<後篇>教員になる!社会人経験者が教員免許状を取るまで
本記事は「<前篇>教員になる!社会人になってから教員免許状を取るため」の続編となります。
前篇をまだお読みではない方は是非こちらからご覧ください。
こんにちは。プロ講師の黒磯です。
今年度も、ある程度入試の結果が出揃ってきました。今年はコロナの影響を大いに受けた入試になったと思っています。
私が担当した中学生(高校入試)の中には、直前に濃厚接触者の認定となってしまい、第一志望校の入試を受けることができなくなってしまったという生徒もいました。救済措置は無いに等しいです。話には聞いていましたが、実際当事者となると、どうにかならないものかという落胆と怒りにも似た思いが込み上げてきます。どうにか、一刻も早い終息と、適切な対応を望むばかりです。皆様におかれましても、ご自愛ください。
黒磯 直行 くろいそ なおゆき
新卒で早稲田アカデミーに入社。営業部門長などを歴任し、その後スクールIEにて個別指導塾の運営マネージャー、Z会進学教室およびZ会東大進学教室にて講師として小中高に渡り幅広く指導を続ける傍ら、私立学校教員としても活躍。講師としてのキャリアは当然のことながら、運営サイドでの実務経験も豊富。20年以上塾業界に身を置いている超ベテラン講師。「社会人としての講師育成が業界には必要だ」との思いのもと、後進育成にも積極的な姿勢で取り組んでいる。
目次
・「学力に関する証明書」を確認せよ
・教員免許状に必要な単位構成は、大きく分けて3層ある!
・介護等体験と教育実習の実施期間に注意! ~社会人にとってのボトルネック~
・最後に ~大学で学びなおすという機会~
「学力に関する証明書」を確認せよ
先日の記事では、自分が取得すべき免許状の種類について詳しくお話ししました。さて、自分に最も近い免許状までの道のりは描けたでしょうか。
今回は、実際に大学をはじめとする教員養成機関にて、どんな内容をどれくらい勉強していく必要があるのかを確認していきます。
実は、教員免許状に必要な単位は、教職課程に関するものだけではないのです。
前回でも言及したとおり、過去に大学などで修得した単位が流用できる場合が多々あります。特に大卒者や中退者が一から取り直す必要がないことが多く発生します。これを知らないと、全てを一からやり直してしまい、もっと早く、そして労力的も経済的にも負担を軽減できたはずだったのに、というお話は枚挙にいとまがありません。せっかく過去の自分が積み上げたものですから、有効に利用していきましょう。
教員免許状に必要な単位構成は、大きく分けて3層ある!
教員免許状を取得することを決めたら、既卒・中退の方は、まず、「学力に関する証明書」を所属していた大学や短大に請求して手に入れてください。請求の仕方や発行手数料などにについては、各大学・短大のHPなどで案内があるはずです。
例として私の学力に関する証明書をあげておきます。
これは、教員免許状を取得するために編入した、日本大学通信教育部でのものですが、この学力に関する証明書の書式は、どの大学でも統一の仕様になっているため、ご自身が手に入れた証明書と構成・文言の全てが同じになっているはずです。
どの項目を何単位修得すればよいのかは、「教育職員免許法」という法律で一律に決められています。そして、その単位構成は、大きく分けて3つあります。この学力に関する証明書とは順番が違うのですが、1つずつ見ていきます。
1.教科及び教科の指導法に関する科目等
教科に関する専門的事項
教科の専門性を担保するための単位です。
この項は、教職課程ではありません。実はこの単位は、通常の卒業単位に含まれる場合がほとんどです。
英語の場合、「英語学」など、4項目に関しての知識を得るための単位が充足されていることが求められています。この項目は、教科によって異なります。
私は、結果的に日本大学で全部の項目に関して充足させていますが、例えば、過去に在籍した大学等で「英語学」と「異文化理解」について充足していた場合、これら2項目は、改めて修得する必要がありません。残りの2項目に関して充足していけばよいということになります。
この項目に限らず、過去に充足したものは、その単位を流用でき、不足している単位のみを履修していくことになります。
私の証明書でも、日本大学では単位が認定されていない項目がありますが、これは、以前通っていた大学で既に単位を充足していたため、日本大学では履修しなかった部分なのです。最短かつ効率よく免許状にたどりつくために、必ず何が不足しているのかを十分確認してから、履修登録をするようにしてください。
各教科への指導
これは、教職課程の一環として授業を実施する大学や短大がほとんどです。過去に教職課程を履修したことがなければ、一から単位を積み重ねていく場合が多いです。
2.教育職員免許法施行規則第66条の6に定める科目
この項は、教職員免許状を取得する人が全員修めなくてはならない科目です。
「日本国憲法」「体育」「外国語コミュニケーション」「情報機器の操作」の4項目あります。これも、教職課程を履修していなかった方でも、該当の授業を過去に修めていれば有効となります。
特に、「体育」「外国語コミュニケーション」に関しては、多くの大学や短大で卒業必修科目にしていることが多いので既に履修済みの方がたくさんいると思います。逆に、「日本国憲法」に関しては、法学部初め、社会系の学部であれば必須となることが多いですが、特に理系学部出身の方だと、未修になっていることがあります。また、「情報機器の操作」も、当時はまだ授業自体が設置されていなかったという世代の方もいらっしゃるかも知れません。
これら上記2項目に関しては、必ずしも教職課程でなければ履修・修得出来ない科目ではないものが多く含まれます。ここが、先述した「過去の自分が積み上げたもののおかげで、負担軽減になる」部分です。
3.教育の基礎的理解に関する科目等
この部分が、いわゆる「教職課程」と呼ばれるものです。
この項も、教科関係なく、全ての免許取得希望者が履修・修得しなくてはならないものです。
専門教科からは離れて、「教育学」という観点や「学級運営」「カウンセリング」「総合的な学習の指導」「特別活動の指導」また、「発達学」「特別の支援を必要とする生徒への対応」と、教員として身につけて置かなくてはならない知識の修得が求められます。「教育実習」もこの項目に含まれます。
こちらも過去に教職課程を履修していながら途中で断念した場合は、既に履修済みの項目に関しては改めて履修・修得する必要はありません。その分、負担も軽減されることになります。
なお、平成31年度より、新しい教職課程(新法)が実施されています。それよりも前に履修した項目に関しては、該当する単位に充当されます。これを「読み替え」といいます。
しかし、新法により、項目の追加(「総合的な学習の指導法」・「特別の支援を必要とする幼児、児童および生徒に対する理解」の2項目)がありました。また、「教職の意意義及び教員の役割・職務内容」に関しては、新法における理解が必要なものとなりますので、この3項目に関しては、仮に平成30年度以前(旧法)に履修をしたとしても、新たに履修・修得が必要です。
高校免許状と中学校免許状の単位は、ほぼ共通
ここまで読んでいただいた方の中には、「これを中学と高校の免許状でそれぞれやらなくてはならないのか」とお考えになった方もいらっしゃるかもしれません。
そんなことはありません。実は、共通なのです。該当単位を修得すれば、両方の校種免許状の要件に算入されます。
ただ、高校免許状の方が、中学免許状よりも1か3のどちらでもよいので、少し多めに(8単位分)修得する必要があります。多くの方がこの超過分を1で賄うことが多いのですが、先程お話した通り1は卒業単位に算入されることが多いので、卒業単位を満たそうとすると必然的に高校免許状に必要な超過単位数を修得することになる場合がほとんどです。
また、「道徳の理解および指導法」は、中学校免許状のみ必須の項目です。そもそも高校には「道徳」が存在ししないためです。(高校免許状においては、この道徳に関しての単位は「大学が独自に設定する科目」としてカウントされます)
介護等体験と教育実習の実施期間に注意! ~社会人にとってのボトルネック~
忘れてはならないのが、「介護等体験」と「教育実習」です。
介護等体験
「介護等体験」は、中学校免許状の取得に必須となります(高校は必要ありません)。2日間の「特別支援学校」での実習+4日間の「養護施設」での実習がワンセットになったものです。
2日間の特別支援学校での実習では、指定された特別支援学校へ実際に出向き、在籍している児童生徒たちと実習を行うものです。また、4日間の養護施設での実習では、これも指定された養護施設で4日間、施設での生活の様子を学びながら、実際の業務をお手伝いするというものです。
この「施設」は、障害児施設・養護老人施設・障害者施設・シェルター施設など、内容は多岐に渡りますが、どの施設に当たるかはわかりません。
教育実習
「教育実習」はわかりやすいと思います。中学・高校の場合は、3週間の学校での実習が必要です。
勘違いされがちなのですが、実習校は、中高の免許状の場合には校種によらず中学校でも高校でも構いません。例えば、取得しようとしているのが高校免許状であっても、中学校での実習で問題ありません。その逆も然りです。
ただ、将来的に小学校の免許状も取得しようというお考えがあるのであれば、中学校での実習をお勧めします。
というのは、小学校免許状は実習が4週間なのですが、「実習は隣接校種まで」という定めがあるためです。小学校の隣接校種は、幼稚園と中学校となります。もし、今回中学校で3週間の実習をして、中高の免許状を修得したとすると、将来小学校の免許状の取得をする際には、不足の1週間だけ実習をすることになります。しかし、今回高校の実習だと隣接校種に当たらないので、改めて4週間の実習が必要となってしまいます。将来の負担を軽減することを目的とするのであれば、注意が必要です。
社会人にとっては、非現実的な日程 ~どう腹をくくるか~
この「介護等体験」と「教育実習」が、社会人が免許状を取得するのに、大きな足かせになってしまいます。
介護体験では1週間、教育実習では3週間、仕事ができないからです。特に、フルタイムで会社に勤務されている方には、仕事と並行して実習に参加するには、非現実的な日程になります。
「介護等体験」と「教育実習」は4年次に実施されます。もし、最短の2年で取得しようとすると、1年後か1年半後にやってくる実習です。
会社員の方が教員免許状を修得すると決めたのであれば、遅くともこの「1年半後」までに、仕事の整理をつけて「自分は教育で身を立てていくのだ」と腹をくくる必要があると私は思っています。
私は、再度大学へ編入した際に会社を退職し、実習の時にはすでにフリーランスでZ会の仕事をしていました。
塾の講師であれば、時間帯が被ることはありませんでしたので、仕事を休むことなく比較的スムーズに実習は進みました(実習の担当教諭の先生にはちょっと白い目で見られましたが…)。理解ある会社であれば、会社と実習を両立できる可能性はありますが、ご自身の覚悟を決める機会となると思います。
最後に ~大学で学びなおすという機会~
私は、33歳の時に再度大学に編入し、学生として教員免許状の取得を目指しました。
そこには、同じような境遇で授業に参加している学生がたくさんいて、今でも情報の共有や親睦を深めあっています。
中には、60歳を超えた人生の超先輩もいらっしゃいましたし、自衛官を退官して教育の場に活躍の機会を求めていた方、海外生活を長くされていた方、主婦の方で子育てがひと段落したので昔夢であった教員を目指したいとやって来ていた方など、普段では接点がないであろう人たちとの交流ができたのは、今の私にも大きな影響を与えています。
また、学生時代は理解できなかったことや、興味が湧かなかった内容も理解できるものが多く、「そういうことだったのか!」と気づくことが非常に多かったです。
自分で学費を支払い、自分の人生を掛けて学習を進めているので、その分、身に付いたことや気づいたことがとても多く、大学に戻った2年間は非常に有意義な時間であったと個人的には振り返ることができます。
2回にわたって、教員免許状のあらましと具体的な取得の方法、また、その取得する内容までをお話いたしました。
一人ひとりが置かれている状況によって、取得すべきなのかという判断に迷う部分もあると思いますし、教員免許状の意義や重みも変わってくると思います。また、先述のとおり、過去の大学等における単位修得状況によって、かけるべき労力とお金、そして時間が変わってきます。
しかし、教員免許状の取得によって、業務の選択肢と幅、そして収入が大きく変わっていくのもまた事実です。みなさんの将来の展望と、何がしたいのかなどの希望によって、選択肢の1つとお考えいただくとよいと思います。
もし、「結局、自分にはどの項目が何単位不足しているのか」など分かりにくい部分があれば、お住まいの都道府県教育委員会に、この「学力に関する証明書」を持参して相談を申し込むと、かなり具体的に教えてくれますので活用してみるのも手だと思います。
それでは、また次の記事でお会いしましょう!
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