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給与/報酬の交渉術 ~どう決まるのか・どう上げるのか~【キャリアコラム#27】

給与/報酬の交渉術 ~どう決まるのか・どう上げるのか~

プロ講師の黒磯直行です。

 


黒磯 直行 くろいそ なおゆき

新卒で早稲田アカデミーに入社。営業部門長などを歴任し、その後スクールIEにて個別指導塾の運営マネージャー、Z会進学教室およびZ会東大進学教室にて講師として小中高に渡り幅広く指導を続ける傍ら、私立学校教員としても活躍。講師としてのキャリアは当然のことながら、運営サイドでの実務経験も豊富。20年以上塾業界に身を置いている超ベテラン講師。「社会人としての講師育成が業界には必要だ」との思いのもと、後進育成にも積極的な姿勢で取り組んでいる。


 

学校では、新学期がスタートしました。

私は今年度、学校では高校3年生の授業担当となりました。こうなると、塾や予備校での経験がかなり活かされることとなります。非常に楽しみにテキスト予習などの教材研究をしているところです。

大学入試に限らず高校入試でも、昨今では入試の形態や方式も大きく変わってきています。2年前の受験知識はもう古いです。常に新しい知識と情報を取り入れていく姿勢を持ちながら、それにどう対応するか、受験のプロとして構えていきたいところですね。

今回は、先日の真夜中座談会でも話題となっていた、プロ講師の「お金」、特に「給与/報酬」について、自分の運営側(つまり、支払う側)での経験、また現在、私が報酬を上げるためにしていることや意識していることをお話していきます。

目次
「給与」と「報酬」の定義
給与や報酬は自ら交渉可能か
さいごに

 

「給与」と「報酬」の定義

まず、この2つの言葉をしっかりと定義しておかなくてはなりません。ご自身がどちらにあたるのか、あるいはどのような形態で働きたいのかを当てはめて考えてみてください。

「給与」…給与所得者に支給される対価 → 企業に雇用されている

「給与」とは、雇用関係のある従業員に支払うものですので、給与を企業からもらっている場合にはこちらに当たります。これが1時間単位になると「時給」と呼ぶわけです。毎月、仕事をしている企業から給与明細をもらっている場合には、こちらになります。

「報酬」…業務委託料として支払われる対価 企業から業務を委託されている(雇用関係がない)

一方、対価を給与ではなく「委託料」を企業から受け取っている場合、「報酬」と呼びます。これは、(講師の場合)契約によって1時間当たりなのか、1授業あたりなのかによって「単価」が変わってきます。

給与や報酬は自ら交渉可能か

先述の真夜中座談会の記事にもあるように、この「給与」や「報酬」についてやり取りがあったようです。

詳しくは、該当記事をご確認いただきたいのですが、要は交渉次第で給与や報酬を上げることができるか、ということが話題に上がっているのですね。今回は、ここに切り込んでいきます。

「給与」は文字通り「与えられる」もの

ここで、先程の定義が重要になります。

まずは、もし、あなたが「給与(時給)」を得ていた場合です。

給与とは、正社員が月給としてもらっているものと性質は同じです。つまり、勤続年数や役職などによって、ある程度テーブルで決まっていることがほとんどです。学校なども、非常勤講師で働いている場合、こちらに分類されることになりますが、特に公立は、勤続年数や経験年数によって、各自治体ごとに完全に決まっています。

例えば、東京都の場合は「都立学校に勤務する講師の第一種基礎報酬額」という条例できれいに決まっているのですが、これと同じようなものが、各企業にあると思ってください

企業によっては定期昇給なし、という場合もあります。何年も同じ時給で働いている人も私は知っています。逆に言うと、下がることもほとんどありません。

時間講師(時給で給与を得ている職員)の場合1年契約であることが多いので、年度が変わるタイミングで次年度の契約があります。そこで次年度の時給提示があります。先述の通り、給与の場合は一律にテーブルで決まっていることがほとんどなので、基本的に交渉の余地はないと思った方がよいです。

どうしても納得いかない場合には話し合いの場を持つこともできなくはないと思いますが、大きく変わることは期待できません。教室の責任者をいたずらに困らせてしまうことになりかねません。

「報酬」は交渉の余地がある(かも)

業務委託で「報酬」として対価を得ている場合は、個人事業主として企業と契約していることになります。分かりやすいのは、プロ野球選手の契約更改です。

業務委託の契約も1年単位の場合がほとんどなので、年度が替わる際に次年度の契約の話し合いがされるのは、先述の「給与」の場合と同じです。

ここで、次年度の報酬額が提示されるのですが、もし納得がいかなければ保留し、交渉することは可能である場合があります。自分の交渉材料を持って提示し、納得がいくまで話し合うことはできるでしょう。実際に、私も交渉で報酬単価を上げてもらったことはあります。

ただ、あまりに納得できない提示の場合を除いて、基本的にはそのまま受け入れることが一般的です。あまりに不条理な交渉や金額を引き上げる行為は当然相手も嫌がりますし、行き過ぎれば交渉決裂で自分の行き場がなくなります。プロ野球選手で言うところに自由契約ですね。雇用関係にある給与所得者とは比にならないほど、契約を打ち切るのは簡単です。個人事業主には保障が全くありません。全て自己責任となります。

先日の真夜中座談会でも、

ここに参加されていたプロ講師の方も、「稼ぐなら業務委託」という発言をしています。これは、こういう交渉の余地があるという側面もあるのではないかと推察できます。

(他にも税務が優遇されていたりもします。詳しくは以前の私の記事「塾?学校?プロとしてどこで働くか【キャリアコラム#2】」を参照してみてください。)

交渉の材料とは

さて、仮に給与額や報酬額に納得できずに交渉をするとなった場合、どんなものが交渉の材料になるでしょうか。

以前、私が準備したのは、

  1. 前年度の生徒数と推定の売上
  2. 退会率
  3. 合格実績
  4. アンケート成績
  5. 教室への貢献度①⇒保護者会参加率/個別面談実施数/テキストや試験の作成数
  6. 教室への貢献度②⇒入会面談の入会率

などなど。

特に1,2,6は企業への売り上げに貢献している部分ですから、先方への説得力のある材料になり得ます。売上を重視しない企業はありませんから、強力な武器になり得ます。「これだけ私がいることで稼げたんだから、これくらいは報酬として妥当だよね」と強気になれるんですね。

特に私の場合、「6.入会面談」に関しては、私自身が早稲田アカデミー始め運営側にいた人間であるからこそ任せていただけている業務で、完全に教室責任者の代行をしているということになります。貢献度は大きいでしょう。

3,4,5に関しては、その企業がどれくらいその項目にウエイトを置いているかによります。

進学塾というよりも補習塾としての要素を全面に押し出している塾では、合格実績は材料にはなりにくいです。交渉ですから、相手がどんなことを要求していて、何を必要としているのか。それに対して自分が何をしてきたのか。これらをしっかり考えて材料をそろえて、契約の更改に臨みましょう。これらを除いて自分の上手く行ったことや強みだけを並べても、相手には全く響きません。

下がることも覚悟しなければならない場合も…

交渉して、時給や報酬をアップさせることが可能だということは、逆に先方企業からすれば、交渉によって下げることも可能だということです。

前の年に交渉材料として提示したものが、今年は良くない結果だった場合、当然「じゃあ、減額だよね」ということもあり得ます。その辺のリスクも十分に考えながら、円滑にかつ友好的に契約の更改に臨んでほしいと思います。

さいごに

今回は、かなりリアルに「給与/報酬」についてお話をいたしました。

交渉といっても、喧嘩するわけでも対立するわけでもありません。自分の成果をどう評価してもらうのかという見せ方の問題です。そのためには、日ごろから教室の責任者やスタッフ、はたまた他の講師の先生といかに十分なコミュニケーションを図っているか、自分を正しく理解してもらえる環境を作ることができているかが大切だと私は思っていますし、実践しています。契約の更改の時だけ良い顔をしてアピールしても、効果は半減どころかマイナスです。また、このようなことを意識しながら業務に当たっていれば、交渉するまでもなく、おのずと納得のいく評価はついてきます。

我々の立場は、対生徒だけではありません。社会人としての振る舞いを忘れることなく行動を心がけたいところです。

では、また次の記事でお会いしましょう。

 

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黒磯 直行

記事執筆者:黒磯 直行

新卒で早稲田アカデミーに入社。営業部門長などを歴任し、その後スクールIEにて個別指導塾の運営マネージャー。退任後は、Z会進学教室およびZ会東大進学教室にて講師として小中高に渡り幅広く指導を続ける傍ら、私立学校教員としても活躍。講師としてのキャリアは当然のことながら、運営サイドでの実務経験も豊富。20年以上塾業界に身を置いている超ベテラン講師。「社会人としての講師育成が業界には必要だ」との思いのもと、後進育成にも積極的な姿勢で取り組んでいる。

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