・伝える内容を絞る
教える内容を絞ることは、教案作成の大原則です。
なぜなら、短い授業時間内で伝えられる量は限られており、その中で「どこが大事なのか」「どこまで理解させるべきなのか」といった視点を持つ必要がある為です。
具体的には5分で話せる量を1テーマとして、最大3つ、その日のうちに必ず伝える必要があるテーマを精査します。
例)英語の仮定法なら
・仮定法と直接法の違い
・ifを使った仮定法表現
・wishを使った仮定法表現
「そういわれても絞り方がわからない…どれも大事そうに見える…」
その気持ち、とてもわかります。
そこで、いくつかテクニックをご紹介します。
・テキストのテーマを使う
最もとっつきやすく、外さない絞り方になります。
教材の冒頭には「本日の学習のポイント」「focus」などの表現で、簡潔に要点がまとめられていることが多いです。
これをそのままテーマとして使うのは、生徒が宿題をやる際に大きな助けとなります。
なお、そのまま抜きうつすのではなく、一度自分の言葉で解釈してからまとめに使うと、より生徒の理解を深めることができます。
初めて担当する場合はまずこの手法を取り入れてみてください。
ただし欠点もあります。それは、無理やり1つのテーマの要点を絞るあまり、連続性を生徒が意識できない、という点です。
歴史の教科書を見ていただけるとイメージしやすいのですので、一緒に考えてみましょう。
仮に江戸時代を教える場合、多くのテキストにおいて、「江戸時代とは…」というまとめ方をされてします。
もちろん、それはテキスト構成上仕方ないのですが、重要なのは「なぜ徳川家康が天下を取ることができたのか」や「そもそもどうして天下を取ることが有利に働くのか」「安土桃山時代と比較して、最も違う点は何か」といった、ストーリーです。
(知人講師は、これをどこまでワクワク楽しく、家に帰って続きをwikipediaで調べたくなるように伝えるか、とても腐心していました)
これは大なり小なり、どの科目でも当てはまるものです。
ぜひ、このスタンダードなやり方が必ずしも万能ではないことをご理解ください。
・次回の小テストの内容を使う
授業に対する集中力を高めたいときに使うと効果的なテクニックです。
多くの塾では、前に倣った内容を復習するテストを実施していると思います。
そのテストの問題を予め確認したうえで、要点を絞ってあげます。
すると、授業をきちんと受けている生徒は高得点になりますから、生徒のモチベーションに直結していきます。
ここでさらに「先生が話した内容がしっかり出てるよね?だから、授業をきちんと聞いているとよい点が取れるんだよ!」と強調してあげると、授業に対する姿勢がよくなります。
(もし小テストがない場合は、簡単に自作してあげるとよいでしょう)
但し、使いすぎは禁物です。
なぜなら、授業で触れていない・小テストに出ていない内容を学習しなくなる恐れがあるうえ、複雑な問題に対処する力が身につかなくなる可能性があるためです。
・同じ単元が次に出てくるときを確認する
中級者向けの絞り方です。
どの塾のテキストでも、1回しか出てこない単元はほとんどありません。
例えば小学理科の豆電球というテーマであれば
豆電球のつくり→直列回路→並列回路→複雑な回路→電気抵抗・電熱線→…
と似た内容を繰り返す機会がたくさんあります。
そして、次の授業を受け持つのが自分であるとは限りません。
だからこそ、次回の単元を行う先生が最低限知っておいてほしい、と感じるところをしっかり教えてあげると、次の授業を受け持つ先生が非常に楽になります。
ぜひ、先を見据えた授業を展開するためのテクニックとして覚えておきましょう。
・どこを教えれば、残りは自力で学習できるのかを考える
先ほど同様、中級者向けの絞り方になります。
多くの塾では、演習は自力で家に帰ってやってもらうことになります。
その際に考えたいのが、「○○を理解しないと、演習問題に全く歯が立たない」という視点。
皆様も生徒だった時を考えてみればわかるのですが、授業を受けて、家に帰ってテキストを開いて、最初の問題から解けないと…やる気はなくなりますよね?
このことを防ぐために、演習に必要な知識は必ず教えるようにします。
すると生徒が自ら学習してくれるようになるでしょう。
算数なら例題・英語なら例文・国語なら文法知識・社会なら用語確認・理科なら原理説明がそれにあたるでしょう。
・過去問から考える
ベテラン向けの絞り方です。
数年以上の経験をもつベテラン講師になると、受験生を担当した経験があるはずです。
その時の知見を元に考えられると、最終目標(=受験)に沿った授業を組み立てることができます。
新人講師の方には難しいとは思いますが、今教えている内容が将来どのような形で出てくるのか、ということを理解することは、非常に有用です。
講師としてレベルアップしたいなら、ぜひチャレンジしてみてください。
講義内容の絞り方だけでも、これだけ種類があることに驚いたかもしれませんね。
(実は掲載していないテクニックもまだまだあるのですが、今回は全科目・全年齢に使える代表的な方法だけ取り上げました)
ですが、土台である絞り込みがしっかりしていないとよい教案は作れません。
ご紹介した内容を組み合わせて、きちんと内容を絞りましょう。
次の
2,絞った内容を理解させるために必要な情報を洗い出す
から先の内容は、次の記事で扱ってまいります。
まとめ
教案作成の目的は「授業のヌケモレを防ぐ」「自身のスキルアップ」の2点である
最初に行うのは、教える内容を絞ること。その方法は複数あり、組み合わせるとよい