湿度計算の教え方
講師の皆様こんにちは!
前回の記事で理科の概要はご理解いただけたと思います。
さて、いよいよ具体的な指導法をスタートさせていきます。
最初は地学分野から最強指導法をお伝えしていきます!
なぜなら、地学は多くの先生が高校で履修していないため、
講師側の知識不足が目立つ分野であるからです。
また、地学は生徒が苦手とするポイントが決まっている分野です。
ですから、そこをしっかり理解して指導することができれば、
得点源にする生徒が増えやすい分野になります。
ぜひ1つずつ押さえていきましょう!
そのなかでも、今回は、
「気象」で最も質問が多い、湿度計算
をテーマに取り上げていきます。
「気象の計算問題がよくわからない!」と質問に来られたら、まず疑うべきはこの「湿度計算」です。
講師の立場から考えると「溶解度計算や電熱線問題と比べれば圧倒的に楽だよ!」と感じるのでしょうが、
意外にも正答率はほとんど変わりません。
(つまり、間違えてしまう生徒が多いのです)
これには理由が2つあります。
- 1 湿度の概念を理解していない
湿度=空気1㎥に含まれている水蒸気量÷その温度における飽和水蒸気量×100
となりますが、
この式をきちんと理解できていない生徒が大変多いです。
最初に湿度の式は板書し、きちんと説明をして、その場で理解させてください。
ここがおぼろげな状態で計算問題に進んでしまうことが、できない生徒を増やしてしまう要因です。
※式自体は問題で提示してくれる問題も多いため、覚えるのが必須とは言わなくても良いと思います。
むしろ式があるにもかかわらず解けない、という状態は、きちんと湿度を理解していない証拠です。
- 2 体積・温度変化・部屋の水蒸気量がごちゃごちゃになってしまう
1つ1つを解説すると「あ、なんだ!そんな簡単だったんだー」と言われることがとても多い分野です。
そして次回解かせると同じようにできない…となる。
この繰り返しを防ぐためには、1つ1つの数字に意味づけを施していくことが重要です。
今、何を計算しているのか。どうしてその計算式は必要なのか。それを追求してあげてください。
【特に生徒がやってしまう失敗】
- 1㎥あたりというところを認識せずに計算してしまう
- 飽和水蒸気量を理解していない
- そもそもグラフを読み取れない(=表から何を読み取るのかを理解していない)
- 計算問題と聞いた瞬間に考えることを放棄する
さて、以上の課題を認識したうえで、授業を組み立てていきましょう。
最低限、教えていただきたい内容は以下のとおりとなります。
授業で伝えるべきポイント及び進め方
湿度とは体で感じることができるものである
数字と計算問題だよ…もう見たくない…と最初から尻込みする生徒には、
まず湿度は自分たちで体感することができる、身近な数値であることを伝えましょう。
進め方の例としては
「湿度が高いところと低いところ、どっちに住んでいたい?」と聞いてみると、
生徒によって答えが分かれます。
ここから「どうして湿度が高い(低い)ほうがいいと思うの?」とつなげていくことにより、
湿度が自分たちの生活と密接していることが理解できます。
ハイレベルなコースでは、
「その湿度を自分たちでコントロールすることはできないかな?もちろん、加湿器や除湿機は禁止で!」
と言うと、一生懸命考えさせる訓練になります。
湿度の式は1本しか無い
食塩水や速度は生徒からすると、まるで3本の計算式を覚えなければならないように感じるようです。
しかし湿度の式は1本です。
湿度=空気1㎥に含まれている水蒸気量÷その温度における飽和水蒸気量×100
だけです!
ほら、だから簡単だよ!まずはこの式を一緒に理解しよう!と伝えると、
算数嫌いの生徒でも食いついてくれます。
湿度は温度と水蒸気量のみで変化する
湿度の計算式を伝えたら、いくつか演習をやらせることが重要です。
律儀な生徒であればあるほど、
がんばって「飽和水蒸気量」だけを覚えてきて、
計算問題は全く葉が立たない…ということになるケースが目立ちます。
そうならないよう、以下の例を参考に演習をさせてみましょう。
(基本例題)
10℃で5g,20℃で12g,30℃で20gが基準となる飽和水蒸気量とする。
1,20℃で6gの水蒸気を含んでいる空気は湿度何%になるか?
2,10℃で湿度80%なら何gの水蒸気を含んでいるか?
3,10℃で湿度100%の空気を30℃に上げると、湿度は何%になるか?
4,30℃、75%の湿度を含んでいる空気を20℃に下げると、空気中の水蒸気量はいくつになるか?
(解答は文末にあります。先生も是非一緒に解いてみましょう)
さらに類題を出し続け、クラス全員が「飽きたよ〜」と言いながら、さらっと解けるようになることが重要です。
私の感覚では少なくとも8問程度の演習が必要だと思います。
ここが理解できた段階で、ようやく空気の量を変化させていきます。
もし予定時間内に理解されなかった場合、無理をして空気量を変えることはせず、
ひたすら類題を出すことがポイントです。
不十分な理解のまま応用を行っても生徒は何も聞いていません。
参考として、応用問題例を挙げておきます。
(応用例題)条件は先程の基本例題と同じとする。
5 20℃、湿度40%の空気5㎥には何グラムの水蒸気が入っているか?
6 底面積12㎡、高さ2mの部屋がある。
(1)30℃、湿度80%なら何グラムの水蒸気が入っているか?
(2)温度を20℃、湿度を40%以下にしたいと考えている。
最低何グラムの水蒸気を無くせばこの条件を満たすことができるか。
さらに難しい問題が必要な場合、気象条件を変化させてみたり、結露や霧など、身近な気象現象と絡めた話をしてあげるとよいでしょう。
飽和水蒸気量を超えると水が発生することを忘れずに伝える
計算問題につかれた時間を見計らって、一度計算以外の話をしてあげると生徒は喜んで聞いてくれます。
ここでは、雲が何でできているの?という問いから入るとよいでしょう。
そうすると間違える生徒は「水蒸気!」と元気に答えてくれますので、水蒸気ではないことを伝えていきます。(ここでなぜ?と聞かれたら、水蒸気は目に見えないこと、また雲と湯気は本質的に同じ状態であることを話すと納得してくれます)
そして、飽和水蒸気量を超えると、余った部分が水として目に見える形になることを必ず教えてください。
もし余裕があれば、雨が降る仕組みを説明するとよいでしょう。
(飽和水蒸気量を超えた部分が水や氷となり、これらの粒が大きくなることで降雪・降雨になります)
最後は身近な例で終わらせる
ここでぜひ、最後に「今、教室の空気を変えずにじめじめした空気をからっとさせたい。どうすればいいんだろう?」と聞いてみてください。
おそらく温度を上げればいい、と答えてくれるでしょう。
そこで「じゃあ、夏にエアコンかけると空気がスッキリした感じがすると思うけど、温度が高くなるのかな?違うよね?じゃあエアコンって何をやってるんだろう?」と尋ねると、温度を下げるだけではなく、湿度を下げる=除湿を行っていることに気づく生徒がいるはずです。
気づいた生徒は十分に褒めてあげてください。
覚えるのではなく、理論で考えることができる力こそが、受験で最も必要とされる力です。
まとめ
今回の要点は以下の通りとなります。
計算に入る前に、湿度を身近な現象と捉えてもらう
湿度計算は、しつこいぐらい条件を変えた類題演習を行う
最後に湿度の勉強が楽しいと感じてもらうよう工夫する
次回は湿度計算についで理解されない、フェーン現象及び露点について解説をしていきます。
ただフェーン現象は計算として覚えるのではなく、その理屈を絡めて説明することが重要です。
次回もお楽しみにお待ち下さい!
今回の解答
10℃で5g,20℃で12g,30℃で20gの飽和水蒸気量とする。
1,20℃の飽和水蒸気量は12gだから、6÷12×100=50(%)となります。
2,10℃の飽和水蒸気量は5gだから、5×0.8=4(g)となります。
3,10℃、湿度100%の空気には水蒸気が5g含まれています。
これが30℃になると飽和水蒸気量が20gになるので、5÷20×100=25(%)となります。
4,30℃、湿度75%の空気中には20×0.75=15(g)の水蒸気が含まれています。
これが20℃になると飽和水蒸気量が12gに下がってしまいますから、空気中の水蒸気量は12gとなります。(設問文に注意!誤って15―12=3gの水蒸気が水となって出てくると考え、3gと回答してしまう生徒が目立ちます)
5,20℃、湿度40%より12×0.4=4.8gの水蒸気が、1㎥の空気中に入っていることがわかる。
今回は5㎥だから4.8×5=24gとなる。
6,まず、部屋の体積は12×2=24㎥であることを確認する。
次に30℃、湿度80%だから20×0.8=16g/㎥
よって16×24=384gとなる。現在の部屋を温度20℃、湿度40%にするためには、1㎥あたりの水蒸気量を12×0.4=4.8gにする必要がある。
これが24㎥分だから4.8×24=115.2g以下に水蒸気の量を減らせばよい。
よって、384-115.2=268.8g以上水蒸気をなくせばよい。
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