さぁ最終回。季節の特徴をまとめましょう!
講師の皆様、こんにちは!
“中学入試ならでは”といえる、観察を中心としたテーマも最終回。
今回は「季節による植物・動物の変化(冬)」です。
※「特に生徒がやってしまう失敗例」は春とほぼ同じであるため、省略いたします。
→理科の最強指導法20「季節の特徴(春)」
理科の最強指導法21「季節の特徴(夏・秋)」
も参考にしてくださいね。
授業のポイント・伝えるテクニック
冬の植物・動物
草本類の様子
冬で最も重要なのは“冬越し”の方法と、その理由。
生き物にとって最も厳しい寒さをしのぐため、動物も植物も知恵を振り絞ってきました。
以下の表に、冬越しの仕方をまとめました。
テキストに掲載されていなければ、このように表に整理して教えてくださいね。
秋までに種をつくり、種で冬を越す。 |
アサガオ、ヘチマ、コスモス、イネなど |
秋に種から芽をだし、未成熟な体で冬を越す。 |
エンドウ、ムギ、ホウレンソウなど |
葉を地面に這うように広げた状態(これをロゼットと言います)で冬を越す。 |
タンポポ、ヒメジョオン |
地下の茎や根を残した状態で冬を越す |
サツマイモ、ジャガイモ、ハス、チューリップ |
また、多くの植物が枯れる中、花を咲かせている植物が目立つ季節となります。
冬に花が咲く植物としては、サザンカ、ヤツデ、ハボタンは最低限、覚えてもらいましょう。
樹木の様子
冬になると、樹木は冬芽(とうが、ふゆめ、どちらの読み方でも正解です)を作って冬を越します。
これは、あらかじめ芽をつくっておくことで、春になってからすぐに成長することができる工夫です。
冬芽の形として入試に出題されやすいのが、サクラとトチノキ。
サクラは鱗片に覆われていること、トチノキは鱗片がねばねばしていることは伝えましょう。
(参考)冬芽の写真がわかりやすく掲載されています
http://tskk.exblog.jp/tags/%E5%86%AC%E8%8A%BD/
動物の様子
昆虫も植物同様、冬越しをします。
これは昆虫が変温動物であるため、活動が制約されるからだと考えられています。
授業では“昆虫の姿”と“場所”の2つの軸で整理して教えてあげるとよいでしょう。
(たまごで土の中ならバッタ、幼虫で土の中ならカブトムシ…のように、順を追って説明します)
【姿】
卵…カマキリ、コオロギ、バッタ
幼虫…カブトムシ、トンボ、ミノガ(みのむし)
さなぎ…モンシロチョウ、アゲハチョウ
成虫…テントウムシ、アリ、ハチ、タガメ
【場所】
土の中…コオロギ、バッタ、セミ、カブトムシ
水の中…ギンヤンマ(やご)、タガメ
葉のうら…カマキリ、ミノガ、チョウ、テントウムシ
(参考)哺乳類の冬眠
哺乳類は原則、冬眠をしませんが例外的に冬眠をする生物もいます。
以下にその特徴をまとめましたので、ハイレベルでは必ず扱うようにしましょう。
1 ヤマネ・コウモリ型
秋に脂肪を蓄え、冬眠中は体温を0℃近くまで下げる。
10日に1回程度の間隔で目をさますが、餌をとるわけではない。
体が小さいとこのタイプになりやすい。
2 リス型
基本は1と同じだが、秋に脂肪を蓄えることをしない。
そのため、事前に食料を隠しておき、目を覚ますと食料を取りにいく。
3 クマ型
冬眠中にほとんど体温を下げないことが特徴。
秋に蓄えた脂肪を分解することで、冬眠期間を乗り越える。
また、目を覚ますことが無い。
冬眠の意義
先ほど紹介した哺乳類ばかりでなく、魚類や両生類など、変温動物のほとんどは冬眠します。
この期間は代謝が極端に減り、移動もできないため、生き物にとって不利なはずですよね。
では、どうして冬眠は行われるのでしょうか。
まず、季節によって得られる食物量が大きく変動する生物は、一般的に冬眠します。
具体的には、植物(草本類)や昆虫を餌とする動物があたります。
これらの食物は、どれも供給される時期が限られ、特に冬に乏しくなります。
ですから、食物が豊富にある時期に、脂肪という形で体内に蓄積することで、生存確率を高めているわけです。
また、冬眠は捕食者から自らを隠す手段にもなります。
エゾシマリスの場合、活動期間中にはおよそ50%の個体が捕食されるなどして死亡するのに対し、冬眠期間中は5%以下ととても低くなります。
このことから、冬眠が対捕食者対策として有効であることがわかります。
季節変動と日照変動を絡めて説明する(季節の変化まとめ)
ここまで、3回にわたり季節ごとの特徴を追ってきました。
季節変動が生物にどのような影響を与えているか、整理してみましょう。
日本は季節が大きく変動する、とても珍しい国です。
生き物の目的は「自分を長生きさせる」ことと、「種の保存をする」こと。
そのため、季節の状態に合わせて生物は様々な進化を遂げてきました。
冬
日照時間も短いですから、生き物にとって厳しい季節となります。
変温動物にとっては自分の活動範囲が狭まりますし、植物や昆虫を餌としている動物にとっては、食料も得にくくなります。
そのため、様々な冬越しの方法を考え付くようになったわけですね。
春
春になると、日照時間と気温が一気に伸びていきます。
このタイミングで昆虫が孵化・羽化することが多いため、虫媒花の植物はいっせいに花を咲かせるようになります。
つまり、生き物の動きが活発化していく時期になっていきます。
梅雨
6月は夏至と梅雨と重なり、植物の成長に最適な季節です。
多くの植物は葉を繁らせるとともに、どんどん茎を伸ばしていきます。
(茎を伸ばせば、他の植物より多くの日光を得ることができ、光合成を盛んに行えるため)
夏
夏は昆虫など変温動物の最盛期です。
体温を高い状態で保つことができるため、非常に活発に動くことができます。
その結果、この時期に交尾する昆虫が多くなるわけですね。
ただし近年では温暖化の影響で、あまりにも温度が高くなりすぎる傾向があります。
そのため、昆虫の活動が8月から9月にずれ始めていることは、講師として知っておきましょう。
秋
秋になると冬越しするための準備がすすんでいきます。
落葉樹であれば葉を落としますし、種子で冬越しする場合は、種子を作っていきます。
受験対策上、覚えなければならない部分はたくさんあります。
ですが、無味乾燥に丸暗記を強いる分野では決してありません。
資料集や写真などを用い、季節の変化を“面白い!”と感じてもらえるようにしましょう。
また、講師としては可能な限り、知識が定着しやすいようにストーリー展開を作ってあげる必要があります。
ぜひ先述した1年の流れを頭に入れながら、「どうして○○しなければいけないのか」「次はどんなことをするのか」と問いかけてあげてください。
受験生への対策法
ここまでお伝えしてきたのは、あくまで“初めてor2回目に学ぶ生徒”に対する授業法です。
受験生、特に受験直前の場合は、ここまで悠長に説明することは難しいと思います。
そこで、最後に受験対策で必要なことをまとめていきます。
最初に、受験直前には、
- 演習を通して知識の確認を行ってから、解説に入りましょう。
知識の抜けがほとんどない・単なるケアレスミスだった場合は、あえて答えあわせだけにしてしまうのも1つのテクニックです。
「解説しない」ことを恐れず、わからなかったら自分で調べなさい、と突き放しても構いません。
この分野は、1問1答のように覚えれば解ける問題が多数あります。
自らわからない点を調べ、覚える生徒に育てていきましょう。
次に、
- 図表を用いた問題をたくさん解かせてください。
入試において、この分野はイラストを見て解答する問題が非常に多くみられます。
ですから、イラストを見て植物名や生態を判断できるように、教えていきましょう。
(どうしても白黒のイラストはわかりづらいものです。近年はカラー印刷してくれる学校も増えましたが、まだ少数派。白黒でも解けるように訓練したほうがいいでしょう)
仕上げに、
- 受験校の過去問を解いてもらいましょう。
学校によって季節の変化は偏りが見受けられ、よく出題される植物が違うことがあります。
(Aでは草本類が多いのに、Bでは昆虫の実験考察が多いなど…)
知識を入れた状態で、実際に問題を解いてもらうことで、自分の学力を客観的に評価することができます。
なお、注意して頂きたいのは、この分野で満点を取るのは極めて難しいということです。
かつて、塩麹がブームになった時は、微生物や細胞など、範囲を逸脱した問題も散見されました。
このような問題は作問者が高得点になりすぎるのを防ぐために出題したものですから、
無理に覚える必要はありません。
受験対策であれば、8割が解けるようになれば十分です。
細かい知識を深追いするのではなく、テキストに載っている範囲に漏れがないように勉強してもらいましょう。
まとめ
冬は冬越しの仕方と、その理由を真っ先に理解させる
季節の変化をストーリー仕立てで教え、生徒の知的好奇心を刺激する授業が望ましい
受験対策は演習を中心に。満点を取る必要がないことを必ず伝えること
【理科の最強指導法シリーズ-植物編ー】
・「根・茎のつくり」→こちら
・「葉のつくり」→こちら
・「光合成」→こちら
・「呼吸・蒸散」→こちら
・「種子のつくり」→こちら
・「季節の特徴(春)」→こちら
・「季節の特徴(夏・秋)」→こちら
その他、地学編など、理科講師必見のコンテンツが満載です!
「最強指導法」で検索してみてくださいね。
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