関数のグラフは怖くない!一貫性のある指導のコツ
1次関数,2次関数,3次関数,三角関数,指数関数,対数関数,導関数...
代表的な関数を列挙するだけでもキリがありません.
前回の記事で私は関数についてこう述べたと思います.
<参考URL>http://www.juku.st/info/entry/1021
今回の記事からは関数を指導するにあたり,「関数の種類ごとに具体的に抑えるポイントは何か」について執筆をしていきたいと思います.
さて,その上で大切なこととして,いずれの種類の関数の単元を指導する際には,必ず必須となる概念があります.
それは関数のグラフの移動です.
そこで,関数に関する第1回目のこの記事では,グラフの移動に関する指導方法について,押さえるべきポイントに焦点を当てて解説をしていきたいと思います.
関数の移動の概要
初めに,関数のグラフの移動に関して述べたいと思います.
ここでは簡単のために,1次関数を例に,関数の移動について書いていきます.
ただし注意なのですが,本記事は1次関数を例に,平行移動や対象移動の概念を生徒に伝える方法について執筆しています.決して1次関数に関する解説ではないので,ご注意ください.
1次関数は1次関数で,傾きや切片という大切な要点があります.
また,この記事では,グラフの平行移動が出てくる2次関数の導入に解説をすると,グラフの平行移動に関して理解しやすくなるための解説の指導案についてまとめています.
2次関数だけではなく,その他の関数(3次関数,三角関数,指数関数)においても同様の概念で説明できるようになることが,この記事のポイントです.
ですから,初めて1次関数を指導する際に,この記事を参考に解説をしても生徒の混乱を招く原因になりますので,ご注意いただきたいと思います.
1次関数のおさらい
初めに,例として扱う1次関数に関するおさらいをしてみます.
1次関数のもっとも単純である基本的な書き方とグラフの形は以下のものでした.
そして,切片と傾きという概念を加えて以下のようにかけました.
まず,傾きを変えると,以下のようになりますね.
さて,ここで当たり前で,実は重要なポイントがあります.
それは,1次関数は直線のグラフであるということです.
そして,傾きを変えることで,様々な直線を引くことができます.
この基本の形:直線に対して,xやyにいろいろな操作を加えることで,平行移動や対称移動をすることで様々な1次関数を描くことができます.
次はそのことについて書いていきたいと思います.
平行移動
いよいよ,1次関数を例に平行移動のポイントについて書いていきます.
1次関数の基本の形はもう一度おさらいすると,以下のものでした.
ここで,前回の記事で関数を( )で表すということについて触れましたがここでその威力が発揮できます.
x軸の方向に平行移動
あえてこのような書き方をしてみます.
そうすると,1次関数の基本的な機能は以下の通りです.
y=( )
このかっこの中身(すなわち,x)を変えることで,x軸にそって関数のグラフが平行移動できるというとらえ方をしておくと,2次関数を指導する際に,とてもすっきりしてわかり易くなります.
その例を以下の2つのグラフを並べて描くことで解説いたします.
y=(x)
y=( x-1 )
y=x-1は,通常の指導ですと,傾き:1,切片:ー1である1次関数ですが,平行移動という切り方をすると,このようにとらえることもできます.
y軸の方向に平行移動
先ほどの例と同様にy軸の方向の平行移動についても同様に考えてみます.
今度はxではなく,yという文字を1つの塊として考えてみます.
すなわち,
[y] = x
です.
このようにとらえると,先と同様に以下の2つの関数を書いてみます.
y = x
[ y -1 ] = x
傾きが1ではない直線に関する平行移動
ここまでは傾きが1である関数に関する平行移動について述べました.続いて,傾きが1ではない場合,具体的には傾きが2である関数について平行移動をしたいと思います.
これを1つの図にまとめると以下のようになります.
水色のグラフを緑のグラフに移動する過程を2通り書いています.
そして,上記の平行移動に関してもう少しわかり易く概略を書くと以下のようになります.
したがって,以上のことをまとめると,平行移動というのは,次のように書けるかと思います.
1次関数の基本的な形である
y=a( x )
のxとyを以下のように置き換えると平行移動となります.
x⇒x-x軸方向に移動したい量
y⇒y-y軸方向に平行移動したい量
対称移動
ここまでで, xとyを置き換えると平行移動になることを伝えました.
同様に,x軸やy軸に関して対称に移動する対称移動もxとyを置き換えるという説明で,解説をすることができます.次に,このことについて述べたいと思います.
このことがわかると,2次関数の上に凸や下に凸という解説につなげることができます.
ここでは,以下の関数を例に対象移動のポイントを押さえていきます.
x軸に関して対称なグラフ
x軸に関して対称なグラフを描くには以下の置き換えをします.
y⇒-y
すると,y=2x-2は以下のようになります.
-y=2x-2
y=-(2x-2)
y=-2x+2
y軸に関して対称なグラフ
y=2x-2
y軸に関して対称なグラフを描くには,以下の置き換えをします.
x⇒-x
すると,y=2x-2は以下のようになります.
y=2(-x)-2
y=-2x-2
一般的な移動の書き方
さて,平行移動,対象移動に関するまとめです.
xやyをカタマリとしてみて置き換えるという概念で説明ができることをこれまで述べました.
平行移動,対称移動に関して,まとめると一般的には以下の図で説明できることになります.
複雑な関数の対象移動,平行移動
最後に,同じ考え方でハートの方程式を平行移動,対称移動して終わりたいと思います.
ハートの方程式は以下の式で書けます.
この方程式をこれまで書いたとおりに平行移動,対称移動をしてみると以下の図のようになります.
このように複雑な関数で表されるグラフであっても平行移動や対称移動の基本は同じなのです.
まとめ
この記事では,様々な関数のグラフを学ぶ際に,必須である対象移動や平行移動に関して書きました.
1次関数を基本として概念を説明することで,複雑な数式で表される関数のグラフもこれで,平行移動や対称移動ができるように指導できるようになります.
各関数ごとの性質については次の第2回以降から順を追って書いていきたいと思います.