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理科の最強指導法(6) -地学編― 「流れる水のはたらきと川のでき方」

小学生

2021/12/17

地学の最強指導法!「川のでき方」を伝えるには

講師の皆様こんにちは!
さっそく前回に引き続き、川のでき方をどう教えるべきか、考えていきましょう。

前回の記事(地学の教え方):http://www.juku.st/info/entry/981

特に生徒がやってしまう失敗

上流=侵食作用、中流=運搬作用、下流=堆積作用と丸暗記してしまっている

下流を「かりゅう」ではなく「げりゅう」と読む

本テーマは、学校では小学校6年生に扱う内容ですが、多くの塾では小4~5に扱います。
そのため、まだ基礎的な数学力・国語力が身についていない生徒もいることに留意して、授業を進めていく必要があります。

 

授業で伝えるべきポイント及び伝え方

“水のはたらき”を最初に理解させる

まず、土砂が粘土・砂・小石に分かれることを理解していることを確認します。
(これは前回の記事を参考にして下さい)
そのうえで、最初に教える内容は「水のはたらき」です。

水というのは、身近でありながら化学的には大変特殊な物質です。

・数多くの物質を多量に溶かすことできる
(そのため、自然界にはほとんど純粋な水は存在しません)
・比熱が大きい
・低温にしたからといって、必ずしも収縮するわけではない
(もっとも密度が大きくなるのは4度のときです)

これだけ不思議な性質をもっていることを、まず生徒と共有しましょう。

次に、水のはたらきとして


侵食作用…土地を削る働き
運搬作用…削った土砂を運ぶ働き
堆積作用…運んだ土砂が積もる働き


の3つがあることを確実に押さえましょう。
そして、それぞれがどのような状況で盛んになるのか、生徒に考えさせてみます。
例として「先生は水の力で山を壊したいと思うんだ!」と発言すると、「えーそれは無理でしょ~」と反応してくれます。
ここで「でも、砂場で遊んで作った山は、勝手に平らになっていくよね。あとは、海で一生懸命穴をほっても、結局埋もれちゃうじゃない?だから山は削れるよ!」と話してあげると、のちに出てくる“上流での浸食作用”という考え方が理解しやすくなります。

さて、ここから生徒に質問です。
「どうすれば砂場の山を早くなくせると思う?」
「どんな天気だと、砂場の山は崩れちゃうのかな?」
と質問を投げかけていくことで「晴れているとき=あまり土砂が移動しない」「雨の時=土砂が移動する」ということを、イメージできるようにしていきます。
また、「じゃあ、晴れているだけの場所があったら、その地形は永遠に変わらないのかな?」と聞いてみてください。ここはとても重要です。
この問いをすることにより、水以外の働きでも、土砂が動くことを自ら発見できます。
正解はもちろん×。
なぜなら、風の働きがあるからですね。

川の上流~下流での様子を、実感として理解させる

ここで話を川に振っていきます。
川の絵を板書し、そこでそれぞれの場所で何が起こるのかを考えさせていきましょう。
なお、生徒によっては、既に知識として
上流=侵食作用がさかん
中流=運搬作用がさかん
下流=堆積作用がさかん
と覚えてしまっている子がいます。
これを覚えている子は得意げに「先生、そんなこと知ってるよ!」と言ってきます。
実はこのままだと基本問題を解くことはできても、入試に立ち向かうことは難しくなります。
そこで、このように聞き返しましょう。
「よく知ってるね!じゃあ上流では他の作用はどうなってるの?」

 

確かに、生徒の発言は教科書に載っている、正しいものです。
しかし実際には、侵食作用は中流・下流でも起こりますし、上流は侵食のみならず運搬作用もさかんです。(でなければ、大きな石が中流に流れてくることはありません)
つまり、場所によって働きが“さかん”であるだけであり、どの地点においても水の働きは起こっていることを理解させましょう。

また、3作用を決める要因は“川の速さ””水量”“川の形”の3つであることを理解させてください。(意外とテキストには掲載されていないので、板書してあげるとよいでしょう)
そして、それぞれの要因がどのように決まるのか、そしてその結果としてどの作用が盛んになるのかを考えさせていきます。

・川の速さ

川の速さが盛んになるのは、川の傾き(=角度)が原因です。
また、一時的に水量が増えた場合(洪水など)にも、同じように速度が速くなることがあります。
速度が速い場合、侵食作用・運搬作用が大きくなります。
逆に速度が遅くなると、堆積作用がさかんになります。

・水量

水量は上流ほど少なく、下流になるにつれて多くなっていきます。
また、降雨など自然状況により、最も変化しやすい条件です。
水量が多くなると、ある一定度までは侵食作用・運搬作用を大きくする働きがありますが、それ以上になると3作用に影響を及ぼすことはありません。

・川の形

川はまっすぐに流れている川と曲がって流れている川があり、まっすぐの場合は中心ほど流れが速くなります。
曲がっている場合は外側のほうが早く、内側のほうが遅くなります。
なお、ここで内側は川原ができますが、ここでは堆積作用がさかんで、土や小石のような粒の大きなものを中心に積もることになります。
対して外側では、がけとなり川底が深くなります。
なお、コンクリートで固められた川だと、川底が解答通りにならないことも伝えるとよいでしょう。
その際、雨をためる側溝を見て確認してみよう!というと、より身近な現象として感じることができると思います。


最後に注意点を。
石が下流になるほど小さくなることは、侵食作用だけで起こるわけではありません。
実際には風化作用と、石同士がぶつかることにより小石→砂という現象が起こります。
ここは間違えやすい点ですので、確実に伝えましょう。

川の地形の名前

これはおまけとして扱う程度で構いません。(社会でも同様に扱うため)
黒板に一気に表としてまとめて、次回までに覚えてくるように指示をすればよいでしょう。

・V字谷

断面の形がVの字に似ているため名づけられた、深い谷のこと。川の上流によくみられる。
なお、川の速度が遅くなってくると、U字谷に変化し、徐々に幅広になっていく。
竜神峡、龍王峡・瀬戸合峡など、関東でも見ることができる場所はたくさんある。
侵食作用により起こる。

・扇状地

扇を広げたような形の土地で、大粒の砂を中心に堆積作用がはたらく場所。
山から平地に出る部分(ちょうど上流から中流になる部分)に多く見られる。
そのため、果樹園などによく利用されている。(根が腐りにくいため)
盆地(甲府盆地や山形盆地など)によく見られる。
堆積作用により起こる。

・三日月湖

川のそばにある、三日月のような湖。主に中流付近でできることが多い。
川が大きく蛇行した後、大雨などで一気に水量が増えて別の川ができたとき、取り残されてできる。利根川によく見られる。

・三角州

川が海へそそぐあたりにできる、三角形をした平地。主に下流付近で起こることが多い。
日本では広島市が代表的だが、関東ではあまり見ることができない。
堆積作用により起こる。

 

 

 

水同様、「石」も循環していることを知る 

さて、ここまで石の性質から川のようすまでを一気に扱ってきました。
生徒たちには、ただここを「知識として覚える」分野ではなく、身近で奥深い分野だと伝えることができれば、あとは勝手に自由研究をしてくれます。

最後にこのような言葉をかけてあげるとよいでしょう。
「僕たちが当たり前だと思っている地面、水。そこには、長いながーい歴史があり、何億年の生命が生まれては死に、生まれては死に、を繰り返した跡が残っているんだ。そのことを考えながら、今日の帰り道、地面を見てごらん。何か感じるものがあるはずだよ」

なお、演習をする時間がある場合は、とにかく川を立体的に考えさせる訓練をしてください。
川を平面ととらえている限り、この後出てくる地層の考え方とリンクさせることが難しくなってしまいます。
(これは算数の立体図形切断の問題対応力を向上させることにもつながります)

具体的には、先生が黒板に大きく上流~下流までを表した川を記述し、数か所に線を引きます。
そして、線を引いた部分の断面図を、それぞれノートに書かせてみることがよいでしょう。

また、宿題ノートには、設問の答えだけでなく、川底の様子を図示させることを指示すれば、より多くの気づきを与えることができます。
ぜひ、試してみてください。

次回はいよいよ、地層のでき方について話を進めていきます。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

まとめ

水中を縦・横に立体的に切断して考える訓練をさせる

侵食・運搬・堆積作用はある一定地点で起こるのではなく、水の働きとしてどこでも起こることを理解させる

川の様子はあくまでも一般化されたものであることを知ってもらう

 

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