【番外編】は「教えもれ」を防ぐ総まとめ!
講師の皆様、こんにちは!
夏期講習も終盤にさしかかり、徐々に受験生が過去問を解き始める時期ではないでしょうか。
この時期に怖いのが”教えもれ(抜け)”と呼ばれる現象。
これは、講師として教えるべき内容を、教えずに夏を終えてしまうこと。
受験生にとっては、夏が最後の”授業を受けることができる時期”になります。
秋以降は演習を中心とした対策が必要であるため、自ずとできることが限定的になってきてしまいます。
ですから、私たちは教えもれがないように指導を行う必要があります。
とはいえ、新人の先生にとっては、教えるだけで精一杯になってしまい、とてもカリキュラムまで手が回らないかもしれません。
また、以下のように感じる方もいるのではないでしょうか。
「テキスト通り進めていれば問題ないのでは?」「個別指導で優先的に○○を指導するように言われたのだけれど・・・」
残念ながら塾で用意するカリキュラムは「平均的な学力の生徒」にしか対応していないものです。
そのため、学力差があったり、算数が苦手だったりする生徒には、追加の学習支援が必要になります。
また、中学・高校受験は1科目で終えることがほとんどできません。
ですから、指導する科目以外の学力についても注意を払い、もし課題がありそうであれば確認をしてあげる必要があります。
今回は、
「夏休み中に終わらせておきたい理科範囲」をもれなく伝授!
生徒の指導校レベルに応じて、必要なレベルもあわせて確認できるようになっています。
今回の記事を活用して、理科の教え漏れがないか、今一度確認しましょう!
物理分野
まず、教えておきたいのは「てこ・滑車・輪軸・浮力」の4テーマ。
いずれも力学と総称される分野ですが、ここは夏の間に必ずマスターさせる必要があります。
なぜなら苦手な生徒が多く、得点をとるのに演習量が必要なテーマになるからです。
志望校の難易度があまり高くない生徒には、
「てこと滑車の複合問題(装置の重さを考えなくてもよいもの)」を解けるように、
やや高い生徒には、
装置の重さを考える問題を解けるようにしてもらいましょう。
最難関校を狙う生徒には、過去問演習がおすすめです。
かなり特殊な問題が出題されていますから、実際に解いて確認することが重要です。
(最難関校の場合、これはどの分野においてもいえることです)
続いて、生徒が苦手とする「電気回路・電磁石」も時間をかけてじっくり教えたい分野。
ここで得点がとれるようになると、合格をぐっと引き寄せることができます。
とはいえ、生徒の学習レベルにかなり差がある単元になります。
個別指導の場合は、
小テストなどを通して、生徒の学力を正確に把握して指導に挑みましょう。
集団指導の場合は、
ロークラスであればできない生徒を基準に演習を行い、
ハイクラスであれば上位30%の生徒が理解できるように応用問題の解説を行うとよいでしょう。
学習目標としては、以下の順に指導をしていきましょう。
・全員が合成抵抗を理解する(それ以外の基礎問題は反射で解けるように!)
・磁力線の向き・電磁石の性質を理解する(できればモーターも)
・ブラックボックスやスイッチが複数ある回路を扱う
・電流量・電気抵抗と発熱量の関係性を理解する
・電磁誘導について扱う(これは最難関校狙いの場合のみ)
また、余力があれば、光と音・物体の運動にも取り組ませたいところです。
先ほどの2単元に比べれば出題頻度は下がりますが、大問として出題されることが多いテーマですから、学習漏れがあると即、致命傷になりかねません。
特に鏡面反射の作図・凸レンズの作図・斜面の運動の3点は、どの生徒も理解しておきたいテーマになります。
化学分野
どの学校にも頻出かつ重要になるのが、中和計算・水溶液の知識の2点です。
この2つについては、絶対に扱い、かつ繰り返し演習を行うことで、基礎的な問題は全員ができるように指導しましょう。
具体的には、レベルに応じて以下の順に展開していくとわかりやすいです。
・水溶液の知識(液性・通電性・溶けている物質の3点は必須です)
・塩酸と水酸化ナトリウムを入れた中和計算(特に、水酸化ナトリウムが余る場合においてミスが目立ちます。きちんと理解すれば誰もが満点を目指せますから、根気よく指導しましょう)
・濃さが違う物質の混和
また、このとき溶解度グラフも併せて扱いましょう。
溶解度の考え方は中和に近いので、学習面での相乗効果が得やすい単元となります。
次に、気体の発生も外すことができません。
酸素・二酸化炭素・水素の発生方法は必ず書けるように指導しましょう。
また、難関校を狙う場合は水素の発生問題(計算)も必須です。
金属(アルミ・亜鉛・鉄)と液体(塩酸・水酸化ナトリウム水溶液)、どちらが不足した結果、水素の発生が止まっているのかを、グラフから読み取れるようにしましょう。
最難関校を狙う場合、燃焼の計算問題と原子・分子のつくり、イオンは外せません。
もちろん、ある程度の誘導は問題にありますが、やはり知識として知っているのと知らないのでは、解法を思い浮かぶまでの速度がかなり異なってきます。
ただ、多くのテキストには全く記述がないので、どこまで教えるのかは、教室長などと話した上で決めていくとよいでしょう。
ローコースの場合、基礎的な知識がまだ抜けている可能性もあります。
物質の三態や実験器具の使い方などを、問題を通して確認するのもよいでしょう。
生物分野
生物については、夏に”必ず取り組まなければならない”場所はありません。
なぜなら、秋以降の演習のときに補足するだけで済むことも多いためです。
よって、「なるべく物理・化学の計算問題に時間をかける」が鉄則となります。
とはいえ、その中でも是非取り組んでおきたい場所が植物の生活(光合成・呼吸・蒸散)です。
ローコースであれば基本的な反応の確認を行いますが、ミドル以上であればぜひこの時期に実験考察問題を扱うようにしましょう。
ハイコースであれば、光合成と環境条件(光の強さ・温度・二酸化炭素濃度と光合成曲線)、長日植物と短日植物の違いも教えておくと、秋以降の授業が楽になります。
また、動植物の分類・季節と生物の流れ・消化と吸収(人体)は、努力がすぐに点数に反映されやすい分野です。
成功体験を夏の間に感じてほしい生徒がいれば、まとめて確認しておくとよいでしょう。
地学分野
地学で頻出かつ、多くの生徒が苦手としている範囲は「天体」になります。
特に、月の動きについてはこの時期においても、見た瞬間にいやがる生徒が多いもの。
基礎力が低い生徒の場合は、まずは月の公転図を確実に作図・理解するように指導しましょう。
ミドルクラス以上であれば、日食と月食のメカニズムと、月が1日に48分遅れる理由をしっかり説明できることを目標とします。
月の動きがある程度理解できたら、星の動き・太陽の動きの問題も併せて扱います。
指導上のポイントは、別単元として教えるのではなく、それぞれの相違点をはっきりさせることです。
特に北の空=反時計回りであること(東~西は時計回り)を間違える生徒が多いので、計算演習を通して確認しましょう。(北の空を題材に1時間=15度、1ヶ月=30度を用いた演習)
余力があれば、気象の変化の読み取りも苦戦する生徒が増える単元です。
梅雨前線・太平洋高気圧・西高東低の気圧配置をきちんと読み取れるよう、指導するとよいでしょう。
まとめ
いかがでしたか。
「すべての範囲を十分に扱うことは難しい!」と感じた方も多いかもしれませんね。
もちろん、授業時間には限りがあります。
だからこそ、
クラス・生徒の弱点を見抜き、個々に対処してあげることで、確実に学力が上げる努力をしていきましょう。(個別に対応できる点が、生授業の良い点です!)
生徒をよく観察しながら、なるべく授業時間を有意義に使えるよう、指導を行っていただければ幸いです。
また、冒頭で”教えもれ(抜け)”がないように夏までに教えきる、と書きましたが、もし万が一もれが発覚したら、9月にすぐ教えきりましょう。
最後に老婆心ながら、体調管理には十分ご留意を。
9月以降も暑い日が続きます。
先生方も体調不良にならないよう、最後までしっかり教えきりましょう!
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