ここでは小学生国語の個別指導を、90分の時間で行うことを前提に授業カリキュラムを組んでいます。実際の小学生の個別指導の現場では、個別指導の講師にはさまざまな科目の補習を頼まれる場合が多く、90分ずっと一つの科目の指導をするという状況は少ない場合が多いです。その場合は、適宜生徒の希望に応じて毎回わからないところの解説を行えば良い、という講師としてはカリキュラムをハンドリングする必要のない楽な状況です。
一方で、保護者・生徒から90分授業を全部使って、みっちり苦手科目の指導をして欲しいと頼まれる場合もあるでしょう。経験の少ない新人講師だと、すべてを講師に任された場合、何をどこから始めたらいいのかがわからなくなってしまう場合もあるかもしれません。そんなとき、ここで紹介した指導カリキュラムのサンプルが、授業計画の参考になればと思います。
小学生国語の授業は「成績が上がらない理由がわからない」生徒と向き合う授業
国語を苦手科目としている生徒は、「成績が上がらない理由がわからない」場合が多いです。問題文を読んで、漠然と「これが正解かな?」と思う答えを探して書いてみて、その答えに○か×がついてテストが返却されます。
しかし、本人としては、解答を見ても、どうしてこの答えが間違っていて、どうしてこの答えが合っているのかは、相変わらず何がなんだかよくわからないままです。これが数学、理科、社会ならば、計算ミスや暗記していなかったもの、誤字脱字など、テストが返却された瞬間に、生徒が、あっ! と間違いに気付く問題がほとんどです。
しかし、国語という科目はそうは行きません。まず、問題文から言って、二度と同じ問題は出ません。この状況は、生徒にとっては、「結局知らない問題が出るのだから一生懸命対策をしても意味がない」と思わせてしまうのに十分です。では、国語の成績が明確に上がっていくためには、どのような授業をしたらいいでしょうか?「国語をみっちり勉強して、成績を上げたい」と希望があったときの、授業の一例を紹介します。
まずは、問題文を読む。見開き1ページ半~2ページの分量のものを、10分を目安に読む。
最初に、塾のテキスト・志望校の過去問・講師が準備した問題集、何でもいいので、初見の問題を10分間を目安に時間を計って読んでもらいます。その際、「この文章はどんな文章だったかを後で先生が質問します」という告知を、あらかじめ、しておきましょう。
あらかじめ、先生に後で質問される! という状況を伝えておくことで、生徒はより集中して読解に向かうことができます。大手中学受験塾の国語のテキストなどでは、「次の問題を三回音読してから、問題を解きなさい」などという指示を出している場合もあります。予習の宿題などで解く場合はそれも効果的かもしれませんが、個別指導でそれをやるのは時間がもったいないので、生徒の年齢が極端に低い場合以外は、基本は黙読です。
また、この最初の読解の際には、先生に後で何を質問されるかを生徒がわかっていない、という状況が、より効果的になります。生徒自身が、自分の感覚で、「ここは、どうも重要っぽい!」と思われるところに、鉛筆で傍線を引いたり、キーワードらしき頻出の言葉に丸をつけたり、という工夫をしながら読むように言いましょう。国語が苦手な生徒が陥りがちなのは、何も書き込みのしていない真っ白な問題文を一回読んだだけで終わりにしてしまう状態です。
言うまでもなく、国語は、「問題文に書いてあることの中から、質問の答えを探し出す」科目です。何度も問題文に戻って、読み直して、検討する必要がある状況は明確です。問題文をまっさらの綺麗なままにしておくと、どこまで読んだのかがわからなくなって、同じところを何度も読まなくてはいけなくなったり、集中力が途切れるとひたすら目に入る文章が上滑りして意味がわからなくなったり、という事態に陥ります。
それを防ぐために、「自分のために目印を付ける感覚で、問題文にはどんどん書き込みをする」ということを、生徒にアドバイスしていきましょう。
次に、口頭で問題文について質問する。質問内容は生徒のレベルに合わせて、丁寧に。
一通り生徒が問題文を読み終わったら、講師は、最初の予告通り、生徒に問題文の内容について質問をします。その際に気を付けるのは、あらかじめ質問テストを作成するのではなく、口頭でリアルタイムで生徒の理解度をはかりながら、質問内容を変えていくことです。
「この文章の主人公は、誰だった?」
というような、物語文の基本的なことから、
「この作者は、~~~のような問題について、どう考えている?」
などの、論説文の要旨を問う問題まで、生徒の理解度に応じて、生徒が固まってしまわない、答えることができるであろう質問を選んで、投げかけるといいでしょう。また、生徒に質問を投げかけるときに、講師は、必ず最終的には「問題文の作者が、この文章で伝えたかったこと」にたどり着くように、最終ゴールを設定する必要があります。
質問を投げかける際は、できる限り気軽に、フランクに、講師自身がその文章を読んでどう思ったかなどの感想なども添えて、生徒と対話できると効果的です。小学生の生徒は、鉛筆を握って紙に向かうのが勉強だ、と思っているところがあるので、口頭での会話は比較的ストレスが少なく続けることができます。先生と楽しくおしゃべりをしている、くらいの気分にさせることができれば成功です。
この過程が、生身の人間の先生の熱心な個人指導でなくては得ることのできない経験です。ここで講師は、十分な時間を取って、生徒の好奇心や集中力をうまく引き出す魅力ある授業ができるように、努力しましょう。
問いを解き始める。→実は、直前の対話の中で、講師が意識して、答えは既に教えている。
講師と生徒との対話の時間が終わったら、いよいよ問題演習に入ります。生徒に実際に問題演習をさせるときのポイントは、「答えは既に教えている」という状態を作ることです。直前の生徒への質問の投げかけの前に、講師が問いにまで目を通しておくのは当然です。その問いを踏まえたうえで、生徒本人にはわからないように、巧妙に、問いの答えを対話の中で既に明かしてしまいましょう。
その状態で生徒が問題演習に取り組むと、「理由はわからないけれど、思ったよりも問題が解けた」という状況が出来上がります。(笑)この時、いくらバレバレの形で答えを教えた後でも、国語が苦手な生徒の場合は正答率は五割も行けばいいほうでしょう。今まで、さんざん話したこととまったく逆の解答を平気で選んでいたりと、がっくりするようなボロボロの状態だったとしても、「さっき、先生と話している時に説明したでしょ?」という発言は、生徒への種明かしになってしまいます。気持ちをぐっと抑えて、できているところだけを存分に褒めて、国語への苦手意識を少なくするように努めましょう。
最後に、確実に点数につながる、暗記の宿題の指示。できることなら既習範囲を。
残った時間は、次回までの宿題を検討し、適切な指示を行います。「国語が苦手で、国語一教科だけをみっちり教えて欲しい」という生徒が相手の場合、私が出している宿題は「既習範囲の漢字と、ことわざ四字熟語などの知識問題」です。
漢字を始めとする知識問題は、ちょこっと見直したくらいでは全然意味がないのに、一冊の問題集を仕上げると必ず点数に結びつく、という、生徒にとっては厄介なものです。国語が苦手な生徒が、それまでの漢字の知識をしっかり身に付けている場合は少ないので、私は塾で既に小テストの範囲として宿題に出されたことのある既習の範囲を、次回チェックテストを行うとして宿題に出しました。
見直すと、明らかに既に勉強をした跡があるのに、全然覚えていない……という状況は、「さすがに二度目だから、できないとヤバイ!」という気持ちを生徒に呼び起こします。また、まったく新しい範囲を宿題に出すよりは、精神的に気楽だ、という事情もあります。
いかがでしたか?ここで紹介した授業カリキュラムは、あくまでも一例です。生徒との信頼関係ができあがれば、明確なカリキュラムを意識しなくても、ある程度授業はスムーズに回っていくことでしょう。個別指導の講師がするべきなのは、その生徒ひとりひとりの特性に合わせた、オーダーメイドの指導です。常に、その講師でなければできないことは何か、というのを考えて生徒に接し、有効なカリキュラムを組んであげられるように努力しましょう。
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