【実践指導法】第2回! 地形を引き続き確認していきましょう!
前回の地理の指導法①では世界の地形について学んできました。
今回はもっと身近な地形を学んでいきましょう。
「平野」・「扇状地」など、一度は誰もが耳にしたことのある言葉について詳しくみていきます。
侵食平野と堆積平野
世界の大平野は地盤の安定した楯状地や卓状地にあります。
その多くは、長い時間をかけて侵食され平坦になった侵食平野です。
卓状地の侵食平野や高原は侵食されにくい地層の表面が削りだされてできた構造平野で、極めて平坦です。
ところどころにテーブル状のメサや塔状のビュートがみられます。
ゆるく傾いた地層からなる侵食平野には急な崖となだらかな斜面が組み合わさったケスタ地形が形成されています。
主にパリ盆地で知られています。また、南極やグリーンランドにあるような面的に広がった氷河を大陸氷河といいますが、この氷河に削られた凹地に水がたまった氷河湖が分布する平野を氷食平野といいます。
侵食作用によってできた侵食平野に対し、堆積平野には河川の堆積作用による沖積平野と砂質の浅い海底が隆起してできた海岸平野があります。
沖積平野―山麓には扇状地、中流には氾濫原、河口には三角州を形成
沖積平野は山麓、中流、河口それぞれに特徴的な地形があります。
まずは山麓の扇状地について考えてみましょう。
Q.なぜ扇状地は扇形の地形になるのか・・・?
扇状地は扇の形の土地という漢字の通り、扇形です。
このことに疑問をもったことはありませんか?
実はその答えは・・・
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扇状地は河川が山地から流れ出す際、河川勾配が急減することで河川の運搬力が減り、谷口に砂礫を堆積して形成された扇状の地形です。谷の出口から順番に扇頂、扇央、扇端と呼ばれます。もともと扇頂を中心に流路を変えてきたので扇頂を中心に広がった形になっています。
とはいえ、流路が毎回異なれば洪水など人々の生活を脅かしかねません。
そこで現在の流路は堤防によって固定されていますが、そのために扇状地全体に広がっていた土砂が流路沿いに集中的に堆積して天井川になっているところがあります。
天井川とは川底が周囲の平面地よりも高くなった川を指します。
天井川は日本にたくさんあり、川底の下にトンネルを作る(天井川トンネルと呼ばれる)ことで交通を通しているところもあります。
洪水時には水を川に戻しにくいため、河川の付け替えなどが現在進んでいますが、依然として多くの天井川が日本には存在しています。
扇央では砂礫が厚く堆積しているので水の浸透性が著しく、伏流し河川は水無川となります。
この伏流した水は扇端で再び地表面に出て遊水帯となります。
このため、水の得にくい扇央は果樹園や桑畑に利用されます。
水に恵まれた扇端の湧水帯には集落が立地し、水田が開かれます。
氾濫原
中流域は河川勾配が緩やかになるため、河川の蛇行による河道の移動や河川の氾濫、堆積によって氾濫原が形成されます。
氾濫原は次のように分類されます。
氾濫原の分類 |
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自然堤防 |
氾濫原を流れる河川の両側に洪水によってできた微高地。周囲より比較的高く水はけのよい土地なので交通路・集落・畑に利用される。 |
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後背湿地 |
自然堤防の背後にある低湿地。バックマーシュとも呼ばれる。 |
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三日月湖 |
河道の一部が本流から分離され、湖沼化したもの。河跡湖とも呼ばれる。 |
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図の赤い部分が河川の両側にできる自然堤防で、その名の通り堤防の役割を果たし、外に水が流れるのを防ぐ少し小高い部分になっています。
自然堤防より川から離れた部分(図の緑の部分)を後背湿地(バックマーシュ)と呼びます。
多くの川は図のように蛇行しているわけですが、洪水などが起こり、自然堤防が破壊されると図のように三日月湖(河跡湖)ができます。
三角州
三角州(デルタ)は河口付近に土砂を堆積した地形で、砂や粘土から構成され地下水面は浅くなっています。
洪水の害を受けやすいので集落や畑は微高地に立地し、土地は肥沃で水田として利用されます。
三角州はその形状により鳥趾状三角州(ミシシッピ川)、円弧状三角州(ナイル川)、カスプ状三角州(テヴェレ川、安倍川)に区分されます。
それぞれの場所は以下の地図の黄色の丸、赤の丸、青の丸に該当します。
詳しい形は地図帳で確認しましょう。
また、三角州と三角江(エスチュアリー)は異なりますので勘違いしないように注意が必要です!!
海岸地形
海面の下降あるいは土地の隆起によって生じた海岸を離水海岸と呼びます。
海岸平野はその一種です。
逆に海面の上昇あるいは土地の沈降が起こる傾向にある地域の海岸は沈水海岸と呼ばれます。
土地が隆起した海岸は風や波などの影響が少なかったことからその前面に長く直線的な砂浜海岸がみられます。
一方、土地が沈降していく海岸は風や波の影響が大きく、出入りの激しい海岸線が多くみられます。
ポイント
離水海岸―長く直線的で単純な海岸線
沈水海岸―出入りが激しく複雑な海岸線
一方で離水海岸でも沈水海岸でもないものとしてサンゴ礁海岸があります。
これは海岸にサンゴ礁が海岸部付近に発達したものを指します。
海岸が残っており、海岸部に接して発達したものを裾礁(きょしょう)と呼びます。
日本の現在のサンゴ礁のほとんどはこの裾礁にあたります。
このサンゴ礁の縁が環状に島を取り囲み、サンゴ礁と島の間にやや深い礁湖があるものを堡礁(ほしょう)と呼びます。
堡礁は島を取り囲む以外にも大陸を取り囲む場合もあり、大陸を中心に取り囲んでいて有名なものはオーストラリアのグレートバリアリーフ(大堡礁)です。
さらに、サンゴ礁の中心に島がなくなったものを環礁(かんしょう)と呼びます。
ポイント
裾礁 → 堡礁 → 環礁 の順番に構成される!!
まずはサンゴ礁が海岸付近で発達し、次第に環状に島を取り囲むことで堡礁となり、最後には島がなくなり、サンゴ礁だけの環礁になる、という流れです。
特に「堡礁→環礁」の過程では海面の上昇または島の沈降が原因として挙げられます。
これらの海岸地形をまとめると以下の表のようになります。
離水海岸、沈水海岸については表だけで説明していることもあります。
海岸地形の分類 |
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離水海岸 |
海岸平野 |
遠浅の海底堆積面が隆起してできた低平地。海岸は長大で単調な砂浜海岸となる。アメリカ合衆国の大西洋岸、九十九里浜平野、宮崎平野など。 |
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海岸段丘 |
海岸線に沿う階段状の地形で、海に面したところは波の浸食により海食崖が発達する。室戸岬、襟裳岬などに発達。 |
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沈水海岸 |
リアス式海岸 |
起伏の多い壮年期の山地が沈水し、尾根が半島に、谷が入り江となって形成された鋸歯状の出入りの多い海岸。スペイン北西部、三陸海岸、若狭湾岸、豊後水道、紀伊水道沿岸など。 |
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フィヨルド |
U字谷に海水が浸入してできた狭長な湾入(峡湾)。ノルウェー、チリ南部、アラスカなどに発達 |
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三角江 |
河口付近の沈降により生じたラッパ状の湾入。テムズ川(イギリス南西海岸)、エルベ川、セーヌ川、ラプラタ川などの河口。エスチュアリーとも呼ばれる。 |
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サンゴ礁海岸 |
サンゴ虫の遺骸や分泌物が集積して形成される石灰岩質の岩礁からなる海岸。その形態から、裾礁、堡礁、環礁に分類される。 |
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フィヨルドは図で○を書かなくても分かる通り、ギザギザの海岸線のことです。これは氷河で削れてギザギザになっています。
ところで、
Q.なぜフィヨルドではU字谷になるのでしょうか?
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U字に削られるのは氷河によって削られるからです。氷河とは簡単に言えば氷の塊であり、面で谷を削るのでU字になります。したがって、フィヨルドの分布は寒冷な地域に多く、ノルウェー、チリ南部、アラスカなどに発達します。似ているものにV字谷というものがありますが、これは川の水が谷底を激しく削ることでVの字になるからです。
U字谷は氷河地形の一種です。
他の氷河地形としては氷河が運んできた砂礫が氷河の末端に堆積してできたものをモレーン、モレーンでせき止められてできた湖を氷河湖と呼びます。
海岸地形のいろいろ
沈水海岸にはかたい岩石からなる岩石海岸が多く、土砂が波や沿岸流によって運ばれてさまざまな堆積地形がみられます。
沿岸流とは潮流や風浪によって海岸近くに海岸近くにできる海水の流れのことです。
次にさまざまな堆積地形をみていきましょう。
今回はまず図と表で説明します。
海岸地形のいろいろ |
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砂嘴(さし) |
海岸から細長くクチバシ(嘴)状に突き出した砂礫からなる地形。野付崎(北海道)など。 |
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砂州 |
砂嘴が対岸近くまで延び、湾口をふさぐくらいに発達したもの。 天橋立(京都府宮津市)・弓ヶ浜(夜見ヶ浜)など。 |
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陸繋島 |
砂州により陸地とつながった島 |
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トンボロ |
陸繋島と陸地を結ぶ砂州(陸繋砂州) |
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沿岸州 |
沿岸流の運搬・堆積作用により形成される砂礫の堆積地形。海岸線にほぼ並行し、内側にラグーン(潟湖)を形成する。 |
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ラグーン(潟湖) |
砂嘴、砂州、沿岸州などによって外界から隔てられた湖。サロマ湖、河北潟、八郎潟など。 |
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ポイント
まずは図でイメージをつかませてから説明!
図を見てもらえば分かる通り、それぞれの地形には特徴があります。
ですが、実際の入試問題では図で「これは何か」と問われることは少なく、説明を読んで答えるというパターンです。
したがって、文章で説明されてもわかるレベルにする必要があります!!
いかがでしたか。
この単元は図で説明することが多いかと思いますが、イメージをもたせ、説明できるぐらい文章でも理解度を深められるような授業にしていくことが大切です!!
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