景気ってなに?
今回お話するのは景気についてです。
政治経済において、もちろん、経済の勉強はしますが、
景気について解説されていることはあまりありません。
しかし、
景気の話題はニュースにおいても日常においても出てくる話題ですから、教養のためにはもちろんのこと、
小論文対策のためにも理解している必要があります。
そこで今回は、
政経で学ぶ知識を、日常で使われる言葉「景気」と結びつけること
を目的として記事を作成しました。
政経は科目の中で最も実用性に富んでいる科目ですから、きちんと現実の問題に落としこんでおきたいものです。
景気とはなにか
景気のイメージ
まずは景気について概要をつかむために、世間で言われている景気とはどのようなものかを確認しましょう。
とあるサイトからの引用
景気とは、経済活動の勢いのことです。モノがよく売れて企業の利益が上がり、個人の所得が増えるよい状態を好景気とか好況といいます。世の中の金まわりがよく、経済活動が活発な状態です。
ーー金融大学:http://www.findai.com/yogo/0068.htm
一般的に景気の説明はこのようにされています。
特に「お金がよく回っている」という表現の箇所です。
これはどういうことを意味しているのでしょうか。
日本銀行からの引用
日本銀行は金融政策を決定するに当たって、金融や経済の状況についてさまざまな角度から判断を行っています。景気とは、文字通り、実体経済の状況に加え、企業や家計の経済活動に対するマインド(意識、受け止め方)を表わす言葉ですから、その状況の判断に当たっては、最近及び先行きの金融・経済状況を示す指標の分析のみではなく、企業の業況感や消費者マインド等の指標をみるなど、総合的な視点が重要となります。 ーー日本銀行:https://www.boj.or.jp/mopo/outline/exphandan.htm
一方で日本銀行では「お金の流れ」という表現を使っておらず、「企業や家計の経済活動に対するマインド」という表現を使っています。
端的にいって、景気とはなにか
景気といっても、結局はきちんとした定義はありません。
となると、結局景気とは主観的なものなんだなと思わざるを得ません。
要は、その個人の「経済状況に対する“感想”」に過ぎないのです。
その人が“良い”と思えば景気がいいとなりますし、その人が“悪い”と思えば景気は悪いということになります。
問題は「どれだけ多くの人が景気を良いと思うか」を表すためにはどうしたらいいのかということ。
そして、景気の捉え方として、「誰が」その景気に感想を抱くか次第で、使うべき指標が変わってくるのです。
これが国や企業であるならばGDPが主な指標になりますし、これが消費者であるならば平均賃金等が指標として用いられるようになります。
よって、ここでは、
国や企業が考える景気と消費者が考える景気はどのようなものかを考えてみましょう。
① 国や企業視点の場合
国や企業にとって、マクロレベルの経済がより重要になってきます。
国がどれだけ経済活動を活発にしているのか、国がどれだけ成長軌道に乗っているかがそれぞれの主体に影響を与えます。
ゆえに、GDPがより重要な指標として用いられることになります。
また、この視点から見た景気を「お金がどれだけ回っているか」と表現するのです。
具体的に見ていきましょう。
これはGDPを説明するときによく用いられる図です。
ちなみにGDPは、家計が生産した労働力の価値と企業が生産した商品の価値の合計で20万円です。
ところで、各経済主体のお金の出入りの合計を見たらわかると思いますが、合計0になります。家計から見れば、労働力の対価として10万円を得ていますが、その10万円を商品の購入に充てている形になります。
逆に、企業側からすれば、商品の対価として10万円を得ていますが、それを労働力の支払いに充てる形になってしまっています。
ではそれぞれの額が大きくなるとどうなるでしょうか。
例えば100万円の労働力と100万円の商品のやりとりがあったとしたら、そのお金の出入りは上の図の状態よりも激しいということになります。また、お金の出入りがより激しければ、それはGDPがもっと高くなる(200万円)ということなのです。
また別の見方をすれば、GDPが高いということは、より価値のあるものが生産されているということなので、それは国全体の調子が良い、企業全体の調子が良いということになりうるのです。
② 個人視点の場合
GDPはその国での総分配や総支出を表してくれますが、世の中の大多数である労働者の経済状況を表すものとは限りません。
「景気」とは一部の金持ちに決定されるものではなく、全体の国民が総じて“今の経済をどう思うのか”というのが重要になってくるのです。
ということは、“総”生産や“総”支出のみならず、平均的にどうなのかという見方も大切になってくるのです。
仮に国民の100人中1人が1億円を持っていたとして、99人が0円だとしたら総生産は1億円ということになります。しかしこの状態ですと、99人が「景気が良い」と判断するわけではありません。
むしろ1人100万円を持っていて、それが100人集まっている国だとすれば、とりあえず「景気が良い」と判断するかもしれません。
そうなると、どうしても、景気をGDPのような総合的な絶対値のみで判断するのは難しくなってくるのです。
代わりに用いられる指標が、失業率や実質賃金だったりします。
どれだけの人が雇用されているのか…1人が持っている商品を買う力はどれくらいなのか...そういった労働者個人に向けられた指標を用いることが多くなってきます。
ここで重要な点は、国全体の景気と個人が感じる景気は異なるということ。
そして政経で言われる景気とは、主に国全体の景気のことを指します。
景気の循環の話
国全体の景気の話に限定すれば、政経では景気の循環の話が出てきます。
景気循環論は主に4つの理論があり、これはきちんと政経で学習する範囲なので紹介することにします。
景気循環論とは、景気を左右する要因とその周期について論じているものです。
コンドラチエフの波(50年周期)
技術要因:技術革新
技術の変革が景気を左右するというものです。
例えば蒸気(1790年頃)、鉄道(1840年頃)、電気(1890年頃)、コンピュータ(1940年頃)と革新的な技術が生み出されるのはほぼ50年ごととされています。
この技術革新によって景気が左右されるというのです。
クズネッツの波(15年周期)
技術要因:人口増加
こちらは人口増加についてです。
人口が増加するということは、それだけ住居建設が必要になってきますし、食料の増産も必要になります。
…とにかくあらゆるものの需要を左右します。
しかし、人口が増加したときに生産を行っても、その人口増加の伸びが緩くなれば、景気は後退します。
ジュグラーの波(8年周期)
技術要因:設備投資
おおよその機械や工場は10年弱の寿命を持っており、それが終わると買い替えが行われます。
設備の買い物はもちろん高いものですので、景気に大きく影響します。
キチンの波(3,4年周期)
技術要因:在庫投資
こちらはかなり短期的な循環ですが、1番理解しやすい循環です。
在庫が足りないときは、生産活動を一生懸命行わないといけないので、景気が良くなります。
しかし生産を続けると、もちろんいつかは需要を上回ってしまい、商品が売れないという状態になりますので、今度は景気が後退します。
これを繰り返すのが3,4年周期であると、キチンは主張しました。
しかしこれについては最近あまり重要視されていません。
というのも、そもそも在庫という考え方がインターネットの普及によって消滅してきたのです。
注文を受けてから生産を行うというジャストインタイムシステムという例もあります。
あとがき
主に今回はテーマとして“景気”を取り上げ、そこからキーワードを拡大させていきました。
景気という言葉そのものが授業で大きく取り上げられることはなかなかありませんが、それが関わってくるキーワードは政経によく出てくるものだったりします。
何より政経を単なる受験科目として終わらせることなく、将来にも役立つ科目とするためにも、景気の理解は必要だと私は考えます。
そして、景気という言葉を少し理解するだけで、日常耳にする経済のニュースがすごく面白くなりますので、是非活用していただきたいと思います。
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