合成との共通点・違いを考えながら、呼吸と蒸散を教えよう!
皆様こんにちは!
前回は最重要項目である、光合成を扱いました。
(前回記事:http://www.juku.st/info/entry/1273)
今回は葉のはたらきの残り2つ、呼吸と蒸散について扱っていきます!
特に生徒がやってしまう失敗例
呼吸が光合成の逆反応であることを知らない
呼吸が1日中行われていることを忘れている
蒸散の目的3点を、しっかり理解していない
呼吸は光合成の逆反応ですから、本来覚えるところはほとんどありません。
しかし、生徒は光合成=植物の単元、呼吸=動物の単元、と勝手に区分けしてしまったり、全く別の反応と勘違いしてしまったりするケースがあります。
また、蒸散は、計算問題については正答率が高い単元ですが、知識が抜けているケースが見受けられます。
授業時間の都合上、どうしても後回しにされてしまうケースも多いとは思いますが、なるべく触れてあげられるように、授業を組み立てていきましょう!
授業でのポイント・伝えるテクニック
呼吸とは、光合成の逆反応である
まず、呼吸について考えていきましょう。
呼吸の目的は「生命活動に必要なエネルギーを得るためのはたらき」となります。
(ですから、地球上にいるほぼすべての“生き物”は、呼吸をしていますね)
ここで生徒の多くが「酸素を得る活動」と勘違いしています。
酸素を吸って二酸化炭素を出すことは、ガス交換or外呼吸(がいこきゅう)と呼ばれる、呼吸の一部にすぎません。
私たちが考えるのは、細胞呼吸or内呼吸(ないこきゅう)と呼ばれる、エネルギーを生み出す反応です。
式は光合成の真逆となります。
養分(でんぷん)+酸素 →(化学エネルギー)+二酸化炭素+水
光合成の時にもお伝えしましたが、化学エネルギーだけはほかの物質と区別して書かせるようにするとよいでしょう。
なお、ここでテキストに「生命活動のエネルギー」と書かれている場合は、そのままの表現で教えてかまいません。
ですが、「熱エネルギー」と書かれている場合は、化学エネルギーに書き換えていただいたほうがよいでしょう。
熱エネルギーは本来、最も“転用できない”ごみエネルギーです。
言い換えると、熱エネルギーとは主とするエネルギーの副産物として生産されるものです。
生物体が外気に比べて暖かいのは、熱エネルギーを生み出しているからですが、これは「生命活動に必要な化学エネルギーを取り出す時の副産物」として、熱エネルギーが発生しているためです。
この点については、補足してあげるとよいでしょう。
また、生命活動を維持している時間=24時間、呼吸を行っていることを確認しましょう。
生徒は光合成の間は、呼吸をしていないと勘違いすることがあります。
確かに一見すると、日中は「二酸化炭素を吸って、酸素を出している」ように感じますね。
ですが、実際には
光合成での気体のやり取り>呼吸での気体のやり取り
となっているにすぎません。
二酸化炭素も排出していることは、きちんと理解させましょう。
最後に、でんぷんを糖と書き換えたほうが、より正確に伝わります。
(でんぷんが直接使われるのではなく、糖に分解されて使われるケースがほとんどであるため)
ハイレベルでは酵素反応によりでんぷんが分解されていることも、併せて触れてあげるとよいでしょう。
(参考)嫌気呼吸
なぜ外呼吸から考えないのか、疑問に思う生徒もいるかもしれません。
質問されたら、この点について、詳しく触れておきましょう。
植物の働きは、いずれも植物が生物として生きるために必要な機能に注目して出題されます。
その際、外呼吸というのは必ず生きることに必要な反応とは言えないのです。
たとえば、嫌気呼吸を行う酵母菌があげられます。
菌類はアルコールや糖を用い、呼吸を行いますが、このときに酸素を使うことなく、内呼吸を行うことができます。
ですから、外呼吸が必ずしも生物にとって必要な反応とは言えないことがわかります。
呼吸を確かめる実験
代表的なものに、発芽中の種子を使った実験があります。
実験手順と結果を確認しておきましょう。
手順
1、 発芽中の種子を袋に入れ、袋の口をしっかり閉じる
(対照実験として、空気だけの袋も用意しておく)
2、 一晩、光の当たらない真っ暗な場所に置いておく
3、 袋の中の空気を石灰水に通す
→発芽中の種子の場合は白く濁ったが、空気だけの場合はにごらなかった
結論
二酸化炭素が放出されたことがわかる!
また、応用例題として
・新鮮な葉(アサガオなど)を入れて同様の実験を行うとどうなるか
・石灰水以外の試薬を用いて、同様の結果を得るためにはどうすればよいか
などを聞いてみてもよいでしょう。
(解答は一番下に用意してあります)
(参考)「でんぷん」を観察してみよう
でんぷんは粒が大きい為、小学校にある顕微鏡で簡単に観察することができます。
そこでぜひ、ジャガイモ・サツマイモ・イネのでんぷんを比較させてみてください。
(見えやすくするため、ヨウ素液を垂らしておくことを忘れずに)
全然違う大きさに見えることに、生徒は驚き、感動してくれますよ!
蒸散の3つのはたらき
続いて、蒸散を扱っていきましょう。
蒸散は「植物内の水が水蒸気となって植物から出ていく現象」を表します。
蒸散の目的は3つあります。
1、 根からの吸収を促進させる
2、 水分量の調節
3、 体温の調節
まず、蒸散が行われることにより、水分の吸収を行うことができます。
これはストローをイメージするとわかりやすいです。
吸うことで下から飲み物を“持ち上げる”ことができますよね。
また、水分量の調節はトイレ、体温の調節は汗をかくイメージとして、
生徒に感じてもらえると、理解しやすいようです。
さらに、
「夏、蒸散はどうなる?→盛んになる!」
「乾燥している地域では?→あまり行われない!」
といったやり取りを繰り返すと、より深く理解してもらうことができるでしょう。
気孔のつくり
蒸散の時に、必ず気孔の構造と開閉についても扱いましょう。
気孔は、三日月型である2つの孔辺細胞で囲まれた隙間をさします。
一般的には葉の裏側に多く分布しており、昼は開いており、夜は閉じています。
(とはいえ、呼吸で使うためずっと閉じている、ということはありません)
開閉は、孔辺細胞の形が変化することで行われますが、この仕組みは詳細に扱う必要はありません。
細胞壁の厚さが均一ではないからおこるんだよ、と伝えれば十分でしょう。
(水圧の違いで、膨らみ方が変わる性質を利用しています)
蒸散の計算問題
蒸散の実験問題で最も出題されるテーマは「ワセリンを使った蒸散量の計算問題」です。
パターンがわかれば簡単に解くことができますから、ぜひ得点源にしてもらいましょう!
(例題)
試験管A~Dに、葉の大きさと枚数などが全て同じ植物を入れ、以下の条件で実験を行いました。
・水面には植物油を浮かせる
・Bは葉の表側にワセリンを塗った
・Cは葉の裏側にワセリンを塗った
・Dは葉を取り除き、切り口にワセリンを塗った
その結果、蒸散量は以下の通りとなりました。
A:4.0mm B:3.0mm C:1.5mm D:0.5mm
(1)なぜ水面に植物油を浮かせたのか、説明しなさい
(2)葉の表側から蒸散した量を求めよ
(3)葉から蒸散した量を求めよ
(4)植物に袋をかぶせて実験した場合、結果はどうなるか予想して、説明しなさい。
(解答)
(1)水面からの蒸発を防ぎ、正確なデータを得るため。
※ここであえて油を入れず、代わりにガラス棒を入れる問題もあります。
その場合、水面の蒸発量も計算する必要があることに、注意が必要です。
なお、ガラス棒を入れる理由は“試験管の表面積を等しくするため”です。
(2)、(3)
以下の表を作って考えます。
|
表 |
裏 |
くき |
結果 |
A |
○ |
○ |
○ |
4.0 |
B |
× |
○ |
○ |
3.0 |
C |
○ |
× |
○ |
1.5 |
D |
× |
× |
○ |
0.5 |
表より
茎の蒸散量は0.5mm
葉の表側の蒸散量は1.5-0.5=1.0mm
葉の裏側の蒸散量は3.0-0.5=2.5mmであることがわかります。
よって、
(2)1.0mm
(3)2.5+1.0=3.5mm が答えとなります。
(4)袋の中が水蒸気で満たされるため、試験管ごとの差が小さくなると考えられる。
※蒸散量は大気の影響をうけます。
その中で最も大きな要因は、水蒸気量。
飽和水蒸気量になると蒸散ができなくなってしまいます。
参考:http://www.juku.st/info/entry/682
今回のケースでは、袋内の湿度がどんどん高くなってしまうため、
一定度の時点で蒸散が行われなくなることが考えられます。
まとめ
呼吸と光合成は対の反応になっている
呼吸を調べる実験考察は頻出なので、確実に押さえる
蒸散の目的を3つ、しっかり理解させる
蒸散の計算問題は、慣れさせることが重要
(文中問題の解答)
・新鮮な葉を入れても、同様の結果となる、
なぜなら、光の当たらない場所においているため、光合成が行われないためである。
・BTB液を使う方法が考えられる。
(呼吸が行われていれば、二酸化炭素が溶けて黄色になるはずである)
また、二酸化炭素用気体検知管を使えば、具体的な数値で増減がわかる。
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