受験科目が小論文のみ?!
受験では、小論文のみを受験科目として指定する大学もあります。有名どころだと、慶応のSFCは小論文と英語のみが受験科目です。受験科目が少なければ少ないほど、その科目に対する要求度は高まります。ですから、ちょっとやそっとの小論文では太刀打ちできません。
また、推薦の際に小論文を課す大学も多くあります。推薦では、評定平均が同じように良い生徒を振り分けるために小論文を見るのです。ですから、みんなが考えつきそうなことを書いても、差は生まれません。みんなが考えないようなことにまで、しっかり踏み込んで学習する必要があります。
そういう生徒を教える先生へ、この記事では少し難しい話題に対しての例を挙げながら、小論文をどうやって深めていけば良いのかを考えていただけたら幸いです。
また、「小論文って何を書いたら良いの???」という疑問や苦手意識を持つ生徒さんを指導される先生は、
【初~中級】これでバッチリ!小論文のイロハ✩1
http://www.juku.st/info/entry/1205
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そもそも小論文とは
小論文は短い論文である
小論文はその名のとおり、‘‘小さい論文‘‘(=短い論文)です。つまり、論だてながら文章を展開しているか、というところを前提条件として見られます。
論だてして書く、というのは、
⑴明確に立場を述べる
これはずばり、その命題に対して、賛成か反対かの意見をはっきりさせることです。曖昧な態度では○点です。まずは自分の立場を明確にすることが、絶対条件なのです。
⑵その立場を支持する根拠を順列する
ここが試行錯誤のしどころです。立場を支持する根拠はなるべく独自性に富み、面白いと思わせられればしめたものですが、それが難しいですよね。ここについては後から詳しく述べますが、根拠に必要な要素は2点
独自性に富み、おもしろい
説得力がある
ということです。これは自分がどんな立場をとろうと変わりません。
⑶その立場を支持することを最後に再度明確化する
つまり、
「以上の理由で、わたしはOOに対して賛成(OR 反対)します。」
と述べれば良いのです。自分の文章の最後に、自分の立場が変わっていないことをしっかり示してあげることが大事です。そうすることで、自分の論に(自分の小論文に)ぶれがないことを証明するのです。これも絶対条件です。
以上の三点を守ることがまずは前提条件です。その上で、⑵で明暗が分かれるといえるでしょう。
ここから、
⑵について、筆者に賛成する場合と、筆者に反対する場合の2パターンに分けて考えてみましょう。
筆者に賛成する場合
筆者に同調を示す場合、筆者と同じ意見なのですから、意見による差異は生まれませんね。同じフィールドなのです。ですから、ここで自分の小論文をきらりと際立たせるためには、ほかの何かが必要ですね。それを、意見を支えるための根拠に求めるのです。根拠を、ありきたりな根拠にせず、一味違った、面白い視点で根拠づけられたら、勝ちです。もちろん、説得力もなければなりません。
注意点
ここで、注意点をひとつ。
小論文ではまず、筆者の意見を述べた短い文を読んでから、
「この文を読んであなたの意見を述べなさい。」
といわれることが多いと思います。その文では、筆者がその意見を支持する根拠が確実に述べられているはずです。その根拠と似たような根拠を使わないことに気を付けてください。似たような根拠を使ってしまえば、独自性がありません。筆者の文章=筆者の論を拡張しているにすぎず、あなた独自の文章ではない、という風に判断されてしまうのです。ですから、似たような根拠は避けて、出来るだけ全く新たな根拠を必死に考えるべきです。
では、面白い根拠とはどういうものを指すのでしょうか?
難しいけれども考える価値のある例題を示してみたいと思います。
例1
援助交際について是非を述べよ
という問題があったとします。
おそらく大勢の方が援助交際は良くないものだ、と立場付けると思います。
逆に、援助交際はいいものだ、と立場付けることは倫理的に、道徳的にもちょっと難しいものがありますから、こういう出題の場合、はなから立場付けが決められているとまで言えるかもしれません。ですからこの場合はまさに、出題側が、その根拠として面白いものを述べよ、説得力のあるものを述べよ、と求めていると言えます。
ここで、面白い根拠がひとつありますので、紹介したいと思います。
- 援助交際は臓器売買と同等である。
そして、
- 臓器売買が法律的に否定されるとき、援助交際も否定される。
という理由です。臓器売買と援助交際に共通点を見出した考え方ですね。
臓器売買というのは、自分の肉体を部分の総体とみなして、切り離して考えたシステムだと考えてみます。心臓、肝臓、腎臓、胃、小腸、大腸・・・それらすべてが、総合してできたのが自分の肉体である。肉体は、1つではなく部分でできている、部分の総体だ、と考えているのです。ここには、人間は単なる物質的で機械的なものにすぎない、という考え方が潜んでいます。だから部分とみなして、まるでモノであるかのように、売ったり買ったり自由にできると思うと考えられるのです。
しかし、その臓器売買が法律的に否定されるとき、援助交際も同時に否定されます。なぜなら、援助交際も、自分の体を部分とみなして売買するという同じシステムをとるからです。一見結びつかない援助交際と臓器売買が、ここで結びつくようになります。
ちなみに、このように生命やある現象を、部分の集合だと考える考え方を‘‘機械論‘‘といいます。これは、非常に大事なキーワードで、現代文の評論を読むときにも使えるので、是非覚えておいてほしいです。
つまり、
提示されたテーマを別のテーマとリンク付ける
というのは、一つのコツになります。
筆者に反対する場合
基本的に、筆者に反対する場合は、賛成する場合よりも根拠に気を付ける必要があります。なぜなら、ある筆者によって書かれた文章で、大学の入試などで取り上げられる文章というのは、秀逸なものが多く、なかなかな文章であるはずなのです。きっと本として出版されているものであるでしょうし、世間への発信力が大きい文章であるでしょう。ですから、その発信力に負けないくらいの根拠を持って論破するのは、大学受験生である高校生にはかなり難しいことは間違いないのです。
ですから、小論文の書き方を指導する場合に、反対の立場を示す場合非常に難儀なので、基本的には賛成の立場をとったほうがよいよ、という講師も多いようです。
ですが、ここでは便宜上、反対意見を述べる場合も考えてみます。先に言ったように、根拠には賛成の立場以上に、独自性のあるもの、そして、説得力のあるものを求められます。
例1
ここで、一例を示してみましょう。先ほどの援助交際の例を引き継いで、がんばって援助交際肯定の根拠を考えてみます。
実は、先ほどの機械論、つまり、肉体を部分の総体とみなす、という考えを用いて肯定することもできるのです。
- 現代の診療システムに見るように、われわれの生活には機械論がしみ込んでいる。
という根拠を、一例として示してみたいと思います。
私たちは、病院に行くとき、症状に合わせてOO科、と分けてみてもらいますね。風邪だったら内科。胃腸炎だったら消化器科。骨折だったら形成外科。という具合です。つまり、私たちは既に、自分自身の体を部分とみなして医者に診てもらう、というシステムの中に取り込まれているといえませんか?もし、部分とみなしていなければ、本当は総合診療がわれわれの生活には浸透しているべきなのです。総合診療とは、たとえば、胃が痛いにしても、胃だけを見るのではなく、肉体は様々な臓器の働きが絡み合ってできていると考えて、たとえ胃が痛くても体全体を見ようとする診療システムです。
つまり、総合診療が浸透していない現代において、機械論はわれわれの生活に浸透しているから、機械論の立場で見れば、援助交際も現代では否定されない、と結論付けるのです。
同じ機械論という考え方を、このように賛成、反対、どちらの立場にも適応できるのは面白くないでしょうか?
このように、一つでいいので、ある視点をどんどん広げていくと、うまい具合に自分の論の根拠を導けるようになりますよ。
ある視点をどんどん広げていこう!
おわりに
以上、小論文の書き方を、具体的に示してきました。
賛成の立場であっても、反省の立場であっても、根拠に独自性があり、説得力があれば、大いに加点されます。ここが考えどころですが、今回の例を見ながら、なんとなくでもこういうもんなんだ、と生徒に感覚をつかませるような指導にしていただけたら幸いです。