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リーマンショックを現役講師がわかりやすく解説します!!Part2

高校生

2021/12/17

<Part1はこちら!>

 

 

経済への影響

前記事「リーマン・ショックを現役講師がわかりやすく解説します!!Part1」では、

  • リーマン・ブラザーズとはどのような会社か
  • リーマン・ショックを引き起こした「サブプライムローン問題」とは何か
  • 債権を売るとはどういうことか

についてご紹介しました。

 

本稿では、前稿の内容に引き続き生徒が

リーマン・ショックとは一体何だったのか?

ということを解説していきます!

 

もくじ

 

1.投資銀行のリスク管理

2.債権を「証券」に

3.住宅バブルの崩壊

4.リーマン・ショック

5.株式市場大暴落 

6.まとめ


1.投資銀行のリスク管理

初めに、もう一度こちらの図を御覧ください。

 

図

 

このケーススタディでは住宅金融会社が、「サブプライムローン」つまり、低所得者に対して、高い利子をつけてお金を貸し出します。

 

高い利子をつけるとはいえ、もし負債者が会社を突然クビになったり、ギャンブルで大失敗を起こして破産してしまったら、住宅金融会社は貸したお金を取り返せないリスクを背負っています


そういった際のリスク管理として、「債権」つまり「貸したお金を返して貰う権利」を投資銀行に売却していた、という事まで前稿でお伝えしました。

 

しかし、少し立ち止まってみましょう。

 

住宅金融会社は債権を売ることでリスク管理ができても、

この仕組みでは投資銀行だけが大きなリスクを背負うことにならないでしょうか?


「債権」を手に入れることができても、負債者がローンを返済できなければ、投資銀行は利子を含んだお金を回収することができません。

投資銀行も、決して慈善事業で債権を買い取っているのではなく、ビジネスで取引しています。

であるならば、立場としては当然他の一般企業と同じです。

 

つまり、投資銀行も利益が出せるようリスク管理を徹底しなければならないのです。


いったい投資銀行はどのようにしてリスク管理を行ったのか?次にそのことを検討していきましょう。

 

<ここがポイント>

 投資銀行も、リスク管理を徹底して利益を追求しなければならない

 

2.債権を「証券」に

結論から述べると、投資銀行もある対策をしていました。

その対策とは、買い取ったサブプライムローンの債権をさらに「証券」として商品化していたことです。

チケット

具体的にどういうことか?

基本的な論理は住宅金融会社と同じです。

 

投資銀行が債権を買い取っても、負債者が負債のローンを返せなくなってしまったら、投資銀行に大きな損害が出ることになります。

そのような場合に備えて、投資銀行は債権を「証券」として、売りだしておいたわけです。

 

それは一体なぜでしょうか?

 

今度は、例にならって住宅購入時の1000万円の借金を、高い利子も含めてちゃんと返せる人を想像してみて下さい。

 

負債者が利子分を含めて、ローンをしっかり返済してくれれば、

その証券を購入した人は、買った値段より利子の分だけ多く儲けることができます。

 

少し抽象的になってきたので、具体例を用いて解説します。

<例>1000万円を・・・
・銀行に預けていた場合:年率0.05%の利子→5千円の利子
・証券を購入した場合:サブプライムローンは年率5%の利子→50万円の利子

わかりやすいようにあえて極端な例で示しましたが、

同じ1000万円を普通の銀行に預けているよりも、
「証券」という高い利子のついた「債権」を持っていれば、より高い利子でお金を手に入れられるのです。

はいえ、もちろん証券は、負債者の経営破綻などで一気に0円になってしまうリスクもついています。


「証券」を購入した消費者にどれだけ利益が出るかは、負債者や家の値段によって1つ1つ違います。

しかし、「証券」を購入する消費者にとっても、株と同じように高いリターンを手にする可能性がありました。

つまり、証券を購入するのは、資産運用の1つ、ということです。

 

 <ここがポイント>

債権を「証券」として売り出すことで、投資銀行はリスク対策を行っていた

<参考>
・「【教養にもなる】 知るほど面白い!株の仕組み

 

3.住宅バブルの崩壊

こうして盛り上がりを見せていた住宅バブルはついに2007年にはじけてしまいます。

住宅への需要が高まり、価格が上昇し続けている状況を見たFRB(※)が、バブル景気をおさえるために、
金利を引き上げ、住宅価格が下落したことがきっかけでした。

※FRB・・・アメリカにおける中央銀行

migikata

サブプライムローンを組んでいた人たちは、住宅価格が上昇する事を見込んでローンを組んでいました。

住宅価格が上がり続けていたために、所有しているだけで購入した時よりも価格が高くなっていたのです。

つまり、安く買って高く売るという見込みを持つことができました。

しかし、金利の引き上げによって住宅の価格はむしろ下落。

結果として、

高く買って安く売る(もしくは同等の値段)という状態になってしまったのです!

こうなってしまっては、低所得者はローンの返済がとても苦しくなってしまいます。

日本も経験したことがありますが、バブル景気というのは、

これだけ価格(今回の場合は住宅)が上がっているということは、今はものすごく景気が良いのだろう

と多くの国民が勘違いし、後先考えずにお金をポンポン払ってしまうような状況です。

しかし、その状況は一過性の加熱景気。中身はなく、泡のようにあっという間にはじけてしまうのです。

話を戻します。

FRBの金利引き上げによって、サブプライムローンを組んだ負債者の多くが借金を返済できなくなってしまいました。

つまり、不良債権※が大量に生まれてしまったわけです。

※不良債権・・・返して貰う権利があるのに負債者が返せないため、権利を行使できないこと

これが、住宅バブルの崩壊です。

 

<ここがポイント>

FRBの金利引き上げが契機となって、住宅バブルが崩壊した

 

4.リーマン・ショック

こうして不良債権が増加したことによって、

このサブプライムローンを買い込んでいた投資銀行や、証券会社などが大ダメージを受けました。

家は1件1件がとても高額であるため、バブル崩壊の影響は甚大なものとなります。

住宅バブルが起こっていた時には、たくさん仕事があった住宅関係の会社は、仕事が激減してしまいます。

企業は倒産を免れるために人件費を削減し、多くの解雇者が生まれてしまいました。

そして、このサブプライムローンに深い関係のあった大手投資銀行の1つ、

リーマン・ブラザーズも倒産に追い込まれることになったのです。

企業が倒産しそうになった時、アメリカ(日本でも)では、大企業が買収合併をして救済することがあります。

ビジネス的に利害が一致している場合には、救わなければ自社にとってもダメージになりうるからです。

たとえば、天然水を売る飲料メーカーを想像してみてください。

ペットボトル

飲み物の原料となる水を確保できたとしても、取引先のペットボトル製造工場やラベル製造工場がつぶれてしまっては、商品化するプロセスに悪影響が出ますよね。

つまり、こうした商品化する過程も安定させるために、ペットボトルやラベルの生産プロセスも管轄下におく=買収してしまおう、ということが起こったりするのです。

あくまで一例ですが、このように大企業は利害関係のある小企業の救いに乗り出すことが多いわけです。

しかし、これはあくまで吸収合併できる規模の場合です。

本シリーズの冒頭でもお伝えした通り、リーマン・ブラザーズというのはアメリカで第4位の規模を誇った大手投資銀行でした。

吸収合併するには規模が大きすぎるかつ、合併したらリーマンブラザーズの経営苦境に巻き込まれてしまいます。

結果、民間で救いに乗り出す(ことができる)企業はありませんでした。

では、もう1つの救い手となりうるアメリカ政府は何をしていたのでしょうか?

結論から述べると、こちらも救いの手を差し伸べませんでした。

リーマンブラザーズが経営破たんした2008年はブッシュ大統領率いる共和党政権です。

アメリカの二大政党の基本的な考えを確認しましょう。

<民主党>
・軸:「大きな政府
・票田:黒人やヒスパニック系、あるいは労働者など貧しい人たち
 ⇨考え方「こうしたお金に困っている人を助けるためにしっかり税金をとって、社会保障を充実させて
      いくべきである。」Ex.国民皆保険制度導入
<共和党>
・軸「小さな政府
・票田:主に白人、富裕層やビジネスマン
⇨考え方「自由主義的かつ独立精神をもってやっていくべき。国に頼らず自分たちのことは自分たちで
             Ex.国民皆保険制度のような政策には反対

共和党政権は上記のとおり、自己責任が軸にあります。

そのため、リーマンブラザーズが倒産する前後での、救済法案を議会で否決してしまったのです。

 

<ここがポイント>

リーマン・ショックは住宅バブル崩壊後の対応によって引き起こされた側面も大きかった 

 

5.株式市場大暴落

さて、そうなるとどうなるでしょうか?

ここまで述べてきたとおり、”アメリカ第4位の規模を誇るリーマンブラザーズが倒産し、さらに救済もされない”という状況を見た人たちは、今後金融不安がますます大きくなると予想しました。

結果、ニューヨーク株式市場が大暴落します。

株というのは、会社が事業を行うための大切な資金源です。

これが大暴落したことで、各会社が資金繰りに苦しみ、意に反して経済活動を制限せざるを得なくなりました。

経済とは、生産、そして消費が回り続けてこそ活性化するものです。

こうした動きが止まってしまった結果、アメリカは深刻な不況になった、ということ

ですね。

世界経済の中心であるアメリカが深刻な不況になったことで、日本を含む各国に悪影響が出ました。

最後に、政権との関係についてご紹介します。

アメリカ国民は一連のリーマンショックを経験し、

「大きな経済不況を生みだした共和党のブッシュ政権ではなく、大きな政府でいざという時には救済に乗り出せる民主党政権へシフトした方がよいのではないか?」

と考えるようになりました。

オバマ大統領率いる民主党政権が誕生した背景にはこうした側面もあったのです。

 

<ここがポイント>

リーマン・ショックによって、世界経済に大きな悪影響が出た

アメリカの政権交代の背景の1要因にもなっていた

 

6.まとめ

本シリーズでは、リーマンショックが起こった具体的な中身の指導法をお伝えしました。

最後にリーマン・ショックのポイントをまとめると、

テーマ:リーマン・ショックとは一体何か?
〇投資銀行のリスク管理
(1)住宅金融会社から買い取った債権のその後
(2)投資銀行のリスク管理
(3)債権を商品化
〇住宅バブル
(1)低所得者の購買意欲
(2)需要が高まり、価格が上昇
(3)FRBが金利引き上げ
〇リーマン・ショック
(1)住宅バブルの崩壊
(2)経済界へ大ダメージ
(3)企業合併を行う?行わない?
(4)政府は救う?救わない?

となります。各項目を自分の言葉で説明できるようになれば、リーマン・ショックの因果関係についてはバッチリです。

本稿は以上です。

ここまでお読みくださりありがとうございました!

 

 

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