※お詫びと訂正:掲載時に内容に誤解を招く表現がございましたので、訂正いたしました(2015年3月25日)
3次関数のグラフは解の個数が重要
本記事の指導対象学年:高校2年生
前回の記事では,2次関数のグラフに関する要点をまとめました.
今回の記事では,3次関数のグラフについてポイントをまとめたいと思います.
さて,3次関数のグラフに関して基本的なものは以下に示すグラフです.
今回の記事は,この3次関数のグラフに関する指導する際の要点を書いています.
2次関数のおさらい
3次関数と2次関数の違いはどこにあるのでしょうか?
2次関数の基本的な形は放物線を描くということを前回の記事では述べました.
そして,様々な放物線は上に凸か下に凸か,平行移動によってかけることを述べました.
3次関数に入る前に2次関数のグラフに関して以下の2点を復習しておくと,生徒目線ではわかり易いかと思います.
基本形とグラフ
2次関数の基本形は以下の式であらわされます.
そしてグラフは以下の通りです.
aの意味
以下の数式で表される2次関数の形を決めるパラメータaがありました.
3次関数の解説をする前にこのaについて以下の2点について述べておくと,3次関数につながっていきます.
符号の違い
上に凸か,下に凸かを決めましたね.正の場合は下に凸,負の場合は上に凸の形をしていました.
図で表すと,以下の通りです.
大きさ
aの大きさは,放物線の開き具合を決める要素でした.言い換えれば上下に拡大縮小するように操作できるのがaの大きさでした.
平行移動・対称移動の確認
そして,2次関数は平行移動・対称移動は以下に示すとおりでした.
もっと一般的な書き方をすると,グラフの平行移動,対象移動は,xとyを以下のように置き換えることで表すことができましたね.
この考え方は3次関数でも同様です.
では以上のことを念頭において,本題である3次関数のグラフの要点について述べていきたいと思います.
3次関数の基本事項の確認
2次関数に関してパラメータaとグラフの移動に関して簡単な復習をしたら,本題の3次関数の解説に移っていきます.
手順はこれまでと同様です.基本形を考えて,グラフの形を変えて,グラフの移動です.
基本形
3次関数のグラフの解説もこれまでと同様です.まずは基本形の確認に入ります.
もっとも基本的な3次関数の数式とそのグラフは以下の通りです.
このグラフを基本に3次関数と2次関数との違いについて授業を展開していきましょう.
aの意味
2次関数と同様に3次関数もパラメータaがあります.
初めにこのパラメータが何を決定するのかについて述べていきます.
符号の違い
2次関数は上に凸か,下に凸かを決めるパラメータでした.
3次関数の場合は,グラフの右側がどうなっているのかが分かります.
すなわち,以下のようにまとめることができます.
- 正の場合は,グラフの右側がy軸に関して正の方向に上がっていく.
- 負の場合は,グラフの右側がy軸に関して負の方向に下がっていく.
大きさ
これは2次関数と同様です.
大きくすると縦に伸びていきます.また,左右両端の開き具合も同様です.
3次関数グラフと解の個数
さて,ここまでで3次関数の基本的な形について述べてきました.
そして疑問を投げかけてみるとよいでしょう.
「3次関数の形は本当にこの形だけなのか?」
2次関数との違い
ここで2次関数について思い出してもらいましょう.
2次関数はf(x)=0となるような解(以後,この記事での解はこのことを意味します)によって2次関数の形も決まっていました.
例えば以下の簡単な関数を紹介してみるとよいかと思います.
いかがでしょうか?
2次関数は解の個数によらず,形は変わりません.あくまでも形を決めるのはaの値なのでしたね.
3次関数ではここで2次関数との違いが出てきます.2次関数はx軸との交点の個数,すなわち解の個数の違いによらず,形はいつも放物線を描いていました.
3次関数の解の個数
3次関数も以下の図に示す通り,2次関数と同様に解の個数のみでは形は変わりません.
解の個数はそれぞれ青のグラフは3つ,緑のグラフは2つ,赤のグラフは1つとなるグラフです.
2次関数の時と同様に形は同じです.
グラフ上の解の位置
さて,3次関数も解の個数のみでは形は変わりません.
解の個数と解の位置を変化させることで形が大きくなることをこの項目では記します.
2次関数は解の位置を変えたとしても,放物線であることには変わりませんでした.
一方,3次関数は異なります.
試しに,3次関数の解を0,1は固定してほかの一つを動かしたグラフを示します.
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では,解の個数に加えてその位置を変えたものを示してみます.
上記の3つのグラフは青,赤,緑のいずれのグラフについても,0という解を持ちます.
これら3つの共通の0という解に加えて緑は,1という解を持つようにしたもの,赤は‐1と1の解を持つようにしたものです.
グラフの概形が異なるのがわかるかと思います.
グラフの移動
さて,先に挙げたように,解の位置を変えるとグラフの形をある程度,自由に変えられることを述べました.
最後にグラフの移動に関して解説をしてまとめを行います.
平行移動
基本的な考え方は同じです.xやyを置き換えることで平行移動,対称移動を表すことができます.
見方を変えると,解の位置をすべて同じようにずらすとそのまま平行移動になるということになります.
いくつか例を挙げてみます.
x軸方向
y=0となるようなxの解はー1,0,1の3つです.解を3つとも平行移動したらどうなるかを以下のグラフに示してみます.
青のグラフを基準に,x軸方向に1平行移動したグラフが赤のグラフ,2平行移動したグラフが緑のグラフです.
すなわち,青の式に関してxをx-1と置き換えると,赤いグラフ
x-2と置き換えると緑のグラフになることが確認できるかと思います.
y軸方向
y軸方向もこれまでの関数と同様です.
青のグラフを基準にしてy軸方向に1平行移動したものが赤のグラフ,-1平行移動したものが緑のグラフを表しています.
すなわち,青の数式でyをy-1に置き換えた式が赤の式,y+1に置き換えた式が緑の式となっています.
対称移動
最後に対象移動に関してです.
対称移動もこれまでの考え方と同様にyやxの符号を逆にすると,対称移動をすることができます.
x軸
x軸に関する対称移動は,yの符号を入れ替えることで表すことができました.
すなわち,右辺全体に-1をかけるとx軸に関する対称移動となります.
例えば以下の関数がわかり易いかと思います.
y軸
y軸に関して対称移動するには,xを-xに 置き換えることで,y軸に対称なグラフを描くことができました.
例えば以下以下のようになります.
まとめ
一見,難しく思える3次関数ですが,基本形を出発点にして,要点を絞って伝えていくことで,すっきりとした指導ができることと思います.
今回の記事で3次関数のグラフに関してお伝えした要点は1つです。それは、
3次関数が1次関数や2次関数と異なるのは、 解の個数とその位置によってもグラフの形が変わるということ
3次関数は解と係数の関係や微積分の問題として扱われることが多いです.
しかしながら,基本的なことを押さえておくことは数学が苦手な生徒を指導する際にはとても大切です.
いきなり難しい3次関数を教えるのではなく,基本的なことから1つずつ積み上げていくことで理解が容易になると思います.