中学受験社会科で差が出るポイントの一つに「公民分野」の扱い方があります。地理では空間を、歴史では時間を扱うわけですが、公民は「仕組み」を扱います。そのため教科書には地理のように「地図」というツールや、歴史のような「物語的視点」もないため、そもそも公民に興味を持てない小学生が多い上に、社会科講師の多くは大学受験で日本史か世界史を選択しているため、知識が少ないという問題点があります。今回は初習の公民分野を扱う際のポイントについて考えてみたいと思います。
なぜ公民分野は自習しにくいのか
公民は多くの小学生にとって最も自習しにくい単元の一つです。なぜなら、使用されている単語が難しいので、拒絶してしまいがちなんですね。「議院内閣制」や「違憲立法審査権」など、大人が聞いてもたじろいでしまいそうな単語が並びます。教科書の説明自体がもう頭に入らないんですね。
そこで、まず単語の意味を平易に言い換えてハードルを下げる必要があります。その際に気を付けたいのが、「ざっくりと言い換える」ということです。正確に説明しようとしてしまうと、結局難解な言葉や言い回しになってしまいますから、「公共の福祉」は要するに「みんなのしあわせ」と説明するなど少々雑でもだいたいどんな感じのことなのかを掴ませることが大事です。何でもかんでも簡単に言えば良いというわけではないですが、こと公民分野においては日頃から平易に言い換える練習をしておくと良いと思います。
言葉も数字も「ざっくり」教える
衆議院の議員定数が475人とか任期が4年とか、出席議員の3分の2以上の賛成が必要だとか、そういった細かい数字が出てくるとどうしてもつまずいてしまいがちです。細かい数字も出題はされるのですが、大事なのは数字自体ではなく、数が違うという事実です。例えば衆議院には優越がある分、権力が集中しないように議員定数が参議院よりも多く設定されているわけです。
ですから、教え方としては、「参議院と知事だけが被選挙権が30歳以上」とか、「憲法改正だけが総議員の3分の2以上の賛成が必要」とかまずは例外的なものだけを印象づけることが効果的だと思います。
目的や効果とセットで「すっきり」教える
公民は人間が作った社会の「仕組み」を教える教科です。ですから、歴史のように人情味溢れるエピソードを語ることは難しい場合が多いです。そこで、「何のためにそうしているのか」という国家や組織のビジョンや、その仕組みの機能や効果を説明することが理解の助けになります。例えば衆議院の任期が参議院より短く、解散があるのは権力が強いからで、参議院が3年ごとに半数を改選するのは、解散中に起こった問題に対処するためです。
つまり、歴史のようにストーリーが波瀾万丈だったりしない分、すっきりと説明することが出来るのも公民の特徴なんです。すべて理由がはっきりしているんですね。「共感」ではなくて「理解」しやすいんです。ですから、講師が一つ一つの言葉の意味や仕組みの意義を理解しているかどうかによって、他の分野よりもかなり明確に生徒の理解に差が出てくると思います。
内容が高度な上に、扱う時間も短い公民は、実は社会に出て一番役に立つ社会科知識だったりします。少しでも興味を持ってもらえるように、「ざっくり」「すっきり」をうまく使い分けて説明をしたいところです。