花のつくりとはたらきを教えるテクニックとは?
講師の皆様こんにちは!
前回は植物の教え方について、概論をお伝えいたしましたね。
(参考:http://www.juku.st/info/entry/1177)
今回は最初に「花」について詳しく扱ってまいります。
特に生徒がやってしまう失敗例
花=花びらがある、と思っている
名前だけ丸暗記して、役割を理解しようとしない気合を入れて覚えていない
この単元は全て丸暗記、と思われがちですが、実験考察問題では”役割”も知らないと、解けない問題も多く見受けられます。
授業ではそれぞれの部分がどのような意義を持っているのか、教えてあげるようにしましょう。
また、近年は少なくなりましたが、おしべ・めしべ等の本数を答えさせる問題も根強く出題されています。
中途半端に覚えているだけでは、適当に答えを書いているのとあまり変わりません。
大変ではありますが、受験前にしっかり「覚えきる」ように指導しましょう。
授業でのポイント・伝えるテクニック
花の4要素は絶対に確認する
そもそも、花はなんのためにあるのか、を最初に考えさせます。
生徒の多くは「花=花弁がある、芽の先につくもの」程度の理解であることが多いですが、これは明らかに間違っています。
(もしそのようなことを言う生徒がいたら「でも、稲にも花があるんだよ?でも、花弁はないよね?」と質問してあげましょう。)
花とは、子孫を残すための生殖器官です。
子孫を有性生殖するために、おしべとめしべ、この2つの器官を核として、がく・花びらにより構成されています。(不完全花と呼ばれる、一部が欠損しているものもありますが、ここでは扱いません)
それぞれの特徴は以下の通りです。
めしべ
柱頭・花柱・子房の3つからできています。
柱頭は花粉が付くところで、一般的にギザギザしていたり、べたべたしています。
これはついた花粉を離れにくくするためです。
花柱は花粉から伸びた花粉管が通る部分を指しますが、ここはやや難易度が高いです。
(花粉管の動きを説明しようとすると、高校受験レベルになってしまうため)
ローレベルでは単に「めしべの中心」と教えてしまってもよいでしょう。
子房は将来果実になる部分で、中に将来種子になる“胚珠”が含まれています。
生徒はよくこの2つを混同してしまうので、注意してください。
おしべ
おしべはやくと花糸からできています。
やくは袋状になっていて、その中で花粉が作られています。
花糸はやくを支え、高い場所に(柱頭付近まで)配置するためにあります。
がく
植物の一番外側にあるものです。
役割は植物により異なりますが、一般的に
・風や雨に対して、花全体を支える
・蜜を吸いに来た昆虫などの重さを支える
・つぼみの際に、保護すると考えられています。(諸説ありますので、どれが正しいとは言い切れません)
がくの変形として、たんぽぽの綿毛・ほおずきの果実を包んでいる赤い袋状のもの・アジサイの花のようにみえるもの等があります。ハイレベルなら必ず触れるようにしておきましょう。
やや高度ながら、受験対策上注意するべきところ
次に、4要素以外に重要な部分を扱っていきます。
みつせんの位置
みつせんとは、アブラナなどによく見られる、花の蜜を作る器官を指します。
なお、これは一般的に植物体の奥にあります。
その理由は「蜜を舐めようとする昆虫に、花の奥深くまで入り込んでほしい」ためです。
奥深くに入り込もうとすることにより、昆虫の体表面に花粉がたくさんつくことになります。
花が目立つ理由
花びらを大きく、鮮やかな色にしているのは「虫媒花」です。
これは昆虫をおびき寄せ、受粉を促進させるためです。
つまり、言い換えると植物に来てもらう必要がない花=風媒花は花弁がないものも多いです。
言い換えについては平易ですので、生徒に考えて答えてもらうとよいでしょう。
花のつくりの順番
中心から順番にめしべ、おしべ、花びら、がくとなっています。
これは「植物にとって重要なものから順番に、内側に並んでいるんだよ」と伝えるとわかりやすいでしょう。
(この考え方は道管・師管や動脈・静脈の時にも応用できる考え方です)
わざわざ花を作る理由(ハイレベル向け)
もし余力があれば、植物から話を広げ「有性生殖」について扱うこともよいでしょう。
その際、必ず私がお伝えしているのは「どうして植物はわざわざ特別な生殖器官を作っているのだろう?」ということです。
以下に講義イメージを述べますので、これをベースにより良い授業を展開できるようにしてみましょう。
「どうして植物は花を作るんだろう?」
「種子を作るため!」
「正解。だけど、世の中には分裂して増える生き物も沢山いるよね?どうして“わざわざ”特別な器官を作るんだろう?」
「…そのほうが生き物にとって有利だから?」
「そう、人間だって髪の毛から子供ができたほうが楽だよね?でも、そうなってない。これには、進化の歴史から考えたら必ず理由があるはずだよね。じゃあ、種子を作る理由を考えてみよう。1分あげるからノートに書いてごらん」
「…できたかな。ではいくつか教えてください(当てていく)」
「はい、わかったと思うけど、同じ人が1人も存在しないように、同じ植物も存在しないんだ。だから、別々の性質をかけ合わせることで、様々な性質を持つことができるようになるんだよね。」
「ついでにもう1問。自家受粉する植物は他家受粉しないわけがないよね?その理由を、今までの話を踏まえながら50文字で記述してごらん!」
…かなり省略してしまっていますが、重要なことは
・有性生殖の意義
・植物が生存・進化するためにどのような戦略をとっているのか
ということです。
ここから自家受粉(アサガオが頻出です)だけでは生物として不完全である理由を考察できるようになると、花については十分な知識がついていることになります。
花粉の運ばれ方から、種子ができるまで
それでは、受粉後から種子ができるところまで扱っていきましょう。
とはいえここは中学受験よりも高校受験で多く出題されるテーマになります。
なので、簡潔にまとめてあげる程度で十分でしょう。
花粉の運ばれ方
虫媒花、風媒花、水媒花などに分けることができます。
虫媒花は虫に目立つように花弁や香りを持ち、花粉がねばねばしています。
風媒花はあまり目立たない形である代わりに、たくさんの小さな花粉を作ります。
(空気ぶくろと呼ばれるつくりを持つ植物もあります)
受粉~種子ができるまで
めしべの柱頭に花粉が付くことを受粉と呼びます。
受粉後、花粉から花粉管がのび、その中を精細胞が送られていきます。
精細胞の核と卵細胞の核が合体して受精卵となり、胚珠となっていきます。
(図で書くと時間がかかるので、資料集などを使うとよいでしょう)
被子植物の場合、周りの子房は果実になります。
果実は動物に食べられ、結果的に種子を多くの地域に運んでもらう手助けをしてくれますが、必要不可欠なものではありません。(事実、裸子植物が生き残っています)
なお、試験対策上はイチゴ・リンゴの食用部分は花床(かしょう)が大きくなったものであり、果実は表面のつぶつぶであることを押さえておきましょう。
花の分類
植物の分類は授業で扱うことが多いですが、なかなか花の分類までは扱いきれないケースもあると思います。
そこで、キーワードを板書し、自分で調べてくるように指示するとよいでしょう。
(キーワードを伝えてから調べさせると、比較的辞書やインターネットで調べやすいため回答がよく出てきます)
単性花
おしべ・めしべが片方しかない花。両方あるものを両性花と呼ぶ。
おしべしかない花を雄花・めしべしかない花を雌花と呼ぶ。
完全花
花の4要素(めしべ・おしべ・花びら・がく)がそろっているもの。
逆にそろっていない花を不完全花と呼ぶ。
合弁花
花びらがくっついているもの。離れるものを離弁花と呼ぶ。
おしべ・めしべ・がくの本数は覚える
最後に、入試に良く出題される植物をまとめました。
以下の3つは特に頻出ですので、必ず覚えてもらいましょう。
1、アブラナ科
がく4枚、花びら4枚、おしべ6本、めしべ1本
ダイコン、キャベツ、ナズナ、カブ、ハクサイ、ブロッコリー
2、ウリ科
雄花と雌花に分かれる。がく5枚、花びら5枚、おしべ5本、めしべ1本
ヘチマ、カボチャ、キュウリ、スイカ、メロン、ツルレイシ
3、ヒルガオ科
がく5枚、花びら5枚、おしべ5本、めしべ1本
サツマイモ、アサガオ
他に余力があれば
バラ科のサクラ、マメ科のダイズ、ツツジ科のツツジ、ユリ科のチューリップ、イネ科のイネ・ススキなども押さえておくとよいでしょう。
塾のテキストや小テストでは、表になって掲載されていることも多いと思いますので、ぜひ活用して覚えさせてください。
次回は、植物の分類について扱っていきたいと思います。
まとめ
植物の4要素は確実に理解し、暗記させる一つひとつの役割に興味を持ってもらえる授業を展開するとよい入試対策上、丸暗記が必要な部分は、苦しくても必ずやり抜いてもらう
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