非常勤講師の空きコマ活用・時間外対応ってどうしてる?
明けましておめでとうございます!国語科講師の中林です。
年末年始、私は嫁の実家の新潟にお邪魔して、美味しい日本酒を大量に頂いて、大変満足な時間を過ごさせて頂きました(笑)
昨年はコロナやオミクロンなどと色々あったため、教育業界自体も大変な状況ではありましたが、そんな中でも大学入学共通テストは実施されましたし、受験生の努力が報われる機会が無くなることは無いという事を改めて実感し、少しほっとしています。
受験は子供たちの進路決定に関わる大事な行事なので、どんなトラブルがあってもそれに向けて子供達に変わらず学力を磨き続けさせることは大事なことですね。何しろ彼らが明日の日本を作っていくのですから!
さて、今回は、学校の非常勤講師として働く際の空きコマの活用方法や質問の対応方法についてお話ししていきたいと思います。
中林 智人 なかばやし ともひと
高校教師から塾講師・予備校講師に転身し、現在は河合塾・早稲田予備校にて国語を担当しつつ、都内の高校で非常勤講師としても活躍。講師業だけでなく執筆なども行う。「納得できる知識・論理的読解技術」「制限時間内に問題を解き偏差値を上げる戦略」「楽しく国語を勉強できる面白ネタ」をモットーに日々生徒に向き合っている。
目次
・非常勤講師の空きコマの活用方法
・放課後の生徒の質問に、どこまで対応するべきか
・終わりに〜世の中はバランスが大事〜
非常勤講師の空きコマの活用方法
学校の非常勤講師として契約すると、学校の都合とこちらの出勤可能日等の都合を合わせた結果、どうしても授業と授業の間に空きコマが出ることがあります。私の教員経験の中でも「1限のあと6限まで空き」という日が有りました。こういう場合、学校の非常勤講師は基本的に「1コマ○○円」の契約なので、2〜5限の間は給料は一切発生しません(泣)
逆に言うと、その間は(非常勤講師にとっては一般的に)勤務時間では無いので、何をしていても良い=自由と言うことになります。
ただ、ここで大事なのは「契約書をしっかり理解しておき、どういう行動をとるか判断すること」だと思います。
非常勤講師と言っても、雇用契約をする際に勤務先の学校と交わした契約書が勤務内容の全てであり、何かトラブルが起こった場合、裁判などの指標はその契約書なのです。
非常勤講師の業務として契約書に入って無いことを勤務先から依頼されたら、それは断っても構いません。ただ、教育業(というか世の中全体に言える)は理屈だけでは回っていませんので、契約以外の様々な業務を積極的にこなすことで雇用先からの評価を得て、次年度の契約継続に繋げるか、「そういう媚び売りみたいなことはしない!あくまで授業力だけで勝負する!」ということで授業時間内のクオリティに向上に全力を出してそれ以外はキッパリお断りするか、そこは個人の考え方次第です。
・・・さて、その辺は一端置いておいて、非常勤講師として契約した後で打診された授業コマで空きがある際の時間の使い方について、お話させて頂きます。
小テスト採点・定期試験作成などの「生徒の個人情報・極秘情報を扱う」教務にあてる
昨今はどこも個人情報の管理が厳しく、小テスト・定期試験の答案・教務手帳などの個人情報に関わる資料を教員が自宅に持ち帰るのを禁止しているところが多いです。また禁止されてなくとも、これらの重要資料を外に持ち出して電車に置き忘れるなどの紛失事故を起こしたら大変です。解雇どころか訴訟にもなりかねません。基本的に生徒の個人情報を扱う仕事は職場内で行うようにしましょう。
そして私を始め非常勤講師と塾・予備校講師を両立する講師は、放課後は移動しないといけないので、学校に残って前述の作業をする時間がなかなか取れないことが多いはずです。
ですので、これらの空きコマにできるだけ「学校でしかできない教務作業」を片付けてしまう事をお勧めします。授業の予習・プリント作りなどの自宅でもできる作業より優先して学校内で片付けてしまえると効率的ですよね。
赤本・参考書・図書館の本などを閲覧する
学校という環境を最大限利用しましょう。
図書室・進路指導室・資料室等、学校には様々な本や参考書・赤本等が置かれています。それらを無料で閲覧できるのですから、どんどん活用して自身の研究をすれば良いと思います。
それが結局は勤務先の生徒の指導に生かされるのですから、学校だって文句のあろうはずがありません。生徒と一緒に講師も自己研鑽してしまいましょう。
その他
これらはあくまで一例です。非常勤講師の場合空きコマはあくまで契約時間外なので校舎外に出て外食するなり、散歩してみるなり、過ごし方はあくまで自由です。
ただし、あくまでその学校と教員として契約している立場ですので、あまり生徒に見えるところで非常識な行為をするのはやめましょう。次年度の契約更新等にも関わってきますからね。
細かいところで言いますと、喫煙をなさる先生方、昨今は喫煙所なども健康増進法の影響でどんどん削減されています。そこで、校舎外だからと言って、校舎近くの路上や共有地で不用意に喫煙すると、それを見ていた地域住民の方から勤務先の学校に苦情が来る・・・などという事も起こり得ます。第三者から見れば、非常勤講師も専任教員も関係なく、「その学校で生徒指導にあたる模範的人間像を体現する教員」に映るのが現実です。自分が教育者であるということを常に忘れない事が大切ですね!
放課後の生徒の質問に、どこまで対応するべきか
私は教員なりたての若い頃、「生徒から沢山放課後に質問が来る先生は、優秀な先生だ」と思っていました。
だから生徒から来る質問は、できるだけしっかり対応しようと思い、放課後遅くまで付き合ったりしました。もちろん無償です。「頼られることが嬉しい」この気持ちが根底にあったのです。
ただその中には「定期試験間近だけど試験範囲の内容が全然分からない。端的に解説して」とか、「別の先生の授業で分からないところがあるけど、その先生に質問し辛いから教えて」とか、本来なら安易に引き受けてはいけないような質問も多々ありました。
ここまでの記事をお読みになられているプロ講師志望の方はもうお分かりかと思いますが、こういう質問に際限なく応じていたら、掛け持ちをするプロとしてやっていけません。
「どんな質問にも時間をかけて丁寧に対応する」講師は、生徒からの評判は上がるでしょうけど、「そもそも質問が来ないような授業を展開する」事が真のプロ講師という考え方に辿り着きたいものです。
具体的にお話しします。次の生徒の質問に対して、「プロ講師ならどうするべきか」をQ &Aスタイルで提示させて頂きます。
定期試験間近だけど試験範囲の内容が全然分からない。端的に解説して
そもそも授業内容が分からないなら1回の授業の終了ごとに質問させるべき。試験直前で慌てないように日頃から自身の授業内で定期試験までの日数を逆算して計画的に対策することの必要性・毎回の授業内でその内容を完璧に理解することの必要性を説くべきです。
別の先生の授業で分からないところがあるけど、その先生に質問し辛いから教えて
それを引き受けてしまったら「その先生の本来の業務を無償で引き受けてしまっている」ことになる。
授業で生徒が理解できていないのはその授業担当者の責任です。その先生が専任の偉い先生であったとしても、分かるまでその先生の元に質問に行かせるのが本来のあり方です。それでもその先生が「これで分からないなら諦めろ」と仰るなら、それはその先生の教育方針であって、部外者が勝手にそれに反する指導をしてしまっては、逆に後から問題になるかもしれません。
あなた自身がどうしても割り切れないのであれば、その先生に直接抗議するしかありません。・・・まあ、そういう先生は得てしてプライドが高く自身の教育方針に固執されるものなので、それを指摘して変えさせるのは至難の技ではありますが・・・。
とにかく、こういう質問に無限にあなたが対応することが最善なのかは、考える必要があると思います。
この大学に行きたいのだけれど、どういう勉強をすれば良いのか?&もっと偏差値を上げたいけど、どうすれば良いか?
まあ生徒の希望する進学先もそれぞれですし、授業時間内で全ての大学の対策を話すこともできないでしょうから、こういう質問を真面目な生徒がしてきたら、しっかり対応してあげるのが良いと思います。
ただ、それにしても、できるだけ本来の授業時間内に学力の向上法・多くの生徒が進学を希望する大学の対策法なども含めて話しておくことが理想ではあります。
授業時間の中で、生徒が疑問に感じるであろう箇所を予測してそれについて説明する、痒いところに手が届く、そういう授業ができれば、間違いなくプロ中のプロ講師と言えるでしょう。
学問以外の、プライベート的な雑談目的の質問にどう答えるか?
それこそ本当に先生の方針次第ですね。そういうところから生徒との距離を縮めて授業の円滑な運営に繋げるというのも1つの方法ではあります。
講師としての貴方のプライベートを知って、貴方を人間的に気に入った生徒が貴方の授業を真剣に受けて、その生徒の成績が上がる・・・でもそれって、受け持った生徒全員に通用する方法ではありませんよね。つまり生徒に不平等感を抱かせてしまうことにもなります。また、授業以外での生徒との必要以上の交流につながって、トラブルの元になりかねません。
私はプライベートではなく授業のクオリティで生徒を惹きつけて成績を上げる講師の方が長期的にプロで居続けられると思っています。まあ、難しいところではありますが。
プロ講師として時間を切り売りして働く以上、お金にならない労働は極力遠慮したいところではありますが、だからと言って、自分を頼ってくる可愛い生徒を無碍にするのも忍びない・・・
結論としては、やはり通常の授業の中で放課後の質問ができるだけ来ないように工夫するべきだと思います。
さらに言うと「私は放課後は質問は受けないから、授業の内容をしっかり集中して理解して欲しい」とあらかじめ言ってしまうのもありですね。そうなると生徒は「やばい!あの先生の授業はしっかり聞いておかないと」となりますし、その方が結果として生徒の成績向上に繋がったりもするのです。
また、同じ生徒が何度も細かい質問をしてくる場合、それらに1つ1つ丁寧に答えるより、実はその科目に関しての根本的な考え方・学習法・コツを教えてあげる方が効果的な事があります。
例えば「Aが分からないということは、そもそもBの時点での理解が不足しているからであって、そうなってしまった原因を克服する為にはテキスト・参考書のこの部分をよく読んで理解する事が効果的である。そうすればAが言っていることも理解できるはずだよ」という感じです。
どの科目もそうですが、学問というのは様々な要素が繋がっています。例えば古文なら単語・古典文法・古典常識・場面や論旨把握などの国語的読解力などが全部結びついて本文が読めるようになるのです。
ですので断片的な疑問に答え続けるより、その生徒にそもそも不足している部分・誤った考え方などの大元の部分を指摘して、本人が自分でその問題点と向き合える解決法を示唆してあげることの方が、長期的に見て生徒の為になることが多いと思います。もちろんこちらも質問対応の時間を削ることができるので、一石二鳥です。
そしてその根本のところを指摘してあげられるようになるには、当然ですが、講師がプロとしてその科目の特性・生徒がつまづきやすい部分を深く理解している必要がありますね。研鑽あるのみです!
ちなみに、私の勤務先の学校では「ロイロノート」を導入しているので、私は授業時間外の生徒の質問はロイロノートを利用して受け付けています。自分の時間のある時に、そこに入ってきた生徒の質問に文字や画像・動画で対応しております。
考え方は様々ですが、今回はプロ講師として学校の非常勤講師と塾・予備校講師を掛け持ちされている方々向けの記事なので、その形態の業務をより円滑に進める為の方法ということでお話しさせて頂きました。
終わりに〜世の中はバランスが大事〜
前回の「非常勤講師(中学・高等学校)と塾講師の両立という生き方」でも書かせて頂きましたが、学校と塾・予備校は当然講師に求めてくるものも環境も異なります。両者のニーズをしっかり理解し、効率よく上手に答える、特に学校では講師と言っても教育者なので求められているのは授業力だけではない事が多いので、その辺は注意した方が良いと思います。
また、「先生だから生徒の為になることはなんでもしろ!生徒の為に全てを捧げろ!」という考え方は、一見熱血で素晴らしいものに聞こえますが、そういう考え方を絶対的正義とするところから昨今の教員の違法な過剰労働が産まれたとも言えます。
世の中はバランスが大事です。「生徒への愛情」は大事ですが、「先生が1人の人間として自分を大事にする」ことも同じ位大事です。どっちか片方に寄りすぎず、適切な距離感・配分を見極めて生きていくことが、大事なことだと私は思います。
自分も大事に、仕事も充実させた、素晴らしい人生を送って頂きたいと思います。
ではまたお会い致しましょう!
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