本記事は「非常勤講師は都内23区で住宅ローンを組めるのか?(前編)」の続編となります。
前編をまだお読みではない方は是非こちらからご覧ください。
こんにちは!国語科講師の中林です。
中林 智人 なかばやし ともひと
高校教師から塾講師・予備校講師に転身し、現在は河合塾・早稲田予備校にて国語を担当しつつ、都内の高校で非常勤講師としても活躍。講師業だけでなく執筆なども行う。「納得できる知識・論理的読解技術」「制限時間内に問題を解き偏差値を上げる戦略」「楽しく国語を勉強できる面白ネタ」をモットーに日々生徒に向き合っている。
皆様、明けましておめでとうございます!
教育業界のみならず様々な方面で色々と移り変わりがありましたが、教育業界で言うと私はやはり「大学入学共通テスト」の志願者数が昨年よりさらに減少したことが衝撃的でした。
2023年度は約51万人ということで、前年度より約1万8千人減です。浪人生に至っては過去最少の71,642人ということで、少子化の中で今後ますます教育業界は、言い方は悪いですが「少ない顧客の取り合い」の様相を呈してくるでしょう。
そんな情勢の中でプロ講師をやる以上、授業スキルの向上だけでなく、色々な情報をこれまで以上に取り入れ、「生き方」の研究が必須になって来るのかと思います。
さて本題に入りましょう。今回の記事は前回の記事「非常勤講師は都内23区で住宅ローンを組めるのか?(前編)」の続きとなります。是非前回の記事を御覧になってからお読み下さい!
目次
・非常勤講師が住宅ローンを通すまでの奮闘
・フラット35とは? 〜メリット・デメリット〜
・一般の銀行の住宅ローン審査に挑む
・私が審査を通過した戦略
・終わりに~動き出しの重要性~
非常勤講師が住宅ローンを通すまでの奮闘
前回の記事の通り、様々な物件を見学し、なんとか「この物件なら資産価値的にも、住みやすさとしても問題無いし、数十年住むことをイメージできる」と思える物件を発見しました。
ただ、最初の時点ではあくまで漠然とした印象なので、部屋の間取りや寸法を測って現在所持している家具が置けるかとか、近隣の公共施設の確認とか、諸々細かいことの確認をして、ようやく契約に動き出すわけです。
ちなみにこの場合の契約とは、仲介会社である不動産会社とではなく、あくまで「購入」ということですので、その物件を所持している会社(所有者が個人の場合は多少手続きが異なってくるのでしょう)とすることになります。
そしてこの契約をする為には「購入代金を購入者が支払う能力がある」ことを証明しなければなりません。具体的には次のどれかです。
1、購入金額をフルで用意し、一括購入してしまう
2、「フラット35」の本審査を通過した状態で臨む
3、上記以外の通常の銀行の仮審査を通過した状態で臨む
正直、数千万円以上する都内マンションを一括で購入できる人は限られてくるでしょう。投資家などのお金持ちとか、あとは本来なら社会的信用が薄い為にローンを組むことがそもそも困難な芸人やyoutuber等の方々が大ヒットして大金を稼げた場合に行う購入形式といったところですかね。
サラリーマンの大半は住宅ローンを組むと思います。ですので、一介の予備校講師に過ぎない私も当然住宅ローンの審査に臨むわけです。
ちなみに、購入を決断してからローン締結までを私は少々急いでいました。なぜかと言うとこの物件を購入する前に一度気に入った物件があったのですが、住宅ローンの審査の申し込みを始める前に他の人に現金一括購入でその物件を購入してしまわれたからです。
現金一括購入だと、ローンの手続きなども無く素早いアクションで購入まで進めてしまいます。勿論住宅ローンを利用して購入することにも色々メリット(団体信用生命保険によるリスク回避・住宅ローン控除による減税・生活の為の資金の余力を残せる)がありますが、購入までのスピードという点では一括購入はやはり強いですね。
当たり前といえば当たり前ですが、「人気の物件」というのは当然競争率が高いので、一般公開されてから購入されるまでが早いです。
よく不動産屋の方が「この物件は人気ですから、早くしないと塞がってしまいますよ」と消費者を煽り、よく考えさせないで購入させてしまうことがまるで悪いことのように言われますが、不動産屋の意図はともかくとして、消費者が良いと思う物件の条件なんてある程度共通しているので、貴方が良いと思った物件は、他の人も良いと思う可能性が高いのです。ぐずぐずしていると埋まってしまうのは事実です。
そういうわけで、購入契約をする為になんとか前述の2・3のどちらかのローン審査を通す必要が生じます。
そして、「正社員・専任教員でない」そして「担保となる退職金が無い」私のような非常勤講師(厳密には高校非常勤講師&予備校講師)は、まずは「フラット35」の審査に臨むわけです。
そこでまず、このフラット35についてお話しておきます。
フラット35とは? 〜メリット・デメリット〜
フラット35とは、独立行政法人である「住宅金融支援機構」が民間金融機関と提携して融資を行うサービスであり、名前の通り最長で35年の返済期間でローンが組めます。
そしてこのフラット35は、フリーランスなど、働き方が多様化する現代に合わせて作られたローンなので、勤務形態・職業・勤続年数などの制限が少なく(ここがフラット35の最大のメリットと言えます)、非正規社員がローンを組もうとする場合、まずはここのローンが通るかどうかがカギとなります。
具体的には「保証人が不要」「団体信用生命保険への加入ができなくても借りられる(「原則加入」とはなっていますが……)」「正社員でなく、退職金などが無くても(審査さえ通れば)借りられる」などがあり、これらは非常勤として働く者にとっては非常にありがたい条件です。
また、返済期間中は全期間固定金利なので、金利が変わらず、返済プランが立てやすいのです。
デメリットとしては、通常の銀行ですと変動金利型のローンを組むこともでき、この変動金利型とくらべるとフラット35の固定金利は利率が高めです(一般の銀行の変動金利は0.5%を切る所も多いですが、固定金利は1%を越えてくるところが大半です。フラット35の固定金利ですと2%近くなるという予想もあります)。
金利が高くなればそれだけ全体で支払う額も増えますし、35年レベルで考えるとその差も馬鹿にはできません。
また、通常の銀行の住宅ローン審査はとりあえず「仮審査」を通過すれば住宅購入契約が行える(契約後に本審査に落ちてしまった場合は、手付金を返還してもらい、違約金を負担すること無く契約を白紙に戻せる「住宅ローン特約」というのがあるのでこれを使用しましょう)のですが、フラット35の場合は前述の通り、審査が通りやすい分通常の銀行の住宅ローンより信用が低い為、「本審査」を通過しないと住宅の購入手続きが行えない場合がほとんどです。本審査となると提出する書類の準備や職場への在籍確認なども含め、最低でも一週間程度の時間がかかってしまうので、その間お目当ての物件をとられてしまわないかヤキモキしてしまうことにもなりますね。
特に複数の会社や教室を掛け持ちしている場合、その複数の会社にそれぞれ在籍確認の電話を繋いでもらったりと、色々面倒なことが多いです。まあ何千万にもおよぶ融資を個人で受けようというのですから、ある意味それくらいは当然なのかもしれません。
その辺も踏まえて、「とりあえずなんとか住宅ローンを通して家を買いたい」となると、このフラット35の審査を通過できるかどうかが最低ラインと考えられます。
言い換えれば、厳しい言い方ですがフラット35の審査に落ちてしまうと、もう住宅ローンを組むこと自体がほぼ不可能と言えます。
また、フラット35に限らず他の住宅ローン審査にも共通するのですが、正社員でない個人事業主扱いの講師は3年分の確定申告書(「収支内訳書」も含む)および、税務署が発行する納税証明書の提出を命ぜられます(確定申告書Bの白色申告の場合)。
この際気をつけておかなければいけないのは、個人の収入として銀行に見られるのは税込の収入ではなく、「所得金額」であるということです。要するに経費を差し引いた額ということですね。
ですので、色々と経費を引いている人は、低い所得金額でローンの審査を受けなければならないので、その分審査が不利になるかもしれません。ここは気をつけておきたいですね。
一般の銀行の住宅ローン審査に挑む
さて、ということでフラット35がどういうものかお分かり頂けたと思いますが、私はせっかくだから思い切ってもっと金利の安い(あくまで「今現在」の話ですが)「変動金利制」がとれる一般の銀行の住宅ローンの審査に乗り出しました。ここが今回一番の難所でした。
なんでわざわざそんな無謀な戦いに挑んだのかというと、理由は二つあります。
一つは前述の通り安い金利で借りられるからで、もう一つは単純なプライドのせいです。
本来一般の銀行の住宅ローンは正社員を対象としたものがほとんどなのですが、例え非常勤講師であっても「河合塾講師の肩書き」や「高校非常勤講師として獲得した無期雇用の契約社員の権利」をフル活用して正社員と同じ扱いを獲得したかったのです。
「非常勤であっても、これだけ努力されているのなら、正社員扱いと見なしてご融資させて頂きます」という言葉を銀行の職員の方から引き出したいと思ったわけです。「正社員・専任教員へのコンプレックスだ」と言われれば否定はしません。私の努力の原動力の一つは、まさにそのあたりにもありますし、非常勤で働いている先生方で「せっかくだから専任教員に負けない働きをしてやろう」と思ってらっしゃる方もいらっしゃるのではないでしょうか?
そして、実際大手銀行から地方銀行まで数多くの銀行の住宅ローンの審査にチャレンジしましたが、正直困難を極めました。注意すべきポイントを以下に列挙します。私の主観が多少混じっているので、御承知おき下さい。
インターネット上(フォーム入力型)の仮審査登録の所は、正社員・専任教員でないと大体落とされる
おそらくAIによるシステムで自動判定していると思われます。電話や直接面談形式の所の方がまだ可能性があります。
「無期雇用契約社員」の権利は、あまり関係無い
フラット35と違って、一般の銀行は非正規社員を一括りで考える所が多いので、担保としての退職金の無い非正規の契約社員は、それ以上でもそれ以下でもないという感じでした。ただ審査での提出書類で、勤務する学校との雇用契約書の提出を命じられた所には、一応無期雇用を証明する文言の所にアンダーラインを入れて目立たせて送ったりはしたので、こちらに報告してくれないだけで、ひょっとしたら多少は考慮してくれていた銀行もあったかもしれませんが、それはこちらからは分かりません。
本審査でも落とされる場合はある
銀行によっては仮審査を通した後の本審査で更に詳細な書類の提出を命じるところもあり、そこでの内容如何によっては本審査で落とされる場合もあります。ですので、仮審査通過時点で住宅購入の契約をしていてもその契約を白紙に戻さなくてはならなくなるので、前述した「住宅ローン特約」は非常にお得です。
クレジットカードの信用情報に傷があると審査は厳しい
住宅ローンの審査は基本的にその人のクレジットカードなどの信用情報をチェックされますので、クレジットカードの未払いや滞納があると審査は非常に通り辛くなります。
ちなみに、御自身でクレジットカードの支払いに滞納がないか、インターネット上で情報開示を請求して調べることもできますので、不安な方は確認してみると良いでしょう。
後は言うまでもないことですが、過去の犯罪歴・半社会的勢力との関わりなど、一般的なレベルで信用失墜に繋がる経歴があれば当然審査は通らないでしょう。
私が審査を通過した戦略
勿論すべての銀行から審査基準を正確に聞けたわけでもないので、申込者個々人の差や会社の差はあるでしょうが、これくらい厳しいものだとお考え下さい。
ちなみに、大手企業の正社員や公務員の方とかだと、何もしなくても銀行の方から住宅ローンの誘いが来る上に、審査も楽勝らしいです(公務員の知り合いにそう聞きました)。羨ましいですが、そういう事も込みで非常勤講師を選んでいるので、文句は言えませんね(苦笑)
さて、そこで気になるのは「では私はどうやって一般の銀行の住宅ローンを通したのか?」です。
退職金も安定性もない非常勤講師が唯一正社員に対抗できる武器、それは資金力です。何しろ銀行の住宅ローンですからね。「キャッシュは強い」のです。
なんという事はありません。自分の貯金額と、ローンの際の頭金をいくら出せるかということです。
結論から言いましょう。
私はとある地方銀行の住宅ローンの頭金として、1500万円払いました。
勿論頭金なので一括払いです。今まで贅沢せずにコツコツ貯めてきた貯金がほとんど消し飛びました。
ちなみに、それでもマンションの購入資金の一部にすぎないので、残額はこれからローンで支払って行くことになります。
ちなみに、その銀行は住宅ローンは基本正社員しか受け付けてないのですが、「今回中林様は頭金として出して頂いた額などの資金力を考慮して、特例としてローンを組ませて頂きます」とはっきり言われました。
この言葉を聞いた瞬間、「勝った!」と思いました(笑)
勉強して貯めた学力で受験を突破するのが子どもの勝負なら、働いて貯めたお金で戦う今回の勝負はまさに大人の勝負であり、その時、まさに受験に合格した生徒の気分に近いものを感じましたね。
終わりに~動き出しの重要性~
今回のマンション購入に限らず、プロ講師になると決めてから私は「思いついて、決意したらとにかく動き出せ。後回しにするな」と自分に言い聞かせながら動いて来ました。逆に元々面倒くさがりなので、そうでもしないと何も始められなくなってしまうからです。
勿論タイミングを見なければいけないこともあるので、なんでもすぐやれば良いというわけではありませんが、挑戦し続けて、失敗を重ねて、その中で思いがけない所からポロっと成功が転がり込むような人生を歩んで来たので、「まず動き出す」ことは大事な事だなと実感しています。
正直、一生で一番大きな買い物でしたので、「これで良いのか」「やめておいた方が良いのでは無いか」と、色々迷うこともありましたが、今は自分の人生の一部を肯定されたような自信と、納得できる住居を購入できたことで、新たな充実感を得ています。
残りの人生も「もういい加減に楽に生きたい!」と愚痴りながらも、結局決断と実行を積み重ねて行くんだろうなと、なんとなく覚悟しています(笑)
たまには休んだり立ち止まって考えたりしながらも、着実に前に進んで行きたいですね!
ではまた次回の記事でお会いしましょう!
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