この連載では、中学受験・高校受験の地理分野で、単元毎に注意すべきポイント、良くある質問や説明の仕方について解説していきたいと思います。今回は平地についてです。
地理が歴史に影響する
そもそも日本は山がちな国土なので、平地は貴重です。そしてそれら平野のほとんどは川の堆積作用によって作られた堆積平野(沖積平野)です。平地というと平野ばかりを思い浮かべますが、台地や盆地も平地の一種です。台地はイメージしやすいのですが、盆地は凹んでいると勘違いしている生徒が多く、初習の時点でしっかり抑えたいところです。
・台地…周囲よりも標高が高い平地
・盆地…周囲を山で囲まれた平地
根釧台地のパイロットファームや牧ノ原の茶、シラス台地の畜産やサツマイモなど、単に特産であると教えるのではなくて、水はけが良く、水田に向かない土地であったという理由からそれらを作るようになった経緯を説明したいところです。また、扇状地や三角州なども平地の一種になります。扇状地は水はけが良いですが、三角州は水はけが悪いので、土地利用の方法が違うこともイメージしておきたいところです。
狩猟採集の生活にとっては見晴らしの良い台地が生活しやすく、農耕が始まると川から水が引きやすい盆地や低地の方が生活に便利になります。歴史分野への伏線として話しておくと、なぜ地理から学ぶ必然性があるのかが伝わりやすく、本質的な理解に繋がります。
なぜ「平地」が重要なのか
平地は生活がしやすいため、いくつかの条件を満たすと人が集まります。
①ある程度の面積が有り、地盤がしっかりしていること。
②生活用水・農業用水・工業用水を確保するための湖や川があること。
③生活しやすい気候であること。
これに加えて、
④交通の便がよいこと。
⑤工業原料などを産するか港・空港などの海外への窓口があること。
を満たすと、工業が発達し、都市化が進みます。多くの教材では、「工業」や「公害」を切り離してテーマ分けしていますが、四大公害病は水質汚濁からのものがほとんどですから、川と平野を学習した流れで説明しておくと、理解が深まると思います。
川と平地の関連するポイント
川と平野の問題として頻出なのが「輪中」「水郷」「クリーク」です。どれも安定して出題されるので、要チェックです。
輪中は、主に木曽三川(木曽川、長良川、揖斐川)とその支流において、洪水などによる浸水を防ぐために堤防で囲まれた集落を指します。母屋とは別に石垣など更に高い場所に作った家屋を「水屋」と言います。
水郷は水辺の居住区を指す言葉ですが、受験においては主に利根川下流域から霞ヶ浦にかけての低湿地帯「水郷筑波国定公園」を指します。この地域関連で頻出事項は台風の被害を避けるため、9月に出荷する「早場米」です。
クリークは、網の目状の水路のことで受験においては筑後川流域を指します。北海道や東北・北陸にばかり目が行きがちですが、筑紫平野や佐賀平野は日本有数の穀倉地帯です。広く分布する水田に水を行き渡らせるためには、どうしても水路が必要だったんですね。
平地はほとんどの国民が生活をしている場所ですから、日常と結びつけて理解がしやすい単元です。関係線をしっかり引きながら授業を進めることを心がけると良いと思います。