植物の分類=丸暗記、とさせないように!
講師の皆様こんにちは!
前回は植物の特徴として「花のつくり」について扱いました。
(参考:http://www.juku.st/info/entry/1188 )
今回は、植物の分類を扱ってまいります。
特に生徒がやってしまう失敗例
分類表をそのまま丸暗記しようとして失敗する
分類から植物のつくりがイメージできない
分類の名前(裸子植物)だけを覚えており、その特徴が言えない
分類とは「情報をある規則に従って並べ替えたもの」をさします。
つまり必ず“決められたルール”があるわけですから、植物名などと違って丸暗記をする必要がないテーマです。
しかし、生徒は植物名と同じように丸暗記をしようとしてしまいますので、より効率的な方法を指導する必要があります。
また、「植物の分類」が単体で出題される、ということは極めて稀です。
あくまでも植物の分類をベースに、光合成や花のつくり、実験考察などが総合的に問われていきます。
よって「分類を覚えて終わり」ではなく、そこから具体的な植物が、イメージとして膨らませられるような指導を心がけるとよいでしょう。
授業でのポイント・伝えるテクニック
植物の分類の決め方
最初に、植物の分類がどのように決まっているのか、原則を教えましょう。
多くの生徒は辞典などで“なんとなく”分類が決まっていることを知っています。
ですが、なぜそうなっているのかを考えたことはない生徒がほとんどです。
そこで以下のような問いを立ててあげると、素朴な疑問に気づくようになります。
・どうしてマツとアサガオは別のページにあるんだろう?
・トマトはナス科だよね。どうして全然色が違うのに、同じ仲間にしているんだろう?
・キノコはかつて、植物だと考えられていたけど、今は違うんだって。どうしてだろう?
(※キノコはかつて隠花植物と考えられていましたが、現在は菌類となっています)
この答えをすぐに出す前に、ヒントをだしつつ、考える時間を作ってあげましょう。
(解答を生徒たち自らで導き出せると、学習意欲が向上するため)
以下、上の質問を投げかけた後の、授業イメージです。
「それじゃヒント!植物の分類って、最初はどういう目的ではじめられたと思う?」
「(いくつか種類が上がる中で)食べられるかどうか?」
「正解!僕たちは農業をするときに、それが食べられるか、そしておいしいかどうかをチェックしているよね。これが分類の始まりなんだ。でも、これだけじゃ不十分だよね。植物はたくさんの種類があるから、もっと丁寧に分類する必要があったんだ。じゃあどうやったと思う?」
「…顕微鏡とかで観察した?(DNA,遺伝子と答える生徒もいます)」
「おしい。植物を分けよう、と言われ始めたのは1700年代。当然、機材や薬品もなかったんだ。じゃあどうやって分けるようにしたと思う?」
「…見た目?」
「それしかないよね。つまり、植物の分類でのポイントは、見た目に注目する!ということなんだ」
このように話すことで、植物の分類=テキストだけで丸暗記するものではない、と理解してもらえます。
更に念押しで「だから実際に植物に触れることが大事!来週までにクラスのみんなに○○科の植物を持ってきてもらいましょう!」などと伝えてもよいでしょう。
(なお、見た目=形態と呼ぶのが正式な表現です。ですが、この点については触れなくても構いません)
4つの質問から、分類法を導くテクニック!
さて、導入が終わったところで、実際に分類についてお伝えしていきます。
私はフローチャートのようにして板書し、覚えさせるようにしています。
色々と試行錯誤しましたが、【4つの質問に答えられるようにすれば、分類は完璧だ!】と伝えると、とても効果的なようです。
ぜひ活用してみて下さい。
1、花が咲くか-「はい」なら2へ、「いいえ」なら胞子植物
まず、花が咲くかどうかを考えます。
花が咲くということは、種子ができるということ。
だから花が咲く仲間を“種子植物”と呼びます。
胞子植物については、ローレベルでは扱う必要はありませんが、ミドルレベル以上なら必ず扱いましょう。
(胚珠とは何か、と聞いたときに、きちんと答えられるレベルなら、ぜひ教えてあげてください)
胞子植物
種子を作らず、胞子で増える植物のこと。但し無性生殖ではない。
根・茎・葉の区別がつくものをシダ植物と呼ぶ。
ワラビ・ゼンマイ・ツクシなどが代表的。
対して根・茎・葉の区別がつかないものはコケ植物と藻類(そうるい。もるいと呼ばないように!)に分けることができる。
コケ植物は陸上の湿ったところに生息している。ゼニゴケ、ミズゴケなどがある。
藻類は緑色のみならず、褐色や赤色の色素を持つものもある。
また、一部藻類は分裂により増えることがある。
ワカメ・コンブ・ヒジキ・テングサなどが挙げられる。
また、このタイミングで菌類を扱っておきましょう。
菌類
かつて植物に分類されることもあったが、現在は光合成を行わないことから、植物には含めない。
キノコ・カビなどが代表的
2、胚珠が子房で包まれているか-「はい」なら3へ、「いいえ」なら裸子植物
続いて、胚珠が子房で包まれているか、の観点で考えます。
(このタイミングで生徒に「子房って何?」と聞いてみてもよいでしょう)
子房に包まれている植物を被子植物、むき出しの状態になっている植物を裸子植物と呼びます。
なお、胚珠を子房で包むことは、いわば子供を守りながら、遠くに運んでもらえる可能性を高めている、ということになります。
ですから、被子植物のほうが進化している=新しい植物、と考えられていることを伝えましょう。
裸子植物
木になる大型の植物が多い。
単性花かつ風媒花であることがほとんど。
また、多子葉類(子葉が6-12枚程度)である。
マツ、イチョウ、スギ、ヒノキが代表的。
3、子葉が2枚か-「はい」なら4へ、「いいえ」なら単子葉類
子葉が2枚である植物を双子葉類、1枚である植物を単子葉類と呼びます。
授業内では、ここで子葉の確認をしておくとよいでしょう。
(子葉とは、種子が発芽して最初に見られる葉のことを指します)
単子葉類
子葉が1枚である植物。
葉脈が平行脈であり、根はひげ根の形をとる。
また、茎の維管束が散在しており、形成層はない。
茎を太くすることができないため、草本のみとなる。
ユリ、イネ、アヤメ、チューリップなどは必ず覚えておく。
単子葉類の特徴は、受験にとてもよく出る部分になります。
なるべく丁寧に触れてあげるようにしてあげましょう。
時間があるようであれば、双子葉類との比較図を書いてもよいかもしれません。
補足 単子葉類か、単子葉植物か
稀に
「単子葉類」って教わったけど、テキストに「単子葉植物」と書いてあるよ!と言われることがあります。
これについては、ほぼ同義語として扱って構わないと伝えましょう。
厳密にいうと単子葉植物のほうがやや範囲が広いのですが、その点に触れる必要はありません。
双子葉類・双子葉植物についても同様です。
4、花びらがくっついている-「はい」なら合弁花、「いいえ」なら離弁花
最後に、花びらが分かれるかどうかで判定を行います。
花びらが離れている植物を離弁花類、花びらがくっついている植物を合弁花類と呼びます。
離弁花類はサクラ、アブラナ、エンドウ、
合弁花類はタンポポ、アサガオ、ツツジ、ヒマワリ、ヘチマなどを覚えておくとよいでしょう。
双子葉類
子葉が2枚の植物。
葉脈が網静脈であり、根は主根と側根に分かれている。
また、茎の維管束は輪のように並んでおり、形成層がある。
単子葉類と異なり、草本のみならず木本にもなる。
補足 単子葉類ではなぜ合弁花・離弁花を分けないのか
実は単子葉類にも花びらはあり、合弁花と離弁花の区別はできます。
しかし、単子葉類は同じ科(ユリ科など)の中で合弁花と離弁花が入り混じっています。
(双子葉類は科により合弁花、離弁花が決まっています)
よって、分類上の意義がないためにあえて分類しないでひとくくりにしているのです。
以上となります。
この4つの質問だけで、受験対策上必要な分類はすべて覚えることができることがご理解頂けたかと思います。
もちろん、あくまでこの教え方は一例にすぎません。
細かい部分については、各先生方のご裁量でアレンジしてみてください。
なお、その際は以下の2点に注意して授業を組み立てるとよいでしょう。
・なるべく覚える量を減らす
・覚える際に、ルールが存在することに気づいてもらう
次回は「植物のつくり」について触れていきたいと思います。
まとめ
植物の分類は“形に注目して”分類するとよい
分類を基礎に、1つ1つの性質をしっかり覚えるように指導する
参考
植物をどのように教えるべきか:http://www.juku.st/info/entry/1177
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