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【地理の実践指導法】-第3回-世界の海流・気候への影響について学ぶ

高校生

2021/12/17

【実践指導法】第3回! 内容は「陸」から「海」に変わります!

いよいよ本連載も第3回を迎えました!

前回までは、

世界の地形の分類、平野、高原など主に「陸地」について学んできましたが、今回は主に「海流」について学んでいきます。

 

♦【地理の実践指導法】「陸地」のおさらいもしっかりと!
-第1回-世界の地形を大別し、細かく知る
-第2回-平野・高原・海岸の地形を知る

 

日本は4つの海に囲まれていますがその4つをすべて答えられますか?

・オホーツク海
・日本海
・太平洋
・東シナ海

の4つですね!

日本は海に囲まれた島国ですので海は身近な存在ですね。

 

まずは、海流を勉強する前に、基本的な知識の確認をQ&A方式で行いたいと思います。

考えながら読み進めてみてくださいね!

 

Q.気象と気候の違いってなんでしょうか?

・・・

 

 

 

 

 

 

 

・・・(次の行に答えがあります)

気象・・・時々刻々と変化する大気の状態       

気候・・・毎年同じようにくりかえされる総合的な大気の状態

 

どちらも大気の状態を表すわけですが、私たちがこれから注目していくのは「気候」です。

気候の定義の、「毎年繰り返される」ということから、気候は地域特有のものであることがわかりますね。

したがって、地域によって気候は分類することができます。

 

また、その地域で暮らす人々の生活とも密接な関係があります。

例えば、暑さ寒さによって人々の家のつくりや服装、食べ物は変わってきますよね。

これらの区別が受験で問われることはあまりありません。

(ただ、この2つの言葉は誰もが1度は聞いたことのある言葉ですので、地理に興味をもたせるきっかけのクイズとしても使える可能性があるので1度使ってみてはいかがでしょうか。)

 

さて、次は記述式の問題で問われる可能性のある問題について考えてみましょう。

 

 

Q.気候要素と気候因子の違いとはなんでしょうか?

 ・・・





 

 

 

(答えは次の行です)

  1. 気候要素とは気温・降水量・風向き風速・湿度などの地域特有の気候の状態を示すものです。気候因子とはこれらの気候要素に影響を与えるものです。気候因子の例としては緯度・標高・大規模な地形・海陸分布・隔海度・海流などがあります。

 

出題例として、「次の中で気候因子はどれか」などが考えられます。

気候要素、気候因子自体を書かせる問題も出題されます。

ちなみに隔海度とは海岸からどのくらい離れているか、を表す指標です。

海から近いかどうかは海風の影響や暖流、寒流の影響の大小に関わることがこの記事を読み終わるまでに分かるでしょう。

 

それでは、ここで、気候因子の代表例である緯度・標高・隔海度の影響を気候要素の「気温」に対して掘り下げて学習していきます。

 

 

緯度

冬:北海道が寒い・沖縄はそこまで寒くならない

この事実から分かる通り、

低緯度ほど気温は高くなり、高緯度ほど気温は低くなっています。

その理由は太陽から受ける熱が低緯度ほど多く、高緯度ほど少ないからです。

これは常識的にわかることかと思います。

 

標高

富士山の雪は春になっても残っているように、気温は一般に標高が上がるほど下がります。

気温が上空ほど低下する割合のことを逓減率といいます。

この逓減率は雲が発生するまでと雲が発生してからで変わるのですが平均すると100mあたり約0.55℃となります。

 


付録 逓減率について

ところでこの逓減率、中学理科の教科書にも逓減率という言葉はなくとも、この「標高が上がるにつれて生じる気温低下の割合」が表記されています。

理科の教科書には「100mあたり約0.65℃」と書かれています。先ほどの0.55℃とは異なっているわけですが、その理由は簡単に言えば「理論値か実測値か」の違いです。

地理では実測値を扱う方が都合がよいため「0.65℃」を採用しており、理科では理論値として「0.55℃」を採用しています。さらに詳しく知りたい方は以下のページを参照してください。

「気温の逓減率について」http://www.ninomiyashoten.co.jp/chiri_q_and_a/q006.html

 

 

隔海度

隔海度とは海岸からどのくらい離れているか、を表す指標です。

隔海度が大きければ海の影響を受けない、でおしまいですが、隔海度が小さければ海風の影響を受ける、寒流の影響を受けるなど少し複雑になってきます。

それではまず海陸風について説明します。

 

 海陸風

昼は海から陸へ、夜は陸から海へと風向きが変化する風のことです。

それぞれ海風、陸風といいます。海は「暖まりにくく冷めにくい」性質を持っているのに対し、陸は「暖まりやすく冷めやすい」性質をもっています。

したがって、図のようにAは昼の風の状態を指し、Bは夜の風の状態を指します。

暖かい風を赤色の矢印、冷たい風を青色の矢印で表現しています。

海面付近の矢印は私たちが感じる風を指し、上の矢印は上空の風を示していることに気を付けてください。

 

 

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寒流の影響

寒流が沿岸を流れているところでは大気が下層から冷やされ、安定します。

雲は湿度の高い空気の塊ですので雨を降らせるような対流性の雲は発生しにくくなります。

そのため、ペルー海流にそったアタカマ砂漠やベンゲラ海流に沿ったナミブ砂漠のような海岸砂漠が形成されます。

ポイント

海に近くても寒流が流れていれば雲ができない → 海岸砂漠ができる!

 

例を2つあげておきます。この2つは頻出ですのでしっかり覚えておきましょう!!

 

頻出!!

アタカマ砂漠のそばは寒流ペルー海流が流れている!ナミブ砂漠のそばは寒流ベンゲラ海流が流れている!

 

下の地図では黄緑色で書かれているのがアタカマ砂漠。黄色で書かれているのがナミブ砂漠です。

 ナミブ砂漠、アタカマ砂漠を特に強調したもの


ペルー海流、ベンゲラ海流の他にも様々な海流が地図では見て取れますね。次にこの海流分布図を見ながら今回のメインである世界の海流の分布について学んでいきましょう。

 


海流の分布と影響

それではさきほどの地図をもう1度みてみましょう。

ナミブ砂漠、アタカマ砂漠を特に強調したもの

上の図で見るように大規模な海流は、大陸東岸では低緯度から高緯度へ向かう暖流、大陸西岸では高緯度から低緯度へ向かう寒流で構成されています。

海流は気候因子の1つであり、世界の気候に大きな影響を与えます。

北半球では時計回り、南半球では反時計回りの循環がみられます。

海水の動きは低緯度から高緯度から熱を運び、地球全体の海洋の温度差、塩分濃度差を減らし、安定化させる働きをもっています。

地震などが起こらない限り絶えず一定の方向に進みます。

 

 

さらに、地球上の大規模な風と地球の自転によるコリオリの力の影響を受け、北半球では時計回り、南半球では反時計回りの循環がみられます。

 

北太平洋では、黒潮(日本海流)と北太平洋海流が

北大西洋では湾流(メキシコ湾流)と北大西洋海流

 

が世界の東西を代表する海流であり、いずれも暖流です。

 

寒暖両海流のぶつかりあう海域は潮境(潮目)とよばれ、プランクトンが繁殖し、好漁場となります。

図では示されていませんが、海流の下方、すなわち海の深いところにも大規模な流れ(深層流)があります。

海洋深層水はミネラルに富む新しい資源として注目を集め、さまざまな用途に利用されています。

 

 

詳しく海水の流れを知る

海水の流れの代表例である海流は以下のように成因によって分類されます。

 

吹送流

恒常風によって生じる海流

南、北赤道海流、西風海流

密度流

海水の密度差によって起こる海流

黒潮・メキシコ湾流

傾斜流

海面に傾斜が生じたときに起こる海流

赤道反流

補流

海水が移動したときに補うための海流

ペルー海流

 

実は海水の流れは海流の他に潮流・沿岸流・湧昇流があります。

潮流は潮の干満により約6時間ごとに反対方向に流れます。潮の干満の差を利用した潮汐発電がフランスのサンマロ(ランス潮汐発電所)にあります。

 

沿岸流は打ち寄せた波の一部が一定の方向で沿岸を流れて沖へ帰る流れです。

湧昇流とは水深200~300mほどの中・下層の海水が海面へ湧き上がる海水の流れです。

下層から栄養塩類がもたらされるため、プランクトンが豊富になり好漁場になります。

海岸砂漠を生み出す代表例のペルー海流、ベンゲラ海流にもみられ、他にもカリフォルニア海流、カナリア海流などにみられます。

また、湧昇流は冷たく、この湧昇流も実は海岸砂漠を作る1つの要因ともなっています。

 

 

エルニーニョ現象・ラニーニャ現象とは?

低緯度の太平洋の東部で海面水温が平年に比べて0.5℃高くなり、それが半年以上も続く状態をエルニーニョ現象と言います。

通常は寒流のペルー海流と中・深層から湧き上がる冷たい沿岸湧昇流のため、ペルー付近ではほとんど雨が降らず、砂漠(アタカマ砂漠)となっています。

しかし、一旦エルニーニョ現象が起こると雲ができやすくなり、大雨が降って洪水や土砂災害を引き起こします。

 

一方、赤道付近の大西洋西部では海水温が低下し、東南アジアなどでは高気圧に覆われ、干ばつ、渇水傾向が強くなります。

さらに大雨のペルーとは対照的に隣接するブラジルの東部は猛暑、干ばつにみまわれ、大豆、コーヒーなどの農作物に被害が出やすくなります。

この現象の影響には中緯度地域の日本にも及び、暖冬、冷夏になる傾向になります。

このようにエルニーニョ現象による異常気象や天候異変は世界的規模で発生します。


ラニーニャ現象とはエルニーニョ現象と逆で太平洋東部の海水温が平年に比べて低い状態のことです。

雨が降りやすいところでさらに雨が降りやすくなり、砂漠ではさらに雨が降りにくくなります。

ラニーニャ現象が起こった時の日本の夏は北太平洋高気圧が日本付近で発達するため暑夏となります。

稲などの農作物には一般によい効果をもたらしますが、一方で冬は厳しい寒さの恐れがあるため、喜ばしい現象であるとは限りません。

 

 

ポイント

エルニーニョ現象 - 太平洋東部の海水温高い! - 日本は暖冬・冷夏

ラニーニャ現象  - 太平洋東部の海水温低い! - 日本は暑夏・寒冬

 

 

 

 

最後にー海の分類について

ここまで海流、海流による気候の変化について学んできました。

最後に「海」について学んでおきましょう。地理を学ぶものとして常識にしておきましょう。

海はまず太平洋・大西洋・インド洋3つの大洋に分けられます。

北極海、南極海を付け加えることもありますが、基本は3大洋でしょう。

 

さて、その他にも付属海というのがあります。

これは面積が小さく、顕著な独自の海流系や潮汐をもたない海を指します。

付属海は大陸の縁辺部の島や半島で囲まれた海域の縁海、大陸で囲まれた海洋の地中海に分けられます。

図で書くと以下のようになります。

 

海の分類を視覚的に表現

 

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♦【地理の実践指導法】シリーズ

-第1回-世界の地形を大別し、細かく知る

-第2回-平野・高原・海岸の地形を知る

 

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