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『論語』に学ぶ!中林が考える、プロ講師の完成形とは?【キャリアコラム#43】

『論語』に学ぶ!中林が考える、プロ講師の完成形とは?

こんにちは!国語科講師の中林です。


中林 智人 なかばやし ともひと

高校教師から塾講師・予備校講師に転身し、現在は河合塾・早稲田予備校にて国語を担当しつつ、都内の高校で非常勤講師としても活躍。講師業だけでなく執筆なども行う。「納得できる知識・論理的読解技術」「制限時間内に問題を解き偏差値を上げる戦略」「楽しく国語を勉強できる面白ネタ」をモットーに日々生徒に向き合っている。 


暑い日が続きますね。8月は和風月明(わふうげつめい)では「葉月(はづき)」と言い、「木々の葉が落ちる月」という意味合いで、秋の中旬という扱いが旧暦ではされていますが、現在のイメージとは1〜2ヶ月のズレがあります。

要するに、「全然夏っぽいじゃん!セミもうるさいしゴキ◯リも出るし!なーにが秋だよ!」と思ってしまうということです(笑)

さてそんな中、予備校講師らしく夏期講習に勤しんでいますが、ある日塾講師ステーションの方から「中林さんが考える『プロ講師の完成形』について、書いてみて下さい!」と、依頼されました。

私は一瞬考えました。

なぜなら、プロ講師をやっていて「もうこれ以上は何もしなくても大丈夫!」というゴールは無く、すなわち完成と言える状態は無いというのが私の基本的な考え方ですし、そもそもプロ講師のあり方も人それぞれで、私の目標とする姿が万人に当てはまるわけでもありません。

ですが、そもそも万人に当てはまるものなど世の中には無く、元々「私の考えが当てはまる人に役立ててもらえれば良い」という思いで書いているこの記事ですし、プロ講師の完成形にしても、「ゴールを決めてそこで努力を終わらせてしまうのではなく、生涯にわたって知的好奇心を持って自己研鑽に努められる人間」こそがプロ講師の完成形であるという考え方もできると気付き、だったら私の思うプロ講師の完成形を書く価値はあるなと思い直しましたので、思い切って書いてみることにしました。

ですので、以下に述べるのはあくまで中林智人という一人のプロ講師の持論です。ですが、もし共感できる方がいらっしゃいましたら一緒に目標を共有し、共に明日の教育業界を盛り上げて行ければと思います。

目次
完成形その1「尽きない知的好奇心」
完成形その2「ブレない信念と時代への対応力の共存」
完成形その3「君子に三変あり」
終わりに〜他人を参考にして良い部分と、自分で考えるべき部分〜

完成形その1「尽きない知的好奇心」

実は私の大学の卒業論文のテーマは『論語』でして、執筆の際は論語や関連書籍を読み漁って、孔子先生やその弟子達の言葉を色々研究しました。

その中でいくつか印象に残ったものの1つとして次の言葉が挙げられます。

「これを知る者はこれを好む者に如(し)かず。これを好む者はこれを楽しむ者に如(し)かず。」

意味は「物事を理解し知っている者は、それを好んでいる人には及ばない。物事を好んでいる人は、それを心から楽しんでいる者には及ばない」という感じです。

以前書いた記事でもお話ししましたが、講師に限らず教育者たるもの「自己研鑽」が必要です。

つまり、毎年同じものを使いまわしているだけでなく、常に時代に合わせて新たなものを学習し続ける姿勢が必要ということですが、この「学習し続ける」ことを仕事のために嫌々やっていくのは辛いものです。

子供の学習を見てみれば分かりますが、学習している内容に興味を持って楽しんで学んでいる子の方が、結果として成績も伸びて行きます。大人も同じです。

「今日はこれを教えてあげよう!こんなふうに工夫してみよう!きっと生徒も楽しんでくれるだろうなあ♪楽しみだなあ♪」と、ワクワクしながら授業準備し、常に新たなことにアンテナを張り巡らせて、楽しみながら自らの研鑽をしていく講師・・・

その学びに終わりは無く、知的好奇心は枯れることも無く、講義の為の学習が同時に自分の人生の楽しみにもなってしまう・・・

これはもう、講師の完成形と言ってもいいのではないでしょうか?「終わりが無い学び」を楽しめるが故の「完成形」、ある種の逆説ですが、真理を含んでいると思います。

ただ気をつけていただきたいのは、「自分が指導している科目が楽しい」だけだと、オタク的にその科目の知識が増え続け、それを生徒のレベルに落とし込んで説明することが疎かになってしまいがちです。

「その科目が楽しい」と「生徒に教えることが楽しい」の両方を持ってして、完成形に到達するとお考え下さい。

完成形その2「ブレない信念と時代への対応力の共存」

タイトルの通りですね。移り行く時代の中で、教育も常に新しい発想・知識が求められます。現状を踏まえて、どうやって生徒を導けば良いか、どういうツールを活用すれば良いか、その対応力はプロとして常に求められます。

一方で、「あなたが何を信念として教育に向き合うか」に関しては、一生の仕事とする教育への向かい合い方なので、一度確立してしまったら、そう簡単に変わらないものが理想です。

この「信念」は、本当に人によって様々です。私の知っている先生方の中でも例えば以下のような授業の信念を持っていらっしゃる方がいました。

「雑談ではなく授業のわかりやすさで生徒を惹きつける」

「絶対に怒鳴らない。叱る時こそ冷静に論理的に叱る」

「授業の前日はお酒を飲まない」

「授業中の居眠りは何があっても絶対許さない」などなど、その人の教育者としての考えの土台である信念も、まあ多様であるわけです。

もちろんどれが絶対的に正しいとも言えませんし、また教育者として成長していく中で考えも変わっていくこともあるでしょうから、授業のやり方が変化することもあるでしょう。

しかし時代に合わせて教育のやり方を柔軟に変えることはあっても、教育者としての自分の土台となる信念がコロコロ変わってしまっては、自信を持って教壇にも立てなくなるでしょうし、聞こえの良い言葉にばかり飛びついて耳学問(他人から聞き齧った知識や考え)を得意気に披露するだけの人間になってしまいます。

「あの先生の言ってること、なんだか参考書や教育系youtuberが言っていることとほとんど同じだし、なんだか薄いんだよな・・・」と生徒に思われている講師は、御自身の信念が無く、なんとなく人気の講師や参考書のやり方を真似しているだけであることが多いものです。

自分の特性を理解した上で、自分がどういう講師になりたいのか、どういう授業が自分に一番向いているのか、何を生徒に教えたいのか、これらを若いうちによく考え、頭を使いながら授業内で実践していくうちに、その人にあった信念が自然と築かれていきます。

あとはそれをしっかり遵守し、自信を持って堂々と授業に臨んでください。その姿こそが、生徒を惹きつけます。どこかの誰かの受け売りや真似事ばかりやっていても、生徒はこちらの想像以上にそういう小細工を見抜きますからね。

ここまで話しておいて「ではお前の信念はなんなんだ?」と気になった方もいらっしゃるのでは無いでしょうか?

プロ講師としての私の信念は、一言で言うと「バランス良く」ですね。

何か1つのやり方に固執したり、偏った見方をせずに、全体のバランスを意識した授業・仕事をしようと思っています。

偉い人が素晴らしいことを言っていても、それを全て受け入れてしまうのではなく、「この部分に関してはその通りだけど、この部分は別の考えの方が良さそうだな」という感じで、視野を広く、俯瞰的に、バランス良く様々なものを吸収し、自分の中で消化していくことを常に考えています。

この信念の元に、時代に合わせた情報を自分の中で取捨選択し、一人の他者の言葉に固執せずに仕事をしています。

もちろんまだまだ「完成形」では無いので、感情的になってしまったり考えがブレてしまいそうになることもありますし、また時代への対応力という点でも日々勉強不足を感じていますが、凝り固まった石頭にも、流行りに飛びつくだけの中身の薄い人間にもならないように、意識を絶やさないようにはしています。それが大事なことだと思っています!

完成形その3「君子に三変あり」

実は今回の記事のメインはここにあるのですが、前述した『論語』の中にある言葉です。全文は以下の通りです。

白文

子夏曰、君子有三變、望之儼然、即之也温、聽其言也厲


書き下ろし文

子夏曰はく、君子に三変あり。これを望めば儼然(げんぜん)たり、これに即(つ)けば温なり、其の言を聴けば厲(はげ)し

現代語訳

子夏が言った。君子には三つの変化がある。遠くから望めばその姿はおごそかで、近づけば温和であり、その言葉を聞けば厳しく正しい


孔子先生御本人のお言葉ではなく、その弟子の子夏という人の言葉なのですが、君子のあるべき姿が述べられています。

ちなみに君子とは一般的に「徳や品位の高い人物・人格者」という意味で使われますが、『論語』の中で孔子先生が理想の人間像として頻繁にこの言葉を使われています。
 
なぜこの言葉が講師の完成形なのかというと、きっかけは私が大学4年生の時に遡ります。
 
当時就職活動として様々な教育業界の採用試験を受験していた私は、とある大手企業の面接で「あなたの考える教育者としての理想像はどのようなものですか?」と聞かれました。
 
色々と格好の良い答え方はあったのでしょうが、ちょうど卒業論文に着手していて論語を読み返していた時だったので、無意識に子夏のこの言葉が思い浮かび、「そういえばこの君子の在り方って、先生の在り方にも当てはまるんじゃ無いかな」と思い、半分思いつきですが、以下のように答えました。
 
 「はい!私の理想とする教育者像は、『論語』の中で子夏という人物が述べた「君子に三変あり」という言葉に当てはまります。 
教壇から大勢の生徒に向かって語る教師は、生徒目線から見て威厳のあるものであり、憧れの象徴となるようなもので無くてはいけません。その為には弛まぬ努力と経験を積み重ね、堂々と生徒を導く自信を手に入れる必要があります。
また一対一で生徒と面談したりする時は、生徒を威圧するのではなく、生徒が素直に心を開いてくれるような優しい雰囲気を出せると良いと思います。
そして発言する内容はそのような雰囲気の中でも公平で中立的で、生徒を甘やかさないものであるべきだと思います。
このような姿は狙ってなれるものではなかなか無いかもしれませんが、意識して努力していく中で少しずつ近づいていけると自分では信じております。」
 
その採用試験は無事合格しました。そして今でもこの言葉が示す教育者の在り方を、私はプロ講師として目指し続けています。
 

終わりに〜他人を参考にして良い部分と、自分で考えるべき部分〜

最初に申しましたように、「万人に当てはまる完成形」などはなく、また講師としての指導法や教育法などもその人に向いている形がそれぞれ存在します。

第一線で活躍されている一流プロ講師の方々は、もちろん他者から生まれたものを沢山勉強して吸収しているでしょうが、それだけではなく、その中から「自分の特質と合わせてどれを活用するか」「自分のオリジナリティをどうやって出していくか」を常に考えながら自己研鑽しています。

特に駆け出しの若手講師の方に多いのですが、自分が参考とするその人がどれだけ優れた実績を出していても、「その人の理論はその人だから当てはまるというものが少なからず存在する」という、当たり前のことを忘れてしまっている人が残念ながら存在します。

例えば私は予備校で現代文を教えていますが、この教科ほど教える人の特性によってアプローチが変わってくる科目は無いと言えるほど様々なやり方が存在します。

ですので私は最初の頃、あまり参考書や先人の方法論の書かれた書物を読まずに、とにかく目の前の文章や入試問題に向かい合い、「どう教えれば目の前の生徒は理解しやすいか」を意識して丁寧に予習しました。

予備校の講師マニュアルなんていうものは大体が問題と解答しか載っていないので、その問題を導き出すプロセスや、生徒に伝える注意事項も全部講師が考える場合がほとんどです。

ですので、とにかく最初の頃は予習に時間をかけました。そしてそこから「自分で」導き出した解法や、読解の法則などを、後で大手が出している参考書の解説と比較してみて、自分の考えと合っている部分、異なっている部分を整理して、講師としての自分の指導理論を組み上げて行くのです。

ですから、授業でも堂々と自身の解法や教科理論を語れますし、仮にそれが結果論として他の先生のおっしゃることと被っていたとしても、パクリではなくあくまで自分で導き出したものなので、なんの引け目もなく指導できます。

そういった姿勢から「これを望めば儼然(げんぜん)たり」に繋がる、教壇の上でのプロ講師の姿が産まれて来るのだと思います。

ではまた次の記事でお会いしましょう!

 

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中林 智人

記事執筆者:中林 智人

高校教師から塾講師・予備校講師に転身し、現在は河合塾・早稲田予備校にて国語を担当しつつ、都内の高校で非常勤講師としても活躍。講師業だけでなく執筆なども行う。「納得できる知識・論理的読解技術」「制限時間内に問題を解き偏差値を上げる戦略」「楽しく国語を勉強できる面白ネタ」をモットーに日々生徒に向き合っている。

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