最頻出!光合成を基礎から丁寧に教えるテクニックとは?
講師の皆様こんにちは!
今回は植物分野で最も問われやすい「光合成」について扱ってまいります。
参考
花のつくり:http://www.juku.st/info/entry/1188
根・茎のつくり:http://www.juku.st/info/entry/1236
葉のつくり:http://www.juku.st/info/entry/1248
特に生徒がやってしまう失敗例
光合成の式を覚えていない
植物がなぜ光合成を発達させたのか、その意義を理解していない
実験考察問題に対応できない
光合成自体は、植物の中でも繰り返し扱う内容です。
そのため、光合成自体は小学5年生になれば大体の生徒は”理解した気になって”います。
ですが、入試では単に光合成の式を覚えるだけではなく、そのメカニズムについて考えさせる問題が増えています。
講師はそのことを踏まえ、より深い知識を考えさせるように、教えていきましょう。
(特に実験考察について触れるとよいでしょう)
授業でのポイント・伝えるテクニック
光合成の基本
多くの方はご存知と思いますが、今一度光合成の基本式を確認しておきましょう。
(すでに習ったことがある生徒には、まずこの式を何も見ずに書けるかどうか、テストしてみるとよいでしょう。)
二酸化炭素+水分+(光エネルギー)→でんぷん(養分)+酸素
注意すべきポイントを、いくつかお伝えしていきます。
光エネルギーの位置
光エネルギーを同じ式に入れないように指導しましょう。
なぜなら、光エネルギーだけは物質ではないためです。
(授業では日光、光と書いても構わないですが、光合成は呼吸の逆反応であることを踏まえると、エネルギーという表現を入れておいたほうがベターです)
・物質が移動する場所
それぞれの物質が、どこから取り入れられて、どこで排出されるのか、きちんと書けるようにしましょう。
(生徒の多くは、水分を気孔から取り入れる、と勘違いしています)
二酸化炭素:気孔から取り入れます。
水分:根から吸収し、茎を通って葉まで送られます。
養分:葉緑体でつくられ、昼は葉にて貯蔵されます。
夜になると、糖に分解され、地下茎・根に送られます。
酸素:気孔より排出されます
葉緑体について
主に直径5-10um、厚さ2-3um程度の、緑色をした小さな粒です。
1um=1/1000mmと伝えると、イメージがつかみやすいでしょう。
この中に含まれている、葉緑素(クロロフィル)が光エネルギーを吸収する色素となっています。
(参考)ここで化学式を使うか?
毎回この式を漢字で書くのは面倒だ!ということで、化学式を使って教える先生も多いのではないでしょうか。
筆者としては、化学式を使って教えることは「モデルとして説明するとき以外」は反対です。
というのも、確かに二酸化炭素をCO2と書くほうが、圧倒的に楽です。
これは生徒も同じであるため、自然と勉強するときに化学式で書く癖がついてしまいます。
すると、答案にも書いてはいけないのにCO2と書いてしまう生徒がでてくるのです。
これを防ぐために②とか「にさん」などの略字を使うほうが無難であると感じています。
(ハイコースであればそのような間違いもないでしょうから、使っても構いません)
光合成の目的
次に光合成の目的を確認していきましょう。
(このあたりは平易ですので、生徒の発言を積極的に引き出しながら授業を展開してみて下さいね)
植物が光合成を行う目的は「養分であるでんぷんを作ること」です。
生徒はたまに「酸素を作ること」と間違えてしまいがちなので、この点は必ず伝えましょう。
では、どうしてでんぷんを作る必要があるのでしょうか。
その理由は「植物と動物の決定的な違い」にあります。
動物は名前の通り「動く生き物」ですから、外部から自分に最適な栄養を持つ生き物を捕食することができます。
対して、植物は動くことができないため、自ら栄養素を作る必要がありました。
その手段こそが、光合成です。
ハイコースであれば、この点について理解したうえで、しっかり記述までできるように指導しましょう。(時間があれば、化学合成細菌についても解説してよいでしょう)
(参考)化学合成細菌
光がなくても、水と二酸化炭素から有機物を作ることができる生物。
鉄細菌や硝酸細菌などがいるが、生存競争に負け、現在は極限環境にいるものがほとんどである。
光合成の意義
そして、光合成の生物学的意義を扱いましょう。
そのために、生物ピラミッドを簡単に伝えると、理解しやすくなります。
生物ピラミッドとは、食物連鎖の個体数を、各段階に応じてモデル化したものです。
(中学・高校受験では生産者、消費者、分解者の意味が理解できていれば大丈夫です)
見ればわかる通り、生産者が最も数が多く、かつ底辺にいることがわかります。
生徒には、植物が生態系において、いかに重要な役割を果たしているのかを、ぜひ感じてもらいましょう。
また、ここから酸性雨の問題を考えさせてもよいでしょう。
テキストには「森林が減ると、地球温暖化になるから問題である」と書かれているものが多いですが、生物多様性の観点からも、森林(特に植物)が減ることは大きな問題です。
近年は生物多様性に関する出題も散見されるので、あわせて伝えるとよいでしょう。
光合成の応用
最後に、時間が許す限り以下のような発展内容を扱ってあげるとよいでしょう。
光合成の仕組み(発展)
ハイコースでは、さらに高度な内容を扱いましょう。
ポイントは、「光合成は化学反応である」という観点です。
このことを強調して伝えることを意識しましょう。
話す際は、以下のフローに沿って伝えていくと、わかりやすくなります。
1、 光エネルギーが吸収される
2、 エネルギーを水の分解に用いる。ここで生じる水素と酸素のうち、不必要な酸素を外部に放出する3、 水素と二酸化炭素は炭酸同化作用を経て、ブドウ糖となる。
これが多数結合(2000~3000個)することで、でんぷんとなる
エネルギーの保存法
エネルギーが師管から根や地下茎に運ばれることはお伝えしましたが、その後の貯蔵の仕方は異なります。
特に重要な植物名をあげましたので、何の物質に変えて貯蔵させるのかもあわせて覚えさせるようにしましょう。
貯蔵物質名 |
代表例 |
でんぷん |
イネ、トウモロコシ、ジャガイモ、サツマイモ |
ショ糖 |
サトウキビ、サトウダイコン |
タンパク質 |
ダイズ、コムギ |
脂肪 |
ゴマ、ツバキ、アブラナ |
ブドウ糖 |
ブドウ |
光合成に関する実験
代表的なものを、いくつかご紹介しておきます。
できれば問題演習と絡めながら、実験考察を扱うとよいでしょう。
なお、その際に必ず対照実験を用意する必要があることも、必ず指摘してくださいね。
(※対照実験:1つの条件だけを変えた状態で、同じ実験を行うこと)
・葉緑体で光合成が行われていることを確かめ、かつ光が必要であることを証明する実験
手順
1、 ふいりの葉・アルコール・ヨウ素液・アルミニウムはくを用意する。
2、 光の当たらない部分を作るため、葉の一部をアルミニウムはくで覆う。
3、 葉に十分な光を当てたのち、速やかに摘み取る。
(夜になるとでんぷんが分解され、根・茎に送られてしまうため)
4、 葉をあたためたアルコールで脱色する
(この際、アルコールは必ず直火で温めてはいけません!)
5、 ヨウ素液に浸して確認すると、緑色の部分かつ、光の当たった部分のみ青紫色になる
結論
光合成には、日光と葉緑体が必要である!
・光合成に二酸化炭素が必要であることを確かめる実験
手順
1、 少量の水酸化ナトリウムを溶かした水溶液に、BTB液を入れる
(ここで水溶液はうすい青色になります)
2、 ここに息を吹き込むと、二酸化炭素が入ることでうすい黄色に変化する。
3、 黄色になった溶液に水草を入れ、光を当てると、溶液の色が黄色から緑、青に変化する
結論
光合成に二酸化炭素が使われることがわかる
・光合成で酸素が発生することを確かめる実験
手順
1、 水草に光を当て、発生する気泡を試験管などで集める
2、 集めた気体に火のついた選考を入れると、線香が激しく燃えた
結論
光合成により、酸素が発生することがわかる
全てを扱うことは難しいので、生徒のレベルに合わせて使い分けてみてくださいね。
次回は光合成以外の葉の作用(蒸散・呼吸)の指導法を考えていきます。
まとめ
光合成の式は最低限、きちんと書ける状態にする
光合成の意義を生態系から考えることができるようにする
発展的内容、実験についても、できる限り触れると得点力向上に繋がる
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