シリーズ第1回! 「地理とは何か」をおさらいします。
地理という教科は丸暗記した断片的な知識では対処することができません。
これは記述式の問題に限らずセンター試験でも同じようなことが言えます。
地理的現象の原因・結果や地域相互の関連を問われるなど応用力が必要になります。
一方で地図・統計・グラフを用いた基礎的な知識をもとに総合力を問われることもあります。
したがって、塾講師側としては単に教えるだけではなく実際に生徒に手を動かしてもらう指導が必要になってきます。
そのために必要な知識、技術を網羅した記事ですので地理を教える人は必見の内容です!!
今回は第1弾として世界全体の地形をみていきます。
時間軸に沿っての大地の区分なども出てきますが、まずは全体を把握していきましょう!!
プレートテクトニクス理論
ドイツ人ウェーゲナーは、
「かつて大陸はパンゲアと呼ばれる1つの陸塊であったが、古生代石炭紀以降、分裂・移動をくりかえして現在の大陸の配置となった」という大陸移動説を唱えました。
現在、このような考え方は次のようなプレートテクトニクス理論で説明されています。
大陸移動の過程としては、
パンゲア
→ 北、ローラシア大陸(ユーラシア、北アメリカ大陸)・ 南、ゴンドワナ大陸 (南極大陸、オーストラリア大陸、アフリカ大陸、南アメリカ大陸)
→ 現在の6大陸
と分けられています。
地球の表層は数10km~100km程度の厚さの硬い板状の岩体(プレート)10数枚からなっていて、その下の軟らかい層(マントル層)の上に浮かんでおり、このプレートがマントル対流によって移動しています。
プレートの中央付近は地殻変動の少ない地域で安定帯と呼ばれ、安定陸塊・大洋底がこれにあたります。
プレートとプレートの境界は、火山活動や地震などを伴う造山運動などが活発に起こっている地帯で変動帯と呼ばれ、海洋地域の海嶺・開港、大陸地域の造山帯があります。
プレートの境界は広がる境界・狭まる境界・ずれる境界の3つのタイプがあります。
プレートの境界の3タイプ |
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広がる境界 |
2つのプレートが互いに遠ざかる動きをしている境界。大西洋中央海嶺・インド洋中央海嶺・アフリカのグレートリフトバレーなど |
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狭まる境界 |
① 海洋プレートが大陸プレートに沈み込む境界。海溝、弧状列島を形成する。 ② 大陸プレート同士がぶつかり合う境界。例、ヒマラヤ山脈など |
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ずれる境界 |
2つのプレートが水平にずれ動いている境界。カリフォルニア州のサンアンドレアス断層 |
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ポイント
広がる境界・・・地中からプレートがどんどん出てきている!→広がる!
狭まる境界・・・プレート同士が近づいている→狭まる!
ずれる境界ときたらサンアンドレアス断層!!
広がる境界
プレートが地中からどんどん出てきやすい場所・・・それは大陸がないところ、つまり海です!
したがって、海嶺は大洋の中央部に分布しています。
例外はアフリカのグレートリフトバレーです。
今のままでいけば、数十万年~数百万年後にはグレートリフトバレーでアフリカ大陸が分裂すると予想されています。
狭まる境界
狭まる境界ではプレート同士が接する所には海溝ができます。
一方でその大陸側には褶曲した地層からなる大山脈が形成されます。
この山脈の地下深くでは高温高圧のために変成岩やマグマができ、マグマは地表に噴出して火山をつくり、地中で固結して深成岩になります。
このような一連の地殻変動を造山運動と呼びます。
ずれる境界
ずれる境界の例はサンアンドレアス断層のみです。
これはしっかり暗記しましょう。
1906年のサンフランシスコ地震が起こるなど地震帯にもなっています。
それでは次に世界の地形をこの造山運動がいつ起きたかによって分類してまとめましょう。
世界の大地形の分類
造山運動の発生時期によって以下のように分類されます。
世界の大地形の分類 |
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安定陸塊 |
先カンブリア時代に造山運動を受け、古生代以降は激しい変動を受けず安定した地塊。長年にわたる侵食の結果、最古の岩石が露出したりする平坦な地形。楯状地、卓状地となる。鉄鉱が分布。 |
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古期造山帯 |
古生代中期から後期にかけての造山運動により形成された造山帯。その後の侵食によって地表の起伏は小さく緩やか。石炭が分布。 |
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新期造山帯 |
中生代後期から新生代第三紀にかけての褶曲運動によってつくられた造山帯。高くて険しい山地である。造山運動が現在も続いているため地震帯・火山帯と重なる。銅鉱、石油が分布。主に次の2つの造山帯に分類。①アルプス=ヒマラヤ造山帯 ②環太平洋造山帯 |
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安定陸塊のうち、先カンブリア時代の深成岩や変成岩が地表にあらわれている地域を楯状地といいます。
楯状地にはメサビ鉄山、イタビラ鉄山、カラジャス鉄山、シングブーム地方の鉄山などのような大規模な鉄鉱山地が多く存在します。
これらは先カンブリア時代の海底に堆積した酸化鉄に由来するものです。
安定陸塊には古生代以降の造陸運動によって一時的に沈降して浅い海や湖になり、土砂が堆積したところもあります。
そのようなところが隆起してふたたび陸地になると先カンブリア時代の岩石の上に古生代以降の地層がほぼ水平に横たわった平野や台地があります。
このような地域を卓状地といいます。
変動帯に隣接する卓状地では褶曲や断層などの変形を受けた地層から石油がとれます。
楯状地と卓状地の違いとは??-準平原、構造平野との関係は??
楯状地(準平原)、卓状地(構造平野)と書かれていることもあるこの4つの関係。
大まかに言ってしまえば楯状地と準平原は大体同じで、卓状地と構造平野も大体同じです。
以下、細かいところまで知りたい方は読んでください。
実は、この4つの呼び名は
形に由来する呼称 - 楯状地、 卓状地
成因に由来する呼称 - 準平原、 構造平野
となっています。
準平原
準平原というのは、成因に由来した名称です。
つまり、川によって山地が削られた結果として平坦になったような地形が、「準平原」と呼ばれるのです。
多くの場合、川によって山地が削られると楯状の地形になります。
したがって、楯状地(準平原)と表記しても問題ないでしょう。
構造平野
準平原が沈降して海に沈むと、その上にいろいろな堆積物が積もります。
その後で隆起すると、堆積した物が風・雨などによって浸食され、硬い地層のところが地表に多く残ります。
こうしてできた地形が、「構造平野」と呼ばれるのです。
硬い地層だけ残るので卓状になることがほとんどです。したがって、卓状地(構造平野)表記されても問題ないでしょう。
指導時のポイント
まずは世界地図で新期造山帯をしっかり押さえる!!
新期造山帯はアルプス=ヒマラヤ造山帯と環太平洋造山帯に分けられ、他の2つに比べて覚えやすくなっています。
さらに、地震帯・火山帯と一致することから日本が地震大国、火山大国であることとも関連付けしやすくなっています。
新期造山帯、古期造山帯、安定陸塊は色塗りで覚えさせる!
新期造山帯は2つの造山帯に分けられる、とは言っても残りの古期造山帯と安定陸塊の区別は地域ごとに1つ1つ覚えなければいけません。
オーストラリアは・・・、アフリカのこの部分は・・・と教えて行っても生徒は体系的に身につけることができず、問題を解く力はつきません。
そこで!色塗りをさせることで覚えさせましょう!!
生徒は色塗りというと小学生以来で色鉛筆など持っていないかもしれません。
しかし、気候分布、植生分布など世界の分布を扱う地理では色鉛筆は必須です!!
以下は世界地図の概略図を古期造山帯、新期造山帯、安定陸塊別に色で分けた一例です。
赤、新期造山帯 青、古期造山帯 黄緑、安定陸塊
あまり見栄えがよくありませんが、一例ですのでお気になさらず。
ちなみに元の白地図は下図になりますので白地図を生徒に配り、色塗りさせてみましょう!!
また、鉄鉱や石炭などの地下資源の場所を書き加えさせるのもよいでしょう。
自分で色を塗り、自分で書き加えた自分だけの世界地図で生徒の興味、関心は上がり、成績向上につながること間違いなしです!!!
さらに、大陸の分布だけでなく、
石油、石炭、鉄鉱、銅鉱などの地下資源の分布を覚えるのに役立ちます!
地下資源の分布を問う問題は頻出です。
それぞれの地誌で細かな位置を覚えることも大切ですが、世界地図全体でこの分布はどの地下資源か、を判断するのにこの新期造山帯、古期造山帯、安定陸塊の分類は有効な手段です。
おまけー地質時代のいろいろ
地質時代を時系列で並べると 先カンブリア時代、古生代、中生代、新生代の4つに分けられます。
さらに新生代を細かく分けると古第三世紀、新第三世紀、更新世、完新世となります。
安定陸塊、古期造山帯、新期造山帯が造山運動を受けた時代を表で示すと以下のようになります。
安定陸塊がどの時代にできたものか、と問われることはほとんどありませんが、講師として知っておいてほしいところです。
地質時代 |
先カンブリア時代 |
古生代 |
中生代 |
新生代 |
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古第三世紀 |
新第三世紀 |
更新世 |
完新世 |
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造山運動 |
安定陸塊 |
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古期造山帯 |
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新期造山帯 |
塾講師ステーション情報局プレゼンツ、シリーズ記事紹介!
・【マクロ経済学基礎(政経)】…高校生政治経済!政経を単なる受験科目にしないために、よく聞くキーワードを深く解説します。
・【今と世界史をつなげる】…政治経済(今)と世界史をつなげます。両方の視点を取り入れ、教える立場としての教養が深まるよう、執筆しています。
2015年9月5日現在、この2シリーズは始まったばかりです。
今後も多くの良質な記事を提供してまいります!お見逃しなく!!