長文を読むには単語→文法→精読→長文のステップ!
おそらく「長文読解」は英語の中でも最も教えるのが難しいものの一つだと思います。というのも、長文問題というのは単に知識を問う問題ではないからです。もちろん全訳して教えることもできますし、単語の意味を教えることもできます。しかし、”長文”という特徴を捉えた上での教え方というのはなかなか思いつきません。
今回の記事では、私が長文の授業をどのように行っているのか、そしてその背景にはどのようなロジックがあるのかの紹介をしていきたいと思います。もちろんこのやり方が本当に正解というわけではありませんが、長文授業の一つの考え方として参考にしていただけたらと思います。
前提:長文≒現代文
私の考え方では、長文と現代文は似ているということが挙げられます。長文を教えるのが難しいと感じるのは、現代文を教えるのが難しいと感じるのと同じです。例えば長文に出てくる難しい単語を教えるのは、現代文で難しい単語を教えることとほぼ同義です(つまりその教えに意味はあまりありません)。
長文と現代文の違いは、ただ言語が違うだけ。長文を読むために必要な2000単語と文法をきちんと習得していれば、あとは現代文と同じです。
参考記事「国語って何を教えるの?」
この記事では国語(特に論説文)は何かを教える科目ではなく、論理的思考の訓練をする場であることを書いています。
逆に言えば、長文問題を解くにあたって、単語も文法も不十分なまま長文問題を練習しようとするのは自殺行為です。もしみなさんが漢字を知らなければ、論説文を解くことを全くもって不可能といっていいでしょう。
ですので、単語と文法は必ず習得させていなければなりません。それはいかに受験が近かろうともです。
単語を覚えていない!どうしよう!
例えば現代文を読むときに、「精神」と意味を知らなかったり「外部」の意味を知らなかったら文章が読めなくなります。それらのワードは現代文によく出てくる言葉なのですから。ある程度基本の単語をわかっていないと、文章を読むためにまずは辞書を駆使するところから始まります。辞書を使う時間がすごく無駄ですし、辞書を使っている間は「覚えよう」という意識は基本的に働かないので、単にその場しのぎになってしまいます。
対応策:まず単語については週に300単語覚えさせます。もしかしたら皆さんの中には「そんなの無理だろ」と思うかもしれません。けれど生徒に聞いてみてください。毎週50単語覚えてという宿題を出していたとするなら、その50単語を、どれだけの時間をかけて覚えたのかを。
おそらく1日でなんとかしようとしたというのが大半ではないでしょうか。しかもそれは30分程度。甘いです。もっとできます。他の科目もあるかもしれませんが、受験生であればこの程度をクリアしてもらわなければなりません。まず土日は予定がないはずですから1日中空いていますし、他の平日5日間をフルに使えば、300単語を突破することも不可能ではないはずです。
ちなみに、その300単語をそのときに完璧に覚えてもらう必要はないのです。とりあえず1周して、とりあえず一度頭に定着させた経験を積んでおけば、たとえ忘れたとしても、長文問題でその単語に出会ったとき、「あぁ、単語帳にあったな」と思い出してくれます。そしてそれが定着につながるのです。
一番基本的なものですから、できるだけ早く対応しましょう。地道に50単語ずつではいつまでも長文問題に入れません。
文法がわからない!どうしよう!
同様に文法も大切です。日本人は日本語の文法をなんとなくわかっているので読むことはできますが、英語の文法は意識して学ばなければなりません。英語の文法を知らなければ、単語以上に最悪です。まずそこにある英文がどんな構造になっているかがわかりませんし、辞書を調べても文法の結果は出てこないのですから。
対応策:文法も単語と同様に、初手からたくさんの問題を解くことが大切です。単に知識を入れるだけでしたら簡単な参考書を読んでもらえばいい。その後に、それを実際に使ってもらいましょう。
ここでオススメするのは選択肢問題しかない参考書です。というのも、高校の問題集のようだと、単語をいちいち書き込まなきゃいけないし、ヘタしたら全文をもう一度書くということがあります。個人的な意見ではありますが、その英文を書く暇があったら、選択肢問題をもっとたくさん解いてもらいたいものです。
ただし、選択肢問題は何度も解いているとそのうち答えを覚えてしまうので、丸付けの際このような質問が必要になります。
「なんでこの答えを選んだの?」
なぜその問題においてそのような答えになるのかを論理的に回答することが素晴らしいですよね。もし回答ができなかったら解説をきちんと読んでもらいましょう。
単語と文法を覚えた。さてお次は?
さて単語と文法を学んだら長文問題を説いていいのか…と思いきや、それはまだだめです。というのも、やることがまだ2つ残っています。熟語と英文解釈です。
熟語
おそらくどこの予備校でも、どこの高校でも軽視されがちな分野ですが、単語以上にこちらの方が難しいし、かつ点数に直結しやすいです。というのも、センターの問題には語法(熟語)の問題が出てきますし、長文問題といいながら空欄補充があり、それが熟語の問題だったりするからですね。
長文や英文解釈を進めている間には、熟語を習得させましょう。
精読
こちらもかなり重要。単語と英文法を学んだからといって問題が読めるわけではありません。英文を読むために必要なのは、文型を読み取る力です。
SVOCを見出す力を手にれれば、とりあえず頭の中で訳はできます。もしかしたらこの方法論に反対意見を出す方もいらっしゃるかもしれません。前から読めるように最初から練習すべきだ、とか。けれどもそれは長文を早く読む段階の話ですので、あるいは直読直解というネイティブの方式に近くなるので、受験向きではありません。
とりあえず精読で文型を読み取る力を養いましょう。精読というのは、難しめの英文が4~6行ぐらいあるのを全訳する方法です。そこには2~3行に渡る一文があったり、難しい構文が混ぜられていたりしますので、けっこう訳すのが難しいです。しかし実際の長文にはこのような文が頻繁に出てきますので、避けて通ることはできないでしょう。
やっと長文へ!
まず長文というのがどういった位置づけにあるのか?
私の考えでいえば、たくさんの英文がそこにあり、それを”まずは”単語・文法・英文解釈の技術を用いて頭の中で訳すスピードを上げること。そしてその訳した内容を、全体と照らし合わせながら論理構成を行うことです。
ということは、まずはスピードが大切になります。
どの程度かって?だいたい1日に300~400ワードの長文を2つですね。
そのためにはいわゆる”慣れ”を作らなければなりませんので、たくさんの長文を読ませます。ですので、一つの問題集に12程度の長文しかないようでは足りません。その問題集は1週間以内に消費されますから。ですので、ここで便利なのは英語のニュースサイトを使うことです。
Voice of America
簡単な単語で出来るだけニュースを紹介してくれるという代物ですので、かなり重宝します。それに1日あたり何十もの記事を更新してくれるので、ネタに困りません。
ではこれを読ませるだけでいいのか?
いいえ、ダメです。きちんと要約をさせましょう。そうでなければ、ただ流し読みするだけになってしまいます。要約は英語のレベルに応じて変えます。簡単なレベルは、段落ごとの要約。比較的短めの長文を要約するだけですので、そこまで苦痛にはなりません。ランクを上げると全体の要約になり、長文をすべて読み込んだ上で要約しなければなりませんので、けっこう難しいです。
ちなみに要約の内容は「誰が何をした」が分かる程度の、ほんとノート1行ぐらいの要約でOKです。というのも、この訓練の目的は、「この文章ではなんの話をしているのか」を理解するためのものなのですから。
ここで批判を一つ。
長文の授業というと、長文を一つ一つ全訳する人がいますが、その授業にあまり意味はないと思います。だって、解説読めばいいわけなんですから。むしろ必要なのはその長文がどのような論理体系を作り上げているかです。
段落ごとの要約・全体の要約は、その段落ごとの要約が、どう全体の論理構成を作り上げているのかの現代文チックな授業を行うことが可能です。それは本当に必要。英語の論理の流れがわからないと、うまく解けません。
まとめ
長文ってけっこうめんどくさいと思うかもしれませんが、
はい、その通りです。
そりゃそうですよ。ある意味英語という科目の集大成の分野なのですから。
だからこそ基礎をしっかりやりましょう。
けれども基礎さえやってしまえばあとは楽です。
読んで、読んで、ひたすら読む。
現代文のように、訓練するだけですから。