【数学講師必見】しっかりとした授業準備のコツ!:問題の取捨選択
問題の取捨選択が大切
【主な対象】塾講師になりたての方.
塾講師の方には授業で使用する先生用のテキストが渡されることと思います.塾講師になり立ての方は,初めのうちはどの問題を扱えばよいのか.ここで悩むかと思います.もしくは,すべての問題を解かないといけない.こう思っている方もいらっしゃるかと思います.
結論から言うとすべての問題を扱う必要はありません.
ではどういう問題をどのようにして選べばよいのでしょうか?
この記事では問題の選び方について私の経験や塾講師になりたての頃に頂いたアドバイスをまとめました.
※なお,以前の記事で教育実習に行きたい方向けに記事を書きました.そこでも問題の取捨選択が大切であることを述べましたが,この記事はその具体的な方法について書いています.
前回記事:講師業務と教育実習【公立中学:数学】~共通点と相違点から利点まで~
なぜ事前に問題を取捨選択しておくのか?
そもそもなぜ問題を事前に取捨選択しておくことが大切なのでしょうか?理由は以下の2点にあると筆者は考えてます.
- 授業効率の向上が期待される.
- 習熟度の確認ができる.
授業効率の向上が期待される
例えば集団授業を想定してみます.塾講師になり立ての読者の皆さんが授業中にやることを簡単に振り返ると以下のようになります.
さぁ,授業が始まりました.
板書内容を書いたノートを確認.
ホワイトボードに板書します.
ホワイトボードの板書を元に解説.
その間も生徒の様子を見て,解説の理解度を確認.
問題の解説が終わったら,次に問題演習です.
問題演習をしている間も生徒の机の間を歩いて生徒の様子をみながら,適宜,アドバイス.
終わったら答え合わせ.
必要な問題は解説を入れます.
授業のまとめを行う.
最後に宿題を出して授業は終了です.
いかがですか?こうしてみると,授業中にやることは予想以上に多いのではないでしょうか?
したがって,授業中に初見の問題を取捨選択する余裕はないのではないでしょうか?
そればかりか,なり立ての頃はノートや生徒,ホワイトボードなど視線もいろいろなところに向けながら解説をします.
問題の週者選択以前に授業中は思っている以上に余裕がありません.
演習の直前にこの問題を解いてと生徒に支持を与えるためにも,問題を事前に取捨選択しておかないと,余計な空白時間を作ってしまうことになります.
習熟度確認ができる
授業中には生徒の理解度を確認するために,演習の時間を設けることがあると思います.
この際に,生徒に解いてもらう問題を戦略的に選択しておくことで,その場で生徒がどこで躓いているのか,生徒の様子を見ながら確認することができます.
このことは宿題も同様です.
では,どのように問題を取捨選択すればよいのでしょうか?
具体的な方法
準備の準備:解説は一通り読む
全体像を把握
特に塾講師になり立ての頃は,事前に授業で扱う範囲の解説を一通り読み,自分で解いておく必要があります.
これから授業で扱う範囲の全体像を把握したうえで,どういう順番で解説をするのが良いのか.このことを考える必要があるからです.そして,余裕があれば,単元など,もう少し大きな範囲で区切ってみておくことをお勧めします.
ポイントを押さえる
「最低限,今日の授業ではこれだけはわかってほしい」
これを定めるにはいくつか方法がありますが,塾講師になり立ての方に関してはもっともわかり易い指標があります.それは,
この程度の問題を解けるようになってもらいたい.
このように問題の難易度をベースに展開するのが単純な方法の1つではないでしょうか.
そして,定めた目標の問題を解くために,次はもう少し細かい範囲で必要な基本事項を押さえていきます.
このポイントを押さえることが問題の取捨選択をする際に重要になってきます.
ポイントを中心に問題を取捨選択するからです.
カテゴリごとに問題を色分け
さて,ポイントを押さえたら今度はそのポイントを元に問題集の問題をカテゴリ分けします.
カテゴリ分け
筆者は問題を以下の4つにカテゴリ分けしています.
- 解説に使用する問題
- 演習に使用する問題
- 宿題として出す問題
- 授業では扱わない問題
そして,そのカテゴリごとに色分けしておくことをお勧めします.
色分けをする理由
色分けをする理由は,授業中に余裕がないからです.
生徒に演習問題や宿題を出す際に,一目見てわかるようになり,余計な時間を使わずに済みます.
また,色分けをしておくことでそのページの宿題や問題演習の占める割合が一目でわかります.
例えば,赤,青,緑の3色でわけていたら,この色の分量でなんとなく,そのページの問題の分布がわかります.少し今回は宿題が多かったかな,などのように後の目安にもなりますので,色分けをしておくことは少しめんどくさいかもしれませんが,自身の業務スキルの向上のためには,色分けをしておいたほうがよいと思います.
ノートの提出
問題演習や宿題用のノートを授業とは別に用意させておきます.
このノートを定期的にチェックすると,生徒がどの問題で間違えたのかが分かるようになります.
また,ノートを定期的に提出させることは生徒にとっても良い緊張感を与えることもできます.
授業の合間などを利用して回収したノートをチェックすると,次回の授業展開を考える材料にもなります.
問題例
ここまで方法について書いてきましたが,あまりイメージがわかない方もいらっしゃると思います.次は具体的にどのようにカテゴリを分けるのか,その具体例をここでは紹介します.ここでは方程式の単元を例に,問題のカテゴリ分けについて書いていきます.
問題例
例えばテキストには以下の例題が書いてあったとしましょう.
例題1
(1)3X=-9
3X*(1/3)=-9*(1/3)←両辺に(1/3)をかける
X=-3.
(2)(1/3)X=1
(1/3)X*3=1*3←両辺に3をかける
X=3
この問題を解説済という前提でお話を進めていきたいと思います.
さて,解説に使用する問題はさらに以下の2つに分けられると思います.
- テキストについている解説用の例題
- 解説が必要な問題
テキストについている解説用の例題は最初にあげたような例です.これは問題ないかと思います.
ですので,今回はこのほかに解説が必要であると思われる問題について扱うことにします.
まず,関連問題としてテキストに以下の問題が掲載されていたとします.
1.次の方程式を解きなさい.
(1)2X=4
(2)-4X=20
(3)(1/2)X=1
(4)-(1/3)X=2
(5)3X=5
(6)-2X=3
これらを「1.解説に使用する問題」,「2.演習に使用する問題」,「3.宿題として出す問題」に分類してみます.
まず,回答例を見てみましょう.
<回答例>
(1)2X=4
2X=4
2X*(1/2)=4*(1/2)
X=2
(2)-4X=20
-4X=20
-4X*(1/4)=20*(1/4)
-X=5
-X*(-1)=5*(-1)
X=-5
(3)(1/2)X=1
(1/2)X=1
(1/2)X*2=1*2
X=2
(4)-(1/3)X=2
-(1/3)X=2
-(1/3)X*3=2*3
-X=6
-X*(-1)=6*(-1)
X=-6
(5)3X=5
3X=5
3X*(1/3)=5*(1/3)
X=5/3
(6)-2X=3
-2X=3
-2X*(1/2)=3*(1/2)
-X=3/2
-X*(-1)=3/2*(-1)
X=-3/2
この解説を元に,3つに分類をしていきます.
1.解説に使用する問題.
例題のほかに解説が必要であると考えられる問題を選びます.
(5).
理由:答えが分数になる問題だから.
2.演習に使用する問題
(1),(2),(3)
理由:例題と同様,もしくは例題よりも簡単(=符号の入れ替えが発生しない)な問題だから.
3.宿題として出す問題
(4),(6)
理由:(4)は符号の入れ替えの計算が例題と若干異なるから.
(6)は解説に使用した問題,演習に使用した問題の複合問題.これを一人で解くことができるか.
4.授業では扱わない問題
通常,基本問題とは別に応用問題が用意されています.
例えば,今一度確認ですが,現在,想定している生徒は学校の補習的な用途で塾に通っている生徒,つまりは方程式の計算事態が危うい生徒としましょう.
そして,応用問題として以下の問題が掲載されているとします.
<応用問題>
ある数Xの3倍は元の数に4を加えた数に等しい.ある数を求めよ.
方程式が解けるかどうか危うい生徒にこのような問題を全員に解かせるよりは,問題演習の時間で暇を持て余している生徒に解いてもらう問題にするほうがよいと思います.
色分け
さて,このように問題を選び,マーカーやペンなどで色を付けておきます.
私は以下のようにしておきます.
- 解説に使用する問題:赤
- 演習に使用する問題:青
- 宿題として出す問題:緑
- 授業では扱わない問題:無印
4.を無印にしておく理由は定期試験前などのタイミングで解説する必要性が出てきたとき,この無印の問題をさらに1~3に分けられるようにしておくためです.
まとめ~問題を取捨選択することの利点~
以上のように問題を分類し,色分け,そしてノート提出をしてもらうことは以下の効果が期待されることと思います.
授業の質と効率の向上
あらかじめ問題を分類しておくことで,今回は以下のことがわかります.
問題演習の時間は講師の先生は机間巡視といって,机の間を歩いて生徒の様子を確認します.
この際に,一目でわかることがわかります.
(1)が解けていて(2)を間違えている生徒は,符号の入れ替えでミスをしている可能性が高い.
(3)を間違えている生徒は分数が混ざった方程式が苦手な可能性が高い.
このように各問題のポイントを事前に抑え,色分けをしておくことで,問題演習の時間を使って生徒の理解度を確認することができます.
このことから,解説の時間に重点的に解説する問題を選ぶことができます.
そして,全員がこの3問に問題がなければ,解説はせずに,どんどん先に進んでいくことができるわけです.
生徒からすると,わかっている問題に関して改めて解説されることは,暇でしょうがない時間になってしまいます.こうすることで授業の質と効率の向上が期待されるわけです.
今後の授業展開の参考になる
さらに,次の授業冒頭の復習の時間に,上記を反映させることができます.
分数が混ざった計算を間違えている生徒が多ければその問題の復習を少し多めに時間をとったほうがよさそうです.
こんな風に考えると授業計画を立てる材料が増えていくわけです.
そして,宿題を提出させて(4)と(6)の問題を解けるかどうか確認します.
(4)が解けていれば,その授業の解説は理解できており,(6)まで解けていれば問題ないでしょう.
ですので,初めの話に戻りますが,この授業の目標は(6)が解けるようになること.これを定めることになります.
ここを軸に授業展開を考えていくことになります.
生徒の理解度に影響
どの問題をどのタイミングで生徒に与えるかは非常に重要である事項です.担当している生徒にとって難しすぎる問題は生徒によってはやる気をそいでしまいますし,塾に通っていてもわからないという印象を与えてしまいます.
飛ばしておいた問題もただ単に放置するのではなく,試験対策の時間にやるなど,適切なタイミングを考えておきましょう.
以上のように,問題を取捨選択しておくことは授業効率と質の向上には必要な準備であると思います.