「論理」って何?
今回の記事では、論理とは一体どのようなものなのかについてお話しします。
論理といったら少し固いので、
「説得力のある文章」とはどのようなものなのか
についてお話しします。
しかし、これからお話する内容の全てを生徒が習得できるとは到底思えません。
実際、私自身も紹介するポイントの全てを踏襲した文章を書けと言われたらできるかどうか自信がありません。
本当にそれぐらい難しいことを紹介します。
しかし、これらの内容を知っているかどうかで、生徒の小論文・英作文の評価の質はかなり向上するはずです。
その文章が「説得力のある文章」のポイントに当てはまるのかどうかを確認すればいいのですから。
論理の大切さ
小論文において論理(説得力)は大切ではない...なんてはずはありません。
すごく大切です。
ゆえにこれから小論文の技法を紹介するにあたり、特に重要な論理からスタートすることにします。
小論文とは”小さな論文”であり、そして、論文とは誰かに何かの理論や理屈を説明するために用いられる素材のことを指します。
受験生からしたら、だからといって論理的な文章を書こうとは思わないかもしれません。
しかし、大学が「論理的思考力を評価するために小論文を設置した」と宣言すれば、どの受験生も論理を追求せざるを得ません。
ゆえに、論理が大切な理由は、
「大学が論理を基準に判断を可否の判断を下すから」にすぎないのです。
もしそこが、
「表現力を評価する」とすれば、論理よりも多種多様な表現方法を知っているかどうか、
「考察力を評価する」とすれば、具体例を並べるだけではなく深い論理
を書く必要があるのです。
小論文を指導する前に、まずはその方針を確認しましょう。
下記のURLは各大学の小論文の出題方針をまとめたものです。これを参考にするといいでしょう。
kei-net/小論文・総合問題対策 http://www.keinet.ne.jp/taisaku/shoron.html
主張について
小論文において論理は大切、という実に当たり前のことをあえてくどく説明しましたが、これには理由があります。
それはこの章で紹介する内容に関連します。
まず、小論文を書くためには何かしらの主張(いいたいこと)を持っている、あるいはつくり上げる必要があります。
それがない限り、何も書けないということですからね。
しかし、その主張が小論文において有効なものとなるためには、いくつかの条件が必要です。
その条件とは、
- 主張には価値を持たせること
- 価値の根拠を明記すること
・・・さてはて、どういうことでしょうか。
主張には価値がなくてはならない
極端な話、あなたが何かの主張をしたとして、相手が「知るかよ」と思ってしまっては意味がないのです。
例えば私は哲学を好むわけですが、哲学に関する何かしらの主張を、哲学に関心のない友達にしたところで「知るかよ」と言われておしまいです。
それはそうです。
友達にとっては関心のない主張を私がして、それについての理由やら具体例やらを説明したところで、そもそも主張に関心を持っていないのだから、そうした理由や具体例も意味がないものになってしまいます。
”論理の大切さ”の章はある意味その具体例と言えます。
ここを読んでいる皆さんはもちろん「論理は大切」と思っているでしょうが、もしある人が「論理は大切ではない」と思っていては、ここで話していることはすべて無価値になります。
価値のないことに理由をつけられても……ということです。
私が”論理の大切さ”の章を設けた理由は、
これから私が話をすることに価値をもたらすために行ったことなのです。
価値には必ず根拠がある
そして「論理は大切である」と主張するだけではなく、さらにそこに根拠を添える必要があります。
私は「論理は大切である」という根拠として、
「大学が論理的思考力のある生徒を求めており、それを小論文で判断している」というものを持ちだしました。
塾講師も受験生も性質上、「大学に合格させたい(したい」という想いはあるはずなので、この根拠は大変強いものとなります。
ちなみに、これを明確するためによく用いられる手法として、”問題提起”というものがあります。
「一般的に○○だが、どうして○○をするのだろうか?」といったように、一般論から疑問を引き出して関心を呼び起こす。
相手の関心がそこに集まれば、必然と次に述べる主張に価値が生まれます。
逆になにがだめなのか
ー社会的な重要性に言及していないもの
例えば「育児休暇について述べてください」という問題において「育児休暇は小遣い稼ぎのために必要なものだ」という主張があったとしましょう。
一応誰かの視点に立って入るのでしょうが、”小遣い”となってしまうと社会的な問題として取り扱うことが難しくなってしまいます。
こういった主張は関心を集めるものとはならないでしょう。
ー社会的であっても学部の分野と関係ない価値を述べているもの
もし生徒が受けている学部が教育学部であるのにも関わらず、工学部的な価値に言及していた場合。お前はどこの学部を受けているんだとツッコミをいれてあげてください。
論理の基本構造(主張と理由)
さて、例えば、価値のある主張を作り上げることができたとき、今度はそこに理由を付与しなければなりません。よく小論文や作文の基本構造は主張と理由だと言われていますが、そこにもきちんとしたルールがあります。
主張は明確でなくてはならず、難しい言葉を使ってはならない
主張は当然明確なものである必要があります。
つまり、どんな人にでも伝わるような言い方でなければなりません。
例えば私が「家族は社会化された」という表現を用いたとしても、そこには様々な解釈が生じてしまいます。
「家族全体が社会において重要な位置を占める(家社会)」「家族のメンバーが社会のために働くようになった(家族の分離)」といったように、いろいろな意味に捉えられてしまいます。
するとどうでしょうか。
小論文では主張が先に持ってくることになるでしょうが、その主張をきいた段階で読んだ人が「これってどっちの意味で使っているの?」と混乱を起こしてしまうと、後の理由説明のところでもその混乱を引きずって、結局何を書いていたのかがわからないということになりかねません。
ですので、熟語でズバッと言うことはせずに、解釈のぶれが生じないように、そして簡単な言葉で表現されている必要があります。
理由は相手が納得できるものではなくてはならない
私が今回の記事で一番伝えたいことです。
仮に私が「論理は大切である」という主張を説明するために、以下のような理由を作ったらどうでしょうか。
「論理は大切である。なぜなら哲学者や科学者は論理を好み、論理をベースに議論するからだ。実際彼らが論理を重視し、それを積み重ねてきたおかげで物事の見方や科学が発展したのだ」
すごく難しい書き方をしましたが、この文章は基本的には不正解であり、特定の条件を満たした場合に正解となります。
わかりますでしょうか?
私は理由に”哲学者や科学者”の話を持ちだしました。
しかし、哲学者や科学者が本記事を読んでいる確率はかなり低いはずです。
大半が塾講師や先生のはずです。彼らは私の持ちだした理由に関心を示すでしょうか?
いえ、そんなことはないでしょう。
論理のおかげで物事の見方が増えたからなんなんだ。
論理のおかげで科学が発展しからなんだっていうんだ。
これが正しい反応です。
しかしもし、この記事の読者が教育を研究する人であったり、学者であったりしたら、もしかしたら多少の効果を持っているかもしれませんね。
この記事を読む人が塾講師であるとわかっているからこそ、「大学は論理的思考力を小論文で判断する」という、誰もが関心を持つ理由を持ちだしたのです。
よく「主張には理由をくっつけなさい」と言われますが、その理由は相手が納得するもの、関心を持つものではなくてはならないのです。
曖昧な理由で説明されても...納得できるわけがないですよね?
まとめ
もちろん論理に必要な要素はこれに意外にもありますが、この4つのポイントを意識しておけばまずは大丈夫でしょう。
そしてこの4つのポイントを意識するのは大変難しいものです。
あなたの生徒の主張は価値があるものでしょうか?
その主張の価値に根拠がありますか?
主張は簡潔で明確ですか?
理由は一般的に納得できるものですか?
これらをチェックしていくと、質のいい添削ができます。
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