助動詞はおもしろい
助動詞という言葉を突然生徒になげかけても、
「willが未来(~でしょう)でしょ、そんでcanが可能(~できる)でしょ、後は何があったっけ?」
なんて反応がほとんどです。
助動詞はそんな無味乾燥なものではありません。
実際は、微妙な感情を表現し、表現に幅を持たせる、会話においてとても重要な要素なのです。
「ひょっとして~?」
「絶対に~だからな!」
「~って、当然知っているよね」
こんなことが英語でも言えたら、会話がより一層楽しくなると思います!
ちなみに今挙げたものはおおまかに分けるとすれば、上からcould、must、shouldの守備範囲になります。他にも、ちょっと何かを頼んだり、かしこまってお願いしたり、「~に違いない」と強気な発言をしたり、「~だったら」と現実とは違うことを想像してみたり、助動詞を使えばいろいろな表現が出来ます。
助動詞に関して、生徒は、意味の幅は知らなくても、数が多くあるということは中学で習ったはずです。なので講師の方は、いきなり助動詞の意味の幅、会話内での実践的な使い方を説明する前に十分な興味を生徒に持たせましょう。それなりに量があるものを指導する際には、それ相応の興味がないと生徒は最後までもちません。
助動詞を指導する際には、まず助動詞の魅力、「習得出来たら、こんな表現も簡単に使えるようになるよ」など使えるようになった時の便利さを教えると効果的だと思います。
また、助動詞はちょっとしたコツをつかめば、「しなきゃいけないかも=may have to~」「できるに違いない=must be able to~」などの、ちょっと複雑そうな表現も簡単に表せることが出来るようになります。
それほど難しくないということも生徒にしっかり印象づけ、生徒の学ぶ抵抗を少しでも軽減させましょう。
助動詞は、覚えればすぐに会話で使えるので、文法の中でも最も楽しく学べる部分なのです。
学校英語は味気ない
講師の皆様は助動詞を学校でどう教わったか覚えていますか。
中学生向けの参考書では、助動詞を大体このようにまとめています。
現在形 |
過去 |
意味 |
同意語句 |
can |
could |
できる、してもよい |
be able to |
may |
might |
してもよい、かもしれない |
|
must |
(had to) |
しなければならない、違いない |
have to |
will shall |
would should |
未来 (してくれませんか、しませんか) |
be going to
|
canもmayも「してもよい」なの?willやshallの「未来(してくれませんか、しませんか)」ってどういう意味?これを見ていると、考えるだけ無駄な気がしてしまい、たいていの生徒が丸暗記をして切り抜けます。しかし、なんとか覚えたぞと思ったのもつかの間、同じ助動詞が、高校ではとんでもないことになってしまいます。
今度は高校生用の参考書でよくみる助動詞のまとめ方を見ていきましょう。
can |
①可能 ②許可 ③能力 ④依頼 ⑤可能性、推量 |
will |
①単純未来 ②意志未来 ③主張 ④習慣、習性 ⑤推量 ⑥依頼、勧誘 ⑦軽い命令 |
これじゃ、丸暗記は無理ですよね。かといって理解しようにも取り付く島がありません。かくして、多くの人は「can=できる」「will=未来」という幼い理解のまま、大人になってしまうのです。参考書ですらこのようなわかりにくい始末ですから、講師の方も助動詞の指導には頭を悩ませることが多いと思います。ではどう指導するのが効果的であるのか、おおまかに紹介していきます。
助動詞一つ一つのキャラクターを知る
助動詞は、私たち一人一人と同じように、それぞれがキャラクターを備えています。それならcanもwillも多重人格だろうって?そんなことはありません。言葉は人が作り、人が磨いてきたものですから、使われ方には必ず何らかの意味や理由があります。助動詞を一つのキャラクターとして生徒にとらえさせるのがとても効果的な指導法だと私は思います。
たとえば、Aさんという人がいて、彼は英語の勉強をしている、休日は家にこもってビデオを見て、長い休みにはロサンゼルスに行く、とします。これらの行動を別々に覚えてAさんを理解するのは難しい。でも、「大の映画好き」というキャラクターを知れば、それらの行動のすべてに納得がいき、行動パターンの予測もできます。同様にwillの基本的なキャラクターを知っておけば、「主張」「習慣」などと暗記しなくても、個々の使い方が理解できるし、知らない使い方を目にしても「きっとこういうことだな」と想像がつくようになります。
助動詞にはどんなキャラクターがあるのか
おおまかに紹介すれば、次のようになります。
can「パワー、~する力がある」
will「意志」
may「許す」
must「絶対」
wouldやcouldは、生々しい現在から過去へ遠ざかることで、「控えめ、上品、現実離れした希望」を意味します。そのほか、ほかの助動詞と一緒になれないmustやcanの代わりをするhave toやbe able toは「協調性あるサポーター」、威厳はあるけれど活躍の場が減ったshallは「ご隠居」であり、shouldはshallから完全に親離れして活躍の場を広げた「スマートな二代目」と言えます。まずはこのように大まかなキャラクターをつかませ、そののちに具体的な指導に入るとどんどん理解が深まっていき、生徒は効率的に理解できると思います。
キャラクターだけで本当に全部を理解できるのか?
このような説明をされても半信半疑な方が多いと思います。では例として、willの主な役割を並べてみます。
未来 未来はすべて、意志の産物
意志未来 「絶対に~するんだ」という、未来への意志
主張 強固な意志があるために「どうしても~しようとする」
習慣、習性 意思をもって何度も同じことをすると、習慣、習性になる
推量 「~だと思われる」なので、推量もやっぱり意志
依頼、勧誘 依頼や勧誘は「~する意志はありますか?」と聞くのと同じ
軽い命令 「あなたは~する意志がある」と話し手の意志を述べる
つまり、「主張」「習慣」などは、「will=意志」の解釈をわざわざ難しく分類したものなのです。基本キャラが分かっていれば、いちいち覚える必要はありません。これは、mayやcanなど、すべての助動詞に言えることです。大切なのは、暗記力より想像力であるということを指導することが大切です。
「キャラクター訳」の強み
キャラクターを理解することによって、助動詞を使った文の意味が、よりはっきりします。ほんの少しですが、例をあげてみます。
できる?してくれる?
「カメラを直してください」
Can you fix this camera?
=あなたにはこのカメラを直す力がある?
Will you fix this camera?
=あなたにはこのカメラを直す意志がある?
Can you~?は直せるかどうかわからないが、直す力があるのなら頼みたい。
Will you~?は直せるのを知っている場合。直してくれるかは意志の問題。直せるのを知っていて頼むだけに、Can you~?より押しが強く、かしこまった感があります。
Will you marry me?
結婚してくれませんか。
=僕と結婚する意志がある?
力があるかどうか聞くCan you~?とは明らかに違うのが生徒も分かると思います。簡単に比較して、それがまた大きな違いがあることに気が付けさせれば、生徒の助動詞への学ぶ意欲も高まっていくと思います。
他に簡単にあげるとすれば
「入っていい?」かしこまっているのはどっち?
Can I come in ?=私には入る力がある?
May I come in ?=私は入ることが許されている?
力のcanと、許しのmayの対比。自分の力を測ろうとするcanより、許されているかどうかを気にするmayの方がかしこまっていることは明らかです。
実際にこの例はよく私が授業で使います。なかなかいい反応をしてくれます。これまでこの二つをまったくの同一のものと考えていた生徒が非常に多かったです。
まとめ
今回は助動詞を会話で活かすにあたり効果的な指導方法、生徒の興味の持たせ方を大まかに紹介しました。
次回の記事では一つ一つの助動詞をより詳しく、より実践的に会話で役立てられるようになるための指導方法をご紹介します。一人でも多くの講師の方に、この指導法を役立てていただければ幸いです。