植物の体は、実に合理的にできていること、きちんと伝えていますか?
講師の皆様こんにちは!
今回は植物の4回目として、「根・茎のつくり」についてお伝えしていきます。
光合成・呼吸などの頻出テーマの基礎となる、重要なテーマになりますよ!
参考
植物総論:http://www.juku.st/info/entry/1177
花のつくり:http://www.juku.st/info/entry/1188
植物の分類:http://www.juku.st/info/entry/1208
特に生徒がやってしまう失敗例
光合成や呼吸のオマケ単元で、単なる暗記分野だと思っている
葉に気を取られすぎて、学習がおろそかになる(根と茎のつくりを知らない)
それぞれの器官がなぜ必要か、理解していない
植物のつくりは、植物分野の中でも比較的初期に習う単元です。
そのため、受験直前に復習する機会が少なく、つい光合成などの実験考察ばかりに目が向いてしまいがち。
ですが、植物観察と絡めて出題しやすいことから、コンスタントに問われるテーマになります。
授業ではそれぞれの特徴をストーリー仕立てを教えることで、より理解・暗記が促進されます。
ぜひこの本稿を読んで、生徒が楽しくわかりやすい授業に仕上げましょう!
(ストーリー部分はこのように、緑色で囲みを付けました。参考にしてみてください)
授業でのポイント・伝えるテクニック
常に単子葉類と双子葉類を比較しながら考える
まず、授業の冒頭に「単子葉類」と「双子葉類」に分けて考えていくことを伝えましょう。
なぜなら、多くのテキストには、単子葉類・双子葉類それぞれを対比した図が載っているためです。
|
単子葉類 |
双子葉類 |
子葉 |
1枚 |
2枚 |
根 |
ひげ根 |
主根と側根 |
茎 |
維管束が輪状に並ぶ 形成層がある |
維管束がバラバラに分布 形成層がない |
葉 |
網状脈 |
平行脈 |
※輪状は「わじょう」ではなく「りんじょう」と呼びます。
双子葉類と単子葉類は、「双」子葉=2枚の子葉、「単」子葉=1枚の子葉、と分けている、と教えるとすぐに理解してくれます。
ダメ押しとして、実際に小さくイラストを描いて、イメージさせてあげるとよいでしょう。
まだ慣れていらっしゃらない先生であれば、最初にこの表を書いてしまうことをおススメします。
そしてこの表について一つずつ詳しく扱っていく、という授業スタイルを取ると時間調整が楽でしょう。
より高度な授業を展開したいのであれば、あえてこの図は書かずに一つ一つの特徴を説明するスタイルもよいでしょう。(その際はまとめとして、この図をテキストや資料集を用いて、確認に使いましょう)
それぞれの役割を正確に把握する
次に、根・茎・葉の役割を正確に把握させていきます。
端的にまとめると
根:水・養分の吸収と輸送、自ら支える役割
茎:体を支える、養分や水の通り道になる
葉:光合成を行い、養分を作る。また、蒸散を行うとなります。
1つ1つを詳しく扱う前に、大まかな役割を確認してあげると
“どうして根・茎・葉という分類で考えるのか”をしっかり考えることができるようになります。
なお、6年生であれば自分で書かせてみましょう。
単純ですが、意外とヌケモレが見つかるものです。
(特に根が自ら支える役割を持つことを、忘れる生徒が多いように感じます)
根のつくり
根は土の中にあり、水・養分の吸収・輸送と自らを支える役割を担っています。
双子葉類では主根と側根に分かれており、側根の先は細かく枝分かれしています。
単資料類ではひげ根と呼ばれる、根元からバラバラに細い根が這うかたちをとります。
いずれも根の先は細い毛のような「根毛」が無数に生えています。
これは、根の表面積を増やすための工夫です。
また、キーワードとして“成長点”と“根冠”は覚えさせるようにしてください。
成長点…細胞分裂が盛んに行われ、根が伸びるところ
根冠…成長点を守るために、根の先についているところ
加えて、よく出題されるのが“地下茎”と呼ばれる部分です。
これは茎に養分を蓄えて大きくなっているものを指し、根とは“鱗片上の葉があることや芽があること”で区別しています。
タマネギ・ジャガイモ・サトイモ・レンコンは地下茎であること、サツマイモは根であることを必ず覚えさせましょう。(ジャガイモは放っておくと芽が出ますよね?これが、茎である証拠です)
※注意
玉ねぎの食用部は葉になります。
ここを勘違いして教えないよう、注意しましょう。
たまねぎはユリ科ネギ属の植物で、球を形成する球形作物として代表的なものです。通常食用している球の部分は、葉にあたり、葉の下の葉鞘(ようしょう)とよばれるところが成長するにしたがって肥大し、重なり合って球(鱗茎)を形成します。1球の鱗片数は、6~11枚で形成されています。
(出典:農林水産省http://www.maff.go.jp/j/heya/sodan/0911/03.html)
主根・側根とひげ根はどちらが有利か?
さて、ここまで基本的なことを教えてきました。
ただこれだけではなかなか「興味を持って勉強しよう!」とはならないもの。
そこで、直接受験にはでない雑学を、一緒に考えてあげるとよいでしょう。
根のテーマで話すとよいのは「側根とひげ根はどちらが有利か?」
これを生徒に聞き、その理由を考えさせてみるととても良い展開になります。
ぜひお読みの先生も考えてみてくださいね!(答えは本文末尾にあります)
茎のつくり
続いて、茎を扱っていきましょう。
茎は体を支え、養分や水の通り道となっています。
根と比べてやや覚える単語が多いため、教える順番を変えたほうがわかりやすいでしょう。
具体的には、双子葉類・単子葉類共通のキーワードを押さえてから、違いについて解説するとよいかと思われます。
表皮…表面を覆い、水の蒸発を防ぐ
維管束…道管、師管、形成層をまとめて呼称したもの
道管…必ず維管束の内側にあり、主に水の通り道となる
師管…必ず維管束の外側にあり、葉で作られた養分の通り道となる
形成層…道管の師管の間にあり、細胞分裂を行う場所。双子葉類のみに存在する
※高校受験では木部、師部として扱いますが、中学受験では道管・師管だけ覚えておけば十分です。
※厳密には、道管も水溶性養分の一部が通っていますが、この点については理解を妨げる可能性が高いので、割愛してください。
一通り用語を伝えた後に、双子葉類と単子葉類の違いについて触れていきましょう。
最大の特徴は“形成層がない”ということ。
単子葉類は形成層がないため、茎を太くする速度が遅くなります。
そのため、草本類が多いことをしっかり伝えてあげてください。
また、維管束が散在する・輪状に並ぶという違いはあれど、道管が内側を向き、師管が外側を向いている点に注目させましょう。
道管が内側を向く理由
では、どうして道管が内側を必ず向くのでしょうか。
これは“内側に重要な管(くだ)を持ってくる”という、進化における考え方があります。
植物にとって何よりも重要な作用は、光合成です。
この時原材料として使うのは“水”と“二酸化炭素”ですよね。
二酸化炭素は気孔より空気中から集めることができますが、水は根から吸収することになります。
もし水を取り入れることができなくなると、光合成ができなくなります。
光合成ができないということは、養分を作れなくなる、ということですから、極めて危険な状態になります。(生徒には「食べ物と飲み物、同時になくなっちゃうような状態だよ!」と伝えると、とてもわかりやすいようです)
ですから、一番大事な道管を内側に配置しているのです。
実は、動物において動脈が内側にある理由も同じになります。
これについては、動物編で詳しく扱いますので、お楽しみに!
最後に、まとめとして必ず生徒には茎の断面図を書かせ、道管と師管を色塗りさせるとよいでしょう。
案外“形成層を書き忘れる”とか“道管と師管の向きが逆になっている”というケースが多いものです。
手を動かしてもらうことで、楽しく、わかりやすい授業を展開することができます。
ぜひ試してみてくださいね。
次回は、葉のつくりについて扱っていきます。
まとめ
最初に単子葉類・双子葉類の違いから入るとよい
根・茎・葉の概要を説明してから、各部の説明を行う
単語単位で解説せず、それぞれの理由を一緒に考える授業を展開する
(答)
主根・側根とひげ根はどちらが有利か?
|
メリット |
デメリット |
ひげ根 |
広い面積の水分を吸収しやすい 双子葉類よりも先に根を広げることができる |
深く根を張ることができない 水分が少ない土地では、生活できない |
主根・側根 |
あまり降雨がない環境でも生育できる 植物体が大きくなっても、安定させることができる |
ひげ根が密集しているところでは生育しづらい(全くできないわけではない) 成長に時間がかかる |
実はどちらにもメリット・デメリットがあります。
ひげ根のメリットは広く、浅く根を張れることです。
そのため、栄養が豊富であったり、水分が多かったりする土壌で、早く成長することができます。
しかし、その反面深く根を張ることが困難で、植物体を大きくしづらい欠点があります。(1本1本の根が細いため)
一般的に単子葉類は自らを支える力が弱く、あまり高くなることができないことを伝えましょう。
また、水分がめったに降らない土地では、表層が乾いてしまっていることが多く、その場合は生育できません。
主根・側根のメリット・デメリットは、ひげ根の逆となりますので、割愛させていただきます。
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