元素は意外と身近なものに使われている!
塾講師である皆さんは、
「Hはなに?」と聞かれれば、
「水素!」といとも簡単に答えることが可能でしょう。
しかし、
「じゃあ水素はどんなところに使われているの?」
と聞かれたらどうでしょうか?
ちょっと考え込んでしまうのではないかと思います。
この記事では、
元素は意外に身近なところに使われているんだ
ということを伝えていきたいと思います。
ヘリウム
- 原子番号:2
- 元素記号:He
周期表の順番では水素に次いで2番目に登場することから、なかなかに(勉強上は)なじみが深いのではないでしょうか。
そんなヘリウムですが、実は風船や飛行船のガスとして主に使われています。
また、おもしろい声になる玩具としてもおなじみです。
・・・といいつつも、これは塾講師をされているほどの方であればまずご存じであると思います。
しかし、
なぜヘリウムが使われているか生徒さんに正しく説明することができますか?
答えから言ってしまうと「軽いから」が一番大きな理由です。
でも、これだけでは不十分、なにか足りないと思いませんか?
その足りないものとはすなわち、
「水素ではなくヘリウムでなければならない理由」です。
本来ならば、ヘリウムよりも水素の方が軽いわけですから、そちらを用いるべきです。
ですが、風船や飛行船のガスとして水素を用いてしまうと大惨事を引き起こしてしまう可能性があります。
なぜなら、水素は少しでも火の気が近づくと爆発してしまうからです。
そういった理由まで完全に説明できてこそ、
「ヘリウムが風船や飛行船に使われている」という知識は使えるものとなります。
ぜひこの機会に押さえておいていただきたいと思います。
炭素
- 原子番号:6
- 元素記号:C
炭素は結晶構造によって性質が大きく変化する元素ですが、日用品から高級品まで様々なところに用いられています。
日用品の例としては、鉛筆の芯などは炭素からできていて、この炭素の構造が崩れることでものを書くことができます。
また、高級品としてはダイヤモンドも純粋な炭素で構成される物質です。
鉛筆の芯とダイヤモンドの成分が同じ元素・・・なんだか不思議ですよね。
フッ素
- 原子番号:9
- 元素記号:F
フッ素は極めて反応性が高く、毒性の強い元素ですが、
実は普段皆さんの使用する歯磨き粉やフライパンの表面のコーティング(これは正確にはフッ素を用いた樹脂であるフッ素樹脂です)に用いられています。
猛毒な元素を口に入れるものに用いられているのは不思議ですが、ごく少量であれば問題ないようです。
また、フッ素樹脂は高温に強いため、これによりフライパンを高温でも利用することができるのです。
よく「テフロン加工」という言葉を耳にする機会があるかと思いますが、
この「テフロン」というのはフッ素樹脂の商品名のことです。
アルミニウム
- 原子番号:13
- 元素記号:Al
日常生活でも耳にする機会の多いアルミニウム。実は普段誰しもが持ち、使っているものに使われています。
なにか分かりますか?
答えは「1円硬貨」です。
…ともったいぶってみたものの、これは皆さんご存じかと思います。
では、なぜ1円玉はアルミニウムから作られているのか答えることができますか?
説明すると、時代は神武景気の頃まで遡ります。
その頃の日本は景気が良く、終戦直後のアルミニウム不足とは打って変わって、供給が潤沢になっていました。
さらには、ちょうど黄銅貨や1円紙幣(当時は流通していました)が疲弊しきっている状況です。
そのため、その代替材料として最適であったとされるためです。
1円玉にアルミニウムが使用されているのは、物質的特性の意味というよりも、時代背景による意味合いが強いというわけです。
ここまで説明することができれば、
生徒さんはアルミニウムの情報を頭にすんなりと入れることができるかと思います。
リン
- 原子番号:15
- 元素記号:P
リンは非常に燃えやすい元素で、その性質を利用してマッチ箱の摩擦面によく用いられています(マッチ棒の赤色の火薬部分にはカリウムが用いられています)。
このリンという物質は燃えやすすぎるがゆえ、ときに自然発火を引き起こすことがあります。
よく肝試しなどで人魂をみたという人がいますが、それはリンの自然発火による炎を人魂であると思い込んでいるのだと考えられています。
遭遇した経験のある方にとっては、謎が解明されたのではないでしょうか?
塩素
- 原子番号:17
- 元素記号:Cl
塩素は非常に殺菌力のある元素であり、様々なものの消毒などに用いられています。
身近なものとしては、普段私たちが家庭で利用している水道水や、夏にお世話になるプールの消毒剤に用いられています。
プールに入る際に、なんだかちょっとツーンとしたような、何とも言えないにおいを感じることがありませんか?
あれこそがまさにこの塩素の発するにおいです。
ちなみに、食塩を構成する成分の1つであることから「塩素」と名付けられました。
クロム
- 原子番号:24
- 元素記号:Cr
クロムという元素はあまり聞き慣れないと思います。
しかし、実はこれがないと宝石の美しさが半減してしまうのです。
ルビーやエメラルドと言われてどのようなものを想像しますか?
おそらく、きれいで透き通ったような赤色、緑色を想像したのではないでしょうか。
実はこの色、すべてクロムによって色づけられているのです。
クロムがなければこういった色は生まれません。
元来宝石に備わっている色だと思っていませんでしたか?
このように、クロムは意外なところで影響のある元素です。
ちなみに、サビや摩擦に強い性質もあり、
普段よく使うネジの表面などにメッキとして、加工が施されています。
臭素
- 原子番号:35
- 元素記号:Br
水銀とともに「常温で液体!!」として覚えた方が多いと思われるこの臭素。
室温で液体であったり、激臭だったりといったことを受験勉強のために覚えていても、その用途は意外と知られていないのではないでしょうか?
実はこの臭素、写真プリントに使われているのです。
厳密には純粋な臭素ではなく、銀との化合物である臭化銀が用いられています。
(臭化銀には、光に当たると分解するという性質があります。)
よく「ブロマイド」という言葉を聞きますが、これは臭素の英語名であるBromineに由来しているものです。
今までこの「ブロマイド」という言葉を、由来を知らずに使っていた方は多いのではないでしょうか。
ストロンチウム
- 原子番号:38
- 元素記号:Sr
リアカー無きK村・・・(Li:赤Na:黄K:紫)という語呂合わせで炎色反応の色を覚えた方は多いのではないかと思います。
その際、Sr(ストロンチウム)は美しい紅色であると覚えませんでしたか?
実はその炎色反応での色の美しさを利用して、花火の色に使われています。
皆さんも夜空に映える美しい赤色の花火をみたことがあると思いますが、それはストロンチウムの炎色反応だったのですね。
ちなみに、バリウムなども緑色の花火として用いられています。
今度花火を見る機会があれば、このことを少しでも思い出していただくと、
花火の神秘さが増すかもしれません。
水銀
- 原子番号:80
- 元素記号:Hg
こちらも入試問題にそれなりに登場するため、元素記号や基本的な性質(常温で液体)などは知っている方も多いかと思います。
この水銀は実生活では温度計としてよく用いられています
(皆さんご存じ、あの赤色の液体が動くタイプの温度計です)。
なぜ温度計に水銀が用いられているかと言うと、水銀は温度によって大きく膨張し、かつ、その割合もほぼ一定であるためです。
ほぼ一定に温度に比例して体積が増えるとなれば、温度計には最適ですよね。
ちなみに、このことからも分かる通り、あの赤い液体は膨張することで上に上っているように見えるのです。
塾講師生活の更なる充実を!
この記事を最後までご覧いただきありがとうございました。
今回は「元素の意外な使われ方」をテーマにいろいろと述べてきましたが、知っているつもりでも意外と知らない部分もあったりしたかと思います。
化学の授業をする際にこれらの上記でご紹介した元素が登場したときには、
「こういった使われ方をしているんだよ」と雑談がてら話すことで、
生徒の化学への興味も出てくるかもしれません。
中学生あたりの子というのは、
抽象的な授業ではなく、
それが日常でどのように扱われ、活用されているのかを知ると、
思いの外興味を示してくれる傾向にあります。
ぜひ一度試してみてください。
重ね重ねにはなりますが、最後までお読みいただき誠にありがとうございました。
皆さんの塾講師生活がさらに充実することをお祈りしております。
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