特集記事のサムネイル画像

中高受験地理のポイント⑤気候

小学生

2021/12/17
この連載では、中学受験・高校受験の地理分野で、単元毎に注意すべきポイント、良くある質問や説明の仕方について解説していきたいと思います。今回は気候についてです。
 

気候を決めるもの

まず、気候の三要素は「気温」「降水量」「風」です。そしてそれらは、緯度と海抜高度、地形、海流によって決定します。よく日本列島は「南北に細長い」という記述を見かけますが、実際には「北東から南西へ」細長く、本州・九州・四国に関しては面している海・海流によって大きく気候が変わります。
日本のまわりの海流として「千島海流(親潮)」「日本海流(黒潮)」「対馬海流」「リマン海流」が同列に扱われることがありますが、実際はリマン海流の影響は少なく、日本海側は九州から北海道まで対馬海流の影響を強く受けています。
 
気候は農業など産業への影響が大きいことも示唆しておきたいところです。特に稲作における日照時間は重要で、日照り続きは干害に直結すると思われがちですが、ダムやため池などを利用した灌漑用水さえ整っていれば、日照り続きの方が豊作になる傾向があります。
 
また、日較差や年較差も質問が多いので抑えておきたいところです。陸の方が暖まりやすく冷めやすいため、内陸では大きく、海側では小さくなります。ここまでは分かりやすいのですが、特に熱帯地方や冬期の盆地などの場合、年較差に比べて日較差が大きくなります。その理由は、放射冷却といって、夜明け近くに急激に地表の温度が下がります。そのため地表から離れた上空部分の気温が高くなる逆転現象が起きます。甲府盆地や長野盆地など標高の高い斜面に果樹園を作るのは、この現象を利用しています。
 

季節風と局地風の影響

 季節風(モンスーン)は、季節により風向きが逆になるという特徴があります。夏は海から大陸へ、冬は大陸から海に向かって吹きます。日本の場合は、国土をまたいで風が吹くため、夏は南東から北西へ、冬は北西から南東へ吹くことになります。
 
また、季節風と混同して教えているのを目にするのが「局地風(地方風)」です。中高受験では以下の3つを抑えておけば大丈夫でしょう。
 
やませ・・・北海道南東部や三陸方面初夏に吹き下ろす寒冷風。冷害の原因になります。
おろし・・・冬に山から吹き下ろしてくる乾燥寒冷風。関東地方のからっ風もこの1つ。
フェーン・・・山を越えて吹き下ろす高温乾燥風。北陸や東北では雪を融かし、水田に水を供給する。
 
もう一つ間違えやすいポイントが、冷害についてです。やませの説明にあるように、冷害が起こるのは夏です。夏に気温が上がらないことによって作物が育たないことを指します。稲作の場合、春に田植えをして秋に収穫をするので、冬の気温は直接の影響を受けませんので注意が必要です。
 

◆雨温図の読み方

 降水量とは、雨だけはなく、雪や雹など降った水分を水に換算した合計量を指します。その際、どこにも流れずに溜まった場合の水深を「mm」で表します。例えば、三重県の尾鷲は日本で代表的な豪雨地域で、1年間の降水量が5000mmを超える年もあるのですが、水が流れなければ水深5mの水が溜まるということです。
 
基本的なことですが、雨温図は左右の縦軸で目盛の意味が違います。ここで躓く生徒は多いので、どちらの目盛がどちらのグラフに対応しているのかをしっかり認知させたいところです。そこまでできたら、以下の方法でグラフを読むと気候や地域を特定しやすくなります。
 

★雨温図問題のポイント

まず気温だけを見て以下の3つの地域を特定します。
 
①平均気温20℃以上の月が8ヶ月以上ある→南西諸島の気候
②平均気温0℃以下の月が3〜4ヶ月ある→北海道の気候
③平均気温0℃以下の月が1〜2ヶ月ある→中央高地の気候
 
次に残ったものの降水量に注目します。
 
④冬の降水量が夏よりも多い→日本海岸式気候
⑤夏の降水量が冬よりも多い→太平洋岸式気候
⑥一年を通じて降水量が少ない→瀬戸内式気候
 
日本海岸式気候や太平洋岸式気候のグラフは、1つの問題中に複数ある場合があります。その時は平均気温が高い方が低緯度だと判断すれば良いでしょう。
 
かつて中学受験で気温を棒グラフ、降水量を折れ線グラフで表した雨温図が出題されたことがあります。それぞれのグラフの意味を考えれば若干非常識な悪問ですが、それに気付くくらいグラフを読みこなせるようになれば、理科系の力にも影響します。
 

都市気候

最近注目されてきているのが、都市気候と呼ばれるもので、市街地特有の環境汚染が問題視されています。受験でよく出るのは「ヒートアイランド」と呼ばれる都市気温が高くなる現象で、郊外より市街地のほうが早朝の最低気温が高く、等温線の形状が島の等高線に似ていることからこう呼ばれています。都市気温以外にも、市街地のほうが弱い雨や霧の日数は増加する傾向があり、湿度は低く、日射量も少なく風も弱くなる傾向があります。

これらの原因として考えられているのが、温室効果ガスや細塵、汚染物質による光化学スモッグや建造物による気流の乱れや、構成物質の違いが影響しているのではないかといわれています。環境問題や災害問題と関連させて押さえておきたいところです。
 

キーワード

関連記事

新着記事

画面上部に戻る