ここでは、小学生算数の個別指導を、90分の時間で行うことを前提に授業カリキュラムを組んでいます。実際の小学生の個別指導の現場では、個別指導の講師にはさまざまな科目の補習を頼まれる場合が多く、90分ずっと一つの科目の指導をするという状況は少ない場合が多いです。
その場合は、適宜生徒の希望に応じて毎回わからないところの解説を行えば良い、という、講師としてはカリキュラムをハンドリングする必要のない楽な状況です。一方で、保護者、生徒から90分授業を全部使って、みっちり苦手科目の指導をして欲しいと頼まれる場合もあるでしょう。経験の少ない新人講師だと、すべてを講師に任された場合、何をどこから始めたらいいのかがわからなくなってしまう場合もあるかもしれませんそんなとき、ここで紹介した指導カリキュラムのサンプルが、授業計画の参考になればと思います。
小学生の受験算数は、個別指導でもっとも需要の多い科目です。
少しでも個別指導の経験のある講師なら、既に当たり前のことかもしれませんが、中学受験対策の算数は、小学生の個別指導でもっとも需要の多い科目です。小学生が中学受験で苦戦するポイントは、ほとんどの場合「受験算数」と言っても過言ではありません。理由は、
算数は、とにかく体力任せにざくざくと暗記していく科目と違って、根本的な考え方を理解しなくてはいけない。
という、算数、数学という科目自体の特性に加えて、もう一つこれが一番大きな理由ですが、
受験算数は、ほとんどの保護者が、子供に教えられない!
という事実です。ご存知のとおり、受験算数は、方程式を使うことができません。しかし、中学入学以降の数学は、ほぼ100%方程式を使用して問題を解きます。いくら勉強が良くできて一流大学を卒業した保護者でも、中学受験の経験がなければ受験算数はまったく歯が立ちません。また、保護者に中学受験の経験があったとしても、受験算数で使用する解法を使うのは人生のうちでたった二、三年間のことです。
よって必然的に、「受験のプロ」である塾講師に、指導を任されることが多くなります。中学受験の小学生を指導する講師は、「小学生の勉強」を教える講師ではなく、この大人でもかなりの苦戦を強いられる「受験算数」をプロとしてしっかり体系建てて教えることのできる講師を目指すのは大前提です。
そんな受験算数の90分個別指導を想定したカリキュラムの一例を紹介します。ここでは、生徒が「塾のわからないところを個別指導の授業で教えてもらうためにまとめてくる」なんて準備はまったくしていない状態。講師側がすべてカリキュラムを作らなくてはいけない状況を、想定しています。
まずは、準備体操。単純計算の小テストで、授業に集中する姿勢を作り出す。
休み時間が終わった直後に、いきなり数字だらけの問題の解説が始まっても、すぐに頭が「算数モード」になる生徒はとても少ないでしょう。頭が「算数モード」になる前に、解説が始まってしまうと、先生が何を言っているのか全然わからないばかりか、極端に眠くなってしまうという場合もあります(笑)
私は、授業時間をすべて使って算数の指導をする生徒の場合は、最初に必ず単純計算の小テストを行いました。小テストのために設ける時間はだいたい5~10分です。その際によく使うのは
日能研の一行計算問題集シリーズ
です。この問題集は、小学三年生~六年生用のバージョンが出ていますが、私はだいたい生徒の学年は無視して、小学三年生のものから順に使っていました。理由は、あくまで受験対応の実戦問題集なので、小学六年生用の問題集はほとんど大多数の生徒にとって難しすぎるからです。
この問題集はオーソドックスな中学入試の第一問に出題されるタイプの、複雑な単純計算・単位の問題・簡単な□を使った方程式の問題、パズル問題、などがバランス良く配置されています。特に、分数の計算や単位の問題は、しばらく手を付けないと忘れてしまう生徒が多いので、この問題集でちょくちょくランダムにチェックを行い、こまめに思い出すようにしましょう。
塾のテキストの復習。「○○算」という名称をちゃんと覚える必要性。
補習のための個別指導の場合、メインとなる集団指導の塾の予習を行うか復習を行うかは、生徒の個々のケースや保護者の希望に合わせなくてはいけません。ただ私は、「すべてお任せでとにかく模試の成績を上げたい!」という生徒に対しては、塾の授業の復習を中心に行っていました。
塾の授業では、だいたい一週間につき一つの単元を指導します。個別指導講師も、塾の速度に合わせて、直前に行われた授業をもう一度まんべんなく復習していきます。この時、生徒が、基礎は全部理解できていて応用だけが理解できない、と主張する場合でも、必ず単元の最初の基礎問題から復習しましょう。
その時理解できている基礎問題の範囲については、むしろ講師に解き方を説明をしてみて、くらいの気持ちで、存分に褒めておだてながら進めましょう。指導時間の間中、ずっと難しくてできない問題ばかりに向かい合っていると、生徒も疲れてしまいます。生徒がその過程で自信をつけていくことで、応用問題に向かう気合いを培うことができます。
また、ほとんどの単元には「つるかめ算」「旅人算」などと、それぞれ名前がついています。この解法の名前は、曖昧にしないで必ずきちんと覚えさせましょう。これは、
今後、中学受験の直前の時期に、講師の解説を簡略化して時間の効率を良くするため。
と、
問題文を見た瞬間に、問題文中の言葉を即解法のヒントにできる。
という二つのメリットがあります。二つ目について解説します。
例えば、問題文を見て時計の針の角度の問題だ!と思った瞬間に、
時計の問題→「時計算」→分母が11の変な分数が出てくる答えになるはず!
という流れが、頭の中でできるのが理想です。超難関校では、時計算と見せかけてつるかめ算、などという意地悪な問題も出題されますが、それは、受験直前のテクニック指導で対応可能です。
今日の指導に即して、志望校、有名校の過去問を最低でも一問!
一通り塾のテキストの範囲の復習が終わったら、今日指導した範囲に即した実際の中学入試問題の過去問を最低でも一問解いてもらいます。この過去問は、できる限り生徒の志望校と同レベルの学校、または誰でも知っている有名校の過去問の中から選びましょう。
自分の志望校の問題となれば、生徒の関心は高まります。たとえ、第一問の(1)のような、正答率の高いサービス問題であっても、その学校の問題が解けたという事実は生徒のモチベーションを高めることに繋がります。この時、私が使用しているのは
みくに出版 20○○年度受験用 中学入学試験問題集 算数編
です。シルバーの表紙で、電話帳のようにずっしりと重い問題集で、首都圏の有名中学173校(2014年度)の入試問題と解答、配点をすべて網羅しています。約3000円くらいする高価な問題集ですが、全ての科目分を一冊持っているだけで、かなり使えます。
この問題集を、生徒が小テストを解いている間や問題演習の間に辞書のように使って調べながら、今日の授業のラストに最適な過去問を探すようにしていました。ちなみに、この問題集は最新版であることに越したことはありませんが、私は最新の受験情報は大手集団指導の塾の先生の仕事と割り切って、個別指導の時は古い年度の問題集を何年も同じものを使用して教えていました。
志望校の最新の過去問は、受験直前の過去問対策の際に、本人にとって一番有効なシーンで使用したいので、手を付けたくないという事情もあります。
ここまでで、だいたい授業時間は終わりになる予定です。生徒の問題演習の間に、宿題を設定します。宿題の設定方法は別記事
で紹介しましたので、興味のある方はご覧になってみてください。いかがでしたか?ここで紹介した授業カリキュラムは、あくまでも一例です。生徒との信頼関係ができあがれば、明確なカリキュラムを意識しなくても、ある程度授業はスムーズに回っていくことでしょう。個別指導の講師がするべきなのは、その生徒ひとりひとりの特性に合わせた、オーダーメイドの指導です。常に、その講師でなければできないことは何か、というのを考えて、生徒に接し、有効なカリキュラムを組んであげられるように努力しましょう。
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