<前篇>教員になる!社会人になってから教員免許状を取るため
こんにちは。プロ講師の黒磯です。
黒磯 直行 くろいそ なおゆき
新卒で早稲田アカデミーに入社。営業部門長などを歴任し、その後スクールIEにて個別指導塾の運営マネージャー、Z会進学教室およびZ会東大進学教室にて講師として小中高に渡り幅広く指導を続ける傍ら、私立学校教員としても活躍。講師としてのキャリアは当然のことながら、運営サイドでの実務経験も豊富。20年以上塾業界に身を置いている超ベテラン講師。「社会人としての講師育成が業界には必要だ」との思いのもと、後進育成にも積極的な姿勢で取り組んでいる。
コロナが猛威をふるっていますね。私が勤務する学校も全ての授業を中止し、オンライン授業に切り替わりました。慣れない授業形態ですが、中林先生の記事を参考にさせて頂き、滞りなく授業を展開することができました(中林先生、ありがとう!)。
学校に限らず塾や予備校でも、この「オンライン形態」はコロナ終息後も広がる可能性は大きいと感じています。我々講師側も、ネット環境は整えておいた方がよいでしょうね。
コロナの影響に限らず、近年においては教育指導要領の改訂、それによる新教科書の導入、また入試制度の見直しなど、教育業界を取り巻く環境が大きく変化し、また変化しようとしています。
我々プロ講師としても、過去の知識や経験にとらわれることなく、新たな風を取り込んでいく必要があります。
我々教える側も、常に勉強勉強です。最新の情報と感覚を身につけて欲しいと思っています。
さて、今回は「社会人になってから教員免許を取得するまで」のお話をしたいと思います。
私自身が社会人になってから教員免許を取得しているため、過去の経験も交えてご説明していきたいと思います。
※今回の記事は、このような方に非常に有用な情報を含んでいます。
・これから教員免許状を取得しようとしている社会人の方
・教員免許状の制度を知りたい方
・具体的に教員免許状を取得するにはどうすればいいのかを知りたい方
目次
1. 免許状の種類や条件
2. 免許状の種類 〜自分が目指すべき免許状は何か〜
3. どうやって取得するのか ~時間と費用は?~
4. まずは、目指す校種と種別、そして科目を決めること
1. 免許状の種類や条件
私、黒磯も先述の中林先生も、塾や予備校と並行して公教育(小中高校・いわゆる学校)での勤務をしているプロ講師です。
そして、両名ともに塾や予備校と公教育の両立は有効であると、要するに、学校教員との掛け持ちは時間効率も収入的にも非常に効果的であると述べています。
しかし、学校教員と掛け持ちをするには、ひとつ絶対に越えなくてはならない条件があります。
そう、教員免許状です。教員免許状なしでは、公教育の現場で教壇に立つ術は基本的にはありません。
この教員免許状。保持されている多くの方が、大学在学中に「教職課程」という課程において単位を修得し、卒業と同時に「中学・高校1種免許状」が発行される、という経緯で免許状を得ています。
そういった方が多いので、
「大学時代に教職を選択していなかったからもう取得できない」
「途中で教職課程をドロップアウトしてしまったので、免許状は取れない」
「大学を中退したから」
「最終学歴が高卒だから」
という理由で、免許状が取れない、と思っている方も多いようです。また、時間や費用、また掛ける労力の負担に不安を抱いてしまい、躊躇している方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、そんなことはありません!
教員免許状は、その気になれば、(18歳以上の)誰でも、いつからでも取得を目指すことができます。また、以前の学歴を利用しながら、最短で2年で取得できる可能性があります。
実際に、34歳で免許状を取得し、今その資格を活かしつつ学習塾と両立している私が、どのような方法があるのかをパターン別にお話いたします。
免許状には、①校種、②種別、③科目の3つの要素があります。私が保持している免許状は、『中学校教諭1種免許状(英語)」と「高等学校教諭1種免許状(英語)」です。
科目はわかりやすいですが、1種、2種など聞きなれない単語が飛び交っていますね。ここでは、①校種、②種別をご説明します。
それぞれの特徴をつかんで、自分が今持っている資格や最終学歴と照らし合わせて、一番近道で取れそうな免許状を考えてみてください。
校種
- 幼稚園
- 小学校
- 中学校
- 高等学校
- 特別支援学校
- 養護教諭
- 栄養教諭
以上の7種が校種です。
掛け持ちができる非常勤講師として勤務する場合の多くが、3.中学校、4.高等学校に該当します(小学校や特別支援学校は常勤での募集が多いです)。
中学校免許状だけでは高校の指導はできませんし、その逆もまた然りです。また、一貫校などでは両方の免許状を所持していることを応募の条件としている場合がほとんどです。今回の記事では、この中学と高校の2校種の取得についてお話します。
種別(普通免許状)
- 1種免許状(学士)
- 2種免許状(短期大学士)※小・中のみ
- 専修免許状(修士)
免許状の種類には、1.特別免許状、2.臨時免許状、3.普通免許状、の3つがあるのですが、1と2はかなり特殊な場合に発行されるものです。今回は、基本である3.普通免許状についての種別です。
それぞれ、基礎資格が異なります(実は、修得する単位数も異なるのですが、ここでは割愛します)。
1種免許状は四年生大学卒業、2種免許状は短期大学卒業、そして、専修免許状は大学院のマスターを修了していることが必要です。
ここで注意しておくべきこととして、この基礎資格については、どの大学、どの学部であっても、卒業/終了すれば満たすことができるという点です。
つまり、自分が卒業した大学に教職課程がなくても、また、卒業した学部となんら関係ない科目の免許状を取得しようとした場合でも、卒業していれば基礎資格は満たすことになります。
私の友人で、音大を卒業後、英語の免許状を取得した方がいるのですが、この場合、音大の卒業が基礎資格として利用できます。
また、2種免許状は短期大学を卒業していると基礎資格を満たすことになりますが、四年制大学で2年以上在籍し、かつ62単位以上をすでに修得している場合には、基礎資格が認定されます。四年制大学中退の方はこれに当てはまる方がいるかもしれません。
ちなみに、2種免許状には高等学校免許状が存在しませんので、注意してください。
3. どうやって取得するのか ~時間と費用は?~
実際に教育機関で免許状を取得しようとした場合、上記の通り、最終学歴で種別が変わってきます。
その基礎資格を基に、教職課程における単位を免許状に必要十分になるように重ねていくことになります。
ここでは、現状の最終学歴によって、選択すべきパターンをお話します。
ご自身が該当する部分をご参考ください。なお、費用は通信大学に在籍し全てを通信教育で賄った場合などの最安値の目安として示しました。総額の参考と考えてください。
四年制大学を卒業している場合
1種免許状を目指す → 4年制大学3年次編入の上、教職に必要な単位を取得する
四年制大学を卒業している場合、教職課程を有する大学に3年次編入学をし、2年以上在籍することが必要です。
一気に1年で単位を重ねれば取れそうなのですが、これは、教育実習と介護等体験(中学のみ)が絡みます。
多くの学校で、3年次に教育実習と介護等体験の事前指導を行い、4年次に実習に出向くというカリキュラムになっているため、1年では教職課程を完了できないようになっています。また、3年次の夏ごろまでに実習校を自分で探して交渉する必要があります。母校に出向くことが多いのですが、そのような準備期間が必要なため、2年が最短になります。
「編入しなくても、科目等履修生で修得できるのでは」と思う方もいらっしゃるのですが、正科生でないと、教育実習や介護等体験は受けることができません。過去に教育実習をしたことがあるのであれば別ですが、多くの方が必要だと思われますので、必ず編入の上正科生になる必要があります。注意してください。
- 時間…最短2年
- 費用…20万円~
大学中退(2年以上在籍し、62単位以上を修得している)/短期大学卒業の場合
1種免許状を目指す → 4年制大学3年次編入の上、教職必要な単位を取得する・かつ大卒を目指す
大学を3年次以降62単位以上を得た上で中退、または短期大学卒業で、1種免許状を目指すには、教職課程の単位取得上記1と同じように、3年次編入をするという軌跡をたどることになります。
それに加え、1種免許状の基礎資格は「学士」、つまり大学卒業ですので、大学卒業に必要な単位を並行して修得し、卒業を目指します。以前の大学や短大で修得した単位は認定されることがほとんどなので、残りの単位を重ねていくことになります。
2種免許状を目指す → 4年制大学3年次編入、または短期大学へ入学の上、教職に必要な単位を修得する
2種免許状については、既に基礎資格を持っているので、教職課程で必要な単位数を重ねていくということになります。卒業は必要ありません。
私のお勧めは「1種免許状を目指す」です。まず、2種には高校免許状がありませんので、必然的に中学免許状のみの取得ということになります。中高両方の免許状があるのとないのとでは、採用の幅が全く違います。
仮に1種免許状取得を目指して大学卒業が叶わなかったとしても、教職課程の単位が充足されていれば、2種免許状の取得はできます。勤務する場所を確保するため、また、幅を広げるために、ここは1種免許状の修得を目指したいところです。
- 時間…最短2年
- 費用…30万円~
大学中退(2年未満の在籍、または取得単位が62単位未満)/高校卒業の場合
2種免許状を目指す → 短期大学に入学して、教職課程修了と卒業をする
通常の学生と同じように、教職課程と卒業単位を重ねて、短大卒と同時に2種免許を取得するということになります。大学中退の場合、短期大学によっては、中退した大学で修得した単位を卒業単位として認定する場合もありますので、そうなると、卒業までの負担もだいぶ軽減されることになります。
1種免許状を目指す → 4年制大学に入学し、教職課程修了と卒業をする
教育実習が4年次になるので、最短で4年かかります。この場合も、上記同様に通常の学生と同じように教職課程と卒業単位を重ねて卒業するということになります。また、以前の大学での習得単位が認められる可能性のある点なども同様です。
かかる時間を考えると、2種免許状取得が魅力的に感じます。金銭的な面と煩雑さとの相談になりますが、早く仕事につなげるには、とりあえず2年間で2種免許状を取得して、それを行使しながら上記の「2.短期大学卒業の場合」に則って、さらに2年後に1種免許状につなげていくのがいいのかなと思いますね。
- 時間…最短2年/4大4年
- 費用…短大35万円~/4大70万円~
4. まずは、目指す校種と種別、そして科目を決めること
ここまで、免許状の種類とその免許状を取得するためにどんな経路を選択すべきなのかを、私見も交えてお話してきました。
ここまでお読みいただくと、「じゃあ、結局、何時間くらい、何単位くらい、何を勉強すればいいいのか」、つまりは「現状の自分にどれくらい負担がかかるのか」が気になるという方も多いのではないでしょうか。社会人として仕事を持っているわけですから、やはり大学生とは勝手が違いますよね。
一方で、学生時代に修得した単位を流用して利用することができる場合があります。もちろん、その分の単位は改めて修得する必要はありません。つまり、過去と合算できるということです。その分、負担は軽減できるということになります。
では、どれくらい軽減できるのか。これがわかるのが、大学が発行してくれる『学力に関する証明書』というものです。
次回は、この『学力に関する証明書』からお話を広げて、「何を何単位修得していけばいいのか」や「そもそもその証明書はどうやって手に入れればいいのか」、「負担はどれくらいのものになるのか」、また「周囲と比べて年齢が上の人が大学で本当にやっていけるのか」など、皆さんが不安や疑問に思われる部分のリアルをお話したいと思っています。
これがわかると、自分が実は教員免許状取得までそう遠くないことがおわかり頂けると思いますし、改めて大学へ通うことの有効性に気付いていただけるのではないかと思っています。
後篇へ続く・・・
「<後篇>教員になる!社会人経験者が教員免許状を取るまで」の続編はこちらからご覧ください。
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