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小説を読み解くための、たったひとつの世界観

高校生

2021/12/17

小説という問題。どうやって解説しますか?

高校入試にも大学入試にも出題される小説ですが、

・どのようなポイントがあるのかがさっぱりわからない。

・登場人物の心情を読み取れといっても、それって結局は作者にしかわからないでしょ?

と言われます。

けれども、

小説が入試として出題されることは事実として受け止め、何かしらの解説方法を模索するしかありません。

 

そこで今回は、小説の特徴を論説文との比較の上で捉えつつ、そこから、

どのような読解方法及びアプローチが可能であるかを分析してみたいと思います。

 

 

 

論説文と小説の違い

おそらく多くの人は、論説文のアプローチについてはある程度の理解があると思います(少なくとも小説とくらべて)。

ゆえに、論説文と小説では何が違うのかを意識することで、小説へのアプローチの手助けになるでしょう。

 

①小説には「心」が存在する

論説文と小説の最大の違いは何か、と問われたら何と答えるでしょうか?

ある人は「登場人物」がいると答えますし、ある人は「気持ち」があると答えます。

往々にして、この質問についてまったく変な回答というのは出てこなくて、

多くの人は論説文と小説の違いを、「心」の有無として捉えているようです。


論説文にも確かに人が出てくることはあるのですが(デカルトとかプラトンとか)、そこで話題となっているのはその人自身ではありませんね。

彼らが述べた論理を取り上げているにすぎません。


しかし、小説でデカルトだとかプラトンだとかが登場すると、

必ずといっていいほど、彼らの「心」に言及した表現がどこかに書かれるはずです。


デカルトは恥ずかしくなった、とか、プラトンは激怒した、など(なんか一気に人間味増しますね…)。


実際、小説の問題もここに注目されていることが多いです。

よく問われるのは「心情」を見つけ出せという問題ですね。

登場人物たちの心情を正確に把握し、それについて回答することが多いです。

論説文にはこのような問題は出ません。

いきなり「デカルトの心情について答えよ」とか聞かれても困りますよね。


 

 

②小説はある意味擬似的な世界を構成する

さて、小説の最大の特徴は心情にあるわけなのですが、さらにもうひとつの特徴があります。

それは、小説の世界は擬似的な世界である、ということです。


まり、小説の内容が、たとえSFであれ、歴史物であれ、ファンタジーものであれ、そこにある因果関係は現実と大きくことなるということはありません。

どういうことか。


人間はふつう、

「殴られたら怒る」「プレゼントをもらったら喜ぶ」といった、

ある出来事とある心理は、一定の因果関係を持っているのです。


そしてその因果関係は、たとえ時代が変わろうが、世界が変わろうが、変化することはありません(SF小説だったら殴られたら喜ぶ人たちばかり、なんてことはないですよね)。

これは心情を把握する上で大きな手がかりになります。これについては後述しますね。


一方で論説文ではそうした因果関係はありません。

いえ、実際にはあるのでしょうが、そこにあるのは擬似的な世界観というよりも、

単純に”論理”のみで構成されている世界です。

 

  

③問題の多くは、選択肢の問題にすぎない(記述問題はあまりない)

大学入試(特にセンター試験)に大きな特徴なのですが、心情読み取り問題は基本的に選択肢問題です。

というのも、問題作成者だって心情がわかるわけないからです。


さきほど、②で、小説は擬似的世界であると申し上げました。

では、私たちはこの現実において、他者の心情を予想することが、どれだけ正確にできるでしょうか?


おそらく、ほとんど不可能です。

それは小説でも同じで、登場人物の心情を直接記載していない限り、状況から推測することというのは本当に難しいのです。

ゆえに、問題作成者は選択肢を作るしかないのです。

選択肢をとりあえず4つか5つ作っておいて、1つ以外には何かしらの間違いを埋め込む、といった作り方をします。

ですから、小説問題の多くは選択肢をいかに正確に読み取るかが重要になるのです(逆にいえば、小説の読解はほとんど問題にならない、ということですね)

 

 

小説を読み取るための、ある1つの世界観

さて、上記3つの原則に従うと、私はある方法を用いれば心情を把握しやすいのではないかと思いました。


あなたはいきなり嬉しい気持ちになりますか?


この質問に対して、YESと答える人はそんなにいないでしょう。


嬉しい気持ちになるのは、何かしらの原因がどこかにあるはずです。

心地よい空間にいるからなのか、好きな音楽を聴いているからなのか。

つまり、心情はいきなり発生することがなく、何かしらの原因を伴っているはずなのです。



あなたはいきなり泣きますか?

そんなことはないですよね。

人間は何かしらの行動を取りますが、それも理由がなく行動しているわけではないはずです。

その行動が自分のメリットだとわかっているから行動しているのからでしょう。

あるいは何かしらの感情が爆発したからに違いありません。


ではその行動の原因とは何でしょうか?

それはまぎれも無く、「心情」にほかなりません。

怖いと思ったから泣いたり、嬉しいと思うから飛び跳ねたりします。

人間の行動はそれ自体で独立することなく、必ず心情に基づいています



小説世界における黄金のルール

これまでの話をまとめると、以下のような世界観が見えてくるのです。

状況→心情→行動

 

繰り返しますが、嬉しい気持ちには必ず原因があります。

なつかしい友人に再会したからかもしれませんし、誕生日を祝ってもらったからかもしれません。

何かしらの”状況”が心情を生み出しているのです。

そして人間はなにか心情を持つと、必ず行動を起こします。

友人に再会した場合であれば、”ハグする”という行動を起こすかもしれませんし、誕生日を祝ってもらった場合には”ありがとう”と言うといった行動を起こすかもしれません。

 

心情はある状況から生み出され、そして何かの行動を生み出しているのです。

 

ゆえに、その登場人物の心情を読み取る場合、原因と行動の両方から推測することが望ましいとされます

逆にいえば、状況のみから心情を判断してはいけませんし、行動のみから心情を判断してはいけません。



行動と心情は一致しない!?

 「私は泣いた」

この文における”私”の心情を推測することができますか?

一般的には、”泣く”ことは悲しい気持ちから生まれるとされますが、そうとは言い切れないのです。もしその状況が、

「私は暗闇の中にいた」

なのであれば、それは恐怖という心情があることになります。

「私は懐かしい友人に出会った」

なのであれば、それは嬉しさのあまりに泣いたということになります。

 

状況と心情は一致しない!?

逆もしかり。

「私は暗闇の中にいた」

という状況だけでは”恐怖”とは限りません。その次に

「私は思わずステップをしていた」

とあれば、それは暗闇という普段とは違う状況にワクワク感を覚えていることが伺えます。

 

世界観の使用例

この世界観は常に意識してください。

小説を読んでいるときに、

その読んでいる箇所が”状況”なのかあるいは”行動”なのかを意識するだけでも全然変わってきます。

 

けれども本当に便利な使い方は、

登場人物の行動をみたら、原因となる状況を考えよ

 

現実世界でも、小説世界でも、人は理由もなく行動を起こすことはありえません。

その行動には必ずそうさせる理由(状況)があるはずなのです。

そしてその状況を把握してみてください。

そして状況と行動から、心情を予想してみてください。

そうしたらほぼ全ての場面における、ほぼ全ての登場人物の心情が把握できると思います。

 

まとめ

小説とは結局は現実世界を模写したものにすぎません。

ということは人間の心情の原理も現実のものと同じなのです。

人間は特定の状況下である心情を得ます。

そしてその心情が、行動を起こすのです。

 

この世界観を意識しておくだけでも、心情を把握する力は飛躍的に大きくなるでしょう。

 

そして、このルールをうまく使いこなすためには、まずは「行動を意識する」こと。

「その行動はなぜ行わたのか」を考えてみてください。

これは小説世界のみならず、現実世界においても有用な方法です。

誰かが泣きだした時、理由を考えますよね?

そしてその理由から、その人の気持ちを想像したりしませんか?

同じことを、小説世界で行うだけでいいのです。

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

 

 

 

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