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理科の最強指導法19 -植物編ー 「種子のつくり」

小学生

2021/12/17

種子のつくりから実験考察まで!幅広いテーマをどう教えればいいか?

講師の皆様、こんにちは!
3回にわたり「植物の化学反応」を扱ってきました。

ここからは“中学入試ならでは!”といえる、観察を中心としたテーマを扱います。


初回は「種子のつくり」です!

参考
花のつくり:http://www.juku.st/info/entry/1188
根・茎のつくり:http://www.juku.st/info/entry/1236
葉のつくり:http://www.juku.st/info/entry/1248

特に生徒がやってしまう失敗例

種子のつくりを覚えていない

比較考察の考え方を理解していない

内容的に難しいところはありませんが、分類と同じぐらい“記憶から漏れやすい”単元です。

これは小4~小5で扱うため、小6ではほとんど復習をしないことが原因です。

しかし、それはとてももったいない失点の仕方です!

復習すれば、小問で出されやすく簡単なテーマですから、すぐに得点に繋がります
植物が苦手な生徒にこそ、しっかり学習してもらえるように指導していきましょう!

授業でのポイント・伝えるテクニック

種子のつくり

種子は大きく、有胚乳種子と無胚乳種子に分けることができます。

この違いは「養分をどこに蓄えるのか」によって決まっています。

最初に、それぞれの違いを見てみましょう。

 

・有胚乳種子
胚乳に養分を蓄えるもの。
多くの場合、胚乳が種子の90%近くを占めている。
イネ・ムギ・トウモロコシ・カキなどが代表的。
被子植物の単子葉類と、裸子植物が該当します。


・無胚乳種子
子葉に栄養分を蓄えるもの。
有胚乳種子と違い、子葉が小さい植物もある(アサガオなど)
ダイズ・カボチャ・ヘチマ・ヒマワリが代表的。
被子植物の双子葉類(カキを除く)が該当します。

 

種子の養分の違い

次に、種子に含まれる養分の違いを確認していきましょう。

種子はでんぷん、タンパク質、脂肪のいずれかで養分を蓄えています。

代表的なものはきちんと覚えましょう。

でんぷんが主であるもの:イネ、トウモロコシ、アズキなど多くの植物
タンパク質が主であるもの:ダイズ
脂肪が主であるもの:ゴマ、アブラナ

 

この時、必ずヨウ素でんぷん反応についても触れてあげてください

ヨウ素でんぷん反応とは、でんぷんに触れることでヨウ素液(薄い黄色)が赤紫色に変化する反応を指します。
メカニズムは、でんぷんのらせん構造の内部にヨウ素分子が入るため。
これは生徒に伝え、併せて“加熱するとどうなる?”と考えさせてもよいでしょう。
(答え:らせん構造がほぐれ、色が戻る)

加えて種子の図を黒板に描き、どこが青紫色になるのか、考えながら塗り絵をさせるのも良い授業になります(やや低学年向け)

(参考)酵素の力
養分の蓄え方の違いは、生存戦略の違い。
その反応を支えているのが「酵素」とよばれる生体触媒です。
※触媒…自らが変化することなく、他の物質を変化させるもの
酵素は数千種類もあると考えられており、それぞれが有機的に連携して物質を分解・合成しています。

(参考)脂質と脂肪の違い
たまに生徒に「先生、脂質と脂肪は何が違うんですか?」と聞かれることがあります。
中学受験では同じものである、と統一して教えてもいいのですが、念のため知識として“厳密には違う”ことを確認しておきましょう。
脂質は、生物から分けることができる、水に溶けない物質を総称したものを指します
対して脂肪は、動物隊の体に含まれている栄養源である“油脂”に該当します。
生徒に伝えるときは、脂質の一部に脂肪が入っている、という理解で十分でしょう。

発芽のメカニズム

更に、発芽の流れを確認していきましょう。

原則として「幼根(ようこん)」が最初に出て、その後子葉がでてきます

この順番をきちんと覚えることが重要です。
(ただし、イネのように水中で発芽する植物は、最初に子葉が出てくることに注意してください。)
また、種子の養分は、発芽のみならず、芽生えてからしばらくの間、成長にも使われます

 

(参考)増え方は種だけではない?
植物は基本的に「種子」で増えますが、それ以外の方法で育つものもあります。
例えば、サツマイモやアジサイは茎からも増やすことができますし、ヒヤシンスのように球根で増える植物もあります。
また、面白いのがタンポポ。
主根を切って水につけておくと、葉が出て成長をはじめます
簡単にできる実験ですので、ぜひ生徒にも試させてみてくださいね。

発芽の考察実験

ここで2つ、代表的な実験考察を取り上げていきます。

最初に、必ずテキストに載っている“種子の発芽実験”を教えましょう。
ローレベルであれば基本問題まで、ハイレベルなら応用問題まで進めましょう。
なお、解説の際に話すべき重要事項を「※」として補足してあります。

インゲンマメの種子を、以下の5つの条件に置いた。

 

A

B

C

D

温度

20

40

20

20

半分が浸かる程度

半分が浸かる程度

種がつかるぐらい

半分が浸かる程度

肥料

×

明るさ

結果

発芽した

発芽しなかった

発芽しなかった

発芽した

【基本問題】
(1)AとBを比較することで、どのようなことがわかるか。
(2)AとCを比較することで、どのようなことがわかるか。
(3)AとDを比較することで、どのようなことがわかるか。
(4)発芽に必要な条件を3つ述べよ。

【応用問題】
(5)明るさが発芽に影響するかどうか、調べる実験方法を述べよ。
(6)温度が5℃の場合、発芽すると思うか。理由も含めて述べよ。

(解答)
(1)温度が高いと、発芽しなくなる。
 ※これ以外の解答は×になります。(問題に条件を比較するよう指示されているため
  例として、植物は20℃が最適温度である、植物が発芽するには温度が必要である、は
   いずれもこの実験だけでは判別できないため、間違いです。

(2)水は、種がつかるぐらいだと、発芽しなくなる。

(3)肥料は発芽に関係ない。

(4)水、適温(最適な温度)、空気(酸素)
 ※発芽の3条件は覚えさせなくてはいけません。
  なお、成長するためには、発芽の条件に加え、日光と肥料も必要です。

(5)暗室にAと同じ条件の装置を組み立てる。
 ※明るさ以外の条件は、揃えなければならないことをきちんと記述させるようにしましょう。

(6)発芽しない。なぜなら、温度が低すぎるからである。
 ※冬に発芽する種子がないから、という解答でも良いでしょう。

比較実験を教えるときに、意識して頂きたい点は2つです。

・表を書いて整理すること
 この問題で示したように、条件に分けて表を書く
・比較する際は1つだけに絞る
 実験考察の基本は、条件を一つだけ変えて実験することである

(参考)どうしてイネは水中で発芽できるのか?
入試問題ではよく「イネが例外的に、水の中でも発芽する」ことが問われます。
ローレベルではこれだけを覚えさせてもいいのですが、講師としては理由もぜひ知っておいていただきたいところです。
イネはそもそも、発芽に必要な酸素量が少なくなるよう進化してきました。
具体的には、嫌気状態でもでんぷんをグルコースにする酵素が働くためと考えています。
(現在は、無酸素状態でも、80%が発芽可能と考えられています)
ただし、酸素が多い方が、根の成長は速くなります。
そのため農家では種から蒔く「直播き」ではなく、イネを育苗してから田植えを行っています。

成長の考察実験

もう1つ、重要な実験として「成長条件を調べる」実験考察を扱いましょう。


肥料や日光がインゲンマメの成長にどのような影響を与えるか調べるため、
2週間かけて以下のように条件を変え、実験を行った。

 

A

B

C

D

日光

×

×

肥料

×

×

葉の数

 

 

 

 

葉の大きさ

 

 

 

 

茎の様子

 

 

 

 

【基本問題】
(1)それぞれの葉・茎の様子を、表に記入しなさい。

【応用問題】
(2)今回は買ってきた肥料を使ったが、自然界ではどのように肥料は作られるのか。
  「微生物」を用いて、30字程度で答えなさい。
(3)Aを更によく成長させるには、土にある工夫が必要である。
  その工夫を考え、30字程度で答えなさい。

(解答)
(1)以下の通りとなる。

葉の数

多い

少ない

少ない

ない(枯れる)

葉の大きさ

大きい

小さい

小さい

ない(枯れる)

茎の様子

太い

細くて短い

細くて長い

黄色くなっている

ポイントとなるのは、BとCの違い
 Bは肥料が不足しているので、成長の速度が遅くなります。
 Cは日光が不足しているので、成長そのものができません。(光合成ができないため)
 ですから、Cは種子に残された栄養素すべてを使って、光を求めようとします。
 結果、茎の長さが異様に長い形となります。

(2)生物のふんや死骸が微生物により分解され、肥料がつくられる。(29文字)
 ※「微生物」「分解」の2つをキーワードとして、必ず使うようにしてください
  肥料が必要な理由(植物が合成できない栄養素があるから)についても、
  考えさせる時間を設けましょう。
  ハイコースであれば、肥料には「窒素、リン酸、カリウム」が3大要素と呼ばれ
  必須であることや、分解者の定義について再確認しても良いでしょう。

(3)粒の大きさを不均一にし、水や空気を適度に含むようにするとよい。(31文字)
 ※砂だけだと、粒の間の隙間が大きすぎて、水を含むことができません。
  また、粘土だけだと、粒の間の隙間が小さすぎて、空気を含むことができません。
  だから、混ぜると最も成長に良い土になります
  時期にもよりますが、私は「実際に実験してみよう!」と話し、植物に興味を
  持ってもらうきっかけ作りに使っています。
  ちなみに、土が違うと味も変わるんですよ!
  二十日大根のような簡単な作物でいいですから、講師の方もぜひ試してみてくださいね。

 まとめ 

 種子に関する問題は、つくりと発芽のメカニズムが出題される

実験考察では、比較する部分を見極める


他のおすすめ記事
・理科とは何をする学問か?(本連載の初回になります)
 http://www.juku.st/info/entry/657
・教案の作成テクニックがまとめられています
 http://www.juku.st/info/entry/992

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