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キューバ革命とキューバ危機を分かりやすく解説!

高校生

2021/12/17

今回の記事ではアメリカとキューバが国交を回復しようとしているというニュースから、アメリカとキューバの関係について世界史を掘り下げていきます。

いつから仲が悪くなったのか。そしていつから仲が良くなってきたのか。

少し変わった視点で、冷戦時代を見なおしてみましょう。

時事(今)につなげながら、世界史(過去)を解説することは、きっと生徒の理解に役立つことでしょう。

 

アメリカとキューバの関係はキューバ革命のときから始まる

今回記事といたしますのではアメリカとキューバの関係です。なぜこれを取り上げたかというと、国際系の学部、あるいは政治に関係する学部はこの分野が結構好きだからですね。ニュースを振り返りましょう。

  【ワシントン=吉野直也】オバマ米大統領は17日、対キューバ政策について演説し、1961年以来、国交を断絶していたキューバとの国交正常化交渉を始めると表明した。米国は数カ月以内にキューバの首都ハバナに大使館を設置する。米国のキューバ政策の歴史的な転換となる。 ー日本経済新聞オンライン:http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM17H8G_X11C14A2MM8000/ 

 2014年12月17日の電撃的な発表です。なぜこれがそんなに重要なのかな?と思う方もいらっしゃるかもしれないので、まずはその重要性を語った後に、その背景について深くお話したいと思います。


なぜびっくりニュースなのか?

国際関係を学ぶ人の常識の一つとして、アメリカとキューバは犬猿の仲とも言えるぐらいでした。どのくらいかというと、国際連合の話し合いの場においては、特に人権の分野ではアメリカの考え方とキューバの考え方は全く一致しないのです。しかも文化多様性の分野においては、互いに一つのグループを率いて対立しています。

地域的な政治においても、キューバは南米、特にベネズエラと組んで”反米同盟”のようなものを組織しています。アメリカの政治力が南米に及ばないように、互いに経済協力しあったりしているのです。

それがなんと急に、「アメリカとキューバは仲良くしようと頑張っています」と発表されたのです。


そもそもなぜ仲が悪かったの?

そもそもなぜ両国は仲が悪かったのか?それはむかしむかし、アメリカと仲の良かったキューバ政権が倒されたからです。

キューバ革命

1950年代から、アメリカは戦後の新秩序として自由主義経済を目指しました。しかしイデオロギー的に対立するのは共産主義・社会主義。両者が勢力圏を拡大することで争っていたことは、冷戦という言葉で皆さんご存知でしょう。近いところでは朝鮮半島。アメリカは朝鮮を共産化させまいと朝鮮戦争のときに軍隊を送り込みました。 

まぁ結果的には、共産主義と資本主義が共存する形になったのですが。

しかし、この地域と違い、キューバが共産化というのはアメリカとしてすごく許せないことでした。 

なぜなら、アメリカにめっちゃくちゃ近いからです。当時のアメリカからしたら共産圏=敵のようにみなしていたので、その共産圏がアメリカにめっちゃくちゃ近いのは怖いわけです。仮に戦争にでもなったら、キューバは即刻フロリダから侵入することが可能です(フロリダとキューバの距離は九州と韓国ぐらいです)。

というわけで、キューバだけは徹底して資本主義化してもらわないと困る。

そこで成立したのが、バティスタ政権です。バティスタは1952年からキューバの大統領を務めましたが、そのときに実施した政策があまりにもアメリカよりで、アメリカの企業がキューバで好き勝手できるような状態になっていました。もちろんアメリカはこれを期待していたわけですが。だからアメリカはバティスタに賄賂なんかを送っていたと聞きます。

さて、このように他国の企業に好き勝手されているとどうにも腹ただしい。一度これを打倒しようじゃないかと立ち上がったのが、フィデル・カストロです。彼はすごいカリスマをお持ちのようで、キューバの国民からの人気もありました。

彼は一度過去に革命を起こしましたが失敗し、2度目の革命でバティスタ政権を倒しました。

さて、バティスタを倒したフィデル・カストロさん。これからは新しい政権で頑張るぞ~と思ってアメリカに訪問します。しかしアメリカのワシントンに訪れたものの、当時のアメリカ大統領、アイゼンハワーは門前払いしてしまいました。

当時の”超”大国であるアメリカに嫌われるということはキューバとしても望ましくない。なんとかしなきゃと思っていた時に声をかけてきたのが、ソ連だったのです。ソ連の接近にカストロも応じました。ソ連としてもアメリカの近くに仲間が欲しかったのですから歓喜したことでしょう。(これがキューバ危機につながります)

さてそうなるとソ連のイデオロギーを採用しなきゃいけない、つまり所有権が全て国に移ることになります。

それってどういうことかわかりますか?

そう、キューバで発展してきたアメリカ企業たちの資産がキューバのものになってしまうのです。当然アメリカはブチ切れ。キューバの政府関係者の資産は凍結するわ貿易はやめるわしてキューバを経済的に追い込もうとしました。けれどもキューバの後ろにはソ連という大国がすでにいて、アメリカからの援助をもらわずともなんとかやっていけるようになっていたのです。


キューバ危機の隠れた意義:アメリカはキューバに手出しできない

さて、近くにキューバがいるとなるとアメリカとしてはどうにも居心地が悪い。なのでとっととキューバを潰してしまえと考えました。このとき活躍したのが、CIAです。CIAはプルト作戦、パティ作戦といった暗殺計画を立案したり、直接介入を想定した計画も進められていました。侵攻自体もいくつか行いましたが、いずれも失敗。

そしてついに、1960年に入ると、しびれを切らしたアメリカはついにいくつかの計画を立案します。

空爆の計画、侵攻の計画、さらには戦術核の計画です。これらの計画は、キューバを打倒するための33の計画というような、一つの計画ではなく、複数の計画の総称でした。

とまぁアメリカがこれだけいろいろしてきたら、キューバとしてもさすがにまずいと思ったわけです。ソ連には武器を貸してくれとお願いしたのですが、ソ連の返事は「大丈夫、核兵器を渡してやる」とのこと。アナディール計画として立案された核ミサイルの輸送計画は、隠密に行われたのです。キューバにミサイル基地を建設すると、アメリカ全土が核兵器の攻撃対象にできるので、ソ連としてはなんとも達成したかったのでしょう。

しかし、ここで事件発生。アメリカがキューバ上空に飛ばしていた偵察機が、ミサイル基地を発見してしまうのです。

これがキューバ危機の始まりでした。

キューバ危機は第3次世界大戦を予想させるぐらいに大きな事件といいます。というのも、冷戦時代は通常武器による衝突ぐらいしかなかったことが、今度は、テーマが”核兵器”になったのですから。しかもステージはアメリカの背中にあるキューバ。

アメリカがミサイル基地を破壊するために積極的に防衛しようとすれば、ソ連はスイッチを押したかもしれませんし、カストロが巧みな話術を用いてフルシチョフを抱き込めば、それはそれでスイッチが押されたかもしれない。

当時の大統領、ケネディが海上封鎖という比較的緩い対処をとったこと、フルシチョフが積極的な姿勢を取らなかったことが、ある意味偶然にキューバ危機を回避してくれました。

ちなみにキューバ危機は最終的には回避されたわけですが、ソ連がミサイル基地を撤退する条件として、

・アメリカはトルコに配備していたミサイルを撤去する
・アメリカはキューバに侵攻しない

以上2つが提示され、交渉が成立しました。

実際にそれ以来、アメリカからのキューバへの攻撃というのはありません。侵攻計画も暗殺計画も特に問題に上がらず、単に国交断絶というだけで済んでいるのです。


なぜ今仲良くなろうとしている?

ソ連が介入してきたせいで、アメリカはキューバに手出しできなくなります。ある意味、キューバに手出しすることはすなわち、キューバ危機を再来させることになるからですね。

そこでアメリカはキューバに対しては、政府関係者の資産を凍結したり、貿易関係を停止するなどして、経済的制裁を行うだけにとどまり、それがソ連崩壊まで続きます。ソ連崩壊後は、アメリカを嫌うベネズエラがキューバを手助けしました。けれどもそんなベネズエラからの支援も、2014年2月から停止することになります。

そして、ついに、キューバはアメリカに寄り添うことになったのです。

この原因にはもちろん、キューバのバックがいなくなったことが大きいと見ることもできますが、それ以外の要因もあります。なぜ、今、アメリカとキューバが仲良くなっていこうとしているのかの要因を見てみましょう。

①中間選挙が近い

まずはアメリカ側の要因です。そもそもキューバと仲良くやっていこうという話は、議会は知りませんでした。つまり、オバマ大統領の独断ということです。となれば、なぜオバマ大統領はキューバと仲良くしようとしたのかを考えるといいということになります。

あらゆる新聞で言われているのは、オバマ大統領は外交面において大きな成功を上げていないことに焦りを感じているとのことです。確かに思い返して見れば、オバマ大統領はスピーチで核なき世界を訴えてはいましたが、それに関する外交的行動も、中東における行動もパッとしません。そのような状態で、次の中間選挙に入ってしまうと負けてしまうのではないかと恐れている。だから偉業の一つとして、キューバとの関係を終わらせることを考えている、と言われています。 

②チャベス政権の終わり

もう一つの要因は障害がなくなったことです。キューバの位置づけは「反米のリーダー」でした。特にその立ち位置で南米に人気がありました。しかしこれを後押ししていたのが、ベネズエラのチャベス政権です。彼は根っからアメリカのことが大嫌いなので、キューバがアメリカと仲良くなるのをよしとしません。①の理由からオバマがキューバに接近したところでチャベスに邪魔されます。しかし、2013年の3月にチャベスは亡くなり、障害もなくなったのです(ちなみにアメリカとキューバが国交再開について議論を始めたのは2013年の春だと言われています)

③バチカンの仲介

そしてさらに後押ししたのがバチカン市国の仲介です。ローマ教皇が出てきちゃったらそりゃちょっと耳を傾けなきゃいけないですよね。権威のある人の仲介というのは本当に大きいものです。というのも、ローマ教皇に仲介されていることをお断りするというのは何か変じゃないですか?それにオバマの政策に反対する人も「ローマ教皇の言うことなんて聞くな!」とはいえません。権威がありますから。また、仲介をアメリカでもなくキューバでもなく、バチカンでやったというのもポイントを稼いだといえるでしょう。どちらも平等におもむいたわけです。

 

まとめ

世界史とは単なる昔の遺物ではなく、今になってもなお生きてるものなのです。そして今ある出来事は、数十年後の世界史の科目を作り上げているのです。

「アメリカとキューバが仲が悪い」と印象づける出来事が、今になってもなお動いていることを生徒に伝えることは、世界史を学ぶことの重要性に気づかせる、一つのきっかけになるのではないでしょうか。

少々マニアックな話も多かったですが、現代史を教えるときに役立てていただけたらと思います。

 

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