リーマンショックとサブプライムローンって何なんだ?
2008年9月15日。
世界経済を震撼させる出来事が起こりました。
アメリカ、ニューヨークの大手投資銀行である(あった)リーマン・ブラザーズが経営破綻したことによる一連の経済パニック、リーマンショックです。
当時、リーマン・ブラザーズに関連する報道がメディアで盛んに報道されていました。
筆者もニュースを見ていましたが、
クビになった社員が段ボールを抱えて退社する様子がとても印象的でした。
後ほど詳しくご紹介しますが、
このリーマン・ショックにはじまる金融不安はその後のアメリカの政治にも大きな影響を与えます。
ニューヨークは世界経済の中心ですから、経済動向はあっという間に世界に波及してしまいました。
これだけの影響力を持った出来事ですから、
近年は高校、大学入試でも時事問題として盛んに出題されるようになっています。
リーマン・ショックという問題を考えることは入試の対策としても有効となるでしょう。
加えて現代の世界経済を学ぶことは、教養としても必ず役立つはずです。
本シリーズでは上記のような問題意識から、
これほど強く、大きな影響力を持ったリーマン・ショックとは一体何だったのか?
ということを、わかりやすく解説します。
もくじ
1.リーマン・ブラザーズとは
2.一般的なローンの仕組み
3.サブプライムローン問題
4.さらなるリスク管理
5.まとめ
1.リーマン・ブラザーズとは
そもそも、リーマン・ブラザーズとはどのような会社なのか?
そこから話を始めていきます。
「リーマン・ブラザーズ」
ほぼ名前のとおりなのですが、ドイツにいたリーマンという3兄弟が1850年にアメリカで起業した会社です。
もともとは綿花の取引を業務の中心とする会社でしたが、のちに金融業界にも進出しました。
金融業界において会社の規模を大きくすることに成功し、アメリカで第4位にまでのぼりつめます。
全米で第4位という数字から、
いかにリーマン・ブラザーズが名門投資銀行であったかがお分かり頂けると思います。
これほどの大手かつ名門であったにも関わらず、なぜ経営破綻に追い込まれてしまったのか?
これを考えることが全体像を見ることにつながります。
結論から述べると、リーマン・ブラザーズが経営破綻に追い込まれた背景には、
2007年まで続いていた”住宅バブル”を形作った「サブプライムローン問題」がありました。
「サブプライムローン」はどのような問題でリーマン・ショックとなぜ関係があるのか?
本稿は、その点を確認していきます。
<ここがポイント>
リーマン・ブラザーズが倒産した背景には、「サブプライムローン問題」があった
2.一般的なローンの仕組み
大きな買い物の経験が少ない中学生や高校生にとって、住宅ローンの仕組みは想像しにくいものです。
なので、説明する際には以下の様な説明からしてあげると良いかもしれません。
住宅を購入する場面を想像してみてください。
住宅を買おうとすると、費用は何千万、時には億単位を超えることがあります。(日本円で考えます)
貯金に余程の余裕をもつ人でない限り、費用の全額を先払いで支払うことはできない買い物です。
では、家の購入が出来る人は多くの貯金を持つ人だけなのでしょうか?
…このような限界をカバーするのがローンです。
ローンというのは、
購入の費用を金融機関などから前借りして働きながら少しずつ返済する、
というのが基本的な仕組みです。
しかし、このローンは、誰でも簡単に利用できるものではありません。
貸す側の金融機関からすると、
例えば、”1億円を貸した相手が自己破産して返せなくなってしまった”
こんなことが起こっては、会社に大きな損害が出てしまいます。
つまり、お金を貸す側の金融機関は、
- 一定の水準を超える収入がある人(金融機関によって水準は異なります)
- 安定した収入を確保し続けられる人
という2条件を満たす人にのみ、お金を貸すのが基本的な考え方です。
もう1つ考えてみましょう。
①②を今一度ご覧下さい。
この条件をみたすことが出来る人はどのような人でしょうか?
職種や仕事内容はさておき、2つの条件を満たせる人となると、
一定以上の収入があり、それが継続して得られる人=高額所得者となります。
つまり、貸し出す対象の中心は、一定以上の高額所得者となるのですね。
<ここがポイント>
住宅ローンを利用するには、一定以上の所得が必要となる
3.「サブプライムローン」問題
話を「サブプライムローン」に戻します。
「サブプライムローン」は、住宅ローンという仕組みの影の部分にスポットを当てました。
具体的な中身に入る前に、用語の確認をしておきます。
・サブ(sub):2番目、格下、控え。
・プライム(prime):最も重要な、主要な、最高位の
・ローン(loan):貸付金
一般的な住宅ローンの仕組みでは、家を購入できるのは高額所得者のみになってしまう、という話をしました。
低額所得者でも、住宅を購入するにはどんな仕組みのローンを作ればよいか?
そこで考えられたのが、低所得者に対して高い金利を付けて貸し出すことでした。
一見、矛盾している様に見えるかもしれませんが、
金融機関は、低所得者に高い金利を付けてお金を貸し出します。それはなぜか?
もし、貸したお金を返せなくなった人が現れても、
高い金利に耐えてお金を返済していた人がいれば、返済できない分をカバーできるからです。
つまり、
金融機関のリスク管理という側面から低所得者に対しては金利が高くなる、ということですね。
いずれにせよ、低所得者に対して(高い金利でも)お金を貸し出す仕組みができました。
結果、マイホームに夢を持つ低所得者も借金をして家を購入することが出来るようになります。
さらに、低所得者がローンを組みやすいのにはもう1つ理由がありました。
その理由とは、
家を担保に借金し、
ローンを返済できなくなったら担保にした家を引き渡すだけで、それ以上の請求がないことです。
本来、家のローンを支払えなくなった場合には担保にしていた家や土地に加えて、
それらではまかないきれない残りの費用もその後返済し続けないといけません。
しかし、このサブプライムローンはそうしたリスクもなく、
いざとなったら家を返してアパートなどに移り住めば良い。
これらの条件が消費者の住宅購買意欲をかきたてていたのです。
<ここがポイント>
「サブプライムローン」は、低所得者の住宅購入意欲をかきたてた
4.さらなるリスク管理
住宅金融会社は、サブプライムローン、つまり、
高い利子によってリスク管理を行っていましたが、さらに徹底した対策を練っていきます。
そのリスク管理とは、「債権を売る」ということです。
以下の図をご覧ください。
順番に説明していきます。
まず、右上に家を購入しようとしている人がいます。
そのために、住宅金融会社から①1000万円の借金をすることになりました。
お金を借りたことで、家を購入する人は、負債者(借金を背負う人)となり、
その負債者にお金を貸した住宅金融会社は、
②1000万円に利子をつけた額の債権(お金を返してもらう権利)を所有することになります。
そして、住宅金融会社はこの債権を、さらに、③投資銀行に売り出します。
権利を売るというのは非常に難しい表現ですが、要するに、
「1000万円+利子分」を住宅金融会社から買い取り、
投資銀行が住宅金融会社に変わって負債者からの借金を受け取る、ということです。
住宅金融会社が債権を投資銀行に売ることができれば、買い取る分のお金が入ってきます。
(この投資銀行とリーマン・ブラザーズとの関係は次稿で改めて言及します)
本当であれば10年、20年スパンで入ってくるであろうお金をすぐに手に入れることができるので、
その資金を元手にして、ローン事業の拡大が可能になるのです。
こうした仕組みがあった故に、多くの人が家を購入しました。
これが2007年までアメリカで起こっていた、”住宅バブル”です。
<ここがポイント>
債券を売ることでローン事業が拡大し、アメリカでは住宅バブルが起こっていた
5.まとめ
本稿ではここまで、リーマン・ショックとは一体何だったのか?
ということを理解するために必要な知識をわかりやすく説明する方法をご紹介しました。
リーマン・ショックという経済危機を理解することは決して難しくありません。
しかし、高校生が1つ1つの細かい因果関係を理解するためには、
本稿で述べたような前提知識が必要になると感じていたため、今回執筆致しました。
最後に指導のポイントをまとめます。
テーマ:リーマン・ショックとは何か!?
◯ローンの仕組み
(1)家を購入する場面を想像しよう
(2)家を買うために必要なお金をどうやりくりする?
(3)貸す側の考え
◯「サブプライムローン」問題
(1)「サブプライムローン」とは何か?
(2)低所得者にとってのメリット
(3)なぜ、購買意欲につながったのか
◯リスク管理
(1)住宅金融会社のリスク管理
(2)債権を売却
(3)資金を元手に事業拡大!
という順番で説明すれば、生徒は因果関係をわかりやすく理解できると思います。
皆さんが指導する際の参考になったら幸いです。本稿は以上です。
ここまでお読み下さりありがとうございました!
次稿はリーマン・ショックの具体的な中身に入っていきます。
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