はじめに
今回のテーマは「和と差」です。
和差算、差集め算、いもづる算など様々な「●●算」の問題を取り扱っていきます。算数の範囲なので○や□などの記号を用いる解法を主に紹介していきますが、文字式xを用いて解くとどのようになるのかということやマメ知識も紹介していきます。
問題1(何算か、ということよりも大切なこと)
男女合わせて60人があるダンスパーティーに参加しました。パーティー終了後、男性参加者全員に何人の女性とダンスをしたかをたずねたところ、1番少なかった田中君は「僕は、7人の女性とおどったよ。」と答えました。次にたずねた佐藤君は「僕は、田中君よりも1人多くの女性とおどったよ」と答え、その次の鈴木君も「僕は、佐藤君よりも1人多くの女性と踊ったよ」と、それぞれが前の人よりも1人多い人数とおどったと答えました。また、最後にたずねた渡辺君は「僕は全員の女性とおどったよ」と答えました。このパーティーに参加した男性の人数は何人か答えなさい。( 立命館守山・後期)
解答
1 | 2 | 3 | ・・・ | ○ |
7 | 8 | 9 | ・・・ | □ |
男性を○人、女性を□人とします。上の表は、男性を順番に並べて、
その下におどった女性の人数を書いたものです。表から分かるように□-○は常に一定で、ここから□ー○=6ということがわかります。また、□は男子の総数、○は女子の総数を表していることから□+○=60ということがわかり、和差算を使うことができ。○=(60-6)÷2 = 27(人) となります。
ポイント
表をうまく使う
最初の問題は文章も長く、田中君、佐藤君、鈴木君、と1人1人の名前に注目してしまい、生徒は混乱しやすい問題です。
あくまでも男性の人数を聞かれているということを強調しましょう。
聞かれていることに常に丸をつける癖をつけさせるなどするとよいでしょう。
表を書いてしまえば○と□の関係にはすぐ気づくはずです。
算数には過不足算、つるかめ算など多くの呼び名がありますが、
呼び名を覚えることよりも解法を覚えることが先決です。
中学数学を用いてみると…
男性の人数をx(人)とする場合、女性の人数は(60-x)人と表すことができ、x番目の男性である渡辺君が(x+6)人と踊ったことが分かるので、x+6 = 60-x というxに関する方程式を立てることができ、x=27が求められます。
このように中学数学を用いる場合でも□と○の関係が分かっていなければ立式することができません。改めて表の重要性が分かると思います。
問題2(差集め算ー算数のやり方が数学のやり方よりも楽なパターン)
男子よりも女子のほうが2人多い学級でたくさんのビー玉を分けます。男子に9個ずつ、女子に7個ずつ配ると9個余り、男子に4個ずつ、女子に6個ずつ配ると89個余ります。この学級の人数は何人ですか(明治大付中野八王子、改題)
解答
女子の人数を2人減らし、男女同数にします。
このとき、男子9固、女子7個・・・9+7×2=23個余る 男子4個、女子6個・・・89+6×2=101個余る となります。
さらに、男女1人ずつを組にすると、1組に16個ずつ・・・23個余る 1組に10個ずつ・・・101個余る となります。
あとは差集め算から、組の数は(101-23)÷(16-10) = 13(組) よって、学級の人数は 2×13+2 = 28(人)と求められます。
ちなみに、学級の人数が求められたので、ビー玉の個数は13×9+15×7+9=231(個)と求められます。
ポイント
基本の形にもちこむ
差集め算の基本の形は人数を揃えることです。
今回の解答では男子に揃えましたが、もちろん女子に揃えても問題ありません。最終的な答えは同じです。
人数を同じにして組にすることで、組ごとの差が余った個数の差となり、計算することができます。
算数から少し脱線しますが、実はこの問題は、
中学生に1次方程式を立てさせる練習問題としてもいい問題です。
方程式の基本は「分からないものをxとおく」が基本なのですが、この問題では少し工夫が必要です。
もし学級の人数をx(人)と置いた場合、男子と女子をxを使ってどう表すか大半の生徒は悩みます。
結論から言えば、x/2-1(人)が男子で、x/2+1(人)が女子となりますが、分数が出てきてしまいますし、計算ミスが出る可能性が高くなるのでこの解法はオススメしません。
ポイントは「計算しやすいようにxを設定する」です。
今回の場合は男子の人数をx人とすることで女子の人数はx+2人、学級の人数はx+(x+2)=2x+2人となります。
あとはビー玉の個数に関する1次方程式を立てることで、9x+7(x+2)+9 = 4x+6(x+2)+89 となり、xを求めることができます。
ここで経験上半分ぐらいの生徒はxを求めて満足するので、求めるものは「学級の人数」ということを教え、生徒が自分で気づくように誘導しましょう。
数学の話が少し長くなりましたが、このように文字を使うとややこしくなる文章題もあります。~算にこだわらずに文字を使って小学生に解法を教えようと思ってもなかなか難しい一面があるので講師のみなさんは注意して授業を行ってください。
問題3(いもづる算ー過程よりも結果を重視)
1個40円のアメAと1個60円のアメBを買います。代金がちょうど500円になる買い方は何通りありますか。
解答
答えの1つを探すと、40×11+60×1=500 より、Aを11個、Bを1個という買い方があることが分かる。
A | 2 | 5 | 8 | 11 |
B | 7 | 5 | 3 | 1 |
ここからAを増やすと代金が500円を超えるので減らすことを考える。
40と60の最小公倍数が120であることからAを3個減らし、Bを2個増やすことで代金は500円のままである。これを繰り返すことで右の表のようになる。これ以上Aを減らすことはできないので、答えは表から4通りである。
ポイント
過程よりも答え
例えば解答で示した「最小公倍数が120であることから」Aを3個減らしてもBを2個増やせば金額が変わらないという理由付けを記述できる小学生はほとんどいません。
おそらく実際に計算してみて発見するはずです。生徒の答案を見る場合も、答えを導けているかに重点を置くべきです。
表がかかれていなくても、それらしい計算痕跡があれば問題ありません。
厳密性を求めるのは数学です。
答えへの直観力を重視して指導するべきです。
計算過程が怪しい場合は直接聞いてみることをオススメします。
分かっていて答案に書けていないのであればさほど気にする必要はありません。適当な理由付けで答えが偶然合ってしまった場合には指摘が必要です。
また、この問題の場合はAをa個、Bをb個と文字でおいても40a+60b=500 という式が一つ導かれるだけで、文字2つの場合は連立方程式でないと解は一つに定まらない、かといって式ひとつだとどうするのか、と中学数学を用いようとしても生徒たちには解決の糸口は見えてこないはずです。
厳密な解答を作る点で数学が優れている一方で、答えを見つける粘り強さを鍛えるという観点では算数が優れているともいえるでしょう。
問題4(図示をすることの重要性)
算数のテストが何回か行われました。太朗君は全てのテストを受験して、全テストの平均点は64.5点でした。また、花子さんは2回欠席してしまいましたが、受験したテストの平均点が76点だったので、合計点は太朗君よりも32点高くなりました。このテストは全部で何回行われましたか。(専修大松戸、改題)
解答
平均点、テストの回数を図で表すと右のようになる。図のアの部分からイの部分を差し引くと2人の点差に等しくなる。イ=64.5×2=129(点)なので ア=イ+32=161(点) である。よって花子さんの受験回数□回は161÷(76-64.5) = 14(回) 以上より、答えは14+2=16(回)
ポイント
面積図をかくこと
算数の場合、どのような解き方をするか、というところに問題を解けるかどうかが決まってきます。
生徒は図をわざわざかくことを面倒くさがることが多いです。
しかし、図をかくことは問題文を正確に把握する助けになるだけでなく計算量が少なくなる場合もあります。
繰り返し教えて図で解かせるようにしましょう。この面積図はたてに平均点、横に回数をとった長方形になります。
「この長方形の面積の値は何を表しているか?」と問いかけ、「合計点」という答えが返ってくるかどうかで生徒は図の仕組み、合計と平均の関係を理解できているか確認することができます。
また、この面積図は特に回数が不明である場合に有効です。
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