金融の本質 ー貸し手と借り手をつなげる
金融と聞くと、かなり複雑なイメージを思い浮かべると思います。
確かに金融の分析の話になるとかなり難しい話になりますが、ニュースに出てくる政策の話を理解するレベルならば、基礎知識を揃えるだけで十分に理解できます。
【金融の基礎】シリーズの目的は、
金融の体系的な基礎知識を提供する
ことです。
量的緩和を説明できますか?
国債の利回りについて説明できますか?
金融の基礎知識を身につけるだけでその多くが説明できます。
政経の教科書の中にある金融の知識はもちろんのこと、大学での講義で習う初歩的な知識も交えながら、金融について解説していきたいと思います。
金融は教養にもなるし、小論文にも活用できる便利な分野。
ぜひ指導に役立ててください。
まず金融とはなにか?
金融と聞いてまず思い浮かぶことは、“銀行”でしょう。
確かに銀行は金融分野において大きな役割を果たします。
しかし、もっと原始的になれば、「最近金欠だからお金貸して」という日常会話さえも金融の一部といえるのです。
もう少し踏み込んでみましょう。
どういうときにお金のやりとりが行われるでしょうか?
通常であれば商品を渡す代わりに、その対価としてお金を受け取る。
こういった売買が通常のお金のやりとりでした。
しかし、お金のやりとりはそれだけではなく、「お金をどこかに預ける」「お金を投資する」「お金を貸す/借りる」といったものだってあります。
少しざっくりとした定義ではありますが、
金融とは「物・サービスの売買以外のお金のやりとり」と思っておくといいでしょう。
個人レベルでいえば預金や借金が金融の一部ですし、企業レベルでいえば投資や社債、株式の発行に至るまで様々な分野が金融の一部となります。
金融の役割
ではそのような金融が存在することによって、私たちの生活にどのようなメリットをもたらすでしょうか。金融には主に3つの機能があると言われています。簡単にリストアップすると以下のようになります。
金融仲介機能:貸し手と借り手を繋げる
決済機能:支払いの仲介を行う
信用創造機能:通貨供給量の増大
今回の記事ではこのうち、金融仲介機能を解説し、次回の記事で決済機能、信用創造機能について解説をします。
金融仲介機能とは?
皆さんは「これ欲しい!」と強い衝動に駆られたことはありますか?
そしてそういうときに「お金がない!」ってなったことは?
私はあります。
この前『進撃の巨人』の新刊が出たのを本屋で見かけて、「欲しい!」と思いました。
しかし、残念ながらそのとき財布の中には300円しかなく、購入することができませんでした(ちなみにその後ATMにいってお金を引き下ろして買いましたが)。
『進撃の巨人』の新刊は早急に必要なものではないので、少し我慢して給料が入るのを待てばいいわけなのですが、もしそれが家賃であったり、食費であったり、学費だったりしたらどうでしょう。
「我慢する」という選択肢がないものであったら?
たいていの場合、そのような状況に陥ったら親にお金を借りるか、あるいは友人にお金を借りるかをするかと思います。
つまり“借金”をするわけです。
これが金融の始まりといっても過言ではありません。
もう少し借金について分析してみましょう。
借金とはすなわち、そのときに誰かにお金を借りて、将来そのお金を返す約束をするということです。
もしその約束が100%守られるものだとしたら、ある意味それは「今の自分が、将来の自分からお金をもらう」ということになります。
現時点において100万円のお金が足りず、しかし1年後には500万円の収入が入るとしましょう。
そして1年後の自分に、200万円以上使う予定がないとしたら、残りの300万円は余分なお金になります。
その場合、その300万円のうち100万円を今の自分に渡した方がよいということになるのです。
つまり、金融のおかげで私たちは将来の収入を持って、今の自分を助けることができる様になったと言えます。
個人ではなく、マクロレベルで見たらどうでしょうか。
単純に言ってしまえば、世の中にはお金が余っている人と、お金が足りない人がいます。
お金が余っている人は基本的に今後も安定してお金が余っている状態を維持しますが、お金が足りない人は何かしらの商売を行って、収入を増やしていく必要があります。
けれども当然、商売する人は元手が必要。
じゃあどうするか?
お金が足りない人は、お金のある人からお金を借りることになるのです。
お金がある人はお金を貸す代わりに「じゃあ1年後利子5%で返してね」という約束をするのです。
借りる側はその約束を守るために、商売を一生懸命することになります。
こうした約束も、金融の一種です。
金融があることによって、元手がない人でも起業をすることが可能になるのです。
Tips①
「じゃあ1年後、利子5%で返してね」という約束は社債と呼ばれ、「じゃあ今後収入が出たら分け前を10%だけちょうだいね」という約束が株式と呼ばれます。
Tips②
お金が余っている人のことを黒字主体と呼び、お金が足りない人のことを赤字主体と呼びます。黒字主体は基本的に家計で、赤字主体は基本的に政府や企業です。ただ日本は例外的に、家計も企業も黒字主体になっています。
直接金融と間接金融
ここで直接金融と間接金融の話をしましょう。
というのも、先ほどの具体例がこの話にすごく関連するためです。
お金のない人がお金を借りようとするときに、相手が個人か銀行であるかでかなり性質が異なってきます。
相手が個人である場合は直接金融、相手が銀行である場合は間接金融と言われています。
直接金融とは、お金の所有者が“自分の意思に基づいて”融資や投資を行うことを指します。
そしてその行為がその人に意思に基づくわけですから、当然損失はその人に帰属することになります(お金の所有者にとってリスクがある)。
証券会社を通して行う場合も、どの銘柄を買うかは投資者の意思に基づくものですので、直接金融に該当します。
一方で間接金融とは、お金の所有者とは異なる“第三者の意思に基づいて”融資や投資を行うことを指します。
当然損失の責任は銀行に帰せられます(お金の所有者にとってリスクが低い)。
第三者がやったことなのに、所有者にその損失が来てしまっては困ります。
ちなみに一般的な起業家は、個人と銀行、どちらからお金を借りようとすると思いますか?
彼らは往々にして、できることなら個人からお金を借りようと考えます。
というのも、銀行からお金を借りようとすると大変厳しいチェックを受けることになります。
銀行側からしたら当然でしょう。
銀行側が使おうとするお金は、実際は彼らのものではなく、預金者から預かっているものなのですから。
できる限り損失を避けようとします。
そのためにたくさんの審査を行うのです。
そしてその審査が社会に出回ることになります。
この企業の経営はどうなのか、利益はどうなのか、社員のモチベーションはどうなのか…。
銀行によるこの副次的産物は、金融の情報生産機能と言われています。
まとめ
金融には主に3つの役割があります。
金融仲介機能:貸し手と借り手を繋げる
決済機能:支払いの仲介を行う
信用創造機能:通貨供給量の増大
そして金融仲介機能の解説では、
個人レベルでは、将来の自分と今の自分のお金を繋げる
マクロレベルでは、黒字主体と赤字主体を繋げる
そしてその繋げ方に、
直接金融と間接金融がある
ということです。
いかがでしたでしょうか。今回は金融について特に新しい知識は含めてはいませんが、違う視点から金融を見てみました。
しかし、この視点が、今後の金融の理解につながりますので楽しみにしてください!
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